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あんまり使いまわしは好きではないのですが。mixiの方で、こんな話を書いて見たのでUPして見ます。TRPGって、一般的なものではないので、聞きなれない人も多いと思いますけど。強引にドラマ仕立てにしてみるとこんな感じです(いや、かなり違うな)。ま、分かる人だけ。「ははは・・・、こいつアホやな」と笑っていただければ、幸いです。 *「蛙の子は蛙」貧乏そうな家庭の話。 部屋は安いボロアパートで、一日中、夕日で部屋の中が赤々と染まっているようなイメージ・・・。 六畳一間の部屋の中央には、円い木の座卓。 そこで段ボール箱に囲まれるようにして、パッチワークといえば聞こえがいいかもしれないが。要はツギハギだらけの、どてらを着たお母ちゃんが、天井からぶらさがる裸電球が一個の明かりを頼りにいつ終わるとも分からぬ造化作りの内職をしている・・・。 傍らの、赤ん坊が火のついたように泣き出せば。 お母ちゃんは、直ぐに抱きかかえてあやす。 「おー、よしよし。いい子だから泣くのをおやめ~。ね?」 母に抱かれて、ようやく泣き止む赤ん坊。 と、その時――。 扉の外から、大きな男の陽気そうな大声が聞こえる。 どうやらお母ちゃんの、ろくでなしの亭主が帰ってきたらしい。 お父ちゃんの大声に驚いて、再び泣き出す赤ん坊。 お母ちゃんは再び慌てて、赤ん坊をあやし始める。 しかし、そんな努力をあざ笑うように、お父ちゃんの陽気な大声は、どんどん、と近づいてきて・・・。 バン!と、玄関の扉を開けた。 あんまり強く開けるものだから、アパートの建物自体が地震にあったよいに揺れた。 「もう、またTRPGですか?」 赤ん坊をあやし、寝かしつけてから、お母ちゃんはしかめた顔をしてお父ちゃんを睨みつけた。しかし、お父ちゃんは、睨まれることなど慣れっこの様子で、ちっとも悪びれた顔をしない。 「ええ、そうですよぉ。今日は仲間と一緒にドラゴンを退治してきたんだ」 「ドラゴンって、ちょっとあなたよりにもよってD&Dをしてきたんじゃないでしょうねぇ!? もう、D&Dに手を出しちゃいけないって約束したの忘れたの!?」 お母ちゃんに詰め寄られて、お父ちゃんもさすがにばつが悪そうな顔をする。 「忘れちゃいませんけどね。男には、TRPGの付き合いってものがあるんですよ」 「付き合い付き合いって、そういえば許されるってものじゃありませんよ?」 「うるさいなぁ。それより6面ダイスはどこへやった?」 「6面ダイス?」 「ああ、夜にアリアンロッドで高レベルのセッションをやるんだが。6面ダイスが大量に必要になるんだよ。なあ、あと4、5個どこかにないか?」 「ありませんよ。そんなもの、ただでさえこの子を育てるのに、ダイスがたくさんいるんですよ?」 「ふふん、そんなこといって。ないないと言ったって、またここに隠してあるんじゃないのか――」 「あ、ちょっと・・・!」 お母ちゃんの制止も聞かず、流しの上の戸棚を開けたお父ちゃんはそこからお茶の缶を取り出す。耳を近づけて缶を振り、中身があることを確かめると、そのふたをポンと開けて中を覗きこんだ。 「やっぱりな。知力ボーナスが1しかないもんだから、いつも隠すところがワンパターンだなぁ。・・・どれどれ? よしよし、しっかり溜め込んであるな。おお、8面や12面ダイスもあるじゃないか。久しく使っていないぞ、おい」 「ちょっと、それに手をつけないで・・・!」 「いいじゃないか。6面ダイスの5個くらい。ちょっと借りるだけだ、倍にして返すからよ」 「そうやって、いつもいつも全部なくして帰ってくるんじゃないの! ダメよ、もう許さないわ!」 「なんだと・・・? 亭主の言うことが聞けないって言うのか? 知力ボーナスが1のクセに、いつからそんな生意気なことをいうようになったんだ!?」 「そういうあんただって、セージ技能取るまでは、共通語の読み書きができなかったじゃないのさ!」 「今は読めるんだからいいだろうがぁ!」 次第に悪化する夫婦の言い争い。 するとそれまで寝ていた赤ん坊が火がついたように泣き始めた。 たまらず耳を押さえる夫婦。 「うわ、たまらん。坊主を黙らせてくれ・・・!」 「はいはい。ほーら坊や、20面ダイスでちゅよ~!」 拳ほどの大きさの赤い20面ダイスを見せられた赤ん坊はすぐに泣きやみ、吸い込まれるようにお母ちゃんの手に握られた20面ダイスを掴んだ。 「キャッキャッ・・・!」 20面ダイスを握った手を嬉しそうに振り回しながら、すっかりご機嫌になる赤ん坊。 「・・・もう、一体誰に似たのかしらね」 苦笑いを浮かべるお母ちゃん。 あてつけられたお父ちゃんは気まずそうな顔をして、頬を掻いた。 遠くで豆腐屋さんの、パープーという笛の音が聞こえてくる・・・。
2009年01月20日
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あけました、おめでとうございました。2009年を迎えて、早くも12日目が終わろうとしています。しかし、なんだか今年はだるい感じで、この12日間の時間の流れが普段よりもゆっくりな感じがします。12月は、あっという間だったんですけどね。師走ならぬ、師歩か師休って感じですね。さてさて、今年もいろいろ頑張りましょう。今年は、年内に何か物語が書けるといいんですけどねぇ。どうなるか未定というか、無定って感じです。まあ、こういうのをやりたいって言う思いはあるのですが・・・。これを文字として見える形でアウトプットするのは難しい。その点、TRPGは楽ですよ~♪筋だけ考えて、あとはPC任せという感じです。・・・ダメな奴だ。さて、今日はこんなところで。
2009年01月12日
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今年も残すところ一時間をきりそうですね。ボク自身の今年は、実にTRPG三昧な一年でした。TRPGを通していろいろな場所に出かけたし、そのいく先々で良い出会いがたくさんありました。ゲームという動機は、少々不純な感じではありますが。やはり共通の趣味を持った人間同士の絆というものは大したものですね。自身以外のことでは、コロンボ役のピーター・フォーク氏がアルツハイマーになってしまったことが、一番重大なニュースでした。なんじゃそりゃ、という人もいるかもしれませんが。自分にはかなりキツイニュースだったんですよ。これが。ショックで車ぶつけたり、財布を落としたり・・・(実話)。ま、沈んだ気持ちは今年に置いて、新しい気持ちで、来年に向き合いたいと思います。来年も、楽しくTRPGで遊ぶぞ~!では、良い皆様お年を。
2008年12月31日
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TRPGの話。TRPGをやる時、ついついゲームそっちのけで夢中になってしまうことがある。PC用紙のキャラクターの容姿を描く欄への描きこみ。※PCとは、自分の分身となるキャラクター、「プレイヤー・キャラクター」の略称です。できるだけ上手に描こうと、日々精進しているつもりなのだが。昔、このブログで紹介した絵と比べて少しは進化したでしょうか?これは昔の絵(といっても1,2年位前のものですが)。最近はこんな感じ(少し線を飛ばしすぎ;)あんまり変化ないですね。ん~、もっと精進しなくては!
2008年12月28日
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よく聞かれる質問。>休みの日は何やっているの?えーと、区民センターの部屋を借りてゲームを・・・。>ゲームってTVゲーム?いやいや、TRPGですよ。>TRPG?んー、麻雀というか。人生ゲームというか、実際に人が何人か集まらないといけないんですよね。>へー。お金を賭けたりするの?いやいや、とんでもない。>じゃ、何をするの?ん~、なんと説明すればいいものか・・・。という感じで困ってしまうことが多かったりするのです。TRPGで遊ぶ以上、よく質問されることなので、もっと簡潔に。納得してもらえるような説明を考えておいた方が良いよなぁと、よく思ったりする。で、考えてみた。TRPGとは、「一つの物語を4、5人くらいで紡ぎ完成させるゲーム」漠然としすぎかな。「即興劇をするゲーム」劇とは違う感じだしなぁ。う~ん、なかなか良い文句がないものか・・・。でも、>それって面白いの?と聞かれたら、答えは決まっている。ええ、面白いですよ♪ってね。
2008年12月21日
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昨年の9月から、一年以上放置していましたが。久々の久々に、何か書いてみようと思いました。とりあえず、今日まで何をしていたのかという話。実は、というほど大げさではありませんが。mixiに活動の拠点を置いてコツコツコツコツ・・・活動をしていました。主にTRPG関連のね。すごい昔の話になりますが、こちらでもソード・ワールドRPGというゲームの話をしたことがあったと思います。丁度、このブログの更新が滞ったあたりから、そのゲームで遊ぶのを本格的に再開しました。今では、TRPG仲間をmixiで募って、サークルまがいのものを一人運営する立場となりました。専用のHPを開設したりもしてね。このサークルの活動を、月平均で1.5回くらいはやってきたでしょうか?すっかり準備等で忙しくなって、こちらのブログに何か新しい作品を載せるということができなくなってしまいました。すみません。しかし、さすがに一年以上も放置するのは、良くないし。掲示板にある妙な内容の書き込みを消し続けるのも、いい加減うんざりなので。月に何度かは、ここでも近況報告や今マイブームのTRPGの話でも書こうかなぁと思いました。とりあえず、今日はここまで。
2008年12月08日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #9 図書館で… 謎の多い流行作家のサイン本を手に入れるという――最初の依頼を達成したオレは、四苦八苦しながらも完成した報告書を出しにローズマリー家を訪れ。そして、当分は食うに困らないだけの報酬を受け取ることができた。 ま、期待していた通りの結果だ。 それから、ブルック書店で売り出されたサイン本は、漏れなく回収され新品の本と交換された。サイン本がニセモノとわかって購入者達の間で一時は混乱したものの、エドワード出版社からのお詫びの品が効果を発揮して、数日後には収束。元の落ち着きを取り戻した。 もちろん、ブルック書店が強欲編集長に支払ったという多額のお金も全額返金され。 ほぼ一件落着。 ただ一つの謎だけを残して――。 * 数日後、オレは一冊の本を持って町の図書館を訪れた。 滅多に来ない場所で、よくは知らなかったが。とにかくその蔵書の数に圧倒された。 オレは、目的の人物が居るか司書の女性に尋ね、教えてもらった場所へ向かった。 ――しかし、名前を聞いただけで分るとは、どんだけここの有名人なんだあいつは・・・。 ホコリっぽい空気にくしゃみをしそうになるのを我慢しながら、オレはやっとの思いでそいつを見つけた。「ソーニャ」 名前を呼ばれて、棚の最上段にある本をとろうと爪先立ちをしていたソーニャは驚いたように肩をビクッと震わせ。慌ててオレのほうを見た。「シャ、シャトルさん? どうしてここに?」 オレは直ぐには答えず、まずソーニャが取ろうとしていた本を代わりにとってやった。「ほらよ」「あ、ありがとうございます・・・」「ちょっと話せるか?」「え、ええ・・・」 ソーニャは警戒するような目でオレを見ながら頷いた。 ソーニャに案内されて、オレはそのフロアの隅に置かれていた読書スペースにやってきた。「・・・それで話ってなんでしょうか?」「ああ、これをお前に渡そうと思ってな。ほら、受け取ってくれ」 オレは持っていた本をソーニャに手渡した。 それはサトルの冒険の最新刊だった。「・・・ど、どうして? これを私に?」 驚いた顔をするソーニャ。「お前、持ってないだろう?」「え? ええ・・・まあ」「だからだよ。オレ、二冊持ってるんだ。ポルカで社長さんから貰ったのとこの前送られてきた奴とで二冊」「あ、ああ。なるほどそれでですか」 ようやく納得した顔をするソーニャ。「うん、だから貰ってくれよ」「わかりました」 そういってソーニャは何気なく表紙をめくって見せた。 そして、「え――」 と絶句してオレの顔を見上げる。 オレは意地悪い笑みを浮かべ、彼女を見返した。 それに腹を立てたのか、直ぐにソーニャは普段の怒ったような顔をして表紙を開いたページをオレのほうに向けた。 そこにはメモが挟んであった。『こちらこそありがとう、先生。シャトル・ロックフォード』 「これ、どういう意味ですか?」 怒ったようにいうソーニャに、オレはメモを一瞥して、「見ての通りだよ」 と答えた。「・・・ほんとに良い性格していますねぇ」 と、呆れたようにため息をつくソーニャ。「世話になった感謝の気持ちを表しただけなんだけどな」「・・・悪趣味です」「そっか? ウケると思ったんだけどな」 オレはわざとらしくさも残念そうに肩をすくめた。「・・・ソフィール先生は、こういう悪ふざけは嫌いだと思います・・・」「そっか。それなら二度とこういうことはしないと誓うよ」 オレは真面目な顔をして頷いた。「お願いしますね。それから・・・」「ああ大丈夫、今後もソフィール・ニクスリャードは、何の気兼ねもなくサトルの冒険の執筆活動に勤しむことができると思うぜ」「・・・信じますよ?」 オレはもう一度頷いた。「大丈夫、オレもこの続きを楽しみにしているしな。中途半端に絶筆なんかされたら嫌だからな。野暮なことはしないさ」 そういわれて、ソーニャはようやく少し嬉しそうな、納得した顔をした。「それなら安心しました」「ああ、安心してくれ。オレもちょっとした疑問が解決してホッとしたよ」「それでこんなことを・・・」 ソーニャは心底呆れた口調でそういいながら、それでも口元では笑みを浮かべた。 今回の依頼で、普段憎まれ口しか利かない奴の意外な一面が見れて、少しだけ、得したような気がしたが・・・。 まあ、それもいうのも野暮という奴だろう。 「秘密の署名」the end
2007年10月28日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #8 救いの書 シルバームーン探偵事務所 ロンドシティに帰った翌日。オレは、プリシラん家に出すための報告書を書くことにした。 普段、報告書を書くのはファラの仕事なのだが・・・。帰って早々疲れているところに、プリシラと顔を合わせ文句を言われることは相当酷なことだと思い。こうして時間稼ぎをすることにしたというわけだ。 ちなみに一日ほど留守にした間。別件が舞い込んでいる――なんて淡い期待もしていたのだが、そんな夢みたいな話はなかった。「シャトルさん」 ファラに名前を呼ばれ、机から顔を上げと――腰のところに手を当てて胸をそらした格好でプリシラが立っていた・・・。「・・・って、うぉ!? 何しに来たんだお前!?」「何しに来た、じゃないわよぉ! 一日も事務所を留守にしてポルカシティに行っていたんですってぇ!?」 いつものような強気な口調――というか、これはもはや喧嘩腰といったほうが良いかも知れないが――で、プリシラが早速文句を言ってきた。「あ、ああ・・・」「どーして! プリシラを誘わないのよぉ!」「いや、だってお前学校もあるじゃないか・・・」「学校なんて、ソフィール先生に会うためだったら何日だって休んでやるわよぉ! ソーニャだって休んだんでしょ?」「ああ、そういえば・・・」 プリシラに言われて思い出したが、ソーニャも学生だった。この町にはロンド学園という学校が一つしかなく。だいたい17歳以下の未成年と見なされる奴らは学校に通うことになっているのだ。確かソーニャは17歳だったはずだ。「でも、あいつに関しては自分で行くと言い出したことだからな・・・」「ソーニャが自分で?」「そうだよ・・・」「ふぅん。珍しいわね・・・」「まぁな、そもそもポルカシティ行きを提案したのはあいつだったし、成り行きって奴だろう」「なるほどね・・・」 口ではそう言いながらも、プリシラはまだどこか納得していないことがよくわかる顔をしていた。「ところで依頼の件は良い結果を出せたんでしょうねぇ?」 ギクッ! プリシラの後ろに立っていたファラが、こっそり音を立てないように事務所を出て行った・・・。 ――逃げたか・・・。ここでそういう行動に出るとは思わなかったぞ。 だが、オレも覚悟を決めるときが来たようだ。「その件だが。プリシラ、実はだな・・・」「うん!?」 気体に満ちた目でオレを見るプリシラ。 ぐっ! これは別の意味でも厳しい状況だが、事実は事実として伝えるのが探偵としての務めである。「残念ながら――」 全てを言い終える前に、プリシラの顔が氷のように冷たいものに変わった。 このオレですら背筋に寒いものを感じてしまうプレッシャー・・・。「まさか・・・。ダメだったとか言わないわよね・・・シャトル?」 マジでやられるかも知れない・・・。 絶体絶命のピンチ。 しかし、救いの手は差し伸べられた。 どどど・・・っ! と、事務所の外から聞こえてきた足音。一瞬、誰か分からなかったが。部屋に入ってきたのは逃げたはずのファラだった。手には小包を抱えている。「シャトルさん、これを!」 そう言ってファラに渡された小包の差出人のところを見ると、エドワード社長からだった。持った感じでわかったが、どうやら中身は本のようだった。 慌てながら、でも無闇に包装紙を破いたりすることがないように包みを解くと。中にはサトルの冒険の最新刊が二冊入っていた。それと無地の白い便箋が一通。 それを開封すると、中にはエドワード社長からの手紙があり、こう書いてあった。 『シャトル君。君が期待したものを送らせてもらう。思いもかけず早くなったが、正真正銘 のソフィール・ニクスリャードの署名入りの本だ。君らが帰った後、直ぐ氏に事情を説明し たところ。わが社とソフィールの名誉を守ってくれた礼として、今回は特別に用意をしても らうことが出来た。なお二冊送ったうち、一冊は君にも持っていて欲しいと氏からの希望が あってのことだ。以後、二度と署名入りの本は世に出すつもりはないということなので貴重 な一冊となるが。どうか無闇に売ったりはされないように私からお願いしたい。 エドワー ド・クリスフィールド』「シャトルさん、もう一枚あるようですよ?」 とファラに促されるように、オレは二枚目の手紙を見た。 二枚目は、一枚目とは違う女物の字で短くこう書かれていた。 『ありがとうございました。 ソフィール・ニクスリャード』 * 二枚目の手紙と同じ筆跡で、確かに署名が入っているサトルの冒険の本を受け取ったプリシラは嬉しそうに家に帰って行き。命の危険が去ったオレは、ホッと胸をなでおろした。「やれやれ・・・一件落着か」「本当ですね」 相槌を打って自分の席に何事もなかったように座ろうとするファラを、オレはジトッと見ていった。「ファラ、お前さっき逃げ出そうとしたろ?」「ええ? まさかそんなことありません! 私は郵便が来ていたのに気づいてですね!」「ふぅん・・・そうかい」「そうですよ!」 だが強く言い返せない様子からしてオレの指摘は図星だったみたいだ。オレは内心ほくそ笑みながら。「ま、報告書の方はオレが継続して書くから。請求書の方は頼むな?」「ええ、わかりました」 頷くファラ。 気を取り直してオレも報告書の続きを書くか、と何気なく机の上に乗っていたもう一冊のサイン本に目を落とした。 ――借りができちまったな・・・。
