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「誰の死体?」(感想)「雲なす証言 」(感想)に続く、ピーター・ウィムジイ卿の活躍する長編第3作目。殺人の疑いのある死に出会ったらどうするか、とある料理屋でピーター卿とパーカーが話し合っていると、突然医者だという男が口をはさんできた。彼は以前、癌患者が思わぬ早さで死亡したおりに検視解剖を要求したが、徹底的な分析にもかかわらず殺人の痕跡はついに発見されなかったのだという。奸智に長けた殺人者を貴族探偵が追いつめる第三長編!ピーター卿は、料理屋での出会いをきっかけに、頼まれてもいないのにある老婦人の死を調査することになります。この話には大きな二つのなぜ?があります。一つは余命いくばくもないものの、あと何ヶ月かは生きられるはずだった老婦人が、突然死んでしまったのはなぜか。殺人の痕跡はまったく見当たらないけれど、不自然な死。もう一つは、これが殺人だとしたら癌により死期が近い老婦人がなぜ殺されなければならなかったか、ということです。ピーター卿は友人のパーカー警部や従僕のバンターと共に調査を始めます。犯人と目される人物はいるのですが何の証拠もないため、気取られないよう“聞き込み代理人”として、クリンプスン嬢という老婦人を現場に潜り込ませ情報収集に当たらせます。この詮索好きで信仰に篤いクリンプスン嬢がなかなか魅力的です。人畜無害な様子で巧みに容疑者の周辺に近づいて探りを入れるのはいいんですが、ピーター卿に報告する手紙は強調するための傍点だらけ、感嘆符多すぎとかえって読みにくい始末。バンターもいい味を出していますが、今回クリンプスン嬢は主役と言ってもいいくらいの活躍ぶりでした。どうやって殺したかは、それほど目新しい方法ではなく、どうして殺したか、も当時のイギリスの法改正に関連しており、とても予想できない物です。犯人と思われる人物もあまり登場せず影が薄いのが何とも頼りなく、おっとりしたミステリだと感じていたら(それはそれで好きなのですが)あらあら、驚愕する展開が待っていました。思いがけずハラハラドキドキのサスペンス。このシリーズはピーター卿の会話を読んでいるだけでも楽しくなります。彼だって色々と悩んだりもする事もあるんですが、電話交換手との会話にまで詩を引用するとは。「もしもし!もしもし――もしもし!おお、交換手よ、汝がことを、鳥と呼ぶべしや、それともさまよえる声と?……いやいや、侮辱したつもりはありませんよ、お嬢さん、今のはワーズワースの詩の引用でね……」 不自然な死 : ドロシー・L.・セイヤーズ 楽天ブックスには在庫なし
2006年10月27日
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実家に持っていって読み終わった一冊ですが、弟が、さりげなく「今度は伊坂幸太郎が読めそうだなぁ。」などと言うので、仕方なく置いてきてやりました。表紙はエッシャーの騙し絵……塔の屋上を歩く兵士たちは四辺を登っているのに、なぜかまた同じところに行き着く。つまりエンドレスで登り続けるという絵です。私は騙されたのかどうか。この作品は五つのバラバラの話が平行して進んで行くけれども、どこかですれ違ったり交わったりして、いつのまにかまとまって行きます。これに似たゲームがありました。渋谷を舞台に色んな人たちが意外なところで繋がっていて、何を選択するかによってエンディングが変わってきます。そしてやっぱり見たいのはグッドエンディングでした。この作品で次々に語られる話は、時間の経過順になってはいないので、ああ、あの時のあの話に繋がっていたのか、とあちこちで気づくことになります。本当はどういう配列になるかは、もう一度読み直して表にでもしない限りわかりません。この複雑な仕掛けを破綻なく、しかもセンスよく収束させているところはさすがです。そして最後の拝金主義者の問いかけ。甘いと言われようが、最後の答えはあれでいいのだと思います。それでこそ帯の「人生そんなに捨てたもんじゃない」という言葉にも説得力がでてきます。好きな日本語を書いてほしいとカードを持って駅前に立つ外国人の女性がたびたび登場します。私なら何と言う言葉を書くだろうかと考えて、思いついたのは「puresoul」やっぱり日本語じゃなかった。「重力ピエロ」は読後感がつらかったのですが、この作品は軽妙で、また違う面をみることができました。この方の作品同士はリンクしているらしいので、読み進めていくと世界が少しずつ広がるような楽しみもありますね。 ラッシュライフ : 伊坂幸太郎
