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「ウクライナ」戦争開始以降の主な記事(PDF版)
2023年9月1日、関東大震災から100年の節目にNHKが標記の問題提起を行いました。( 「時論公論」
)「 福田村事件
」をとりあげた「クロ現」もよかったですが、時論公論は現在おこっている問題と結びつけて、虐殺の歴史的事実から学ぶべきことを指摘していました。重要な視点だと受け止め以下に紹介します。
〔番組の要旨〕
関東大震災から今年で百年。この震災の混乱の中、流言を信じた市民や軍警察によって、朝鮮半島出身の人たちが数多く殺害されるという事件がおこる。
この惨事がなぜ起きてしまったのかを振り返ると、「百年前のことだ」と切り捨てることはできない。 現在の災害やコロナ禍での状況に通じる問題
が見えてくる。
Q 歴史的事件をどう見るか? その教訓とは?
1923 年 9 月 1 日に発生した 関東大震災は、激しい揺れに加え、大火災が東京東部や横浜の市街地の大半を焼き尽くし、死者 10 万 5 千人という未曾有の災害 になった。
その混乱の中、多くの朝鮮半島出身者が殺害された。
きっかけは地震の直後から流れた流言、いわゆるデマだった。「朝鮮人が井戸に毒を入れた」、「
2000
人の朝鮮人が武器をもって襲ってくる」など、根拠の無い嘘の情報は、 市民・国・新聞の3者の間で増幅し、殺害行為をエスカレートさせた。
(急速に広がった流言を国も公式に発信し、市民をたきつける結果になった。)
国の治安のトップ- 内務省警法局長が「朝鮮人が各地で放火し、爆弾を持っている者もいるので、厳重に取り締まるように」と言う通知を全国に
発信。 新聞も流言を鵜呑みにし、非常に多くの嘘の記事を掲載
。この流言を信じ、棍棒や日本刀・猟銃等で 武装した市民による自警団や場所によっては軍警察が朝鮮半島出身者を殺傷。
ほどなく国は流言に根拠がない事に気づいて否定にまわり、警察は、朝鮮半島出身者の保護に乗り出すが、保護された人たちを市民が襲って殺傷するなど、暴行はすぐには収まらなかった。
殺害された正確な人数はわかっていないが、国の中央防災会議がまとめた報告書は 千人から数千人にのぼると推定。この中には中国人や朝鮮半島出身者と間違えられた日本人も含まれている 。
Q なぜ市民は朝鮮半島出身者を襲ったのか?
A
「報告書」は殺害の背景に、当時、植民地支配されている朝鮮人の抵抗運動に恐怖心があったこと、朝鮮人への無理解や差別意識があったとしている。
Q
裁判はなされたのか?
A 震災直後に朝鮮半島出身者 233 人を殺害した罪で 367 人が起訴されている。噂を信じて、朝鮮人が自分の村に来たら村の為に害を除こうと思ったという供述もあった。
専門家は差別意識に加え、共同体のために役に立ちたいという気持ちが殺害に繋がった面もあると指摘。
Q 大虐殺否定論は?
A 近年、文筆家や活動家などから 朝鮮人による暴動や破壊活動は起きていて、自警団の行為は正当防衛だったなどとする主張が出て、ネットなどで拡散。
Q 歴史学者やジャーナリストによる反論、その根拠は?
A1 震災後 (当時)の司法省の報告書は「朝鮮人による一定の計画のもとに脈絡ある非行はなかった」と暴動などを否定 。
A2 神奈川の 警察責任者(当時)は「朝鮮人が悪事をしたという流言を徹底的に調べたが、ことごとく事実無根だった」 としている。
A3 震災当時、犯罪で有罪になった朝鮮半島出身者は十数名いたが、罪は窃盗など軽いものだったこと、 日本人による殺害の直接証言が非常に多くある一方、「朝鮮半島出身者による暴動や破壊活動を直接目撃したという証言はない」 。
〔結論(反論の)〕
・長年の研究によって実証されている事実を捻じ曲げ、(虐殺を信じたくない人たちが)自分たちに都合の良い嘘の歴史を広めている。
Q 百年前の この事件は社会状況が全く違う今日では起こり得ないのか?