2007年10月21日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #7 「サトルの冒険」 ニセモノのサイン本で私服を肥やそうとした編集部長のジロフと、その金をさらに持ち逃げしようとした秘書ギュスターは官憲に突き出され・・・事件は無事に解決――となれば良かったのだが・・・。 生憎そうはいかなかった。 なぜなら、そもそもオレがこうして隣町までやってきた目的は、人気作家のサイン本を手に入れてくるという目的を果たすためだったからなわけで・・・。 * 犯罪者の引渡しが済み、社長室に通されたオレたち。中には、エドワード社長とソーニャが待っていた。「お疲れさまでした。シャトルさん」 応接セットのソファに腰を下ろしていたソーニャが立ち上がる。「おう、お前も体大丈夫か?」「ええ、お陰さまで」「シャトルさん、どうやら姪だけでなく会社としても世話になったようで。私からもお礼を言わせて貰うよ」 エドワード社長も立派な椅子から立ち上がって深々と頭を下げた。「いえ、オレたちとしても悪い奴は見逃せなかっただけなので・・・」「ひゃ~、シャトルにしては意外な台詞!」 後ろでアイリーンが茶化すように言い、隣ではヒューの奴が真顔で頷くのが見えた。「立派です、シャトルさん!」 とファラはファラで、そっと目じりを押さえる始末。 ――あ~、もう勝手にやってくれ・・・。 オレはオレで本来の目的を果たすことにしよう。「社長さん、ところで今回のことでオレは恩を売ったと思うんだが・・・?」 社長は神妙な顔をしながら頷いた。「実はオレたちは目的があって、ポルカシティにやってきたんです」「ああ、ソーニャから話を聞いているよ。サトルの冒険のサイン本が欲しいということだったね?」「ええ、是非お願いをしたいです」「ふむ・・・」 社長はちらりとソーニャの方を見、社長と目が合ったソーニャは気まずそうに目を伏せた。「・・・残念ながら、ブルック書店への謝罪等の処置は直ぐにでも可能だが。今、君が言った要求に対しては、今すぐに返事をすることはできないな」「なぜです・・・?」「簡単に言ってしまえば、サトルの冒険の執筆者との契約でそういうことになっているということなんだ。ここで我々がごねて執筆者の機嫌を損ねてしまい、新しい本が発表できなくなれば社として損害も大きいし、ファンの方にも迷惑になるだろう?」 やはり一筋縄ではいかないか・・・。こういわれてしまっては退かざるを得ない。納得はできなかったが、最後に社長が言った。「ただ、何もしないとは言わない。私なりの努力はするつもりだ。機会を見て、話はしてみよう・・・それで構わないかな?」 という言葉に賭けることにした。 ――でも、望みは薄そうだな・・・。 * 出版社をあとにして。 当初から一泊をする予定だった宿でチャックインを済ませたオレたちは、残り少ない滞在時間、それぞれにポルカシティの夜を満喫することにした。 ヒューは、ナンパに繰り出し。 アイリーンは、買い物。 ファラは昔なじみに会いに出かけ。 ソーニャは本屋に行くと行ってしまい。 残されたオレは一人宿屋に残って、一階の食堂で食事をとりながらその片手間、出版社の帰り際に社長から渡されたサトルの冒険の最新刊を読んでみることにした。 考えてみれば、散々苦労をさせられたこの本についてオレは何も知らない。 まあ、良い機会だ。時間つぶしにも丁度良い。 初めはそんな軽い気持ちで、サンドウィッチにかぶりつきながら本を開いた。 ・・・1時間後。 オレはそれほど読書が好きな方ではないが。世間の評価に違わず、サトルの冒険は結構面白い本で、一気に読み終えることができた。 しかし、一通り読み終えて。本を閉じたオレは奇妙な感覚に囚われた。 ――なんだ、この物語は? 混乱のために上手く説明ができないが、この物語の主人公サトルにオレは親近感のようなものを覚えた。主人公を取り囲む環境や物語の内容の一部が、オレ自身がこれまで体験してきたによく似ているのだ。 とくにこの最新刊で、サトルの父親が突如理由を告げずに旅立っていくという下りは、つい先日、オレの親父が失踪したことと重なる。 冒険者見習いであるサトルの仲間について記述を読んでいると、何人かオレが知っている奴らの顔が浮かんでしまう。 美しい女を見れば恋歌を語る吟遊詩人。 キレイなもの目新しいものに目がない、派手好き遊び好きのシスター。 わがままな商人の娘。 何かと気苦労の耐えないエルフ・・・。 その一方で、覚えのない登場人物もいた。 子ども扱いしながらも困難にぶつかったサトルに的確なアドバイスをする宿屋の女主人。 普段はケンカばかりしているが、ここぞという時に助け合うサトルの親友の魔法使いの少年。 野獣に育てられた野生児。 そして、サトルに淡い恋心を抱いている控えめな性格の文学少女・・・。 社長がオレの指弾を見て言っていたコイン・ブレッドとかいう技に関する記述もあった。 ――これは偶然か・・・? ――いや、とてもそうは思えない・・・。 そんなことを思いながら表紙の作者の名前を眺めているうち、ようやくオレは今回の件の真相が、おぼろげに見えてきたような気がした・・・。 * 翌日。 オレたちは自分達の町、ロンドシティに帰るための辻馬車を待つため、馬車の停車場に立っていた――約一名を除いて。「良いんですかシャトルさん、このまま帰ってしまっても?」 不安そうな顔をするファラ。「しょうがないだろう? どのみちオレたちにできることは全部やった。あとはエドワード社長の働きに期待して待つさ」「それはそうですが・・・」 それっきり何も言わなくなったファラだが、その顔は渋々納得したという顔だった。「依頼のこともそうだけど、せっかくポルカまで来たんだからもっと観光とかしたかったなぁ・・・」 とアイリーンはアイリーンで、不満に満ちた顔をして口を尖らせていた。「おい、それよりソーニャはどうしたんだ?」 と、ヒュー。「ああ、帰る前に伯父様に挨拶をしていくって朝早くから出て行ったきりだ。馬車の時間は伝えてあるし。乗り遅れても、一本くらいなら待つけどな・・・」「そっか。それなら良いが・・・」「ところでヒュー・・・」 オレは笑いを堪えるような顔をしていった。「ん?」「お前、その真っ赤なほっぺたどうしたんだ?」「あー、昨日ナンパした女の子にひっぱだかれたらしいよ~」 ニヤニヤしながらヒューの代わりにアイリーンがいうと、ヒューは気まずそうな顔をして赤くなった頬を撫でながら。「・・・ポルカの女の子にはオレのよさは分らなかったらしい」 そう言ったが。オレには精一杯の強がりとしか思えなかった。「遅れてしまってすみません!」 間もなく待っていた馬車が到着しようという時、息を切らせてやってきたソーニャが合流し。オレたちは予定していた時間通りにロンドシティへと出発することが出来た。 帰りの辻馬車にゆられながら、オレはプリシラになんて報告をするかばかり考えていた・・・。どうしょうもないことだが、あいつを説得するのはかなり根気がいる。 そう思うと憂鬱だ。 しかし、そんなことを考えながらも、オレはいつのまにか居眠りをしてしまったらしい――。
2007年10月14日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #6 コイン・ブレッド「どけぇ!」 男の怒声と、悲鳴がエドワード出版社の編集室に響き渡った。 近くにいる人間を手当たり次第、押したり倒したりしながらひたすら逃げ続けるギュスター。 ソーニャを人質にしているのにも関わらず、その動きはなかなか機敏であり。倒れた人を避けるなどして、どうしてももたついてしまうオレたちは、なかなか追いつくことが出来なかった。「ファ、ファラ~、魔法で何とかしてくれ~!」 あっという間に息が上がってしまったオレがそういうと、後ろでオレ以上に息を弾ませた声でファラは返事した。「そ、そんな~! あんなに素早く動かれたら『地縛り』の呪文も掛かりませんよ~!」「じゃあ、ヒュー!」「・・・はぁ、はぁ・・・。お、お前より後ろにいる奴に何が出来るって言うんだよ・・・!」「あ、ああ、そっか・・・」「ち、ちなみにアイリーンは後ろで転んでいるぞ・・・」 言われてちらりと振り返ると、確かに山積みになった段ボール箱に頭から突っ込んだ形で倒れているアイリーンの脚が見えた。 ま、そもそも・・・。面倒くさがりで、運動が苦手で、おまけに履いているのが走り難いハイヒールであるアイリーンに、こういう場面での活躍は期待していなかったが・・・。 ――仕方ない。あんまり、やりたくなかったんだが・・・。 オレは上着のポケットに手を突っ込んで、そこから何枚かコインを掴むと、すぐさまその手を突き出すように構えた。「これでも食らえっ!」 バチュン! バチュン・・・!! と、オレが親指で立て続けに弾き出した数枚のコインは、銃弾のような勢いでギュスター目掛けて発射され――チュイン! と、その一枚が奴の後頭部に見事に命中した。「があっ!?」 頭の後ろに、骨を撃ち抜くくらいの衝撃を受けたギュスターは、たまらずその場に、ソーニャと共に倒れた。「きゃあ・・・!?」「お、今だ!」 逃亡者が倒れたのを確認し、ヒューは一気にそいつに駆け寄って倒れた上から飛び乗った。 大の男一人に背中に乗っかられたギュスターは、「ぐぇ・・・」と、ヒキガエルみたいな情けない声を上げて動かなくなった。「大丈夫か? ソーニャ?」 ヒューに続いて駆け寄り、ギュスターの腕で抱え込まれていたソーニャを助け出すオレ。「シャトルさん・・・! 怖かった・・・!」 ギュスターから開放されたソーニャは、よほど心細かったのか。いきなりオレの首に抱きついてきた。「ぐっ! 苦しい・・・!」 「あ? ご、ごめんなさい・・・!」 慌ててオレから、飛び上がるようにして離れるソーニャ。「な!? シャトルのクセに、美味しいところを!」「そんなこと言ってる場合か・・・。だいたいヒュー、そいつのナイフに気をつけろよ」「あ・・・。そっか、うっかりしてたな」 オレに指摘されて、ヒューは急いで気絶したギュスターの手からナイフを奪い取った。「ふぅ、これで一安心・・・かな?」 安堵の息を漏らすオレ――だったのだが・・・。「シャトルさん・・・!」 遅れてやってきたファラがすごい剣幕でオレの名前を呼んだ。「その技はやめてくださいと、あれほど口を酸っぱくして言いましたのに!」「え? あ、いや・・・だって、緊急事態だったし・・・」「緊急事態でも、お金を武器にするだなんて・・・罰当たりな行為です!」「・・・はい。すみませんでした」「直ぐに全部回収してくださいね?」「・・・はい。わかりました」 大活躍の余韻に浸る間もなく、オレは床に散らばったコインの回収作業を始めた。 ――はぁ、やっぱりやらなきゃ良かった・・・。 さっきの技は、いわゆる指弾って奴なんだが。親父が得意として使っていたものを見よう見まねで使っているオレの奥の手だ。しかし、親父ならばコイン以外の小石とか使っても百発百中なところ、オレだとコインで十発中三発も当たれば良いという悲惨な有様で・・・。とにかく一度やったら今のように数多く発射しなければならいため、あとでコインを回収するというお間抜けな状況が発生してしまうのである。 特にうちは今、経済危機的な状況でもあるから会計担当するファラによく思われないのは当然だった・・・。 ――早く、親父のように百発百中に的を狙えるようにならないとなぁ・・・。 そんなことを考えながら次のコインに手を伸ばそうとすると、スッと横から伸びた手がコインをまさに横取りした。「あ・・・?」 顔を上げると、品の良さそうな中年の、背の高い紳士が拾ったコインを微笑みながら、オレに返してくれた。「なかなか見事なものだったね・・・君の『コイン・ブレッド』」「へ? コイン・ブレッド・・・?」 首を傾げるオレ。「おや、知らないのかい? サトルの冒険シリーズの主人公サトルの得意技じゃないか」 紳士は意外そうな顔をしていった。「サトルの冒険・・・。いや、そもそもその本読んでないからな」「なんと! これは驚いたことだな・・・」 紳士は心底驚いたという顔をする。「あの、あんたは――?」「――おじ様!」 急にソーニャ声がしたかと思うと、ソーニャは嬉しそうにその紳士の腰に抱きついた。「おお、ソーニャ。久しぶりだな」 一層目を細くして紳士は、ソーニャの頭を優しく撫でた。「え・・・? どうなっているんだ?」「さぁ? おじさんっていったぞ?」 お互いに顔を見合わせ、肩をすくめるオレとヒュー。 そんなオレたちに気づいて、ソーニャはこちらを振り返った。「・・・あ、ごめんなさい。こちら私の伯父様です」 ソーニャに紹介され、紳士もオレたちのほうを向いて、ゆっくりお辞儀をして言った。「はじめまして、エドワード・クリスフィールドです」 その名を聞いて、オレだけじゃなく。ヒューやファラたちも驚きの声を上げた・・・。
2007年09月30日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #5 真犯人「ニセモノ? 何のことですか?」 怪訝な顔をしてオレたちを見る受付嬢。「いや、だからね――」 余計なことを言いそうなアイリーンの口をオレは咄嗟にふさいだ。「ム!? ムゥゥ~~!」 もがき抗議するアイリーンを、とりあえずヒューに押し付けてオレは誤魔化すように受付嬢に笑みを向けた。「何でもない。それよりもブルックさん、その時、誰と会ったか分かるかい?」「え? えーと・・・。編集部のジロフ部長ですね」 来客名簿を指差しながら受付嬢は言う。「その人、今いるかい?」「はい、出社しておりますが・・・?」「是非、会わせてください!」 カウンターに乗り出すようにそう訴えるソーニャに、目を丸くした受付嬢はコクリと頷いた。 *「どうぞ・・・。こちらへ」 編集部長の秘書と名乗る黒服姿の男に通された部屋は、贅を尽くした調度品の目立つ豪華なところだった。 オレたちが現れ、樫でできた立派な仕事机に向かっていた部屋の主――ジロフという名の男が顔を上げた。 少々太めの体形に、下品な口ひげを生やした嫌味な目をしたおっさんである。「ほう、随分若いお客さんだな」 おっさんは、来客のオレたちを探るような目で見た。「私に何の用だね?」 こちらとしては腹の探りあいをする気など毛頭ない。単刀直入に用件を切り出すことにした。「先日、こちらにロンドシティの書店の店長が見えたと思うのですが。その時の会見の内容を教えていただけると幸いです」 その一言でおっさんの表情が凍る。「わ、私は、そんな奴と会った覚えはない!」 明らかに怪しい態度をしているのに、それでもシラを切ろうとするのだからある意味立派なものである。「・・・あんたが2週間前にその人と会っているのは、既に下の受付で確認済みだ」 目で威圧するオレに、おっさんは震え上がるようにしていった。「知らん! ブルック書店の店長など、私は知らんぞ!」 そう叫んでしまってから、おっさんは自分でも自らの失言に気づいた顔をする。「あ・・・」「今、ブルック書店って言ったな」 後ろでヒューが呟いた。「言った! 言った!」 はやし立てるようにアイリーンが言う。 おっさんの顔からは、血の気が失せていた。「もう言い逃れは出来ないぞ・・・。さっさと白状しちゃえよ?」「う、うう・・・」 恨めしそうに睨むおっさん。 と、その時だった――、「シャ、シャトルさん・・・!」 悲鳴のようなソーニャの声に、慌てて振り返ると。なんと、秘書の男がソーニャの背後から首に腕を回し、別の手に握り締めたナイフをこちらに向けていた。「ああ!? ソーニャさん!?」 驚いた声を上げるファラ。 声は上げないがオレもこの予想外の事態に戸惑った。「ちょっと何するのよ!」 秘書に対して抗議するアイリーン。 そのアイリーンに向かって、秘書はナイフを一度ちらつかせて、「近寄るな・・・」 と低く、迫力のある声でそう言った。 その瞬間に、だいたいの事情をオレは察した。 ――どうやら真犯人を見誤ったみたいだな・・・。 オレは内心舌打ちをした。「おお、よくやったぞギュスター!」 部下の手柄を喜び秘書のほうへ近寄ろうとするおっさん。しかし、ギュスターと呼ばれた秘書は、上司にもその刃を向けた。「部長、あなたも動くんじゃない・・・」「な、なんだと!?」 心底ビックリした顔をするおっさん。その姿は実に滑稽であり、同時に哀れだった。 ――正真正銘の小悪党だな。「お前は私の部下のはずだろう? なぜ、そんなことを言う?」「あんたも騙されていたんだよ。その男に・・・」 狼狽するおっさんを諭すようにオレは言った。「騙す? 私を・・・?」「そうだよ。あんた達は、ブルック書店から大金を積まれてソフィール大先生のサイン本を頼まれたが、所在不明の大先生からサインを貰うにはエドワード社長がいなくてはならない。だが、社長がいない今、あんた達は実にいい手を思いついた。ニセのサイン本を用意して大金をせしめようっていうな。どうせ、ロンドシティという小さな町のみで売られるもの。今後も表沙汰になることはないだろうと甘く見たな・・・」 おっさんは何も答えられず息を呑んだ。ヘビに睨まれたカエルみたいに。「けど、どうやらその計画を立てたのはそのおじさんじゃなくて、この男みたいだな?」 ヒューの言葉にオレは頷く。「ふん・・・。あと少しで金を持ち逃げできるというところで。尻尾をつかまれたか・・・」 ギュスターはいう。「金を持ち逃げだと? あれは私のものだぞ!」 金という言葉に反応しておっさんが叫ぶ。 それを嘲笑うようにギュスターは言った。「馬鹿が、あの金は全て私がいただいた・・・。お前の隠し金庫の有り金も全てな」「な、なんだと!? どういうことだギュスター!?」「あなたには気の毒だが、元々、私の目的はあなたが後生大事に密かに貯めこんでいた金だったのさ。だが用心深いあなたは、私にも金庫の場所を教えなかった。そこでブルック書店から金を騙し取るようそそのかせば。そうして新たに得た金を隠しに金庫に行くと思ったんだが。案の定、あなたは金を隠しに金庫の場所へ向かった・・・。しっかり付けさせてもらったよ」 得意満面な顔をするギュスター。「おのれ~! 返せ、私の金を!」 飛び掛るおっさんの腕を、ギュスターは躊躇いなくナイフで切りつけた。 真っ赤な血しぶきが絨毯に、ポタポタと落ちた。 呻くおっさんにオレたちの注意が向いたのを確認して、ギュスターはソーニャを抱えたまま部屋から逃走した!「逃げたぞ・・・!」 と追いかけようとするヒューを、オレは呼び止めた。「ちょっと待てヒュー一人で行くな。アイリーン、おっさんの治療を!」「え~? しょうがないな~」 露骨に嫌な顔をしながら、アイリーンは治癒魔法を使っておっさんの腕の傷を治した。 普段の様子からは想像できないが、アイリーンの治癒魔法の腕は町で1、2を争うほどのもので、一瞬にしておっさんの傷口が跡形もなく塞がった。「す、すまない・・・」 力なく答えるおっさん。「死なれたりしたら後味が悪いからな、ちゃんと後で罪は償ってもらうぜ?」 おっさんは無言で頭を垂れた。「シャトルさん、早くソーニャさんを助けないと!」「わかってるよ!」 ファラに急かされるようにオレたちはギュスターを追いかけた――。
2007年09月17日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #4 謎の作家 エドワード出版社――。 ポルカシティ最大の出版社とソーニャがいう社屋は、とても大きく。確かにそういうのも頷けるものだった。 だがその威風堂々とした社屋の佇まいに臆することなく。慣れた足取りで先を行くソーニャ。彼女に続いて、オレたちもその建物に入った・・・。「お早うございます」 とエントランスの受付嬢が、完璧に作り上げた満面の笑顔でオレたちを出迎えた。「どのようなご用件でしょうか?」「えーと、こちらで出版されている本の作者の方にお会いしたいんですが・・・?」 ダメもとでそう尋ねてみると。「どなたでしょうか?」 意外とあっさりな答えにかえって戸惑いながらオレは、例の作家の名前を告げることにした。「えーと、ソ――」「それよりも社長のエドワード氏にお目通りお願いいたします」 言いかけるオレを遮るように、ソーニャが早口で受付嬢にまくし立てた。「社長ですか? 申し訳ありません、社長はただい長期出張中につき不在でして」「長期出張?」「はい。3週間ほど様々な町をまわることになっています」「あら、いつからですか?」 ファラが尋ねると、受付嬢はスケジュール帳を開いて確認してから。「えーと、丁度3週間前です」 と答えた。「それじゃ、戻ってきているんじゃないの?」 首を傾げるヒューに、受付嬢は困った顔をする。「いえ、先ほど申し上げたように3週間ほど、としか窺がっていないので。1週間くらい予定が長引くことは充分にございますし。今までにもそういうことがございました」「なかなかルーズな社長さんなのね~」 アイリーンは苦笑しながらいった。「あの、事前に会うお約束はされていましたか?」「いいえ。約束はしていませんが・・・」 ソーニャは唇を噛むようにして難しい顔をする。「なあ・・・。やっぱり直接、その先生に当たった方がいいんじゃないのか?」 とオレがソーニャにいうと、彼女は困惑した表情で首を横に振りかけた。 そして、それを聞いた受付嬢が首を傾げる。「先生というのは、どなたですか?」「えと、ソフィールとかいう人なんだけど・・・」「まあ! サトルの冒険のソフィール・ニクスリャード先生ですか!?」 驚きの声を上げる受付嬢の反応に、こっちまで少し驚いてしまった。「え? なに? 知っているの?」「知っているも何も、当社の看板作家! コホン・・・の方でございますから」 興奮した口調を咳払いでごまかして受付嬢はいう。 ――そうか、看板作家なのか・・・。「じゃ、居場所教えてくれないかな?」 そういうと、受付嬢は再び困った顔をする。「え? ・・・いえ、それはちょっと難しいご相談ですね」「どうして?」「まず、第一に作家の方のご住所などは社外秘となっておりますので、明かせるものではございません」「あ、そりゃそうか。じゃあ、オレたちが会いたがっていると伝えてもらうってことは出来るのかな?」「申し訳ありませんがそれもできません」 受付嬢は残念そうに首を横に振った。「そうなの?」「ええ、他の先生の方でしたらそれも可能なのですが。ソフィール先生の情報に関しては、社内でもごく限られた者しか知らされていないのです。ですから私にはわかりません」「限られた者というと?」「社長だけと聞いています」「あれ? 編集をしている人も知らないの?」 不思議そうな顔をするヒューに、受付嬢は頷く。「何でもソフィール先生は、あまり表に出たがらない方だそうで。連絡のやり取りすべてを社長とのみ行っているようなのです。原稿も一度社長宅に送ったものを社長が直々に編集に渡すという感じなんです」「もしかして、社長さんがペンネームで書いているんじゃないの?」 と、鋭いことを言ったのはアイリーンだった。 オレ自身も、今までの話を聞いてそう思いかけていたのだが――受付嬢はあっさりとその推理を否定した。「いいえ、それは違うと思います。実は、私もそう思って、編集担当の知人に原稿を見せてもらったんですが。その筆跡がどうも女性のもののようで。とても社長が書いたものとは思えませんでした」「あら?」「そうすると、やっぱりその作家先生は別に存在するわけだよな」「そうだな・・・」 ヒューに頷くオレ。 八方塞がりのお手上げ状態に、オレは頭が痛くなった。 ――ここはやはりソーニャが最初にそうしようとしたように社長さんの帰社を待って、直談判するしか手がなさそうだ。 そんな風に考えていると、受付嬢が言いにくそうに尋ねてきた。「あの、皆さんはソフィール先生にどのようなご用件があったのでしょう?」「え? ああ、実はオレたち、ロンドシティの人間なんだけど。そこのブルック書店って分かる?」「ロンドシティの、ブルック書店ですか?」 受付嬢は何かを思い出したように、パラパラと来客名簿を確認し・・・程なくして目的のページを見つけていった。「あ・・・、2週間前に店主のブルック様が当社にお見えになりましたね」 ――2週間前?「2週間前なの?」「はい? そう、こちらに記録されています」 と受付嬢は、名簿のブルックさんの名前が記入されたところを見せてくれた。「なあ・・・、これって妙な話じゃないか?」 名簿の日付を眺めながらオレは、ソーニャやヒューたちに言った。 でも、最初はみんな不思議そうな顔をするばかりでオレが気づいたことには、誰も気づいた様子はなかった。「何が?」 首を傾げるヒュー。「だって、2週間前だぞ。その時は社長さんいないはずだろ?」「あ・・・なるほど! その通りですね」 オレに言われてソーニャも理解をしたようだ。「社長さんは3週間前から出張だったんだもんね・・・。でも、それがどうしたの?」 察しの良いソーニャとは違い、アイリーンはまだ理解できないという顔をする。 仕方ない、そういう人間に勿体ぶった説明をするのが探偵の役目だ。「いいか、おそらくブルックさんは2週間前に例の依頼をしていったはずだ。だが、肝心のソフィール先生とコンタクトが取れる社長が不在だったらどうなる?」「あ・・・。依頼できないですね!」 と、アイリーンとは別にファラがようやく納得したという声を上げた。「そう。でも、実際にはブルック書店ではサイン本が売り出された・・・と。これはおかしな話だ」「確かに、な・・・。じゃ、もしかしてブルック書店で売り出されたのは?」「ニセモノなの~!?」 素頓狂な声を上げるアイリーンに、オレは確信を持って頷いた・・・。