2005年09月16日
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宮部みゆきさんの作品を読むのは久しぶりです。『ブレイブ・ストーリー』まで読んでいたはずですから、3年半ぶりくらいです。これまで読んだ中で一番好きなのは、『我らが隣人の犯罪』に収録された短編「サボテンの花」、ずしんと心に響いた『火車』、時代物では『あかんべえ』でした。先日、夫が最新作の『名もなき毒』を買ってきたので、同じシリーズの『誰か』を読んでおくべきかと、夫が単身赴任先から持ち帰った本の中から探し出してきました。財閥会長の運転手・梶田が自転車に轢き逃げされて命を落とした。広報室で働く編集者・杉村三郎は、義父である会長から遺された娘二人の相談相手に指名される。妹の梨子が父親の思い出を本にして、犯人を見つけるきっかけにしたいというのだ。しかし姉の聡美は出版に反対している。聡美は三郎に、幼い頃の“誘拐”事件と、父の死に対する疑念を打ち明けるが、妹には内緒にしてほしいと訴えた。姉妹の相反する思いに突き動かされるように、梶田の人生をたどり直す三郎だったが…。 今多コンツェルンの広報室に勤める杉村三郎は35歳。やさしくて美人の奥さんと、かわいい娘がいる、ごく平凡なサラリーマン……ではありません。目立つつもりもないのに、普通に見てもらえないのは、奥さんの父親が今多コンツェルンの会長、今多義親だからです。そのために、しなくてもいい苦労までしながら、会長の運転手のひき逃げ事件について調べていく話ですが、これまでの作品と同じように、やめられずに読み通しました。ただ、次第にわかってくる過去や、事件のてん末よりも、彼が関わる人たちのことの方が印象に残りました。それも、人間の嫌~な面をみせられたという気がします。できれば見たくないくらい。ここで思ったこと。主人公はお人好しで善人だし、見るからに幸せそうな家庭を持っています。いくら義父のことが煙たく、それなりに悩みがあるとはいえ、私には絵空事に感じられるくらいでした。その存在だけで羨まれ、妬まれるという人間を主人公に持ってきたのには大きな意味があったのではないかということ。毒が際立つから……。タイトルから想像すると、このテーマは『名もなき毒』にも繋がっていくのでしょうか。 誰か : 宮部みゆき
2006年09月11日
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これはミステリーではありません。図書館でたまたま見つけた変わった本です。この本は、迷子になったペットを探すために作られた“貼り紙”を集めた本です。国はアメリカが一番多く、次いでヨーロッパ、それにオーストラリア、アフリカ、日本の物もあります。右側に貼り紙、左側に訳という構成で、犬、猫、鳥、牛など様々なペットが探されています。かわいい写真が添えてあるものもあれば、プロがつくったような芸術的なセンスのある絵が描かれた物もあります。子供が一生懸命書いた絵もあれば、文字だけのあっさりした物もあります。泥棒を追いかけて帰ってこなかったドーベルマン、車を盗まれたときに一緒に盗まれてしまった子犬、地震のときにいなくなった猫、亀、鳥、牛、フェレット、ネズミ、ヘビ、いなくなった理由も、ペットの種類も様々です。「うちのペットのカラスを見かけませんでしたか」というのもありましたが、カラスなんてどれも同じに見えるのに見つけられるんでしょうか。賞金がかけてある場合も多く、1000ドルという高額なものもありました。賞金目当ての悪い人に狙われなければいいが、と思います。病気で治療中の猫や目の見えない犬がいなくなったケースもありますが、貼り紙には飼い主の心配でたまらない様子が表れています。(目の見えない犬は無事見つかったようです。)それぞれ工夫がこらされており、微笑ましい貼り紙が多いのですが、ちょっと切ない気分になります。どうしてもペットを思いやる気持ちに思いをはせてしまうからでしょうね。この子たちが無事見つかるといいな、と願いつつ見ていました。作者が雑誌に広告を出したり、友人、家族の伝を頼ったりしたことで、迷子のペット探しのポスターがだんだん集まってくるようになったそうですが、まえがきに面白い逸話が書かれています。ポスターだけでなく、手紙もたくさん送られてくるようになったとき、アイスランドからは「アイスランド人はペットをなくしたりしないのでポスターは集まりません。」という手紙がきて、オランダからは「オランダ人はペットを探したりしない。ペットショップで新しいのを買うだけだ。」という手紙がきたそうです。これが本当ならポスター一つで国民性までわかってしまいますね。うちで飼っていたハムスターは、夜中にケージの天井にある扉を自分で開けて逃走しましたが、何を思ったか、寝ている夫の足の親指にかみついたことによりすぐ発覚し、叫び声と共に捕獲されました。さすがに家の外まで逃げたことはないので貼り紙を作ったことはないのですが、自分ならチュータがいなくなったら、あのふとったチュータの絵を人の心に訴えるようにかわいく書けただろうかと考えました。 ロスト : イアン・フィリップス
