桜工房(だったところ)

桜工房(だったところ)

#29



 ドン! バサバサバサ…ッ!!

「ぐあっ…!」
 弾け飛んだカオスは、本棚の一つに激突し倒れ。雪崩のように降り注ぐ本の下敷きになった。

 一方、カオスと反対方向に飛んだカナエもまた、本棚への激突が免れない状況だった。
「きゃ~~!」

 ガシッ!!

 と、あわや本棚へ激突というカナエを救ったのは、満身創痍で倒れていたはずのシオンだった。
「…え? シ、シオンさん…?」
 カナエは丸くした目でシオンを見た。
「ま、間に合ってよかったわ…」
 カナエを抱きかけたまま、シオンは肩膝をつく。
「あ、ありがとう…」
「いえいえ…、あなたばかりに良い格好させられないからね…」
「そ、そんなことないよぉ~」
「感謝するなら、まずここから生きて帰ることを考えましょう…」シオンは冷静に言う。
「う、うん」

 二人は階段の方へと駆け出し。カオスが埋まった本の山の脇を抜けようとした――。

「待て…。ここでみすみす逃がしはしないぞ…!」本の山から這い出ながら言うカオス。
「しつこいわね! 嫌われるわよ!」
 シオンはカナエを抱きかかえたままカオスを睨みつける――。
「逃がさん…!」
 本を跳ね飛ばして立ち上がり、二人を追いかけようとするカオス。

「――させるかぁ!」

 ドン! ドン! ドーン!!

 聞き覚えのある吠える声に、シオンは立ち止まる。
「ミオ――?」

「な!」
 カオスは、自分に覆い被さる大きな影に気づき振り返った。
 何メートルもある本棚が三つ、自分へ向かって倒れ掛かってくる――。
「うおぉ~~~!?」

 ドスン! ドシン! ドス~~ン!!

 カオスの体は、完全に本棚の下敷きになった。

 その倒れた本棚の上に立つミオ。
「よし…!」
「やったわね!」
 自分のところに跳んで来たミオに、シオンは嬉しそうに言う。
 だが、カナエが残念そうに首を振った。
「だめ、これで終わるような奴じゃないよぉ…。これもあくまで時間稼ぎ…」
「…やっぱり?」ミオは苦笑する。
「とにかく上に行きましょう。シスターさんが本を持っていった以上、ここへは何の用事もないもの!」
 シオンが言うと二人は頷いた。
「うん!」
「了解!」

 そうしてカナエはミオが背負った状態で、三人は地下書庫三階を脱出した。

 階段を駆け上がる途中、カナエは二人に言う。
「あのさ、二人ともこの件が無事に片付いたらさぁ…」
「え?」
「何…?」
「…地下書庫の整理手伝ってね? えへへ?」
 悪戯っぽく笑みを浮かべるカナエ。

『え、ええぇ~~~~!!』
 シオンとミオは同時に悲鳴を上げた。


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