2007年08月25日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #3 隣町へ「まったく相変わらず無茶なことをいってくれる奴だ・・・」 妹を連れて帰って行く、今回の依頼人――いや、命令者か――のプリシラを見送ってオレはため息をついた。「でも、良かったのではありません? 依頼されたんですから」 とソーニャが慰めの言葉をかけてきた。「けどよ。どこの世界に買い物のおつかいを依頼として引き受ける探偵がいるんだよ? 迷い猫の捜索ならまだしも・・・」「ちゃんと、ここにいるではないですか」 ポン! とソーニャはオレの背中を軽く叩いた。「オレかよ?」「言い難いのですが。シャトルさんはジェイドさんよりも探偵としての力は劣るのでしょう?」 ――ほんとに言い難いことを、ズバッと言ったなぁ。「だから今は、仕事に対して選り好みなんてできる立場じゃないです!」「・・・んなことはわかっているよ」 オレはため息をついた。「大丈夫、私も協力して差し上げます」「へ?」 オレは驚いた顔をしてソーニャの顔を凝視した。「な、何ですか。その信じられないものを見たというような、間の抜けた顔は・・・?」「いや、本当に信じられないんだけど・・・」「どうしてですか?」 ――どうしてといわれてもなぁ・・・。 普段のオレに対して冷淡な態度ばかり取る相手が、急に「協力する」なんて頼まれてもいないことを申し出るなんて、驚き以外の何ものでもない。 だがそれを正直に言ったら、何をされるかわかったものではない。「あー、いやなんでもないよ。むしろ助かるよ。よろしく頼む!」「・・・!?」 オレはソーニャの手をぎゅっと握った。 やってしまってからやり過ぎたかと思ったが。ソーニャは、目を丸くして慌ててオレの手を振り払い顔を背けた。「・・・どうした?」「な、何でもありません! シャトルさんの力が強くてビックリしただけです!」 顔を真っ赤にしてソーニャは怒鳴った。「はあ・・・?」 ――そんなに怒ることか?「それで・・・これからどうするのですか?」「そうだな・・・」 と考え込むオレ、ふとあることを思いついた。「なあ、ソーニャお前はサイン本は買っていないの?」「え?」 ソーニャは虚をつかれた表情を見せた。「私ですか?」「ああ、もしお前が持っているなら。それを譲ってもらえれば万事解決なんだけど?」 冗談めかしてそういうと、ソーニャは困ったような顔をした。「・・・いえ、私はサイン本は買っていないんです」 意外な答えだった。「あれ? そうなの?」「え、ええ・・・」 ソーニャは申し訳なさそうな顔をして頷いた。 その様子を見ると、どうやら取られるのが惜しくてうそをついている訳ではなさそうだった。 ――しかし、それにしては妙な話である。 本の売れ行きまで気になるお気に入りの作品なのに、サイン本を持っていないなんて――あくまで本の中身が好きなだけであって、サインとかには興味がないということなのだろうか?「・・・こうなりゃ仕方ないな」「何かいい案を思いつきました?」「いや、ぶっちゃけてしまえば。その作家の先生に直接サインを頼むしかないんじゃないのか?」「え――!?」 オレの提案に、ソーニャは絶句するほど驚いた顔をする。「どうした? 何かまずいか?」「い、いえ・・・そういうわけではないですが。ただ、ソフィールという方は滅多に人前には出ないことで有名な作家だと聞いていますから・・・。第一、お住まいを知っている人もごく限られた人だそうですよ」「そうなの?」「ええ。ですから、サイン本の人気が高かったのかもしれませんね」「そっか・・・。じゃ、隣町の出版社に当たるしかないな」「そうですね・・・」 オレの提案に、ソーニャは今度は頷いた。 * ロンドシティから南へ辻馬車を使って半日――。 そこが「サトルの冒険」など他多数の本を発行している「ロード出版社」がある隣町、ポルカシティである・・・。 「着いた~!」 半日も狭い馬車の中で窮屈な思いをしていたオレは、外へ出るなり大きく伸びをした。 オレに続いてソーニャと、ファラ、それから遊ぶことを目当てに勝手についてきたヒューとアイリーンが馬車から降りる。「あ~、肩がこるわ~。これだから辻馬車は苦手なのよ」「まったくだな。時々、石に乗り上げるかして跳ね上がるもんだから。腰も痛くなったよ」 ――勝手についてきておいてこの二人は・・・。 思わず拳を握り締めるが、何とかそれを振るうのは堪えた。「はぁ~、それにしても私たちの町とは違って随分と大きな建物が目立つ町ですね~」 背の高い建物を見上げたり、辺りをキョロキョロするファラの様子は田舎者丸出しだ・・・。 ――まったく恥ずかしい。 しかし、確かにロンドシティに比べて、このポルカシティは大きな建物が目立つ町だ。 元々、このポルカシティがあった場所は、町々を結ぶ街道の辻になっていた場所だと聞いている。そこにまず宿場町ができ、やがて行き交う人々の文化交流する中継点として急成長をなしたのだ。 だからこの町には、音楽学校やコンサートホール、劇場など文化施設が多数存在する。 ヒューやアイリーンが好むのも無理はないという感じだ。「で、問題の出版社というのはどこにあるんだ? せっかくだからオレも付き合うぜ?」 ヒューがいうと、アイリーンも乗り気顔で手を上げる。「あ。私も行きたいな~。サトルの冒険を出している出版社なんでしょ?」「お前らなぁ、遊びに来たわけじゃないんだぞ?」「そうですよ~。プリシラさんの妹さんのためにも、是非ソフィール先生のサイン本を手に入れなくてはいけません」「はーいはい。で、行くのはいいけど、その出版社はどこにあるの?」 首を傾げるアイリーンに、少し離れたところでソーニャがオレたちを呼んだ。「皆さんこちらです。着いてきてください!」 と、急ぐように先を行くソーニャに、オレたちは慌てて続いた――。
2007年08月18日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #2 依頼人、現れる「びえ~~~ぇん!!」 と、ブルック書店の前で、吹き上げる噴水のごとく涙を流していたのは、一瞬、プリシラかと見間違えるほど派手だが、身なりの良いドレスを着た10歳くらいの少女だった。 その少女の前には、おろおろとした様子の店主のブルックさんが立っていた。「行ってみるぞ!」「え? ええ?」 訳のわからないという顔をするソーニャの手を引っ張って、オレは少女とブルックさんのところにすぐさま駆けつけた。「ダメじゃないか。ブルックさん、こんな可愛らしい女の子を泣かしたりしたら!」 半分は冗談のつもりでそんな風に声を掛けると、遠巻きにしか二人の様子を見ていなかった通行人の目がブルックさんに冷たく刺さった。「じょ、冗談はよしてくれないか、シャトル君!」 ブルックさんは周囲の視線に耐えかねて、悲鳴に近い声を上げた。「わりぃわりぃ」「人が悪いですよシャトルさん」 と腹を立てたソーニャが、オレの頬を爪を立ててつねった。「痛てぇ!」 ほんとの悲鳴を上げるオレを無視して、ソーニャは少女の前にしゃがみこんでハンカチで涙でくしゃくしゃになっていた顔を拭いてやった。「良かったら、私にあなたが泣いていた理由を教えてくれませんか?」 とても普段オレに対して見せる態度とは違う、優しい態度でソーニャは少女に尋ねる。 それが功を奏したか、少女は次第に落ち着き泣き止んだ。「ひっく、ひっく。あのね、あのね・・・。本を買うようにお願いしていたお父さんがお寝坊したから、『サトルの冒険』の最新刊が買えなかったの~。ひっく」 少女は言う。「サトルの冒険?」「今日発売された小説ですよ」「あー、例の奴か」 オレが頷くと、ブルックさんが言う。「そうなんだよ。丁度、この娘の前で売れ切れてしまってさ」「あらら・・・じゃ、次に入ってくるのを待つしかないな」「やだ!」 少女は即答した。「今日、読みたいんだもん!」 ――このわがままっぷり、どこかで見たことがあるような・・・。「やだって言ってもなぁ・・・」「まだ他のお店には残っているのではないでしょうか?」 と提案するソーニャだが、少女はぶんぶんと頭を横に振った。「他のお店のじゃダメなの!」「なんでだ?」 首を傾げるオレに、ブルックさんが困り顔で説明をする。「それが今日ここで売り出した本には、すべて作者であるソフィール先生の直筆署名が入っている限定サイン本だったんだよ」「え?」 と驚いた顔をするソーニャ。 ――こいつ、知らなかったのかな?「サイン本?」「そう実は今年でこのブルック書店は30周年を迎えてね。何かそれを記念したイベントを考えていたところに・・・。丁度、サトルの冒険シリーズの10作目が発売されると聞いたものだから。隣町の出版社に頼み込んでなんとかソファール先生のサインを入れたものを300冊用意してもらったんだよ」「サンビャク・・・。そりゃ、その先生も大変だなぁ・・・」「まぁな。でも、こっちもサイン料として多少のものを払ったわけだし。嫌な顔はしなかったんじゃないのかな」「なるほどね。で、君はサイン本を狙っていたというわけか」「うん・・・。お父さんにお願いしてたの。でも昨日遅くまで仕事が忙しくて・・・ひっく、ひっく」 再び泣き出そうとする少女を、慌ててオレとソーニャは宥めた。「しかし、参ったなぁ・・・。その先生に直接お願いするのが一番なんだが・・・」「そうですね・・・」 呟くオレに、ソーニャも難しい顔をして頷く。「・・・お兄ちゃん達なんとかしてくれるの?」「うーん、何とかしてやりたいけどなぁ」 あいまいに苦笑するオレ。 だが少女は、すがれるものであれば藁でもすがりたいという顔をして、オレの服をぎゅっと掴んだ。うるうると潤んだつぶらな瞳がオレを捉えて放そうとはしなかった。 ――ぐっ、これは断りづらい・・・。 と断ることも、といって安請け合いするわけにもいかず。途方にくれていると。「あっれ~? シャトルじゃないのぉ」 と聞き覚えのある生意気そうな声がした。「え?」 声のしたほうを見ると、やはりプリシラだった。「プリシラ、どうしたんだこんなところで?」「プリシラは妹を迎えに来たのよぉ」「妹?」 内心答えが予測できたものの、反芻するように尋ねると。 プリシラはつまらなそうな顔をして、オレの服を掴んでいた少女を指差した。「その子よ」『ええ!?』 オレとソーニャは同時に驚きの声を上げた。「お前、妹いたのか?」「知りませんでした・・・」「いたの。もっともパルフェは読書が好きで滅多に家から出てこないからねぇ。会ったことなくても不思議はないわねぇ」「そっか・・・」「うん。でも、今日お父さんがうっかり頼まれていた本を買いに行くのを忘れてねぇ。それで朝、慌てて飛び出してきちゃったのよぉ。まったく心配したんだからねぇ?」 そういってプリシラは、妹のパルフェちゃんを叱るような顔をする。 ――意外だ。ちゃんとお姉さんやってるじゃないか。 喋り方は妹の方がしっかりしている気がするけど・・・。「ごめんなさ~い。お姉ちゃん・・・」「もう、いいわぁ。で、本は買えたの?」「ううん~」「買えなかったの?」「うん・・・」 しょんぼりと頷くパルフェに、プリシラは困った顔をする。「じゃあ、プリシラと他のお店に回ってみよう?」「・・・うん」「いや、待て。他の本屋の奴ではダメなんだってさ」 オレは慌てて二人を止めた。「はぁ? そうなの?」「うん・・・。ソフィール先生のサイン・・・」「サイン? あー、そういえば昨日言っていたわねぇ・・・。でもその本は・・・」 プリシラは納得した顔をし、直ぐに困った顔をする。「そ。売り切れたんだって・・・」 オレがそう伝えると、プリシラはしばらく考えてからとんでもないことを言ってきた。「そうだわぁ。シャトル! あんたまだ依頼を探していたでしょ?」「は? ああ・・・そうだけど」 嫌な予感がした。「じゃあ、可愛い妹と可哀想なあんたのために、プリシラが依頼してあげるわぁ~!」「まさか・・・サイン本を手に入れて来い、とか?」「ふふ~ん。察しがいいじゃない?」 プリシラは小悪魔的な笑みを浮かべて断言した。「これは依頼――、いや命令よぉ! サイン本を手に入れてきなさい!」
2007年08月12日
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「探偵狂想曲・秘密の署名」 #1 人気ある小説 シルバームーン探偵事務所の所長代理になってから、既に二週間が過ぎようとしていた。 懸命の広報活動もむなしく、未だに一件の依頼も来ない・・・。 もっとも親父が所長だった頃も、そう頻繁に依頼が来ることはなかったのだが・・・。 何しろ、わが町ロンド・シティは、ついこの間の博物館盗難事件が起こる以前だって、それほど多くの事件が起きたことがない平和な町なのだから・・・。 そういった意味では、この町の自警団は優秀だといえるだろう・・・盗難事件の件で、未だに親父を疑ってなければ、今までの功労を労って表彰してやったって良いくらいだ。「・・・はぁ、暇だなぁ~」 所長代理に就任したと同時に新たに購入した自分の机に頬杖をついて、オレはため息をつく。「シャトルさん、だらしがないですよ。依頼人が来たらどうするんですか?」 と、ファラがやんわりした口調で窘めてきた。「そうはいってもファラ~、依頼人なんて来る兆しもないじゃないか?」「・・・それは、そうですけど。でも、皆さんにも困った人がいたらうちにまわしてもらえるようお願いをしているのですから、いつ依頼人が来てもいいように常に心構えをしておきませんと」「そうは言っても・・・もう、二週間だぜ? 宣伝や事務所の模様替えや、親父が残した資料の整理なんかで、ま、一週間は仕事をしたようなもんだけど。あとの一週間は何もしていないで一日中、椅子に座っていたようなものじゃないか」「ええ、まぁ・・・そうですね」 オレの言い分にファラも困った顔をする。 ――困らせるつもりはなかったんだけど、な。「あー、またビラ配りにでも行くかなぁ・・・」「それは・・・ダメです」 ファラは申し訳なさそうに言った。「何で?」「実は・・・先々週作った広告でお金が残っていなくて・・・」「・・・マジかよ?」 オレは呆れた顔をした。「ええ、直ぐに依頼が来てお金が入ると思っていたのですが・・・考えが少し甘かったみたいです・・・」 とファラは落ち込んだ顔をした。心なし、エルフ独特の先の長い耳も垂れ耳ウサギみたく垂れ下がっているように見える。「はぁ・・・じゃ、あとは口コミしかないか」「・・・そうですね」 と、重い腰を上げるオレに釣られてファラも立ち上がろうとする。「ファラはここに残ってな。誰か来ないとも限らないだろ?」「え? あ、そうですか・・・?」「ま、適当に困っていそうな奴を捕まえてくるからさ。いつでもお茶が出せるように準備でもしておいてくれよ」「はい、わかりました」 少し元気を見せたファラに見送られ、オレは外へと飛び出した。 * ――しかし、しばらく町の中を歩いていても困っていそうな奴にはなかなか遭遇はしなかった・・・。 まったくいないわけじゃなく。途中、ばあさんの重たい荷物を運んでやったり、迷子を家まで送り届けたやったりなんてことはあったのだが。その程度の人助けで金をせしめようなんてせこいことは思わない。(ばあさんは、お駄賃をよこそうとしたけど、それは断った) そんな感じで、オレは町の北側にある多くの店が立ち並ぶ、ノエラ通りに差し掛かった。 そこで結構な数の人間がぞろぞろと歩いているのをオレは目撃した。 よくよく観察すると、皆一様に同じ包みを小脇に抱えているのがわかった。 ――あれは「ブルック書店」の包みか。 ブルック書店は、ロンド・シティで一番といわれている人気書店である。とにかく蔵書の数で他を圧倒し、マニアックなジャンルの本も数多く扱っているので、オレもたまーに推理小説を買うために利用することもある店だ。 ――なんか人気の本でも売り出したのか・・・? そんなことを思いながらあたりを見回すと、ふと見覚えのある後姿が目に入った。 ――あれは・・・? 近づき確認すると、それはソーニャだった。 ブルック書店の外壁に張り付き、人目を忍ぶように店から出てくる例の包みを抱えた人々を、ただじぃっと観察しているみたいだが・・・。 その後ろ側に立っているオレに、丸見えだった。 一瞬、声を掛けようか迷ったものの、好奇心が働きそっと近づいてその肩に触れた。「――ひゃう!?」 奇妙な、しかし押し殺した声を上げて、ソーニャはその場で飛び上がった。思いのほか激しく驚いたその様子に、オレまで目を丸くしたほどだった。「・・・あ、シャトルさん!? どうしてここに!?」 オレを確認したソーニャは、やはり押し殺した声でそういった。「いやぁ、この二週間依頼がなくてさ。どこかに依頼人になってくれそうな人はいないものかと思って、町を巡回中だったんだが・・・。たまたま、お前を見つけてさ」 ソーニャに釣られてオレも押し殺した声で説明する。「もう! 心臓が止まるものかと思いましたよ!」「悪い悪い。でも、お前。こんなところで何やってるんだ?」「べ、別に何でもありません!」 眉を吊り上げ、顔を真っ赤にしてソーニャは小声で叫んだ。「妖しいな・・・」「あ、妖しくなんかありません!」 明らかに動揺をしているし――オレは疑う目でソーニャを見た。 さすがにシラを切り通すのは不可能と悟ったのか。ソーニャは程なくして、ようやく説明を始めた・・・。「じ、実は・・・今日売りに出された小説があるんですが・・・」「小説?」「はい。そ、その・・・。わ、私がとても大好きな作品で。私以外にどんな人が購入しているのかが少し気になって・・・。そ、そういうことってありませんか?」「あー、あるな」 オレが頷くと、ソーニャはわが意を得たりという顔つきになった。「そうでしょう? 図書館とかでも、私の前に借りられていた本とか。先にこれを読んだ人はどんな人だろう? 私の次に借りる人はどんな人だろう? って、気になるものです。それでその・・・」「なるほどな」 オレはすっかり納得した。「納得していただけたようで、安心しました」 ソーニャはすっかり落ち着いた様子で微笑んだ。 ――そんな時だった。 ブルック書店の方から、女の子の泣き声が聞こえてきた。
2007年08月11日
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休暇のお知らせです。二週間ほど更新お休みします。実質、小説二本分ですが。一応、「探偵狂想曲」の冒頭部分は終わったので、これからはいよいよ本文に入っていくわけなんですが。ま、どーなることでしょうか。えー、それと久々に絵を載せてみます。鉛筆で走り書きしたもので、適当ですとくに右下の娘がwもーちょっと頑張ってデザインしようかなと思いましたwでは、みなさんお元気でw
2007年07月23日
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「探偵狂想曲」 #18 最悪からの始まり ・・・その後のことは、胸糞が悪くてあまり思い出したくない。 ただ言えることは、親父の行方はとうとう分からずじまいであったこと。 そして、失踪しているのをいいことに自警団は、依然として盗難事件の重要参考人として決め付けて、改めようとはせず。 そればかりか、犯罪者の可能性のある人間が経営する事務所は、業務停止すべきというむちゃくちゃなことを要求してきた。 が、この業務停止という要求に対しては、さすがにオレは猛反発をした。 理由はいろいろあるが、その中でも最大のものは親父の残した手紙の内容である。 そう――、事務所を潰したら・・・親父のお仕置きが待っているのだ。 それだけは何としてでも避けなければならない! そんなオレの必死の訴えと。レイやウィルの口添えもあって、何とか業務停止という処分は免れたシルバームーン探偵事務所。 しかし、処分は免れても事務所の立ち行きは決して明るいものではなかった。 所長が窃盗犯――という汚名のために、町での探偵事務所の評判は今や地に落ちてしまっていた。このまま信用を失い、閑古鳥が鳴き続けたら結果的に事務所の存続は危うい。 このオレが、親父不在の跡を所長代理として引継ぎ、事務所を維持していかなければならなくなってしまったのである。 *「・・・ってことで、恥を忍んで頼む! みんなの力を貸してくれ!」 集まってくれたいつものメンバーに対し、深々と頭を下げるオレ。自慢じゃないが、オレが頭を下げることなんて滅多にないことだ。「私からもお願いします!」 ファラも一緒になってみんなに頭を下げた。「そんな・・・! ファラさんまで頭を下げなくても協力するよぉオレは。あなたのためなら、このヒュー・セイアーズ・・・例え、火の中水の中っ!」「しょうがないわねぇ。情けないシャトルのために、プリシラも手を貸してあげるわぁ」「およ。それじゃあ、ボクは事務所が繁盛するような発明するね!」 と、この個性の強いメンバーの中でも特に自己中心な奴らが真っ先に言い出したからではないと思うが。他のメンバーも迷うことなく協力に応じてくれた。「・・・しかし私は、立場上。いつも協力するというわけには行かないのだが。ま、あまり期待はするなよ?」「ボクも、基本的に君の事はライバルだと思っているのでね。当てにはしないでくれたまえ」「ああ、そのつもりだよ・・・」 いつからライバルになったんだ・・・。 とウィルに対しては、内心舌を出すオレ。「ま、今後も優先的に、シルバームーンへ仕事をまわしてやるよ」 とロヴィン。今後もハミングバードにはお世話になりそうだ。「おう、助かるよ」「だが、自分でも宣伝なりなんなりしろよ」「・・・わかってるって」 きっちり釘を刺されて、苦笑するオレ。「あ、じゃあ私、宣伝を手伝ってあげるわぁ! きわどい衣装着てチラシを配るの。効果あると思わない~?」「いや、服は普通の奴にしてくれ・・・」「え~、いいじゃないの。ソーニャとマリノも一緒に宣伝しよ?」「わ、私ですか? 私は、そのアイリーンさんのような服は似合いませんから!」「アタシだって! なんで恥ずかしい格好しなきゃならないんだよ!」 耳の先まで真っ赤にして首を振るソーニャとマリノを見て、アイリーンはクスクスと笑った。「お兄ちゃん。ボク、頑張ってお手伝いするね!」「うん、期待してるよジオ」 一番小さくて、頼もしい仲間の頭をオレはポンと叩いた。 そして、頼もしい連中が帰った後。 事務所には、オレとファラだけが残った。「明日から頑張りましょうね。シャトルさん!」 と、初めのうちは親父の失踪で気を落としていたファラも、今は力強い口調でそういった。 それが今日一番嬉しいことだったかもしれない・・・。 さてと――、 オレは二人だけになった事務所を、改めて見回した。 主を失って、たった数日しか経っていないというのに、どこも変わっていないというのに・・・、その部屋はどこか寂しげな感じがした。 親父と共に仕事をしてきたさまざまな物たちまで、沈んでいるような感じだ。 とくにブラインドが下りた窓を背に置かれている、安楽椅子・・・。 パイプなどと並ぶ親父愛用の一品で、よく親父はそれに腰を下ろして物思いに耽っていた・・・。 オレは何気なくそこに座ろうとして――、だが腰を下ろすことなく背に手だけを置いた。 ――まだ、ここには座れないな・・・。 そう思ったから・・・。「・・・シャトルさん?」 オレの行動に不思議そうな顔をするファラ。「ファラ、この椅子に布を掛けておいてくれ」「はい?」「親父が帰ってきたときに、ホコリまみれじゃこいつも可哀想だろ?」「あ・・・、はい。わかりました!」「ん。じゃあ、明日から仕事頑張ろう」「はい!」 明日から始まる日々を思いながらも、とりあえず今はのんびりしたい気分だった・・・。