2005年11月01日
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諸君はアッシャー家の崩壊を見いだすだろう―予告の電話は真実を告げていた。錦秋のボルティモア郊外で、日系人兄妹の住む館が爆発し傍の沼に崩れ去った。妹は謎めいた言葉をのこして息絶え、兄の遺体もまた水中深くに。ほどなく、棺に横たわった美女の歯が無惨に折り取られる『ペレニス』、斧で頭を割られた被害者が片目の黒猫ともども壁に塗り込められる『黒猫』、各々の小説に見立てた死体が発見され、事件は更なる混迷を呈していく…。E・A・ポオ終焉の地で、デュパンの直系というにふさわしい探偵が本領を顕わす。ポオの言祝ぎが聞こえる、オールタイムベスト級本格ミステリ。(「BOOK」データベースより)『誰もがポオを愛していた』(They all loved you,Mr. Poe)なんて素敵なタイトルでしょうか。ロマンを感じます。ところがこれが真っ向勝負の本格ミステリなのです。解説の有栖川有栖さんが「新本格前夜の傑作」と表現されたように、まだ新本格が登場する前に、こういうロジック勝負のミステリが書かれていたんですね。しかも、舞台が海外だというのですから、チャレンジだったことでしょう。表紙もポオだし、裏表紙はポオだらけ。初めから終わりまでポオづくしなので、せめて『アッシャー家の崩壊』は読んでおいた方がいいと思います。私は遠い昔に子供向けの本で読んだことしかなかったので、ピンとこないところもありました。登場人物が多いのですが、探偵役がニッキこと更科丹季(さらしなにっき)で、他にもナゲット、ナビスコ、ケロッグ、バドワイザーなどという名前がゴロゴロしていて覚えやすかったのですが、何だかバカにされているような気にもなりました。それは、築地本願寺の境内に新しくできたレストランの名前が「カフェ・ド・シンラン」だと知った時の気持ちに似ていますw前半は多少もどかしかったのですが、謎解きはさすがに読みごたえがありました。また、エピローグで示された『アッシャー家の崩壊』の解釈には感心しました。ここで本棚から『アッシャー家の崩壊』を取り出し、突き合わせて見直すことができたらもっと堪能できたのに、とそれが残念です。『だれもがポオを愛していた』は楽天ブックスでは売り切れです。エドガー・アラン・ポー短篇集 『アッシャー家の崩壊』が収録されています。
2007年10月19日
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烏賊川市シリーズの4作目です。1作目『密室の鍵貸します』(感想)、2作目『密室に向かって撃て!』(感想)、3作目『完全犯罪に猫は何匹必要か?』(感想)浮気調査を依頼され、使用人を装って山奥の邸に潜入した私立探偵・鵜飼杜夫。ガールフレンドに誘われ、彼女の友人が持つ山荘を訪れた探偵の弟子・戸村流平。寂れた商店街の通りで起こった女性の刺殺事件の捜査をおこなう刑事たち。別々の場所で、全く無関係に夜を過ごしているはずだった彼らの周囲で、交換殺人はいかにして実行されようとしていたのか?飄々と、切れ味鋭い傑作本格推理。 (「BOOK」データベースより) シリーズをここまで読んできて嬉しく思うのは、キャラクターにかなり親しみを感じてきたこと、そして間違いなく1作ごとに面白さが増していることです。最初は頼りなくて運が悪い男の子だと思っていた流平君も、それなりに成長していました。鵜飼探偵と朱美さんもなかなかいい感じに活躍しますし、『密室に向かって撃て!』で登場し、もう二度と出てこないと思っていたお嬢様のさくらさんもしっかり登場し、レギュラー入りを予感させます。今回さらに強烈で魅力ある人も加わるのですが、それぞれがゆる~いギャグをとばしながら雪の中でドタバタと大騒ぎ。タイトルから交換殺人がテーマではあることは予想されますが、やはり通り一遍の展開ではありませんでした。かなりややこしい話なのに伏線がしっかり張られ(しかも大量に)、それが最後にはきれいにほどけていく見事さよ。登場人物たちのオトボケぶりに油断していると、作者のしかけた罠にひっかかってしまうのはいつもの通り。しかも、今回はそれが二重三重の罠となっています。実に緻密です。私はもちろんひっかかったし、楽しかったし、満足でした。本格とドタバタがこんなにかみ合ったミステリはそうそうありません。これは読む価値のある作品だと思います。 交換殺人には向かない夜:東川篤哉