A 残念ながら 大災害の度に、ネットなどで多くの流言が流れている 。東日本大震災の被災地では、 「外国人窃盗グループが横行している」「遺体から金品を盗む外国人がいる」などのうわさが流れ 、警察は避難所を回ってそのような事実はないとするチラシを配り、打ち消しに追われた。
Q 災害時の流言は広がったのか?
A 流言を多くの人が信じ、広げた。東北学院大学の教授が仙台市と東京都の 944 人を対象に行ったアンケート調査の結果。「外国人が被災地で犯罪をしているという噂を半数の人が聞いていた。」そしてその噂を信じたかたずねた所、 「 86% の人が信じたと答えた」 。
震災の混乱と強い不安の中、普段なら疑うであろう流言を信じてしまう心理状態が広がったことがうかがえる。
Q コロナ禍では?
A1 外国人などへの攻撃がネットなどで横行。 横浜中華街には感染が広がり始めてから、中傷の電話や手紙、メール、落書きなどが相次いだ 。「中国人は日本から出て行け」「ウイルスを広げるな」など、事実無根の攻撃が数十件に上った。さらにSNS上には数え切れない非難やデマが流れ、二年間にわたって続いた。中傷を受けた関係者は「 人間を否定される一番強いヘイト攻撃でサンドバッグ状態にされ、いつ終わるのか分からない恐怖があった 」と話す。
A2 コロナ禍によるうっぷんを外国人に向けた凶悪な事件もあった。
一昨年 8 月、在日コリアンが多く暮らす京都府宇治市の ウトロ地区で倉庫が放火され、住宅など七棟が焼けた 。逮捕された元病院職員の男は、ネット上でウトロ地区の人たちが土地を不法に占拠しているという誤った情報・流言を読んで一方的に不満を募らせ、わずか 10 日後に犯行に及んでいた。 NHK の取材に対し。「朝鮮の人たちに直接話を聞いたり、関わったりしたことはないが、在日コリアンに嫌悪感があった」と述べた。
また、事件直前に新型コロナの影響で仕事を辞めざるをえなくなったこともきっかけの一つ、コロナ禍で支援を受けられなかった不満のはけ口・憂さ晴らしと答えた。
Q 関東大震災(朝鮮人虐殺)の教訓とは?
A 災害時、日頃からの差別意識を背景に、強い不安や恐怖、行き場のない怒りが外国人など少数者に向けられるという百年前の惨事と共通する弱さを私たちの社会が抱えている と言うこと。
中央防災会議の報告書を執筆した東京大学の鈴木淳教授。「普段は常識の枠で抑えられているものが何かのきっかけで、地域に馴染みの薄い少数者に対して牙を向いてしまうことがありうると言うことを強く意識し、警戒し続けることが必要だ」。
関東大震災における朝鮮半島出身者などの殺傷事件に向き合うことは、大きな痛みを伴うが、「何が起きたのか」「なぜ起きてしまったのか」を知ることが、現在もある弱者や少数者への差別や偏見に向き合い、解消する努力につながる。
このことが関東大震災の最大の教訓のひとつ。
〔紹介は以上〕
「災害や恐怖など、社会は強いストレスにさらされたときに試される」、というのも番組の指摘ですが、私も東日本大震災に先立つ「阪神淡路大震災」時(1995年)、「外国人労働者や朝鮮人がスーパーを襲っている」というデマが流れているということを聞いて「ドキッ」としたことを鮮明に覚えています。「これでは、関東大震災時と同じではないか」と思ったのです。
その時も兵庫県警が「そのような事実はない」と明確に否定したことでおさまったのですが、もし否定されなければ、どのような心理状態になっていったのか。恐ろしいものを感じます。
まさに、歴史の事実をしっかり受け止めながら、「われわれの社会の弱さ、われわれ自身の弱さ」に向き合うことが大切ではないでしょうか。
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