2007年07月14日
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「探偵狂想曲」 #17 手がかり、途絶える「〈光の精霊〉よ・・・」 ファラが呪文を唱えると、何もなかった彼女の両手の中に光の球体(ウィスプ)が出現した。 淡い白い光に、オレは初めのうちは目を細めた。「先を照らして」 続いてファラはそう言いって。ウィスプを闇が支配する通路に押し出すようにした。 宙に浮くウィスプは、ファラの言葉に従って、ふわリふわりとゆっくり通路を進み始めた。 オレたちは、ウィスプに照らされた通路を慎重に歩き出した。「――ここは一体、何だ?」 照らし出された壁や床を眺めながら呟くオレに、ウィルが答えた。「おそらく、緊急時の脱出用に造られたものじゃないかな」「脱出用ですか?」「そう、お城などにはよくあるもので。城攻めにあった時、城内の人間が城から脱出し、安全な場所に移動するために造られているんです。長いものでは数キロに及ぶものまで存在するとか」「数キロですか? じゃあ、ここも?」「それはわからないですけど・・・」「もしかして、町の外に繋がっている、なんてことはないだろうな?」 独り言のように呟くレイに、「さぁ、あり得なくはねぇけど・・・。ふむ・・・、やっぱ誰かがここを通ったみてぇだな」 と、先頭にいて時折しゃがみこんでは床の様子を丹念に調べるマリノがいった。「本当ですか?」「ウソをつく所じゃねぇだろう。かなり長い間通った人間がいないと見えて、砂埃が溜まってるからな、足跡がはっきりと残ってるよ。これならお前たちでもわかんだろう」「どれどれ・・・」 と、オレは前に出させてもらい、マリノの様に床がよく見えるように身体を低くした。 言われたとおり、それほど注意しなくても確認できるほどはっきりと足跡があった。それも――、「三つ、いや・・・四つはあるか?」 と訊くと、「ああ、一つはおそらくジェイドさんのものだろう。ほら、このつま先が四角い奴、あの人の履いてる靴がこんな感じだった。残る三つは、それを追いかけている感じだな。ジェイドさんの足跡を上から踏んだ跡がある・・・」 さすがに盗賊ギルドの娘として盗賊としての訓練を受けているマリノは、慣れた様子で床の上の足跡を分析する。レイが同行を依頼したのも頷ける。「ふむ・・・他に何か分かることはあるか?」「ああ、追っ手の一人はどうやら・・・女だな。他のものに比べてふたまわりくらい小さい。それから、引き返した跡がないな」「ってことは、この奥に出口があるんだな・・・」「・・・行き止まりで、待ち伏せされている可能性もあるがな」 さらっと怖いことを言うマリノ。「結構。むしろそちらの方が好都合だ」 と、レイが腰に携えている刀を握る。 確かに、この町でレイと対等に渡りあえる人間はそうはいない。それにオレやマリノだっているのだから戦力的には充分すぎるだろう。 いざとなったら戦闘もありえるか、とオレは改めて気構えることにした。 ――もう、どのくらい経っただろうか。 一時間以上は歩き続けている気がする。普段なら、一時間くらい歩くことなんか大したことではないが、こうも暗く行く当てのわからない道を歩き続けるのは、疲れてしまう・・・。「・・・長いですねぇ」 ファラが疲れた口調でいった。「まったくだな・・・」 マリノの口調にも疲れが出ていた。「どのくらい経ったかわかるか、ぼうや?」 と、レイはオレにではなくウィルに尋ねた。「・・・だいたい40分ですね」 ウィルは愛用の懐中時計を取り出して時間を確認する。「まだ一時間も経っていないんですね」 ファラはため息をついた。 それに釣られてオレもため息をつきたくなったが――、「――ん?」 ふと、オレは足を止めた。「どうした?」「・・・何か聞こえる」 オレの言葉に、全員がぴたりと足を止めた。 静かになり、耳をよく澄ませると。水の流れる音が通路の奥のほうから聞こえてくるのがはっきりと分かった。「確かに・・・」「水の流れる音のようですね・・・」「水路のようなものがあるのかもしれない?」 通路を進むにつれて、水の音は次第に大きくなる。 ――そして、オレたちは大きな水路に行き当たった。 どぉ・・・っ! と、川のように大量の水が流れる水路。闇の中でうねる水の様子は、黒い大きな蛇の体のようにも見えた。「・・・まさか、私たちが住む町の下にこんなものがあったとはな」 驚いたように呟くレイ。「いや、ここは既に町の外でしょう」 と冷静にウィルが言った。「あー、そうだろうな。おそらく、この先は西の森の先にある湖の方じゃないか?」「湖・・・、随分、遠くまで繋がっているんですねぇ」「だが、脱出用と考えればこのくらいは当然か・・・。おそらく小船のようなもので逃げられるようになっていたのだろう」「そうだな・・・」 オレは頷き、辺りを見回す通路は水路に沿って左側の方に延びていた。 「マリノ足跡は?」「ちょっと、待てよ・・・。む、これは・・・!」 しゃがみこんでいたマリノが眉をひそめ、難しい顔を作る。「どうした?」「・・・ここでだいぶ踏み荒らされた跡があるな」「何だって?」「・・・どうやら、ここで戦闘があったらしい」「そんな・・・!?」 ファラが悲痛な声を上げた。「親父は無事なのか?」 オレも気が気じゃなかった。「それが・・・」 マリノは言い淀んだ。「ジェイドさんの足跡は、水路の方に・・・」『!?』 マリノの言葉にオレたちは一様に息を呑み、水路の方を見た。「あの、水の中に・・・飛び込んだ、ということかい?」「足跡を見る限りは、そうらしい」 オレは信じられない気持ちで、マリノのように床の足跡を食い入るように見た。 これまでと同じように砂埃の積もった床の上には、激しく踏み荒らした足跡と誰かが倒れたような痕跡、それからその踏み荒らされた後から離脱するよう水路側に向かう、親父の足跡がはっきりと見えた。 そこから何がここで起きたか想像するのは難くない。「ここで追っ手に追いつかれたか、あるいは一戦を交える覚悟を決めたジェイドさんが苦戦の末、敵の一人を倒したものの後が続かなく逃走を図ったという感じだろか・・・」 ウィルが独り言のように言った。「なるほど、な・・・」 レイは納得したように頷いた。「ということは、ジェイドさんは生きているんですね?」 ファラが言い、他のものは皆複雑そうな顔を見合わせる。 というのも、この流れの速い水路に飛び込んで無事でいられるとは思えなかったからだ。もちろんオレだって信じたくはないことだが・・・。だが、今はファラを不安にさせないため、「ああ、きっと大丈夫だ・・・」 と口にした。それはオレの希望でもあった。「・・・他の足跡はどちらに向かっている?」 気まずい沈黙を破るようにレイがマリノに尋ねた。「あぁ・・・と、そうだな、他の足跡は左手の通路の方に向かっているな。どうやら負傷した仲間を担ぎながら移動したらしい。足跡の数が二つになっている」「追跡が困難と思って諦めたってことか・・・」 オレが言うとウィルがその言葉を継ぐように、「もしくは――、あ、いや何でもない・・・」 と言いかけて慌てて口をつぐむ。 言いたいことはオレにもわかったが、ホントに無神経な奴だなと思いウィルのやつを睨むと、奴は珍しく申し訳なさそうな顔をした。 ――もしくは、生存の可能性がないと判断したか・・・。 いずれにしても、親父に関しての手がかりはそこで途絶えたのである・・・。
2007年07月08日
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TMOというオンラインゲームをやっていると、「ダンボール」という不思議な装備アイテムがあります。これは、それを装備している様子の絵。実際はちゃんとテープで密閉されているのですが。頭が出ているのも可愛いかと。猫耳も装備アイテムの一つです。今月いっぱいで終了してしまうと言うことで、これも思い出の一枚になるでしょうね。
2007年07月07日
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「探偵狂想曲」 #16 闇、口をあける 盗まれたものが解かった為だろう。 さっきまでの、まるでピクニックにでも行くようなみんなの表情が緊張した固いものになったのがわかった・・・。 空気もどこかピンと張り詰めた感じがして、少し息苦しい。 ――とは言え、行動をしなければならない。 しばらくオレたちは保管室の中を調査した――が、既に専門家である自警団が捜索した後で新たにわかったことは何もなかった。 多少失望した思いで保管室を後にしたオレたちは、次に親父のパイプが発見されたという場所を見ることになった。そこは地下二階のフロアの奥の通路だった。「・・・問題のパイプは、ここで発見された」 そうレイがいって床を指差す、そこに親父の愛用のパイプが落ちていたらしい。「ここで?」「そうだ」「・・・それは妙だな」 と静かに呟いたのは、ロヴィンだった。「何が妙なんですか?」 ファラは首をかしげ、ロヴィンが見つめる通路の奥を釣られて見た。 その通路の奥には何もなく、行き止まりだった。「この先は行き止まりだろ?」「それがぁ?」 プリシラが、「よくわかんなぁ~い」という顔をする。 一方で、その一言で理解できる人間もいる。「あ、そっか・・・」「うん、なるほどね」 オレとウィルは納得したように頷きあった。「・・・ん? 何がなるほどなんだ?」 レイは怪訝そうな顔をする。「ジオ。念のためにちょっとパピーに協力して欲しいんだけど」「何、お兄ちゃん?」「匂いの追跡だよ」「うん、わかった」「レイ、親父の匂いをパピーに辿らせるから。パイプの匂いを覚えさせてくれ」「む? こうか?」 言われるままパピーの鼻先に親父のパイプを近づけるレイ。「・・・パピー、覚えた?」「ガゥ!」 ジオに聞かれて、尻尾を振るパピー。「犬にそんなことが出来るの?」 プリシラは不思議そうな顔をした。「うん、優れた猟犬なら可能だよ」 と、ウィルが言った。 パイプの匂いを覚えたパピーは、床に鼻先をこするようにしながらパイプが落ちていた場所から、順に通路の奥の方へとゆっくり歩を進めた。 そして突き当たりのところで、壁と床の境のところを前脚で掻きはじめた。「パピー? そこに何かあるの?」「ガゥ!」 背中のジオを見上げてパピーは吠えた。「あるって言ってるよ?」「何かあるたって・・・、行き止まりじゃないか」 ヒューは不審そうな顔をした。「確かにそう見えるが・・・」 しばらく黙っていたロヴィンが再び口を開いた。「ジオ、パピー。ちょっと避けてくれ。私が調べよう・・・」 と、行き止まりの壁の前に出たロヴィンは、丹念に壁を調べ始めた。「その壁に何かあるわけ~?」 後ろで様子を見ていたアイリーンが言うと、ウィルが例の口調で推理を始めた。「多分、あると思うよ。そもそもこの通路は何のためにあると思う? どこかの部屋に通じているわけでもなく、先は見ての通り行き止まり。普通ならこのスペースは隣りの部屋にでも吸収されるか。いや、むしろ最初から無いほうが良い」「増設する途中だったんじゃないかな?」 といったのは、やはりアイリーン同様後ろにいたダイアナだった。「その可能性は否定できないが、この博物館は王都の頃から存在する古いものだから途中で放置されたにしては疑問が残るな。それにこの壁や床の造りは他の場所と同様、しっかり造られている。そして、そんな通路にジェイドさんのパイプは落ちていた。これは何を意味するのか・・・」 そこまで言われてマリノがようやく理解できた顔をした。「ってことは、ロヴィンが調べているあの壁には――」 そうマリノが言い掛けるのと同時に、ロヴィンが声を出した。「――あった。これだ」 と、ロヴィンは壁の一部を指差した。「ここがスイッチになっている。それに、やはりこの壁は動きそうだな」「何!? それは本当か?」 驚いた顔をするレイ。「ああ、罠は・・・なさそうだ。スイッチを押してみる。みんなは念のため離れていた方がいい」 みんなが警戒して後ろに下がるのを確認して、ロヴィンは壁のスイッチを押した。 ガコ・・・ 押されたスイッチは、いとも容易く、壁の奥へと沈み込んだ。 そして――、 ガガガガ・・・ッ、ガココココ・・・ゥンン! と、重い音を立てながら、壁が上へ上がっていき。 闇がオレたちの目の前でその口を開いた。「すっご~い」 プリシラが感嘆の声を上げる。「どんな仕掛けが・・・?」 といったのは、ダイアナだった。「やっぱりな」 と、オレは確信していた口調で頷いた。「行き止まりの通路に親父のパイプが落ちていたと聞いてもしかしてって思ったけどな」「うん、ジェイドさんは間違いなくこの奥に向かったようだね」「と、とにかく。奥へ進みましょう! ジェイドさんがいるかもしれません!」 気が焦るファラは、一人で駆け出そうとする。 が、それを入り口のところにいたロヴィンが制した。「ちょっと待った。これから先は暗いし、何があるか分からないから危険だよ」 レイが頷く。「そうだな・・・。こんなものがあるなんて私も知らなかったのだからな。おそらく館長も知らないのではないだろうか」「かもな。いずれにせよ、奥を調査するならオレは今の内にしておきたいな。自警団の連中が、大勢で押し寄せ踏み荒らした後じゃ証拠も痕跡もあったものじゃないからな」「その意見にはボクも賛成だよ、シャトル君」「確かに・・・。それは言えているな」 レイは少し考え込んだ顔をする。「だが、探索がしやすいように人数を限定しよう。私とファラ、ぼうやたち、それからマリノ来てもらえるか? 他のものは一度上に戻っているように」「えぇ~! プリシラも行きた~い!」 やっぱり文句をいうプリシラに、レイはもう一度「戻っているように」と念押しした。「ま~、ジェイドさんのことは心配だけど。足手まといになったら悪いからね~」「そうですね。足手まといになっては悪いですから・・・。あの、気をつけてくださいね?」 と、プリシラよりは大人な考えが出来るアイリーンとソーニャが言う。「ソーニャ、オレのこと心配してくれるのか?」「な! 別にシャトルさんだけのことではありません! 皆さんに言ったんです!」 ちょっとからかってやろうと思ったら、予想通りの反応をされた・・・。やっぱり馬が合わないようだ。「ファラさん大丈夫か? オレでよければ代わるけど?」「いや、ナンパ男はいらん」 ヒューの言葉をレイはバッサリ切り捨てた。「レイ~~、お前、直球過ぎるぞぉ・・・」「本当のことだ。それにファラは魔法が使えるからな。いざという時は、男のお前より役に立つ」「ひどい言われようだな・・・」「ロヴィンはいざという時のために、ここに待機していて欲しい」 ヒューを完全に無視して、レイはロヴィンの方を見る。「ああ、そうだな。了解した」 うなずくロヴィン。「さぁ、文句がないようなら。奥へと進むことにしよう」「おぅ!」 勇ましく先頭を行くレイにオレたちは続いた。
2007年06月30日
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「ミステリはお好き?」なんて、良いテーマを見つけました。答えは、YES!wそんなに数多くは読んでいませんけど。好きになった作家さんの、好きなシリーズものは盲目的に買い続けてしまう傾向があります。とりあえず、今、ぱっと思いつくものは森博嗣先生の「黒猫の三角」。Vシリーズと呼ばれるものの、第一作です。主人公を初めとする登場キャラの魅力さ。仕掛けられたトリックなど、どれも一級品ではないかと思います。なにより森先生の文章は、美しいと思います。詩のようであり、哲学書のようでもあり、上品なジョーク集でもあるような・・・ま、そんなところが先生の作品を読み続けることの出来る要因ではないかと思います。そして、短編では、有栖川有栖先生の「スイス時計の謎」です。これも臨床犯罪学者・火村英生のシリーズものです。「黒猫の三角」奇抜なトリックなどが使われていないものの、完璧なロジックによって導かれた結論が、動かしようのないものであり。将棋が好きな自分としても「詰んだ」感がとっても良いなぁ・・・と思いました。海外の作品では、「女には向かない職業」が大好きです。これは話もいいのですが。それ以上に主人公のコーデリア・グレイという若い女探偵が、健気に懸命に事件の真相を追う姿勢に感動。(とにかく良い娘さんなんです)と、完璧に自分の趣味・思い入れが入った作品ですwいわゆるミステリー的な要素は、前の二つの作品に比べるとずっと低いかもしれませんが。でもある意味でコーデリアは、もっとも人間臭い、リアリティのある探偵といえるかも知れません。
2007年06月13日
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この前の絵に色をつけました。構図が悪いので、ヒューは反転。ペイントって便利ですねぇ。画材はあいかわらず色鉛筆です。ソーニャは、われながら描きやすいです。だんだんと、おでこが強調されていくようなぁ・・・。ヒューは、まぁ、これはこれでいいのかなぁと決定稿になりつつあります・・・。
2007年06月10日
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「探偵狂想曲」 #15 盗まれたもの 魔法アイテムが保管されていたという博物館地下二階の一室。 分厚い鋼鉄製の扉に守られている(ただ今は壊されひしゃげている)部屋は、一辺が5メートルくらいの正方形の部屋で、中央に石を積んで作られた台座が置かれていた。 そんな部屋に12人もの人間が集まると、かなり狭い。 ちなみにパピーが入るとさらに窮屈になるので、彼には外で待ってもらっている。「例のものは、ここに置かれていたのか?」 台座を見てオレは、レイに尋ねた。 台座には今は何も乗っていないが、つい最近までそこに何かが乗っていた痕跡は、「何か」を固定するために用いられた鎖が引き千切られている点など、はっきりと残っていた。「そうだ。そういえば、まだどんな魔法アイテムか説明していなかったな」 レイがいうと、オレと一緒にヒューも頷く。「あー、そういえば勢いだけでここに着たからなぁ」 「そーそー」「・・・あいかわらずな、いい加減ぶりねぇ」 ぼそっと後ろでアイリーンが、ため息混じりに何か言ったが、今は無視する。「それで、魔法アイテムって何ですか?」 とファラ。「うむ、ファラや坊やも、この町が昔は大きな魔法王国の一部であったことは知っているだろう?」 レイがそういうと、プリシラが元気よく手を上げた。「プリシラ知ってるわ! 特にこの町があった場所は、王都と呼ばれていたところだったんだよぉ~!」「ふふ、さすがは魔法少女、よく知っているな」 「えへへ~」 レイに褒められて(?)機嫌をよくするプリシラ。「そのくらいこの町に住む人間の常識だって・・・」 オレは面白くなさそうに(いや、本当に面白くなかったんだけど)言ったのだが――、「あら、そうでしたっけ?」 と若干一名わかっていない人間(エルフ)がいたりする。「後で説明するから・・・」 脱力気味にオレはファラに言った。「はい、お願いしますシャトルさん」「レイ続けてくれ」「うむ、では・・・マシンという言葉に聞き覚えは?」「マシン?」「およ、マシン・・・、機械装置のことかなぁ?」 と自称科学者のダイアナが首を傾げると、レイは首を横に振る。 「ちょっと違う。それもマシンには違いはないが。私が言っているのは、魔法装置のことだ」「魔法装置・・・マシン、それって『魔神(マシン)』のことでしょうか?」 ソーニャが少し興奮した口調でそういうと、レイは彼女を見て頷いた。「そうだ。そのマシンだ。丁度いい、詳しく知らないものもいるだろうから。ソーニャ、この場で簡単に説明してくれるか?」 図書館通いが日課の物知りな文学娘にレイに促されて、ソーニャは一度頷いてから口を開く。「わかりました。そもそもは、この町が巨大な魔法王国の一部であった時代の話です。当時、この世の中で随一といわれた魔法技術を誇っていた王国は、国民が安定した生活を送れるよう、数十年という長い年月をかけ、国民に供給する魔力を永久に生み出す装置を作り出しました。当時、魔力は人の営みに欠かすことの出来ないもので、魔力供給装置を作り出したことで、魔法王国はその後、千年以上も栄えることになったのです。その魔力供給装置が、俗に魔神(マシン)と呼ばれているのです」「そうだったんですか」 ファラが感心したように呟くと、隣りでプリシラが面白くなさそうな顔をした。「そのくらいプリシラだって知ってるもん」「・・・しかし、その魔神って壊れたんだろう?」 と腕組をして壁に寄りかかっていたロヴィンがいうと、ウィルが口を開く。「ええ、所詮は人の作ったもの。永久に維持する装置を作るなんてこと自体が無理な話。千年以上もの長い時間、故障一つしなかった魔神は、突如暴走し。そしてそれが原因で王国は間もなく滅亡したそうです」「なかなかうまくは行かないものだなぁ・・・」 マリノは、話を聞き飽きたのか、あくびをしながらいった。 「えっと、それじゃあ。この台座にはその壊れた魔神の残骸が置いてあったっていうの?」 アイリーンがいうと、レイは頷く。「正確には、全てではなくパーツの一つがな。館長は『魔神のカケラ』と呼んでいたが・・・」「魔神のカケラ・・・そんなものが、オレたちの町にあったなんて・・・」「いや、案外この町だからなんじゃないか? なにせ、ここは王都だったんだろう?」 オレの呟きに、ヒューがいった。「ボク、暴走した魔神は、七人の英雄たちによって打ち砕かれ、世界に四散したって、お母さんに話してもらったことがあるよ」 とジオ。 魔神と英雄たちの話は、この町だけじゃない他の地でも語られているわりと有名な物語である。ジオだけじゃなく、オレもまた母親にその話は聞かされた記憶があった。「んでも、なんでそのカケラを奪っていったんだ? そんな壊れたものじゃなく、もっと金目ものが、いくらでもここにあるんじゃないか?」 マリノがいうと、レイは神妙な顔をして首を振る。「いや・・・、魔神のカケラの中には、ここにある美術品に匹敵するほどの価値があるものもある。それは魔神にとっても要となる部分で、特にその部分を指して『コア』とも呼ばれている。これは他のカケラとは異なり、現在もなお昔ほどではないが微量な魔力を発生させているのだそうだ。微量といっても、この建物を維持するくらい容易なほどの魔力をな」「それじゃあ・・・」 オレが言い終える前に、レイや(既に話を聞いていたのだろう)ウィルがやはり神妙な顔をして頷いた。 ――ここに、あったものが『コア』の一つだったんだな。 とオレは、事態の深刻さを受け止めるようにしてその言葉を呑んだ・・・。