2007年05月21日
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吹奏楽の“甲子園”普門館を目指す ハルタとチカ。ついに 吹奏楽コンクール地区大会が始まった。だが、二人の前に難題がふりかかる。会場で出会った 稀少犬の持ち主をめぐる暗号、ハルタの新居候補のアパートにまつわる 幽霊の謎、県大会で遭遇した ライバル女子校の秘密、そして不思議なオルガンリサイタル…。容姿端麗、頭脳明晰のハルタと、天然少女チカが織りなす迷推理、そしてコンクールの行方は?『退出ゲーム』『初恋ソムリエ』に続く“ハルチカ”シリーズ第3弾。青春×本格ミステリの決定版。内容(「BOOK」データベースより)ジャバウォックの鑑札/ヴァナキュラー・モダニズム/十の秘密/空想オルガンう~ん、青春ミステリは、いいです。高校時代を思い出しました。浅はかなこともたくさんやったけど、友人と真剣に語り合うこともあった、二度とはこない瑞々しい季節よ……。さて、シリーズ3作目、今回はいよいよ吹奏楽地区大会です。ハルタ、チカ、成島さんにマレン、カイユ、芹澤さん、みんな成長しています。そしてハルタのお姉さんが登場、なかなか強烈なキャラでした。ハルタも大変です。今回も、人の生きざまが伺え、心には光と闇があることを感じさせる話でした。ミステリも小粒ながら、ユニークで奥が深い内容です。一つ、バカミスっぽい真相もありましたが……。私は、どこか無骨なチカちゃんの、その真っ直ぐさが好きです。ドタバタして失敗も多いけれど、時に、胸を打つ一言を言ってくれて、私はキュンなるのです。最後まで読んだら、小粒なんて言って、とんでもない。大いなる驚きが待っていました。「あ~、そうだったのか。」すっかり騙されました。そして、ある人の決意にはぐっとくるし、やられたなー、と思います。鮮やかな終わり方でした。完結編かと思っていたのですが、まだ続くようなので、この次彼らに会えるのが楽しみです草壁先生の謎は、まだ明かされませんでした。とっても かっこいい先生だけに、知るのが怖くなってきましたが、気になるのも確かです。次回こそ……。 【送料無料】空想オルガン1作目『【送料無料】退出ゲーム』と2作目『【送料無料】初恋ソムリエ』 文庫版『【送料無料】退出ゲーム』
2011年02月23日
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上段左より『ベーカリーは罪深い』J ・B スタンリダイエット・クラブのメンバーが活躍するという、一味違うコージー・ミステリのシリーズ1作目。心優しき彼らが、今度はどんな事件に巻き込まれるのか、果たしてダイエットは成功するのか、とても気になります。『空想オルガン』初野晴ユーモアと爽やかさが心地いい青春ミステリですが、それだけではありません。人の心の奥にあるものや、事件の背景にあるものまで描き出すので、驚かされたり、胸が熱くなったりします。『造花の蜜』連城三紀彦これは面白いです。誘拐ものですが、まったく予想できない展開でした。緻密な構成と、捻りわざの連続に、ゾクゾクしました。『見えないグリーン』ジョン・スラデック久しぶりに読んだ端正な本格ミステリでした。伏線がすべて、はめ絵のように、ピタリピタリとはまっていきます。『埋みの棘』佐伯泰英鎌倉河岸捕物控の第十弾。政次と亮吉、彦四郎が子どものころに目撃した事件が、十一年後の今になってまた関わってきます。青春時代ミステリです。コミック『アイアムアヒーロー(1)』花沢健吾冴えない男の先の見えない毎日、と思ってだらだら読んでいたら、最後にとんでもないことが起きて、ショックを受けました。『アイアムアヒーロー(2)』花沢健吾いったいこれからどうなるのでしょう。けれども、ただ気持ち悪かったり、怖い、というだけではない、ユニークな作品です。『屍鬼(10)』藤崎 竜 / 小野 不由美寝る前に読んでいたら、多少気分が悪く、怖くなりました。今は屍鬼が怖いのではありません。怖いのは人間の番です。
2011年02月28日
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