つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2016.09.03
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カテゴリ: 児童文学・絵本
『変身』というカフカの有名な短編がある。「虫」になってしまった男の話である。また『青い鳥』というメーテルリンクの童話がある。幸せの「青い鳥」を探してさまようが、青い鳥は自分の家にいた、という話である。

われらがバランキン君とコスチャ君は落第点を取り、クラスの恥だとしてつるし上げを食らう。『バランキン君、人間になれ!』という原題は、クラスメートの女の子から発せられたセリフだが、この後彼らが自分の意思で(あるいは何か目に見えざるものの不思議な力で)鳥や虫になることを考えると、なかなか意味深長である。

そう、彼らは人間に嫌気がさして、スズメになりたいと思う。なった。しかしスズメの生活も楽ではない。飼い猫に食べられそうになった刹那、ふたりはチョウになった。花から花へと蜜を探して渡り歩くのも乙な生き方だ、と思いきや、蝶生、そんなに甘くない。クラスメートに捕まって危うく標本にされそうになったところを、へんし~んで働きアリになった彼らは、本能に抗い自由に行動しようとしてつるし上げを食らい…何だ、人間と変わりないじゃないか。

というわけで、本書は『変身』と『青い鳥』を足して二で割り、メドウェーデフ一流のユーモアのセンスをスパイスとして随所に効かした、大人が読んでも笑える物語である。穿った見方をすれば、ソ連流「働かざるもの食うべからず」を具現化した寓話で、ゆえに<ロシア文部省文学賞>を受賞したのだろうと言えなくもないが、そんなのは横に置いといて、素直にファンタジーを楽しめばいいのだ。

余談。
図書の貸出期間票によれば、本書を借りたのは不具が初めてだった。半世紀以上前の作品で、書庫に眠っていたのだろうが、たいへんもったいない話である。





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Last updated  2016.09.05 22:12:22
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