2007年06月09日
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果敢にも詩にチャレンジです。「言葉」言葉には、伝える方法いろいろあるよね?文と声と…文は残る声は響く書くのが上手い人声の魅力的な人表現は様々受け取り手も様々伝わる気持ち伝わらない気持ち想いがこめられたもの、それが言葉言葉には、力が込められたものがあるよね?励ます力、憎しみを生む力勇気付ける励ましいさかいを起こす憎しみ頑張る人怒る人そのままの気持ち裏返しの気持ち何も書かなければ、何も言わなければ、生まれないもの、それが言葉言葉、言葉、言葉…本当の自分の想いは、目には見えなくて、わからないものかもしれないけれど、それに近いものを伝えよう言葉で…何もなければ、本当にそれは無でしかないのだから。なんて、中身を知っている人に絶対なにか言われそうな詩ですね。ま、(探偵狂想曲の)ヒュー君の作詞という逃げ道を作っておきますかwにしても、男の絵は不得手だなぁ自分・・・。どーみても、女顔だ;
2007年06月06日
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自動車や自転車を使わずに外出するときは、かならず一冊小説を持ち歩いています。読んでいるものは、主に推理小説です。漫画と違って、推理小説って一気にはなかなか読めないので。ある程度――真ん中くらいまで――を外出中に読みます。で、真ん中くらいまで行ったら、ベッドに寝転がりながら夜通し一気読み、このパターンが多いですね。外出中に読書するときは、主に地下鉄の車内や、ホーム、人がいなければ構内で歩きながらってパターンが多いです。車内やホームはともかくとして。構内を歩きながらはさすがに危ないかなぁと、自分でも思うんですけどねぇ・・・。冬、雪のため地下鉄通勤がほとんどになるので。今年も春まで自分的には結構な冊数読みました。で、ようやく本題。今年になって読んだもので、特に印象的な作品は、篠田真由美先生の建築探偵シリーズでした。文庫派なので、現時点まで読んだものは五冊くらいかな・・・。ノベルズ版では倍以上の作品が出ているんですけど。文庫化するまでは手は出さないつもりです。ま、それは置いておいて。建築探偵シリーズのポイント(自分的に)は、単に犯人を捕まえて殺人事件を解決するのではなく、もっと深く事件と関係者の心の闇に入り込み、その絡んだ紐のようなものを解きほぐすことで、本当に意味での事件の解決を導くところにあるのではないかと思いました。そして、それは主人公である桜井京介自身も、深い闇を抱えている人間であるが故のことなのかなぁと思います。(すみません自信なさげで。まだ自分が読んだ部分まででは、そこまで詳しく描写はされていないのです)奇抜なトリックはないものの、建築探偵シリーズは他の作品とは一味違った味わいのある推理小説だと思います。粗末な絵ですみませんw本文と何も関係ないけど、描きたいので描きました。読書中のソーニャの図です。最近、顔の部分は、まぁ人前にも出せるかなぁとは思えるようになってきたのですが、身体のバランス、手の仕草が難しいですねぇ。もっと精進しないとぉ~。
2007年06月05日
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前回のジオとパピーのイラストに、色鉛筆で色付けをして見ました。それだけだと、物足りないので新たに二人を描き足してみました。女の子(プリシラ)の、可愛らしい服を描くのは大変です。色もまったく可愛らしくないし・・・。あと、ファイティングポーズではありません。ぶりっ子のポーズ(死語でしょうか?)のつもりなんですが、どー見てもファイティングポーズですねwシャトルの服は、やっぱりピンクになってしまいました。ま、これはこれで。青いボーダーのアンダーは、なんか囚人服みたいです。
2007年06月04日
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「探偵狂想曲」 #14 頼もしき、仲間たち そして、オレたちは博物館の前にやってきた。 朝見たと時よりは数が減ってはいたが。相変わらず自警団の連中の出入りが多い。「さぁ、早く中に入りましょう、シャトルさん!」 と、妙に気合の入っている様子で言うファラ。「ファラ、ちょっと待て――」 オレは前に飛び出そうとするファラの肩を捕まえた。「はい?」「その前に確認しておきたいことがある・・・」 オレはレイの方をちらりと見た。 横目で確認できた彼女の顔は、困ったような渋い顔をしていた。「レイ、ホントにこの大所帯で現場に行っても良いのか?」「・・・やむを得ないだろう。私も本意ではないのだがな」 ため息混じりにレイはそう言った。 * 最初、シルバームーン探偵事務所を出発したときの面子は、オレ、ファラ、ヒュー、マリノ、レイ、そしてウィルの6人だけのはずだったのだが。 今、博物館前に立っているのは、最初の面子にさらにロヴィン、ソーニャ、ジオ、プリシラ、ダイアナ、アイリーンの6人を加わえた総勢12人の大所帯になっていた。 そんなに大きな町ではないため、多分、親父が盗みを働いたという噂を各々耳にしたのだろう。どいつもこいつも野次馬根性を出して、誰が召集を掛けたわけでもなく、オレたちが着いた時には、既に博物館の門のところに賑やかに集まっていた。「お、きたきた。おーい、こっちだ」 オレたちの姿をいち早く見つけ、手を振ったのはロヴィンだった。「本当だぁ! も~ぅ、いつまでプリシラを待たせるのよぉ。ぐずシャトル!」 と頬を(可愛らしく?)膨らませるプリシラ。「まーまーまー、プルったら。そんなこと言ったらダメだよ。本当のこと言われたら、鈍いシャトル君だって傷つくよ?」 と、プリシラに輪にかけてひどいことを言いやがったのはアイリーンだった。 それを聞いてロヴィンが苦笑する。「アイリーン・・・、それ、まったくフォローになっていないぞ」「あれれ? そう?」「でも、事実は事実だよ。シャトルは、ぐずで鈍いの、そのくせ直ぐ怒るしねぇ~」「ほぉ・・・、それがわかっているってことは、怒られてぇのか、プリシラ? オレは、悪い子はきっちりしつける主義なんだがなぁ」 「わわわ! シャトル!? 今の聞こえた?」「あったり前だ!」「お、お兄ちゃん。落ち着いてぇ」 そう、パピーに跨ったままジオが宥めてきた。「って、ジオ。お前まで来ていたのか」「う、うん。おじさんが大変だって聞いたものだから、ボクにも何か手伝えないかなと思って・・・」「そっか、サンキューなジオ」「シャトルさん、ボクもお手伝いしに来たよん」 と、ダイアナ。「・・・ダイアナ、お前は病院の仕事は良いのか?」「うん、事件のことを聞いたお父さんが、『新薬の開発は良いから、暇ならお前はロックフォードさんの事件を手伝って来い』って言うものだからさ」「な、なるほど・・・」 どうやら厄介な娘を体よくあしらったらしいな、あのドクターは・・・。 そんな親心を知ってか知らずか、ダイアナは背負っていたリュックを下ろして、中のものをごそごそあさり始めた。「んで、うちからいろいろ持ってきたんだけど。どの薬が役に立つかなぁ」「いや! 薬は今のところ必要ないからしまったままにしろ!」「およ?」 落ちがついたところで、6人目のソーニャが口を開いた。「シャトルさん、この度はとんだことで・・・」 ――って、おい。「・・・ソーニャ、お前その挨拶なんか変だぞ」「そ、そうでしょうか?」「なんか、お悔やみみたいだ」「な、確かにそうですけど! そういう言い方ってないんじゃないですか・・・!」 「事実は事実だろ。縁起でもない」「ちょっと、言い間違えただけじゃないですか!」「本が好きなら間違うなよ」「誰にでも、うっかりはあります!」「うっかりの範ちゅうを越えているだろうが」 と、またソーニャとの言い争いが始まってしまう。 そんなオレたちをレイが止めに入った。「待った、待った、お前達の仲が良いのはわかったからそのくらいにしておけ」「そうだ女の子を相手にムキになってみっともないぞ、シャトル」 マリノがそう言うと、ヒューが頷く。「うんうん、例え女の子に非があったとしても、もっと紳士的に優しく扱ってあげないとなぁ」「君の口から『紳士』という言葉が出るとはね・・・」「何だよ。ウィル、文句あるって言うのか?」「いや、そこまでは言わないが」「じゃ何か、お前は紳士なのか?」「・・・そうだな、君よりは紳士的である自信はあるが」「何を!」 と、元々馬の合わない男同士の言い争いが別の場所で始まろうとすると、マリノがヒューを、レイがウィルを、お互いに軽くこずいてを止めさせた。「落ち着け、色ボケ男」「まだまだ子供だなぁ、ぼうやも」「う・・・」「・・・ぼうやは、よしてください」「うふふ、いつものメンバーが、これだけ揃うと賑やかね」 アイリーンがのんきに言うと、ロヴィンが頷く。「まったくだ。これから事件の捜査に行くというのに」「こんな様子じゃ、先が思いやられるわねぇ」 と、もっとも不安要素満載のプリシラが言った。 ――おいおい、お前がそう言うか・・・。「む・・・。やはり、お前達も来るというのか」「うん、ダメかな? お姉ちゃん・・・?」「う・・・」 ジオが上目遣いにそう訴えると、さすがのレイも、たじたじと困惑の様子を見せる。 ――さすが、天然レディ・キラー。「ボクもお役に立ちます。実は前々から、事件捜査に科学の力が役に立つかどうか研究したかったのです」「私もお手伝いさせてください!」 ダイアナ、ソーニャの二人も名乗り出た。「まぁ、みなさん。私たちのために、ありがとうございます。レイチェルさん、私からもお願いします」 と、ファラの言葉がダメ押しだったらしく、レイは悩み疲れた様子で頭を垂れた。「・・・ふぅ、わかった。こうなれば何人集まろうが同じだな」 * こうして、異例な民間人だらけの捜査隊が組まれたのだった。 ここだけの話、多少、心強いものを得た気がした・・・。
2007年06月03日
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良いテーマを見つけたのですが・・・。手持ちに、載せるイラストがない;ってことで、さらさらさら~っと即興で描いたものを載せてみます。鉛筆デッサンのみ、着色料ゼロwいかがなものでしょうか?少年&動物という。苦手なものを二つ同時に描くというのは難しいものです。これもまた、改めて時間を掛けて描きなおそうかなぁ・・・。
2007年05月29日
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昨日の話と矛盾しますが。今書いている「探偵狂想曲」は、話を書きながら設定を作っていくという手法を取っています。(前にも言ったかな?)なので、登場キャラの顔も全員はボクも把握していない状態です。それじゃあ、困るということで。休日や、仕事の休憩時間などを使って自分のイメージを元に顔を描いたりしています。今日お見せするのは、ジオ君のラフです。帽子は当初から、このような形にしようと思っていました(キャスケット?)苦労しているのは、「少年」というモチーフ自体描いたことないものなので。顔を小さく、目を大きく可愛らしくを念頭に、とりあえず描いてみました。美少年が好きという方、いかがなものでしょか?もちろんラフなので、完成ではないです。週末にはこれを元に清書をして、色付けして改めて発表できたらなぁと思います。
2007年05月28日
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手作りになるかわからないので、(?)ですが。物を作るのは全般的に大好きです。習い事でも、絵とか陶芸を経験しましたし。料理も好物は、たいてい作れますし。冷蔵庫のあまりもので創作したりしますしね。(ま、そんな大掛かりなものは作れないけど・・・)最近、裁縫箱を手に入れて縫い物を始めようかなぁ~とか思ったりしています。そんな、ますます女性への縁が遠くなりそうな、ボクですが。。。子供の頃からの趣味は、マイキャラ(自分オリジナルのキャラクター)を作ること。幼稚園の頃からかなぁ?漫画、キン肉マンの影響か、自作の超人を作って、紙人形作って密かに戦わせたりして遊んでいました。その後、小学校に上がってからは、ファミコンゲームのロックマンに出会ってから、ますます加熱。ボスキャラの応募に何度か投稿して、そのたびに見事に落選しましたwそして中学生になり、プロフィールにもありますが。ソードワールドという、テーブルトークRPGに出会い。キャラに細かい設定をつけるようになり、やがて現在のような作ったキャラを物語の中で動かすようになっていったのです。だから、ボクの小説はまず第一にキャラクターですね。マイキャラ作りの延長に、小説があるといってもいいかも知れないです。キャラクターを作り、細かい設定をつける、さらに自分でもそのキャラのイメージがつかめるよう絵も描きます。そうしたものも今までは、ただ書き溜めて部屋の隅に眠るばかりでしたが・・・。こういう場を借りて発表できるのは、実にありがたいことです。今後も、手作り(?)感のあるブログにしたいなぁ。。。
2007年05月27日
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「探偵狂想曲」 #13 今、できること「これを君はどう判断する?」 ウィルがパイプを指してそう言った。「ど、どう判断するといっても・・・」 オレは言葉につまった。 すると澄ました顔をしながら得意げに、ウィルの奴は自分の推理を始めた。「僕の記憶が確かならば、これはジェイド・ロックフォード氏の愛用のパイプのはずだ。老舗パイプメ―カーとして有名なメルキャ社製の、すでに20年前に製造中止になった型で、おまけにイニシャルもある」「・・・」 そんなことわざわざ教えてもらわなくても、一目見てわかった。そのパイプは親父のものだ。――ったく、嫌味ったらしい奴だなぁ~!「んで、それが親父のものだとして、だったら何だって言うんだ?」「これがどこで発見されたと思う?」「質問に質問で答えるな! 腹立たしい!」 怒鳴りつけると、ウィルは少し面を食らった顔をした。「・・・すまない。僕も多少ショックが落ち着かないという感じでね」「ショック?」「あぁ! だってそうだろう、何であのジェイドさんが・・・。でも、昨夜博物館に向かおうとする彼の態度は、怪しいものだったし・・・」 そう呟くウィルの顔は、気のせいか口惜しそうでもあり、寂しそうにも見えた。 ――こいつ、なんでこんな顔して・・・? 何だか気まずくなり、オレはそこに居たレイの方を見た。「パイプは、問題の魔法アイテムが保管されていた部屋がある階で発見されたのだよ、ぼうや・・・」「んな!?」 だいたい既に予想をしていた展開ではあったが――ズバリ言われるのは、やっぱりショックなものだ・・・。「しかし、昨晩、落としたとは――」 「限らない」と言いかけるオレを、レイは首を横に振って制した。「――いいや、昨晩落ちたものであることは間違いがない・・・。というのは、保管室は博物館の地下2階にあり、普段は一般人が立ち入ることの出来ない空間だ。そんな場所にパイプが落ちていた理由として考えるのは、昨夜侵入した賊の中にジェイド氏が混じっていたというものくらいだ」「で、でも・・・!」 ファラが身を乗り出しながらレイたちに悲痛な声で訴える。「それだけで、ジェイドさんが犯人だなんて・・・!」 そんなファラに後押しされたように、それまで傍観していたヒューも口を開いた。「そうだ、そうだ。お前たちは、ジェイドさんに普段から世話になっているくせに、よくそんなことが言えるなぁ!」 と、そんなヒューのことを、レイはギロリと刺すような視線で見た。「・・・あ、ごめん。言い過ぎましたです。ハイ」 睨まれたヒューは、直ぐに尻尾を巻いてしまった。 ――情け無い奴・・・。 同じ男として、オレは思わず顔を手で覆いたくなった。 「うん、ヒューさんの言うことはもっともだよ」ウィルがしばらく閉じていた口を開いた。「確かに、ジェイドさんにはボクやレイチェルさんも、事件捜査のときは、もちろんのことプライベートでも、大変お世話になっている。だがしかし、事実を見過ごすわけにはいかない。僕は、個人である以前に探偵なのだから。探偵として、この事件を解決に導くことが僕の使命だ」 思わず殴りたくなるような台詞を、臆面もなく言ってのけたウィル。 するとそれを聞いていたマリノが言った。「ウィルの気持ちはわかるけどな。お前、よくそれをシャトルの前で言うなぁ。少し無神経すぎるぞ」「え?」 予想もしていなかった人間に、予想外のことを言われてウィルは面食らった顔をした。「アタシは、難しいことはよくわからないが。パイプ一個で、ジェイドさんの立場がマズイってだけはわかった。で、アタシたちがするべきことは、ここでお互いの意見を言い合うことか?」「あ・・・」 マリノの言葉に、その場の全員がしばらく押し黙った。 ――意外とまともなことを言うんだよなぁ、マリノの奴・・・。「・・・確かにマリノの言うとおりだ。ここで話し合うよりも、まず親父の行方を捜すことが先決だ」 オレが沈黙を破ってそう主張すると、レイも頷いた。「うむ、そうだな。私達は肝心なことを見失っていたようだ。まずはジェイド氏を探し出そう」 レイがそういうと、促されるようにしてウィルも頷いた。「・・・ですね。今朝から行方がわかっていないということだし。そういえば、シャトル君。門のほうは全て確認したのかい?」「ん、あぁ・・・。でも、収穫はなしだったよ」「そうか、ということは街の外には出ていないのか・・・」「よし、自警団で捜索隊を組んで、街中をくまなく捜すことにしよう」 レイはそう言って、そばにいた団員を捕まえて指示を出す。すると、たちまち事務所の捜索をしていた団員のほとんどが街中へと散らばっていった。 これで少しは落ち着いたというものだ。「・・・シャトルさん」 散っていた自警団の連中を見送った後、ファラがオレの袖を引っ張りながら言う。「今、私達にできることはないでしょうか?」「ん。あぁ、そうだな・・・」 考え込もうとするオレ。 と、いきなり背中をマリノが叩いてきた。「いってぇ~!」「何をちんたらしてるんだ、てめぇは。自分の父親が大ピンチなんだ。罪を晴らすために、とっとと行動しやがれ!」「こ、行動たって・・・、何をするんだよ?」「ん? そりゃあ・・・」 オレに言い返されて、マリノは言葉につまった顔をする。 さっきの名台詞は、やはりまぐれか・・・。「あー、オレ思うんだけどさ・・・」 と、控えめにヒュー。「現場ひゃっぺん、とかって言うじゃない。だったらオレたちも一度、現場を見せてもらうのがいいじゃないのかな?」 なかなか、まともな意見だ。しかし問題は、一度でも見せてもらえるかどうかである。 多少なりとも期待の目で、レイの方を見ると。彼女は少―し難しそうな顔をした。 が――、「――わかった。良いだろう、私も、親しい知人から罪人を出したくはないのでな。君たちが、ジェイド氏の無実を証明しようというのであれば、協力しよう」「な、マジかよ! いいのか? 民間人に現場を見せても?」 レイに対しては愚問だったが、一応形だけ聞くと。「民間人なら、こいつもそうだ」 と、笑みを浮かべながらレイは、わしゃわしゃとウィルの頭を撫でながらでいった。「ちょ! 頭撫でないで下さいよ、レイチェルさん!」 若干背が低いことを気にしているウィルは、人に(とくに女に)頭を撫でられるのが苦手だったりする。 意外と可愛らしい弱点だ。「ま、とにかく。現場を見るというのであれば今からでも構わないぞ。どうする?」 そんなもの、答えは決まっている。「当然、今から行くさ!」
2007年05月26日
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またまた絵を描いてみました。落書きならぬ、楽描きです。お題は、「探偵狂想曲」の登場人物より3人です。誰が誰だか、わかるでしょうか?左から、マリノ、ソーニャ、アイリーン・・・のつもりです。マリノはどぉ~見ても男w(一応、胸はあるんだけど、手で隠れてしまった)。もうちょっと、可愛く描いて上げれるかなぁと検討中。ただ、この髪型はすんごい考えて、考え抜いた結果このようになりました。なので、お気に入りです。ヘアカラーもです。実は(ってほどでもないけど)、12人の登場人物はみんなヘアカラーは変えようと思っているんです。で、マリノの色を決める前に、既に何人か決まっていて・・・最初は赤にしようかと思ったんですが・・・、赤はレイチェルと、もう表記してしまったのでこの色(モスグリーン)に落ち着きました。ちなみに、緑色も決まっています。ソーニャはこれでほぼ決定。いかにも気難しそうな、本好きの女の子って感じが出せた・・・ような気がします。こだわったのは、おでこを見せること(あんまり出てないけど)。それと眉の形かな。大きなつり目に合わせて、太めにしました。髪の色、目の色は、濃いブルーと紫。これは最初に決まっていました。アイリーンは描き上げてから、シャトルの髪型と大差がないことに気づきましたw最近、横に跳ねた髪型に凝っているもので(そーいや、マリノも跳ねてるし)。服装は、自分的にはかなり今回冒険しました。露出の多い服装、スカートには前にスリットが入っています。ちょっと寒々しいので腰に上着を巻いています。十字のアクセサリーで、一応教会の娘であることをアピールw実は、ぶっちゃけちゃうと、アイリーンには(というか「探偵狂想曲」そのものもなんだけど)モデルが存在してまして。髪長くするとそれがわかっちゃうかなぁとも思ったんですが。(分かる人いますかね?)開き直って、長髪版のアイリーンものっけちゃいます。この際だから、目などの色も変更してみました。うーん、まだまだ未熟ですねぇ。もっと精進しないとぉ!
