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この能力が何なのか、ずっと知りたかった。
なぜこの能力があるのか、どうやって役に立てればいいのか、この能力に何の意味があるのか。
誰もが信じず、否定し、認めないその能力を、真崎だけが信じて必要としてくれた。真崎の中にある得体の知れない暗がりを、猫のイブキの命を奪うようなことにしか繋がらない存在を、一体何なのか見立ててくれと望まれていた。
けれど、本当に望まれていたのは、『それは何か』ではなく『それは意味あるものだ』という見立てだった。
美並はずっと『見て』きた。人の気持ちを、隠された、次々と変化する、容赦ない、幻のようなそれを。けれど、どれほど瞬間であろうと、それはそこに存在し、存在したことで力を放ち動きをもたらす。だからこそ、美並は警戒して確認していた、自分の心の物陰から。嘲笑が人を脅かし、恐怖が人を食い尽くし、憤怒が人を飲み込み、憐憫が人を押し流すのを。
それらに対して『見る』ことしかできない無力な自分を恥じた。人が見て欲しくないのに『見えて』しまう自分に傷つき、『見えて』も何もできない自分を悲しみ続けた。
けれど、真崎と出会って、能力は意味を変えた。
真崎は望む、『見て』欲しいと。傷ついてしまった自分では見つけることもできず探すこともできなくなった、どこかに居たはずの自分、隠され失われてしまった本来の自分を見て欲しいと。
見て欲しい、探して欲しい。
見せて欲しい、教えて欲しい。
どれほど傷つけられ、どれほど切り刻まれても、失われることない姿を。
本来の、美しさを。
美並の能力は、『それ』を見つけるためにある。
そのためには、相手を壊しかねないほど深く『見る』必要があって、脆くて砕かれそうな真崎ではこれ以上は踏み込めなかった。
けれど今、磨かれ研がれた刃は、美並が『見る』ことにも向けられるだろう。真崎を傷つけるような部分への接近は、ちゃんと防がれるだろう。だからこそ、美並は安心して進めるだろう、この先へ。
今まで自分でも恐れて進めなかった、未来へ。
「何をすればいいの…」
見つめる美並の視線に焦れたように、真崎が眉を寄せた。
「僕の何が必要…?」
「京介を下さい」
全部、隅々まで。
「上げる…僕を全部、上げる」
熱に浮かされた声で真崎が誓う。
「…嫌だけど……僕は…美並が危険な目に合うなんて……絶対嫌だけど…」
堪え切れないように唇を合わせ、舌を絡ませてくる。
ああ鋭い、やっぱり。
美並は目を閉じながら微かに笑う。
これから美並のすることは『羽鳥』という人間を知ることが全てだ。恐らくは多くの人を傷つけ、今もなお犯罪に手を染めて怯むこともないのかも知れないけれど、なぜ『羽鳥』が今に至ったのか、それを知っていくことだ。
そうして『羽鳥』を見立てた時、『見えない』糸が浮き上がる。『見えない』企みが晒された時、事件は閉じて終わるだろう。
暴こうとする美並の爪に、真崎は気が付いている。
「…でも、美並がそうやってしか生きられないなら、僕が盾になる」
頬に唇を触れながら囁く。
「剣になり、鎧になり、馬になり……餌になる…」
掠れた声で呟きながら唇が再び重ねられた。
「美並は僕を食べて……お腹一杯…」 (中略)
「美並…」
力が抜けた体を抱き上げられてベッドに運び込まれた。
「僕が全部刈り取ってあげる」
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