2007年05月20日
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「探偵狂想曲」 #12 父、疑われる カランコロン、カラ~ン♪「ありがとぉございましたぁー! また二人一緒に来なさいよぉ!」 というアイリーンの全く余計な冷やかしを背に、海象亭で腹ごなしをしたオレとマリノは、事務所へ帰ることにした。 その途中、忘れかけていた親父の失踪の話をすると、なぜかモーレツに怒られた。「何だってぇ!? お前、そういうことは早く言えよ!」「な、何を怒っているんだよ?」「何を怒っているって? てめぇが、ろくに自分の父親のことを心配もせずに、のんびりしているのが、腹立たしいんだよー!」 と、こぶしを握りしめる怒りに真っ赤に燃えるマリノの目を見たオレの脳裏に――「死」の文字が過ぎる・・・。「ま、待て! 別にのんびりしていたわけじゃないぞ・・・!」「問答無用――!」 こぶしを振り上げるマリノ。 いつの間にか、腕をつかまれて逃げることも出来ない。(やばい――! これはマジで殺られる!) が、救世主というものは現れるものだ。「おーい、シャトル~!」 という男の声に、マリノの手が止まった。「ん・・・? ヒューか」 声がしたほうを見ると、確かにヒューが切羽詰った様子でこちらに向かって走ってくる。「ヒュー! た、助かったぁ~~!」「シャトル。お前、こんなところで何をイチャイチャしているんだ?」「イチャイチャなんかしてねぇー!」 殺されかけていたというのに、一体、どこを見れば、そう見えるというのだ。「ま、まぁ、そんなことはどうでも良い! とにかくお前、今すぐ事務所に戻れ!」「あん? 事務所には今から戻るとこだったが・・・。お前、何そんなに切羽詰っているんだよ?」「戻ればわかる! ファラさんが大変なんだ!」 いつになく真剣なヒューの表情に、なにやらかなり深刻な事態が起きていることを察した。「ファラが? わかった直ぐに戻る!」 とりあえず命拾いしたことに感謝しつつ、事務所に向かって駆け出すオレ。「あ、待てよ。オレも一緒に行く!」「あ! ちょっと待て、アタシを置いていくなぁー!」 と後から追いかけてくる二人を、オレはとりあえず無視することにした。 シルバームーン探偵事務所に着くと、直ぐにいつもと違うその様子にオレは気がつき立ち止まる。 大勢の自警団の連中が事務所に何度も出入りをしていて、その様子は博物館の前で見た様子にそっくりだった。 そして、そんな自警団の連中を、事務所の外で不安そうな顔をして遠巻きに見ているファラが居た。「ファラ! どうした?」 声を掛けると、不安そうな彼女の表情がわずかに安堵をしたように変わる。「あぁ、シャトルさん。大変なことになってしまいましたぁ!」「一体、何が大変なんだ?」「そ、それがその――」 ファラが答えるようとしたその時、丁度、事務所の入り口からレイが出てきた。と、オレを見つめるレイの目は、実に複雑そうな表情を浮かべていた。「レイ! これは一体? なんでうちが自警団の手入れを受けなきゃなんないんだ?」「・・・坊や。実は、非常に言い難いことなのだが。ジェイド所長に逮捕状が発行されたのだ」「は? 逮捕状だって?」 逮捕状とは、まぁ、特別な説明をするまでもなく。街で罪を犯した可能性のある人物を取り調べるため、その身柄を自警団が拘束するために、町議会や自警団の長などの手によって発行される書類のことである。 しかし元々、逮捕状など発行を待つことなく、街から罪人を拘束する権利を与えられている自警団が、わざわざ逮捕状を用意してきたというのは、事態がかなりやばい状況であることを示しているようなものだ。「い、一体、何の罪で逮捕状が!?」「それは――・・・」 口を濁すレイ。その後を引き継ぐように、また別の顔見知りが事務所から出てきた。「それは君も知っている、博物館の盗難事件の容疑者として、だよ」「ウィル!」ヒューが目の前に現れたその人物の名を、驚いた声を出して呼ぶ。 オレも、多少驚いた。そいつは、ウィルフレッド・ライアンだった。「やぁ、シャトル君。その様子だとあれからもずっと今まで父親探しのために、街を奔走していたようだね」「あぁ・・・」 相っ変わらず、嫌味な口ぶりのウィルを睨みつけながら、オレは頷く。「ん? なんだ、シャトル。ジェイドさんのこと探していたのか?」 と、後ろでマリノが気の抜けるようなことを言う。「だから、そういったじゃないか」「そー、だったか?」 ますます気が抜けそうだ・・・。 何度も首を傾げているマリノをよそに、オレはウィルに質問をぶつける。「大体、何か証拠があってのことだろうな?」「もちろんだよ」ウィルは頷き、おもむろにコートのポケットから小さな紙包みを取りだす。「・・・君も、こいつに見覚えがあるだろう?」「何だよ――、・・・えっ、これは!?」 広げられた紙包みの上に現れたもの、それは親父の愛用のパイプに間違いなかった――。
2007年05月19日
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お休み前なので本日、二本目書き込みです。テーマで、「今日のコーヒー」というのを見つけたので、コーヒーにちなんだものを書いてみます。実はコーヒーなんですが、ちょっと前まで、はまって、いろいろ試していました。その結果、個人的に好きなコーヒーの飲み方は、フレンチとグァテマラを豆で買ってきておいて、大体1:1の割合で混ぜて淹れるというもの。自分でも、かなり大胆かつ乱暴なことしているなぁとは思うんですが・・・。この方法、自分の好みに合わせて豆の割合を変えることで、渋味&酸味を調節できるので、眠いときには苦めのをってことでフレンチを、朝さっぱりしたいという時は逆にグァテマラを多めに挽いて淹れています。このブレンド(?)割と、周りの人からの評判はいいです。グァテマラじゃなく、トラジャ、マンデリンをフレンチでやっても良いです。(ま、この二つならそのままフレンチなしで淹れても美味しいとは思いますが・・・)フレンチを混ぜることなく、そのままで飲んだときは、マンデリン → トラジャ → グァテマラ の順で酸味が強くなるような気が、ボクはします。豆から飲んでみたいという方、良かったら是非、参考にしてみてください。ついでにまた落書きを、名前は書いているので誰だか分かると思いますw一応、これは前のシャトルとは異なり、決定稿ではありませんのであしからず。(髪型、髪の色とかで、まだ悩み中です・・・)ただ、コーヒーがテーマということで、カフェの店主さんのイメージを描いてみました。では×2 みなさん、良い週末を~。
2007年05月11日
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「探偵狂想曲」 #11 聖女、戯れる 一緒に昼食を取ることにしたオレたち。「で、どこにするんだ? ハミングバードか?」 そう聞くと、マリノは顔をしかめた。「うーん、ハミングバードは、割高だからなぁ・・・安い店に行こう」「とすると、海象(セイウチ)亭がいいかな」「そーだな。じゃ、おっさんとこ行くか!」「OK」 ということでオレたちは、昼食を取りに海象亭に向かった。 海象亭は、街の東側のエスター地区では良く知られた大衆食堂兼宿屋である。 元海の男である店主「おっさん」こと、オーゼル・ボナードが、引退後に故郷であるこの町に帰ってきて始めた店で。店の名前は、おっさんがセイウチに瓜二つの容姿をしているところから、自虐的に命名したようだ。 いかにも海の男らしい、日に焼けた赤銅色の肌の恰幅の良いおっさんが作る料理は、ロヴィンとは違い無骨な感じがするが。味はよく、安くてボリュームもあるのでオレたち庶民や貧乏旅行者には実にありがたい店であり。 オレたち庶民にとっての溜まり場にもなっている。 海象亭へとやってきたオレたち。「おーい、おっさん、何か食わせてくれ~!」 カランコロン、カラ~ン♪ カウベルの付いた扉を開きながらそう言うと。てっきり、おっさんのがらがら声が返ってくると思ったら。聞こえてきたのは、うら若き乙女の声だった。「いらっしゃ――、って、あれれ? シャトルにマリノじゃないの。うふふ、仲良く二人でデート?」「な? アイリーン、何やっているんだ、こんなところで?」 デートという言葉に反応して、マリノは不機嫌そうな顔をする。「こんなところで、とはご挨拶だなぁ・・・」 と、今度は間違いなくおっさんの声がして、厨房からのっそりとセイウチが出てきた。「アイリーンちゃんには、最近バイトに手伝ってもらっているんだ」「バイト? 教会の経営が厳しいのか?」 多少、心配してそう尋ねると明るく否定された。「まさか違うよぉ。ただ私が遊ぶためのお金を稼いでいるだけ~」「遊ぶ金を稼ぐって、何だかなぁ・・・」 はきはきした口調でそういうアイリーンに対し、マリノは苦笑いを浮かべた。「・・・なんか教会の娘の台詞じゃねぇな」「教会の娘って・・・」 そういわれて、アイリーンも苦笑する。 アイリーン・セントクロスは、セントクロス教会という街唯一の大きな教会の跡取り娘である。だから「教会の娘」というマリノの言葉はあっているのだが。アイリーン本人は、あまりそういわれることを良く思っていないようだ。 というのも、まだまだ遊びたい年頃ということもあるし。活動的で、自分のプロポーションに自信があり。それを見せるための可愛らしい服、露出の高い服を好んで身につけている彼女にとって、きっと教会の中での生活は、質素で、厳しく、退屈なものであるに違いないからだ・・・。 そういえば教会で会うよりも、外で出会うことのほうが多い気がする。 「だいたい、そのちゃらちゃらした服は何だぁ?」 マリノが、アイリーンの着ているメイド服を見て、青ざめた顔をする。「あら、いいじゃない。可愛いでしょ?」 アイリーンが着ている服は、袖や、スカートの裾などあちこちにフリルやリボンをこれでもか~! と施した可愛らしいメイド服だった。 可愛らしい女の子の服なんて生まれてこの方、袖を通したこともないであろうマリノが、拒絶反応を示すのも無理なかった。「ま、可愛いけどな・・・」 とオレ。「・・・けど、な?」 アイリーンは不思議そうな顔をする。「そのメイド服、この店には相応しいとは思わないぞ」「う・・・」 アイリーンはわずかに言葉をつまらせる。「だ、だってぇ、このお店の制服、可愛くないんだもの~」「お前の判断基準は、可愛いかそうじゃないか、なのか?」 マリノは呆れた様子で呟く。「もちろんよ!」 アイリーンは力強く言い切った。ある意味、立派である。「ちなみに、この店って制服あるのか?」「おう、あるぞ! わし特性のセイウチのアップリケの付いたエプロンだぁ!」 ババーン! と、まるで効果音でも付きそうな勢いで、どっから取り出したのか、おっさんは、オレたちの目の前に、派手なピンク色のリアルなおっさんの、いや、セイウチのアップリケが乱雑に縫い付いたエプロンを広げて見せた。 そして、「どぉだ!?」といわんばかりにオレたちの顔を見回す、おっさん。「・・・」「・・・」「・・・ね? それ着るくらいなら、こっちの方がましだと思わない?」 無言になるオレたちに、アイリーンはこっそり耳打ちする。 オレたちが無言で頷きを返したのは言うまでもない――。
2007年05月11日
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久々に、絵を載せてみます。現在、執筆中の「探偵狂想曲」の主人公、シャトル・ロックフォードの似顔絵(?)です。意外とベビィフェイスです。口は悪いけど・・・。色鉛筆でパパッと色付けしたので、ちょい薄いです。小説には書かれていませんが(たしか)シャトルの目はブルー、髪は銀髪です。あと、服がピンク色なのは意味はないです。塗ってしまってから、「しまった! これじゃますます女の子じゃん!」と思ったけど、「まいっか」と開き直ってそのまま掲載。襟(というか首周り)を青くふち取りしたのが、せめてもの抵抗です。ちなみに、この顔の構図がもっとも得意とするもので。これ以外の構図や、全身像は苦手なんです。今後、精進して登場人物全員そろったのを描きたいですねぇ・・・。
2007年05月10日
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オレオレ詐欺風のバトンだそうです。強制バトン(ボクは強制しませんので)◆ルール◆ 見たら絶対やること!(と、いわれたので一応やります)●プルルルー・・・ トゥルル、ガチャ、●オレだよオレ!! ・・・・●わからねぇのか!? ・・・・●オレら友達じゃねェかァ ピィーー、●(名前)だよ!! ヒョロロロロ~●オレちょっと事故にあっちゃって。 ロロロ~●罰金あんだけど。オレ金が無ェんだよ。だから百万円貸してくれないか? ロロ~●嫌? ~●ちゃんと返すから貸してくれよ! ・・・・●とっとと貸せよ!! ・・・・●もう良いぜ、俺が自分でやる。ブツッ!●この役立たずめ! ツー、●またかけるからな!? ツー、●嘘だよ、お前なんかに一生かけねェよ!! ツー。●ガチャ・・・。 ・・・・●プルルルルー・・・。 トゥルル、ガチャ●うるせえっ!さっき電話かけた奴だ! 「ただいま留守にしております・・・、●誰にまわすか教えろ! 御用のある方は、●誰にもらったか教えろ。 発信音の後ご用件をお伝え下さい」●このバトンの感想は? ピィーー・・・!●ガチャ ・・・ガチャ
2007年05月06日
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「探偵狂想曲」 #10 盗賊、破壊する 嫌な奴(ウィル)と分かれたオレは、すっきりしない気持ちを抱えたまま。その後北の門、東の門と回ってみたが、結局親父の足取りを掴むことは出来なかった。 これによって少なくとも、街の外に出ていないことは確認できた――はずである・・・。 ちょっと自信が持てない理由は、果たして親父なら素直に門をくぐって街を出るだろうか? という今更な疑問が湧いてしまったためだ・・・。 ――我が父ながら、かなり普通じゃないからなぁ・・・。 でもまぁ、あれこれ考えてはキリがない。 とりあえず親父は、この街のどこかに潜伏している――、ということにして、ひとまず棚上げしておこう。 それよりも気になるものは、さっきからもう何度も気になっていた博物館の盗難事件だ。 特にウィルの奴の話を聞いてから、どうも胸騒ぎが収まらない。 とても嫌な考えが、浮かんでは消え、また浮かぶ・・・。 その時、オレの目に入ったのは真っ赤なレンガの壁が目印の建物だった。 そこは表向きは遊技場ということになっているが、実は盗賊ギルドである。 まぁ、盗賊と聞いてあまり良い印象を抱くものは居ないが――ま、抱けというのも無理な話だが――街としての盗賊ギルドの存在は、なかなか欠くことのできないものがある。 そもそもこの街の盗賊ギルドの歴史は、街よりも古く。 彼らは、代々この地を自分達のルールを作り、それを厳しく守り続けることで生き残った。 まぁ、手段に関しては・・・あれだが・・・。 しかし、今に至ってもその誇りを持ち続けているため、単純な悪党とは呼べないのが盗賊ギルドである。 特にオレに関して言えば、ここには幼馴染みが住んでいるし、探偵として役に立っている技の数々をここで修行することで習得した――まぁ、恩のようなものもある・・・。 建物の入り口の前に立ち、オレは盗難事件に関してギルドで聞き込みをするべきか考えた。 とっくに自警団が来ていることは間違いないだろうが・・・。 ――まぁ、知らない仲でもないし。それほど気兼ねすることもないだろう・・・。 そう思って、入り口の扉を押し開けようと手を伸ばす、と――、 バキィ! と大きな音を立てて、押し開けようとした扉が内側にいきなり外れた。 開いたのではなく、完全に外れたのである。「んな!?」 急に支えるものがなくなり、オレは前につんのめる。 ぎゅむ・・・! と、顔が何か柔らかいものに受け止められ、辛うじて転倒することは免れた。「い、いきなり・・・。何をしてんだ、てめぇ!?」「え・・・?」 顔を上げる前に、オレは襟を掴まれ軽がると持ち上げられた。「ぐぇ・・・! マリノ苦しい~!」「ん? おー、誰かと思ったらシャトルかよ」「わかったら下ろせって。ゴホ、ゴホ!」「悪い悪い」 と、マリノはいきなり掴んでいた襟から、パッと手を放す。「うぉ!?」 ドサッ!「イテテ・・・」 石畳に打った腰をさするオレ。 と、今度はそんなオレの後ろ襟を掴んで、ひょいっと軽々、引き起こしてくれるマリノ・・・。 まったく、つり上げたり、引き起こしたりと。 こうも簡単に持ち上げられては、男としての立場がないじゃないか・・・。 その女、マリノ・ガーランドは、オレの幼馴染にして、ここ盗賊ギルドのギルドマスターの一人娘である。そう、ま、一応は性別的には女なのだが。一般的な女の子より若干背が高いことや、男みたいな服装や言動を見るとたまに男と間違えられることが多い・・・。 「んで? 今朝、珍しくやってきた理由は、博物館の件だな?」 マリノが言う。オレは黙って頷いた。「ま、とうに予想はしていたと思うが。自警団の奴らも父さんに会いにきていたよ」「レイが来たのか?」「そ、レイさんなら、まぁ嫌味を言ったりしないから良かったけど」「だよな」「まー、お昼近いし。その話をしながらでも、メシにしないかい?」「メシ? あー、別に構わないけど・・・」「よっしゃ! じゃー行こうぜ~!」 と先行くマリノだったが、オレはすかさず彼女を呼び止めた。「ちょっと待った」 振り返るマリノ。「ん? どうした? 財布忘れたのか?」「い、いや・・・そうじゃなく。いつまでそれを持っているつもりだ?」「それ? あー・・・」 と、言われてようやくマリノは自分が握っていた扉を見た。 無論、さっきオレが押し開けようとした扉である。毎度のように、マリノが開くつもりで扉を外してしまったのだ・・・。 ――それを今まで平然と持ちっぱなしで居たのだから大したものだ。 ――まったく恐るべしである・・・。
2007年05月05日
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「探偵狂想曲」 #9 名探偵、嘲笑する 父親の行方を捜す目的で街を歩いていたオレだったが・・・。 博物館を離れ、北の門へと向かう途中。頭の中で考えていることは、博物館盗難事件のことだけだった。 これほどまで気になってしまう理由は、やはりダイアナの話があったためだ。 ――盗難の前夜、食中毒に悩まされた館長・・・。 ダイアナではないが、偶然として済ませるのは納得がいかない。 昨夜、盗みを働いた賊がなんらかの毒物を館長に与え、館内の警備を手薄にしたと考えるのは、それほど想像力を働かさなくても容易に思い至る推理である。 そんなことを考えながら、建物の角を曲がろうとしたオレは、向こうからやってきた奴にぶつかってしまった。 全力でぶつかったわけではないから、お互い尻餅をついたりはしなかったものの。 自分の不注意は素直に謝らなくてはいかない、と顔を上げる。「わ、悪ぃ――ん?」「いや、こちらこそ失礼――あれ?」 相手と同時に目が合い、それが見覚えのある相手だと知ると、オレたちは同時にため息をついた。「はぁー、なんだ。ウィルかよ」「ふぅ・・・、そういう君は、シャトル君か」「なんでため息をつくんだよ。オレじゃ悪いか?」「君だって、ついたじゃないか」「ふん・・・」 相変わらず生意気な奴だ。 そいつの名前は、ウィルフレッド・ライアン。長ったらしい名前なので、「ウィル」とオレは呼んでいる。 西地区に住む良家の出身であり。頭脳明晰、スポーツ万能。それ以外のあらゆる面も、他者より一歩も二歩も抜きん出た才能を見せる天才で。容姿も良く、放っておかない女性も数多いという、いけ好かない奴だ。 まだ自分から女の尻を追いかける努力を見せるヒューの方が、可愛げがある・・・。 だが、何よりも気に入らない点は、こいつが街の人々から「名探偵」と親父と並び称されている点だ。 不可思議な事件や謎を探求、解決することが趣味で。それが高じて事件に首を突っ込み、その上、ほとんど無償で解決してしまうのだから。本業者であるオレたちにとっては迷惑極まりない奴だ。「ところで、君はこんなところで何をしているんだ?」 というウィルの声が、オレを我に返らせる。「いや、別に・・・」「別に?」「ああ、何でもないよ」「ふぅん・・・。そうか、てっきり博物館の盗難事件のことについて考えているものかと思ったんだけどな」「あ?」「ふふん、その様子だったら既に知っているみたいだね」「なんでそう思うんだよ?」「何、大したことではないよ。まず、君は今博物館の方からやってきただろ? 今、あそこは自警団の人たちで大賑わいなはずだ。そんな状況に好奇心旺盛な探偵の息子である君が首を突っ込まないわけがない」「なんか、軽く馬鹿にしてないか・・・?」「まさかとんでもない」 と言いつつ、ウィルの口元がわずかにほころぶのをオレは見逃さなかった。「それに今朝、自警団の人からお声がかかってね」「レイからか?」「ううん、違うよ。盗難だから、第二部隊の部隊長さんからだね。そっか、君はレイチェルさんからお声が掛かったんだね」「ああ、南の門のところで会ってね。まー、ついでみたいなもんだろう」「・・・南の門で?」 ウィルはわずかに眉を寄せる。「ん? あぁ、そうだよ」「・・・もしかして、ジェイドさんを探しているのかい?」 そう出し抜けに言われたオレは目を丸くするしかなかった。「な――!?」 だが驚くオレに構わず、ウィルは真剣な面持ちを崩さなかった。「おい! お前なんか親父の行方知ってるのか!?」 思わずウィルの上着の衿を掴むオレ。 興奮気味なオレに対し、ウィルは冷静にオレの手を下ろさせる。「まぁ、落ち着いて。行方、だって? ジェイドさんがどうしたのか、まず教えてくれないかい?」「あ、あぁ・・・」 オレは多少もどかしい気持ちを抑えながら、かいつまんで親父が行方をくらませた話をウィルにした。「書置きが・・・?」「あぁ、今朝ファラが見つけたんだ」「・・・そうか。するとやはり」「もったいぶるなよ」「あ、すまない。いや、実は昨夜、この辺りでジェイドさんを見かけてね」「マジかよ!?」「マジだ。ただ、普段とは違う怖い顔をしていて。とても声を掛けれるような様子じゃなくてね。気にはなったんだけど・・・」「で、どっちに行ったんだ?」 ウィルは答える代わりに、まずオレの後ろの方を指差した。 つられて振り返るオレ。 だが、後ろにあるものでとくに気になるものはないように思った。 しかし――、 ――この先にあるものといえば・・・。「博物館か?」 と、ウィルの方を向くと。ウィルは頷いた。「うん。そうだよ」「マジかよ・・・。でも、なんで」「それはわからないよ。実際は博物館ではないところへ向かったのかもしれないし」「そ、そうか・・・。でも、サンキュな。今までで一番有力な証言だったよ」「そう? まー、お役に立てたなら良いけど」「しかし、お前・・・。よくオレが親父を探していることに気づいたな」「ん? あー、それはね。こんな時間に君が南の門に向かったと聞いたからね」「は? そんなことで?」「そうだよ。君がこの時間に南の門に向かったこと。それから博物館の方から来てどこに向かおうとしているのか。さらに昨夜のジェイドさんの普通ではなかった様子などを総合して、多少想像力を豊かに推理をして見た結果だよ」「あ?」「詳しく解説しよう。この時間、シャトル君が南の門に向かった理由として直ぐに考えられるものは、そこから外に出るか。あるいは誰が出たかを確認するためじゃないかとまず思ったんだよ。ここまでは良い?」「あ、あぁ・・・」「でも、今君がここに居るってことは、出るためではなかったはずだから。それじゃあ出入りを確認したんだろうと思ったの。その証拠に、君は次に西の門に向かったでしょ?」「それは言ってないぞ」「言わなくても、博物館のほうから来たってことは西の門に立ち寄ったと想像できなくもないでしょ? そもそも今は北の門に向かう途中のはずだし」 「それも言ってないぞ」「まぁね。でも、そうだと思った。君の自宅やシルバームーン探偵事務所は、街の南東側にあるから。南、西、北、東の順に門を回るつもりだろうってね」「なるほどな・・・」 実際そう考えて行動していたのだから、そこまで言われたら認めるしかない。「ま、後はね。シャトル君が誰の出入りを確認しようとしているのか? ってことに考えをめぐらせたんだけど。これはたまたま昨夜、ジェイドさんを見ていたことが役に立ったね。ふふっ、まぁこんな感じかな・・・」 そういってウィルは、すました顔をしながら、意味もなく前髪をかき上げた。 得意げになっているときのこいつのクセだ。 ――ったく、あいかわらず嫌味な奴だ。 ――でも、親父の奴。昨夜、博物館に向かったのか・・・。 その時、オレは妙な胸騒ぎを覚えた。
2007年04月29日
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「探偵狂想曲」 #8 科学者の恐怖 博物館の前。 二人の若者を見送るオレに、背後から声を掛けてきたものがあった。「およ? シャトルさんじゃない?」「ん?」 振り返ると見覚えのある、白衣姿に、まんまるレンズの大きなメガネを掛けた女の子が立っていた。 彼女の名前は、ダイアナ・ドクトル。 街で一番と評判のドクトル医院の一人娘で、自称・科学者。科学はもちろん数学や薬学といった理系全般には強いが。幼少期を一人で研究に明け暮れたためか、常識が多少欠落しているようで、時折怪しい研究品の実験に付き合わされることがしばしばある。体力に自信がなければ、多少付き合い難い人物である。「なんだダイアナかぁ」「ダイアナかぁって、何か軽い感じだなぁ。ボクに会えて嬉しくないの?」 と、ダイアナは一人称を男の子みたく「ボク」と言う。「あ、いや、悪い悪い。そーいうわけじゃないんだけどな。今日はよく知り合いに会うなぁと思ってさ」「そうなの? ふむ、それはなかなか興味深いね」「あん?」「・・・この街の人口を約2万として、シャトルさんの知り合いの数が十数人、一日でその人たちと出会う数の年間を通しての平均は・・・」「お、おい。いきなり訳のわからない計算を始めるなよ」 オレはダイアナのおでこに軽くデコピンをした。「およ~。痛~い、ひどいじゃないか!」「うるさい、デコピンしなければ延々計算していたくせに。大体、何のための計算だよ?」「シャトルさんが『今日はよく知り合いに会う』っていったからさ。その度合いについてボクなりの分析を・・・」「いや、しなくて良いから」「そんな~、つまらないよ」「じゃあ、オレが行っても良いのか?」「え? うーん、それはもっとつまらないかも・・・」「だろ? だったら良いじゃないか」「うーん・・・。うん、そうかも」 随分と悩んだ顔をしながらダイアナはそう結論を出した。 と、頭が良いはずなんだか、結構簡単に言いくるめられる点は結構可愛い奴だ。「ま、それよりもダイアナ。今、どこから出てきた?」「ん? 博物館だよ」「やっぱりか、目的は事件か?」「事件? 盗難事件のこと?」「ああ」「いやぁ、ボクが用があったのは館長さんにだよ」「はぁ? 博物館の?」「そういっているじゃない。実はお父さんに頼まれてね薬を届けてきたんだ」「薬? 館長、どっか悪いのか?」「うん、実は昨日から食中毒にあったらしくてさ」「食中毒・・・?」「そう、夕食後から調子が悪くなったみたいなんだけど。時間がたてば治るとか思っていたみたいで一晩放っておいたんだって。でも、よくならずに今朝の事件でしょ。本来ならうちに来てもらうか、そうじゃなければお父さんが往診に来た方がよかったんだけど。この時間帯はうちも忙しいからねぇ~。それでボクがとりあえず薬を届けにおつかいにきたって訳」「なるほどな」「でもさ~」 とダイアナは、急に口を尖らせた。「うん?」「館長さんたら、ボクが作った薬はいらないって言うんだよ。お父さんの作った薬よりも、5倍も効果が出るように調合したのにさぁ~。ちょっとムカ・・・」「あはは・・・」 ――当たり前だろう。 と内心は思っても口には出さない大人なオレ。 結局、ダイアナはオレに散々不満をこぼして満足すると医院の方へと帰っていった。 それを見送ってから、オレはふと思った。 ――盗難事件の前日に館長が食中毒だって? ――なんか、できすぎているなぁ・・・。
2007年04月28日
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「探偵狂想曲」 #7 魔女っこ、暴走する ジオとペットのパピーを家まで送る途中。 オレたちは、噂の博物館の前を通りかかった。 その敷地を囲む鉄柵の周りには、大勢の自警団団員や、事件を聞きつけてやってきた人間が溢れていて、普段の落ち着いた雰囲気に比べると随分と騒々しい雰囲気だった。 これでは話を聞くわけにも行かないな、などと思っていると。「シャトルさん、知ってる?」 パピーの上からジオが声を掛けてきた。「ん? 盗難事件のことか?」「そうそう。ボクも今朝知ったんだけどね。何かすごいものが盗まれたみたいだよ」「ああ、レイからは、魔法アイテムだとは聞いたけどな」「レイチェルさんから?」「うん、でも何かまでは本人も知らないらしいぞ」「そうなんだ。う~ん、なんか気になるね」「まぁな」「だれか知っている人いないかなぁ?」「んー、知っていそうなのはいないが・・・。こういう時、何が何でも知ろうとする奴はいるかもな」 オレは、ふと知人の一人のことを思い浮かべた。「え? だれの事?」 そう、ジオが言いかけたときだった。「イヤーッ! はなしてぇ! はなしてったら! 服が伸びちゃうじゃないのよぉ~!!」 耳をつんざくような女の子の悲鳴。 あれだけ大勢いる自警団の人間のほとんどが足を止め、オレたち同様に声がしたほうを一斉に向いた。 見れば、博物館の入り口から、がっしりした体格の自警団団員に、後ろエリをつかまれてネコのように運ばれながら、手足をばたばたと動かしている少女の姿が見えた。「・・・噂をすれば、だね」 ジオが言い、オレは頷く。 まったく、噂をすればとはこのことである。 淡いピンク色の長い髪を、大きなリボンでポニーテイルに結わえているヘアスタイルに、動きにくそうなフリルがたっぷりとついた可愛らしい高級そうな服を着た、その姿には非常に見覚えがある。 ジオと同じウェルト地区に住む、大金持ちのお嬢様で名前は、プリシラ・ローズマリー。「プリシラちゃんだ・・・」「大方、盗まれたのが魔法アイテムと聞いて、いても他ってもいられずに忍び込んだところを掴まったんだろう」 オレが冷静な推理を披露してやると、ジオは苦笑した。「あー、やっぱりそうなのかな? 魔法のこととなると、プリシラちゃん無茶するからなぁ~」「あぁ・・・」 うなずくオレ。 プリシラは、早い話が魔法マニアである。 彼女の部屋に一度遊びに行ったことがあるが、そのコレクションである魔導書や魔法アイテムの数には驚かされた。何より家が大金持ちであるから、その資金力に物を言わせて目新しいものがあれば直ぐに買っているようだ。 ジオと言い、プリシラと言い。金持ちの金の使い方は貧乏人のオレにはよくわからない。まぁ、それでもジオの方がずっとマシではあるが・・・。「もー! あったま、来ちゃうわ~!」 声に振り向くと、プリシラがこっちに向かってやってきた。怒りのあまり、まだオレたちのことに気づく様子はない。 正直、プリシラの相手をするのは面倒なので、やり過ごそうかと悩んだが。 もたもたしているうちに、直にむこうがこちらに気づいた。「あー! シャトルじゃない!」 オレの姿を確認するなり、トタタタッ! と駆け寄ってくる。「おはようプリシラちゃん」「おはよぉ、ジオ! それに犬!」「・・・プリシラちゃん、犬じゃなくてパピーだよ」 ジオがムッとした顔でいう。 こいつがこういう顔をするのは実は結構珍しい。大切なパピーをバカにされたような気がしたからかもしれないが、どうもプリシラとジオはあんまり相性がよくないみたいだ。 二人はプリシラが一つ年上なだけで、ほぼ同い年といえるのだが。同い年だからといって仲がいいとは限らないというのは、少し面白い。「犬は、犬でしょ? ちょっと大きいけど」「だからパピーだって・・・」「ガウガウ!」 飼い主の思いを受けてか、パピーも吠え出した。「な、なによぉ!? プリシラとやる気、犬!?」 一瞬、怯えた表情を見せるも、プリシラは毅然とした態度でパピーと向き合う。 博物館に忍び込む行動力といい、結構、度胸はあるなぁと傍で見ていて少し感心するオレ。「ガルル・・・!」「ダ、ダメだよ。パピー!」 うなるパピーを宥めるジオ。「プリシラ、今、すごく機嫌悪いんだから! そっちから来ないなら、こっちから行くわよぉー!」 と、本当に気が立っているらしくプリシラはいきなり呪文を唱え始めた。 ――て、おいおい。街中で攻撃呪文使う気かよ!「プリシラ、さすがにそれは――!」 止めに入ろうとするオレだったが、それよりも早く。「パピー、家までダッシュ!」「ワォン!」 機転を利かせたジオの掛け声とともに、パピーが駆け出した。「な!? ちょっとぉ、待ちなさいよぉ~!」 と、慌ててそれを追うプリシラ。 無論、いかにも運動が苦手そうで、動き難い衣装のプリシラが走って追いつくことなどできるわけがない。 直に彼女は、疲れ果てた様子でその場に座り込んでしまった。 が、直に再び立ち上がると走り出した。 ――元気だなぁ・・・。 取り残されたオレは、なんとなく微笑ましい心境で若い二人と一匹を見送った。
2007年04月22日
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「探偵狂想曲」 #6 坊ちゃん、散歩中 多少、後ろ髪を引かれる思いがあったものの、ソーニャと分かれたオレは真っ直ぐに西の門へと辿り着いた。 西や東の門は、南北の門とは違い。森に面していることもあって、あまり人の出入りはなく、大きさもずっと小さい。それがあまりにみすぼらしいということで、見栄を張った高級住宅地の住人がその門を銀製のものに作り変えたことから別名「銀の門」と呼ばれている。それに対して、東の門は「鉄の門」と呼ばれるようになったのだが。 「銀の門」が作られてから十数年――、眩いほどの白銀色に輝いていた門は、今ではすっかり錆びて、くすんでしまっている・・・。 オレは早速、門番と話をして、親父が西の門をくぐっていないことを確認した。 門番いわく「絶対にそれはない!」とのことだった。 だが、こうもあっさりと断言されると反って、突っ込んだ質問をしてみたくなるのが人のさがというものだ。「本当だろうね?」「嘘をついてどうする。あんたんとこの親父さんは見てないよ」「『あんたんとこの親父さんは』ってことは、他の奴は出たのか?」「ん? あー、あぁ、それはな・・・」 門番は返答につまる。「どんな奴が出たんだよ? そいつ、もしかして盗賊かもしれないぞ?」「い、いや、そうじゃない。ほら、あんたも付き合いがあるだろう。グリュン家の坊ちゃん」「ジオのことか?」 門番は「あぁ、そうだ」と頷いた。 ジオ・グリュンは、街の数あるお金持ちの家の中でも随一を誇る名家のお坊ちゃんである。 年は、今年で14歳になったのだろうか・・・。 年齢よりも幼く見える顔に、愛くるしい笑顔で、無意識に美少年マニアの心をくすぐる素養を備えている。 また、自他共に認める動物好きで、大きいのから小さいのまで実に様々な動物をペットとして飼っている。 オレたちが知り合った切っ掛けも、逃げ出したペット探しだった。「・・・その坊ちゃんが、森のほうへ散歩に出かけたよ」 と門番が言った。「子供が、一人で? 大丈夫なのか?」「いいや、一人じゃないさ。熊みたいに大きな犬にまたがっていったよ」「熊みたいに大きな犬? あぁ、パピーのことか」「パピーっていうのか? 似合わない名前だな・・・」「ま、まぁな・・・」 とオレは乾いた笑みを浮かべた。 熊みたいに大きな犬ことパピーは、黄金色に輝く毛並みの綺麗なオオカミのような姿をしているが、動物というよりは実は、ヘルウルフと呼ばれる魔獣の一種なのである・・・。しかし、その事実は世間一般には極力伏せられている。 魔獣ということがばれてしまうと、パピーがどんな目に合わされることか。 子犬のころからジオに育てられたお陰で、人間に慣れているパピーは人を襲うようなことはない。 だからこういう場合は、下手に騒いだりしない方が賢明だといえる。「あ、シャトルさん! おはようございま~す!」 顔を上げると、森の中からパピーにまたがったジオがやってきた。 今日も頭をすっぽり隠すような大きな帽子をかぶっている。これも美少年マニア魂をくすぐる重要なアイテムの一つらしい。「おぅ。ジオ、お帰り」「うん、ただいま!」 と例の愛くるしい笑顔を見せるジオ。 うっかりすると、オレまでやられそうになる――恐ろしい奴だ。「パピーもお早う」「ガゥ、ガゥ!」 パピーは大きなふさふさの尻尾を振りながら、オレに応えるように吠えた。 ――まぁ、こんな様子なら「大きな犬」だよなぁ・・・。 それからオレは、ジオを家まで送ることにした。
2007年04月16日
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「探偵狂想曲」 #5 高飛車、文学少女 南の門の番人に話を聞いてみたものの、良い話は聞けなかった。 中年だが体格のガッチリしたそいつが言うには、閉門してから開門をした朝までに、親父はもちろん誰一人として門を通ったものはいないということだった。「――それに博物館で盗難事件があったとしたら、今後ますます門の警備は厳重になるだろうな」 と、門番はもっともなことをいう。「だろうな。ま、もし親父が街を出るようなことを見かけたら、絶対に止めてくれよ?」「おう! わしに任せておけ!」 門番は自分の厚い胸板をドンと叩いた。 若い頃はその強さのあまり「鬼神」とまで、あだ名されたケンカの達人である親父を止めるのは、なかなか至難の業だとは思うが。まぁ、ともかく頼もしい限りだ・・・。 * それからオレは、他の門をチェックするため街を西周りに回ることにした。 ウェルト地区と呼ばれる街の西側は、いわゆる高級住宅地という感じのエリアで、そこの住人にはあまりいい印象がないのだが・・・。 ま、それはともかくとしてウェルト地区には、学園、図書館、劇場、病院といったいくつかの施設があり。そして、件の博物館もこの地区にある。 だから父を探すついでに盗難事件についての情報集めもしようと思ったのだ。 レイの言うとおりになるのは少し嫌だが。興味を持った事件を放置するのはもっと嫌なのだ。 西の門に向かいつつ、誰か知り合いに会わないかと思っていると、前方を歩いている女の子が目に留まる。後姿なのではっきりとは分からないが、数冊の大きな本を両手で抱えているようだ。おそらくこの先にある図書館へと向かう途中なのだろう。 顔は見えないが、その短く切り揃えた水色の髪には見覚えがある。 ソーニャ・クリスフィールドという、多少性格に難点のある読書好きの女の子だ。 オレはソーニャとの距離を詰めてから、声を掛けた。「おい、ソーニャ」「え? だ、誰!?」 振り返ったソーニャは、危うく本を落としそうになった。「お、とっと・・・!」 崩れかかる本の山に手を掛けて支えてやったが、ソーニャの第一声は感謝の言葉ではなく、苦情だった。「ちょっと、シャトルさん! 急に声を掛けてこないで下さい! 危うく大切な本を落とすところでしたよ!」 その言葉に、オレは多少カチンときた。「だから助けてやったじゃないか!」「・・・それは感謝しますけどね。でも、あなたが私を脅かさなければ、そんな面倒も掛からなかったはずですよ?」「ただ名前を呼んだだけだろ!」「でも、私はビックリしたんです!」「あっそ、それは悪かったですね。どーもすみませんでした!」「謝るなら、ちゃんと心をこめて謝ってください!」「な・・・!」 オレは思わず絶句する。 と、こんな具合にソーニャとはいつもこんな感じについ感情的に言い争いを始めてしまう。原因は、粗雑なオレの言動にもあるのだろうが。ソーニャの性格や態度にも問題があると思う。 なぜか知らないが、ソーニャのオレに対する言動には棘があるのだ。それにいちいち反応して、言い争いに発展してしまうのが、いつものパターンだ。 ――女の子でなければ、殴り飛ばしてお終いだが・・・。 グッと握った拳を握り締めてオレは、荒ぶる気持ちを抑えた。 ――それに親父や盗難事件のことを聞かないと、な。 そう思い直し、オレはぎこちない動作でソーニャに頭を下げた。「・・・いきなり声を掛けて悪かった」「え・・・?」 オレが素直に謝ったことが意外だったのか、ソーニャは一瞬目を丸くする。「・・・えぇ、分かっていただけたのなら結構です。それで私にないか御用ですか?」「ああ、実は今朝から親父が置手紙を残して行方をくらませてさ。ソーニャが、どこかで見かけなかったかなぁと思ってね。見なかった?」「シャトルさんのお父様というと、ジェイドさん? そうですね。一週間前くらいに図書館でお会いしましたけど。今朝のこととなると、私にはわかりませんね」「そっか、じゃあもう一個、博物館で盗難事件があったのは知っている?」「いえ、初耳です」「そっか、足止めして悪かった。お詫びに本運ぶの手伝ってやろうか?」「え! あ、いえ・・・それは結構ですよ。お父さんを探すのに忙しいでしょうし・・・」「でも、図書館なら直ぐそこだし・・・」「そ、それでも大丈夫ですから!」 ソーニャは必死に首を振ってオレの申し出を拒んだ。 もしかして嫌われているのだろうか? でも、嫌いなら嫌いとソーニャならハッキリ言ってきそうだけど・・・。 ま、そこまで拒まれた以上、無理やり本を運ぼうとしてもまた怒られるだろうから。オレはここで彼女と別れることにした。「・・・そっか? まぁ、気をつけていけよ」「わ、わかっています!」「それじゃーな!」 立ち去ろうとするオレ――と、ソーニャはそんなオレを呼び止めた。「シャトルさん」「ん?」「あ、その・・・。お父さんが早く見つかるといいですね?」「おぅ!」 ソーニャに手を振って、オレはその場を後にした。 それにしても、ソーニャは、理不尽なことに怒ったり、嫌われているのかと思えば応援してきたりと、複雑な性格の奴である。 ――ま、根は良い奴なんだろうけど、なんだかなぁ・・・。
2007年04月15日
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「探偵狂想曲」 #4 女団員、捜査中 ヒューと分かれた(向こうが一方的にどっかに行っただけな気もしないでもないが・・・)オレは、南の門へと辿り着いた。 南の門は、日中、大きな街道へと開かれている北の門と合わせて主要な門とされている。 一般に、北の門が「裏門」と呼ばれているのに対して、こちらは「表門」なんて呼ばれるが。南の門が「太陽の門」、北の門は「風の門」というのが正式な名称である。 ま、面倒なのでオレは、南の門、北の門で通しているけど。 さて、南の門もそうだがそれぞれの門のそばには、門番たちの詰め所がある。 隊商などの街に出入りする人間をチェックするための事務所や、門番が寝泊りする部屋がそこにある。 門番には、街の治安を維持する民間機関「自警団」の団員が交代制でその任に就くらしいが。どういうローテーションなのかは、団員ではないオレには分からない。 自警団に所属するものの多くは、力自慢の荒くれ者が多く。ある種、傭兵部隊という印象を受ける。そんなわけであまり品が良い集団ともいえないため、街の上流階級の人間(自分が上品だと思っている連中)には少々毛嫌いをする者もいるようだが。 オレのような下流階級の人間にとっては、時折、街を襲撃してくる魔物や災害時に頼りになる集団だ。 まぁ、中には好かない奴もいるにはいるんだけど・・・。「――ん? 坊やか、どうした?」「げ・・・」 丁度、詰め所の入り口から出てきた鎧を着た女と目が合い、オレは少々気まずくなった。 結い上げた燃えるような赤い髪と、赤い皮製の鎧がトレードマークの、その女の名前はレイチェル・カーマイン。愛称は、レイ。 女でありながら(そういうとすごく怒るんだけど・・・)史上初の女性自警団団員になった凄腕の女剣士だ。腕だけでなく、頭も結構良く入団から数年掛けて着々と実績を重ね、今では自分の小隊を預かるほどの地位を持っている。 いわゆるキャリアウーマンって奴だが、オレがもっとも苦手とするタイプの女である。 女は黙って男に従うべき――なんていう時代遅れなことまでは言わないが、これほどの「強い女」を前にすると男として立つ瀬がない・・・。まぁ、そういうことだ。「レイ、いい加減『坊や』は止めてくれよ・・・」 オレはムッとしながらレイを睨んだ。「坊やだから仕方ないだろ?」「むぅ・・・」 いくら年上だからといって、あからさまに子ども扱いするところも気にいらない理由の一つだ。 ともかく話題を変えることにした。「そ、それよりもさ。小隊の隊長さんともあろう方が詰め所にこんな時間からなんの用だよ?」「・・・うーん、捜査中のことだからおおっぴらにはいえないんだけどね。ま、坊やには特別に教えよう」「・・・うん」「実は昨夜のことだけど、博物館に盗賊が押し入ったんだよ」「盗賊?」「そう、今、自警団で手の空いているものは全員その捜査に借り出されているんだ」「何が盗まれたのさ?」「だいぶ情報が交錯しているので、私も詳しい話は聞かされていないけど。とにかく博物館で厳重に保管されていた代物で、絵画や宝飾品ではなく、魔法アイテムらしいけど・・・」「魔法アイテム・・・」「うん、この街や周囲の遺跡には魔法王国時代からの歴史の古いアイテムが残っているらしく、その一つではないかと思うんだけど・・・」「なるほど、悪いね。まる秘情報を教えてもらって」「なーに、坊やに言っておけば好奇心を起こして、自主的に捜査に協力してくれると思ってね」「・・・う」「じゃあ、何か分かったら自警団まで。ご協力よろしく!」 それだけをいうと、レイは別の場所へといってしまった。 まったく、オレの知り合いにはつくづく自分勝手な奴が多い・・・。
2007年04月08日
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「探偵狂想曲」 #3 伊達男、愛を語る ハミングバードを重い足取りで後にしたオレは、いよいよ父親の失踪を深刻なものとして受け止め始めた。 ――さて、これからどうしたものか・・・。 しばし考え込んで、そうだ街外れの門のところへいってみようと思いついた。 この街は、周囲を高い塀で囲まれているために街へ出入りするには、東西南北の四箇所に設けられた門のいずれかをくぐらなければならない。 各門には、四六時中、門番が張り付いていて人の出入りを常にチェックしている。特に日中であればそいれほどでもないが、夜遅い時間から明け方までは各門は閉鎖されるためそのチェックはいっそう厳しいものとなる。 というわけで、親父が街を出たとなれば、門をくぐらないわけにはいかず。通ったとすればその姿を門番が確認しているはずだ。 「・・・よし、門へ向かおう」 オレはひとまず今いる場所から一番近い南の門を目指すことにした――。 * ポロロ~ン♪ 南の門へと向かおうとするオレの耳に、聴き覚えのある音色が届いた。 風に乗る美しいリュートの音色。 そして・・・、 あぁ、何と美しい瞳~♪ 空のように、澄んだブル~♪ 愛らしい唇~♪ バラの蕾のような淡いピンク~♪ 眩い笑顔~♪ 太陽のように輝く~♪ ・・・なんとも鳥肌が立ちそうな寒気がする歌声も一緒に聞こえてきた。 見たくはなかった。 見たくはなかったが、自然と首がそちらの方を向いた。 歌声は気色が悪いが、そのリュートの音色は確かに人を惹き付けるものがあるためだ。 見ると、お天道様がようやく空の真上に昇ろうかという時分だというのに。 リュートの音色を中心に人だかりが出来ていた。 その多くは、若い女の子でリュートの音色に目を閉じて、うっとりと聞きほれているようだった。 オレは、その人だかりに近づいて、ひょいっとその中を覗き込んだ。 ――あぁ、やっぱりこいつか・・・。 まぁ、歌声を聴いた時点で分かっていたことだったが。 リュートを奏で、愛の詩を唄うその男の名は、ヒュー。 女癖が極めて悪い、オレの悪友の一人だ。 天才的な音楽的センスの持ち主で、リュートを弾かせればおそらく街で一、二を争うほどの実力者なのだが。そんな才能もほとんど女の子を口説くために使われているといえば、なんだか・・・、非常にもったいないような気がする。 おまけに歯が浮くような歌詞を臆面もなく唄うため、こいつの街の評価は、大体「素晴らしい演奏家」と「いけすかないナンパ師」の真っ二つに分かれる。 オレ自身の評価は・・・、ま、その時の状況しだいだ。「ん? よぉ、シャトルじゃないか!」 と、野次馬に混じっていたオレの姿にヒューが気づいた。「あ、やべ・・・」 思わず本音が口から出る。 周囲の女の子が一斉に、オレの方を見た。 その目は、オレには演奏会の邪魔ものを非難しているように見えたが。ヒューはそんなことはまったく気にしない。「なんだよ。『やべ・・・』って、オレに見られたことがかよ?」「あ、いや・・・。お前の聞き間違いじゃないか?」「そっか? まぁ、いいや・・・」 苦し紛れの言い訳だったが、首をわずかにかしげるヒューは特に気を悪くした様子は無く、周囲の女の子達に言う。「ごめん、みんな。友達が来たんで演奏はここまで、な?」「えー!」「そんなー!」「もっと聴きたい~!」 一斉に不満の声を漏らす女の子達。 そんな女の子たちを、ヒューの奴は「まぁまぁ」とやんわり宥める。「今度、劇場で演奏会がやるからさ。続きはそこで・・・」 他ならぬヒューに言われて、女の子達は渋々納得した顔をして、方々に散っていった。「もう、あなたのせいよ!」 と、何人かがオレに向けて文句を言っていったのが、ひじょーに心苦しい。 こうしてオレの街の女の子に対する評価が下がっていくのだ・・・。 ・・・シクシク。「で、今日は、ファラさんはどうしたんだ?」 心の中で泣くオレに構わず、マイペースに自分が気になることを聞いてくるヒュー。「ファラは、まだ家の中だよ」「なんだ、それは残念だな・・・彼女のために作った歌を聴いて欲しかったんだけど・・・」「ファラのために?」「・・・あぁ? 変か?」「少しな。なんだヒュー、お前、ファラのことが好きなのか?」 冷かすつもりでそういったのだが、ヒューはまったく動じる様子もなく、むしろ堂々とした態度で頷く。「もちろん大好きさ! 彼女だけじゃなく、この街のいや世界中の女の子のことをオレは愛している! しかしやはりその中でも、お前の父親に尽くす献身的な彼女の姿は、とくに美しいとオレは思っている!」「だぁー! やめろ! 恥ずかしい!」 恥ずかしさのあまり思わずそう叫んでオレはヒューの頬を殴り、飛ばした。 もちろん本気ではなく、加減して。 それでも背は高くても、体力ではオレに劣るヒューは派手にひっくり返った。「ぐはっ! な、何をするんだ! いくらお前でも、オレの顔を殴ることは許さんぞ!」 抗議するヒューをオレは一喝する。「やかましい! それよりヒュー、親父を見なかったか?」 「親父・・・、ジェイドさんか?」「あぁ、他にオレの親父がいるのか?」「・・・お前、それは人にものを尋ねる態度じゃないぞ」「うるさい!」「ったく、ジェイドさんなら・・・夜中、博物館の前を歩いているのを見たような・・・」「!? それは本当か!? いつ!?」 思わずヒューの服に掴みかかるオレ。「い、いつって、三日か四日前だけど・・・」「・・・はぁ? なんだ。ぬか喜びさせやがって」「どうしたんだ?」 そう尋ねられて、面倒ではあったがオレは親父が置手紙を残し失踪したことを説明してやった。「そりゃ、心配だな・・・」 話を聞き終えて、ヒューは深刻そうな顔をした。「あぁ、そうなんだよ」「ファラさん、落ち込んでいるだろうなぁ・・・」「って、ファラがかよ!?」「他に誰がいる! あー、居ても立っても居られない! 今からファラさんを慰めるために一曲歌ってくるぜ!」「あ、あぁ・・・」 物凄い勢いで走っていくヒューを見送って、数分、オレは門へ向かう途中だったと思い出し先を急いだ。
2007年04月01日
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「探偵狂想曲」 #2 小鳥、さえずる 美味しい朝食を済ませたオレは、ファラに急かされるようにして父の行方を追ため、街のあちらこちらを歩き回ることにした。 あの書置きが親父のたちの悪い悪戯という可能性も、無きにしも非ずだ。 行きつけの酒場にでも行けば、ちゃっかりカウンターの席にでも座っているかもしれない。 そう思ったオレは、事務所を出ると真っ直ぐに、親父の行きつけの店に向かった。 この街には酒場がいくつもあるが、その中でも最も品のいい店が「カフェ・ハミングバード」という店である。 ロヴィン・ポゥという若い男が経営する店には、実に様々な種類の人間がやってくる。 お酒意外にも、未成年向けのドリンクや食事なども出しているので。オレも仲間同士のたまり場として利用させてもらうことがよくある。 そして、そんな中には大小悩みを抱えた人間もいるようで。そこに目をつけたロヴィンは、いつの頃からか、そんな連中のトラブルを依頼として引き受け、オレたちのような探偵などのトラブルシューターに仲介する仕事もしている。 我が「シルバームーン探偵事務所」の所長様が「ハミングバード」を気に入ったのも、酒や料理が上手いことはもちろんだが。仕事の仲介業をしているというその点が大きく。仕事が無ければ、ほとんどそこに入り浸っているのである。 特に「ハミングバード」には裕福な客も大勢やってくるので、そういう客の依頼ならば大口のものであることがほとんどなので。目ざとい親父が見逃すわけない。 実際、「ハミングバード」で受けた依頼は、「シルバームーン探偵事務所」の財政の三割ほどを支えているといっても過言ではない。 また、最近では、親父に仕事を依頼することを目的に「ハミングバード」へ訪れる客もいるらしい・・・。 リンリ~ン! ドアに付いたベルが上品な涼しい音を響かせる。 ベルの音を聞いて、カウンターでグラスを磨いていた店主が、女みたいに整ったその顔を上げる。「いらっしゃ――、おや、シャトルか・・・。まだ開店前だよ」「ロヴィン、親父来てない?」「ジェイドさん? いいや」「・・・そっか」「ジェイドさん、どうしたんだ?」「ま、これを見てよ」 カウンターの席に腰を下ろしてから、オレは親父の書置きをロヴィンに渡した。 書置きの内容を確認しながらロヴィンは、オレの前にミルクの入ったグラスを置いた。「・・・ミルクかよ。安くても良いから、どうせなら酒をくれよ」「不良坊主。君はまだ未成年だろう。もらえるだけ良かったと思えよ」 ロヴィンは子供を叱るようにいった。「・・・はいはい」「しかし、ジェイドさん家出したのか」「ああ。でも、一応冗談の可能性もあるかなと思ってね・・・」「それでうちの店に着たんだ」「そゆこと」「ふむ、それは困ったな・・・」「なんで?」「そりゃ、うちにはこの街一番の『名探偵』目当てのお客さんも来るからね。今後の客足がちょっと心配かな」「オレがいるじゃん」「君が?」 ロヴィンは少し可笑しそうに目を細めた。「なんだよ。オレじゃ役不足だっていうのかい?」「・・・君、『役不足』って、意味分かっていってる?」「え?」 首をかしげるオレを、見てロヴィンは苦笑した。「フッ・・・、まぁ、いいや。ともかく君が任せてくれっていうなら、仕事を頼むことにするけどね・・・」「お、おう! どんな依頼でもドンと来いって!」「うん。ま、それはおいて置いて・・・」 ロヴィンは親父の書置きを返しながら話題を変えるようにいった。「ん?」「実は、ジェイドさんのツケが結構あるんだけどなぁ・・・」「はい?」「当然、息子の君が払うことになるんだよねぇ~?」「嘘ぉ、マジで・・・?」「ちなみにいくらかというと・・・」 と、ロヴィンは帳簿を見ながら、親父のツケというその金額を紙に書いて渡した。 目玉が飛び出す、とまでは行かないがそれはかなりの金額だった。「・・・こ、こんなに貯めてたのか?」「うん」「帰ってファラに相談しても良い?」「・・・う、うん。まぁ、君と私の仲だからいっぺんに返せとはいわないからね?」「お、おぅ・・・。じゃ、ミルクご馳走さん」 オレはそそくさと「ハミングバード」を後にした。 シャトルを見送りながら、ロヴィンは呟く。「・・・う~ん、なんか随分と落ち込んだみたいだけど。大丈夫かな・・・?」
2007年03月11日
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「まえがき」 まぁ、いろいろ放ったらかしにしてしまったこと等、いろいろ(かなりたくさん)ありますが、いろいろ一新して、今度は無理せずに連載を続けようかと思います。 順調に進めば、いくつか棚上げしてあることにも手を付けられるかなぁ~と思います。 ま、参考までに。 * 「探偵狂想曲」 #1 父、失踪する ――その朝、オレは若い女の声にたたき起こされた。「大変です! シャトルさん、起きてください!」 ガバァ!と、有無を言わさず物凄い力でベッドから引き摺り下ろされたオレ。 勢いあまって、ドン!と、板張りの床にしこたま頭を打ち付けてしまった。「っんだよ! ファラ! 坊ちゃんを起こすならもっと優しく――」 抗議しようと大きく開けたオレの口に、ファラは紙切れ一枚をねじ込んだ。「!? ぺぺっ! 何だ、このまずい朝食は・・・!」「シャトルさん! ヤギさんじゃあるまいし、それに大切なことがかかれた紙なんですから食べないでください!」「ファラが口の中に突っ込んだんだろーが!」「私が・・・?」 きょとんとした顔をするファラ。「はぁ、まぁいいや。大切なことがかかれた紙だって・・・?」 オレは、しわくちゃになったその紙切れを伸ばして目の前に広げた。 紙切れには、ファラのいう大切なことがしたためられていた。 とても簡素で、ひじょーに分かりやすい文体で・・・。 『シャトルへ オレは、しばらく旅に出てくる。 一年くらいで帰るから、その間、事務所のことはお前に任せた。 万が一、潰したりでもしてみろ・・・そのときは、お仕置きだ。 では、一年後に元気で再会しよう。 偉大な父 ジェイドより』 オレは目を見開き、開いた口がふさがらなかった。 しばらくそうしていて、ようやくファラに聞いた。「・・・どういうことだ?」「ジェイドさん、家出しちゃったみたいなんですよぉ~!」 ほとほと困り果てた顔をして、ファラは言う。「マジで?」「マジです! だってこの書置きがあるし、ベッドはものけの空、それにジェットさんの帽子やコート、パイプといった愛用の品々がないんですよぉ~!」「・・・げ」 帽子とパイプが無いと聞いて、オレは自分の父親、すなわちジェイド・ロックフォードが失踪をしたという事態を、真実として受け入れた。 ――できれば、ウソか冗談か。あるいは夢であって欲しかったけど・・・。「シャトルさん、どうしましょう・・・?」 不安そうな顔をして聞いてきたファラに、オレは毅然とした態度で言った。「ファラ、とりあえず朝ごはんにしよう」 タイミングよくオレの腹の虫が、ググゥ~と鳴った。
2007年03月02日
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だいぶ話を書かなくなってから時間が経ちました。そろそろ「何か書きたい!」という気持ちが充填された頃かなぁ~?とか、思ってみたり。ま、予告の予告の予告(回りくどい)までということで・・・。なんとなく、スラップスティック的なファンタジーがいいようなぁ・・・気がします。はてさて、どうなることでしょうか。
2007年02月27日
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「手品」2 ぼくは何となく面白くない気分だった。 というのも、目の前にある彼の顔――、 得意満面に「さぁ、どうだ~!」という挑発的な笑みを浮かべたその顔を見ると、つい手が出てそのほっぺたをつねってやりたくなる。 こんな感情的な思いを抱くことなんて、近頃では彼のこの顔を見た時だけだ。「どう? 不思議でしょう?」 身を乗り出して聞いてくる彼に、ぼくはつい――、「・・・ぜんぜん」 と答えてしまった。 しかし、彼は気を悪くする風でもなく、むしろいっそう楽しそうな顔をする。「ほ、ほほぉ・・・。では、この手品のトリックをといてもらいましょうか~?」 そう言われてしまえば、もう答えは決まったようなものだ。「・・・分かった」 ぼくは、ゆっくりと頷きながらそう答えた。「え!? もう分かっちゃった!?」 と、一瞬にして余裕の笑みを消して慌てふためく彼。「いや、まだだけど・・・」「ホッ・・・。そーでしょ、いくらなんでもこんなに簡単に見破られるわけないよねぇ~!」 コロッと再び余裕の笑みを取り戻す彼。 なかなか忙しい・・・、そして器用なことだ。 しかし――、一体これは何なのだ? どれもこれも怪しいことばかりで、どこをどう疑えばいいものか・・・。 ――初めに山からカードを取って、そこから適当に2枚選んで、そのカードをとっかかりに数枚のカードを出していった・・・、「・・・たぶん、どうやってもダイヤの7に辿り着くんだろうね」 ポツリと呟く。「ギクッ!」 そう口に出して言いながら、彼は肩を震わせた。(・・・分かりやすいな)「――ということは、どうやっても場に出るカードの数は同じになるということだ」 ちらりと彼の様子を窺がうと、そ知らぬ顔をして明後日の方向を向いている。 これで手品師のつもりなんだろうか? まったくポーカーフェイスが出来ていないのに・・・。 ぼくは場に出ていたカードが何枚あるか、まず全てをかき集めて数えてみた。「・・・24、25、26、27、28枚か・・・」 28・・・なんだろう。この数字に意味があるのかな? ぼくは椅子の背にもたれながら、28という数字をしばらく頭の中にめぐらせた。 ・・・28の半分は、14・・・、そうか・・・。「・・・分かった」「え!? もう!?」「うん、最初に引いた2枚のカード。どれを引いてもみんな同じだね。場に出るカードは最初の二枚を合わせて、全部で28枚になる。だから事前に29枚目を覚えておけばいいんだよ。違う?」「・・・どうして28になるのかな?」 と彼は消えそうな声でいう。最後の悪あがきといった感じで。「じゃあ、仮に最初に引いた2枚のカードがどちらも、トランプで一番大きな数字であるキング・・・、13と考えてみよう。 最初は13からカードの数を引いて、その数の分、カードを出していくんだったよね? ということは、13引く13・・・答えは、ゼロ。だからこの時はまだ場に新たな札は出ない。 そして、次に2枚のカードの数を足し、その数の分だけのカードを開いていくんだったね。ということは13足す13は、26ということになる。 26、これが2枚のカードを足したときにでる最大の数。この26と、既に出ている2枚を足せば28枚になる。 今度は、2枚のカードが13と12だったとしよう。この2つを足すと25になる。 26にするには、1枚足りない。その分を『13引く12は?』という別の計算をさせて、足りない1枚を出させるというわけ・・・。 13と11なら、2足りない。だから13から引く11を引かせて、足りない2を出させる。 13と2なら、11足りない。だから13から2を引かせて、足りない11を出させる。 8と4なら、全部で14足りない。だから13から8引いて5、13から4を引いて9、5と9を足して14。 ま、大体トリックの解説はこんなところかな」 パチパチと、彼は乾いた拍手をした。 顔にはまたあのネコみたいな笑みが戻っていた。「正解です」「・・・」「まさか、こうもあっさり見破られるとは思わなかったよ。もっとすごいトリックの手品を仕込まないとダメだなぁ・・・」「・・・またやらせるの?」 ぼくは少々うんざりした口調で言った。「もちろん!」 彼は元気良くそういった。「だって――」「?」「オレの一番の楽しみは、あなたと戯れることなんだからね」(・・・迷惑な楽しみだ)「じゃ、またいずれ」「・・・うん。じゃ、またね」 手を振る彼を見送ると、ぼくは何事もなかったように読みかけの本を、再び読み始めた――。(おしまい)
2007年02月16日
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「手品」1 閑散とした図書室の中、ぼくが適当に棚から引っ張り出してきた小説を読んでいると、彼がやってきた。「おはよう!」 いつもながら元気のいい声で彼は言う。「やぁ・・・」 ぼくは小説から、わずかに顔を上げてそれに応じた。「あいかわらず一人ぼっちで本を読んでいるんだね~!」「・・・」 たぶん彼には悪気はないのだろう――台詞自体は少しも気にならないが。ただ声のボリュームに気をつけて欲しいと思った。 なにしろここは図書館なんだから。 ぼくは、自分の鼻先に人差し指を一本立てた。「あぁ、ごめんごめん」 と彼は、ペロッと短く舌を出していう。「で・・・? 今日は何?」 極めて静かな声でそう尋ねると、彼は猫みたいな顔でにんまりと笑みを浮かべた。「分かっているくせに」「・・・それもそうだね」 ぼくは読みかけページを下にして、テーブルの上に置いた。 ここでちょっと彼の話をしよう。 彼は、いろいろなことに興味を持ち、あれこれと手を付けたがる多趣味な人物なのである。 最近は特に「手品」に興味があるらしく。ここ二週間ほど、新しいネタを仕込んでは、ぼくの所を訪れて、それを披露し、そして最後にはそのタネを当てさせようとする。 手品なのだから、タネを当てられてはダメなんじゃないのか? そういう考えはどうやら彼にはない。 ぼくに見破られるその度に、一瞬はとても悔しがるのだが。直ぐにけろっとして新しいネタを仕込みに帰ってしまう。 で、また次の日くらいには再びやってくるのだ。 そんな感じで、二週間が過ぎた。 まぁ、今回は手品だからいい。 その前はボードゲームに凝りだして、毎日のように将棋だ、オセロだ、最終的には人生ゲームとまでわざわざここに持ってきて、その度にぼくはそれに付き合わされたこともある。「さてと、今日はどんな手品を見せてくれるんだい?」 両手の組んだ指に顎を軽く乗せるという格好をしたぼくは、彼と向き合う。「今日はトランプの手品だよ」 と、取り出したのはごく普通のトランプ――プラスチック製のものだった。「これをどうするの?」 と尋ねると、彼はケースから取り出したトランプを自分の手のひらの上に乗せ、ぼくの方へ差し出した。「ここにあるのはジョーカーを抜いた52枚のカードです。この上から何枚かのカードを取り分けてください」「何枚でもいいの?」「うん」「じゃあ、全部・・・」 そういって手を伸ばすと、彼は慌てて手を引っ込めた。「全部はちょっと困るな」「何枚くらいがいいの?」「・・・う~んと、じゃあ十枚くらいかな」「はいはい」 ぼくは言われたとおり、彼の手の上の山から十枚ほどのカードを取り分けた。「・・・で?」「今、取り分けたものからお好きなカードを二枚選んでください」「自分だけ見るの?」「ううん、表にしてください」「えーと、ハートの4と三つ葉のジャックだね」「なるほど、では残ったカードを僕の手の上の山に重ねてください」「はい、どうぞ」「どうも。さて、ここで簡単な算数の問題です」「はい?」「トランプで一番大きな数字は何ですか?」「キング・・・13だね」「そうですね。では、13から4を引いた数は何枚でしょう?」「9」「そうですね。では、この4のカードの上に山札の上からから9枚引いて重ねていきます」「うん、ジャックのほうも同じかな?」「うん。ジャックは11なので、13引く11は・・・」「2だ」「1、2と・・・」「これで終わり?」「まだだよ。最後にね。4と11を足した数の枚数をやっぱり山札の上から順に出していきます」「・・・15枚ね」「はい、これで準備は完了です」「・・・それで?」「実は、ここに予言を記した紙があります」 と彼は懐から丁寧に折りたたんだ紙を取り出す。「今の山札の一番上のカードがここに記されているんです」「見せて・・・」 と、受け取った紙にはこう書かれていた。 『ダイヤの7』 「・・・」「では、どうぞこの山札の一番上のカードを開いてみてください」 いたずら小僧そのものの顔をして彼は言う。 一方、ぼくは特になんとも思うことなく、言われたとおりの行動を取った。「・・・」 山札の一番上は、確かにダイヤの7だった・・・。(つづく)
2007年02月12日
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