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2024.04.15
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カテゴリ: 教育論・教育問題

前回の拙ブログ記事に応答する形で執筆していただいた、 教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 3.30 教職員の高度専門職化 まずは学習評価と特別支援から に対して遅まきながらいくつか comment をしておきます。

 以下の指摘に関しては、基本的に賛成。異論があるわけではありません。

>“しょう”さんが引用する中内敏夫の「評価もまた教育でなければならない」というのは、重要な指摘だ。(「指導と評価」は)まさに一体のものとして日々の教育活動に生かされなければなるまい。
>「わが国で唯一の教育評価に関する専門誌」である『指導と評価』が、3月号から学習評価の全体像を解説する特集を始めたのだ(・・・)代表理事は、学習評価が実務上の困難に直面している原因の一部は「学習評価の基礎知識の不足によると思われる」と指摘。

>何より学習評価は、そもそも専門職として必要な「基礎知識の不足」状態が放置されている。一刻も早く、全教員の研修体制を確立すべきだ。

一般的に「学習評価に対する基礎知識の不足」という指摘は当たっているだろうと考えています。「内地留学の積極的保障も含めた研修体制づくり」は急務だと私も考えます。

〔私の場合「内地留学の目的・主な関心」は、学習集団(含:学びの共同体)の問題と生活指導をどのように統合していくかということだったのですが、指導教官が「生活指導論」だけでなく「教育評価」も専門的に研究している方だったこと、同大学の特別支援にかかわる複数の教官(指導者)が非常に優れた人たちだったこともあり、予定した以上に幅広い学びを得ることができたのは幸運でした。〕

この内留をとおして教育評価を含む「教育学」の奥深さを実感できたのですが、何といっても大切なのは 具体的な評価の例(学習評価・教育評価の実践例)にできる限り触れ、自分なりに工夫していくこと だと考えています。

​​前記事では客観テスト以外の評価の方法として b 自由記述式(「ある概念に関係のある言葉をいくつか選び出し、配置し、矢印の付いた線で結ぶ」など、知識間の関係づけをみる方式)、 c パフォーマンス評価(知識を活用・総合する「課題」に挑戦させ、作品づくりや実演によって評価する) d 観察や対話による評価 e 日常の学習過程で生み出されるさまざまな作品や記録を蓄積して評価するポートフォリオ評価。
​​

例えば、古代国家の学習の締めくくりに以下のような課題に取り組ませる。

(まだは、最初から課題を提示したうえで授業や考察に向かわせる。)

Q 世界の古代国家に関する展示を博物館で行います。古代の王墓の写真・模型もたくさん展示されます。さて、会場の中に「古代の大帝国と国王による支配」が一体どのように成立したのか、説明するコーナーを作ります。多くの人々を使って、ピラミッドや古墳を造らせた「古代専制国家」はどのようにして誕生したのでしょうか。そして、広い領土を支配する大きな権力をもった「王」はどのようにして誕生したのでしょうか。中学生にも理解できるようなパンフレットをつくりましょう。分かりやすく写真や図を用いること。

上記の課題への取り組みをとおして「知識・理解」だけでなく「こと・もの・ひとに向かう関心や態度」についても評価して返していく。例えばこのような取り組み・評価によって先に例示した b 自由記述式、 c パフォーマンス評価、 e ポートフォリオ評価を組み合わせていくことができます。 

ただし、現在「過重負担を避けながら、充分有効な評価ができているか」ということになると自信がないところもあります。上記のような方式以外には、授業中に説明を受けた中身を要約し、思考を深めるような「問い」をノートに記録するよう促し、定期的に評価する。授業中の発言に関しても、周りが思いつかなかった創造的な発想や全体の認識を深めていけるような質問をとりあげ(周囲の生徒にも確認しながら)評価する、など意識的に行ってはいるのですが・・・。

中内敏夫や渡辺敦司の主張=「評価もまた教育でなければならない」、「指導と評価」はまさに一体のものとして日々の教育活動に生かされなければならない、という観点からすると、「記録に残る評価」もさることながら、 d に示した「観察や対話による評価(言葉による評価)」こそが重要ではないか、という思いもあるのです。


>もう一つ放置されていることがある。特別支援教育だ。「特殊教育」から移行して20年近くになるというのに、いまだに現場は発達障害を含む困難を抱えた児童生徒の指導に自信を持てないでいる。技術もそうだが、そもそも「基礎知識の不足」が放置されたままだからだろう。
>『教育と医学』3・4月号は「発達障害のグレーゾーンの子どもたち――その理解と支援」を特集しており、青木省三・川崎医科大学名誉教授は発達障害が「ある・なし」で分けられないばかりか「人は皆グレーゾーン」だと喝破している。

 「学習評価・教育評価」の場合とは違って「特別支援」に関しては「基礎知識のないまま放置されてきた」とは考えていません。 県内・そして全国各地で「研究会・研修会」は行われており、そこから学んでいない教職員はまれでしょう。そもそも「自閉症スペクトラム」という言葉自体、それが連続的で明確に分類できない「障害」であることを明らかにしています。

 「自信がない」というのは、「知識不足」が原因なのではなく「すべてがケースバイケースでその生徒、その状況に応じた適切な向き合い方をしなければならない」という意味において「わかりやすい解答」など存在しないことが大きいと考えています。

 だとすれば 「特別支援」の場合、「学習評価・教育評価」以上に様々な実践に触れること、読むことが重要 だと考えるのです。 「基礎知識+実践を学ぶ」という 副題をつけましたが、力点は「実践」にあります 。そして、私が今なおお勧めしたいのが、「教育の窓 ある退職校長の想い」のブログ主である清水俊皓の実践です。

 この取り組み(=授業・学級づくり)が行われたのは白黒映像の時代。実践者の清水には 「特別支援」や「教育評価」 に関する学問的な基礎知識は皆無といっていい状態でしたが、その真髄と思われる「思想」が貫かれている、と考えるのです。

発達障害児と問題解決学習と( 清水俊皓 のブログ記事より)

ただし、ここまでのところでかなりの分量になってしまいました。実践の引用や私自身の comment に関しては、次回の記事といたします。

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Last updated  2024.04.28 14:37:26
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Re:教育評価と特別支援 「基礎知識+実践」を学ぶ(04/15)  
渡辺敦司 さん
しょうさん、再三ありがとうございます。「何といっても大切なのは具体的な評価の例(学習評価・教育評価の実践例)にできる限り触れ、自分なりに工夫していくことだ」というご指摘は、まさに理論と実践を往還する必要性を現場教員の立場から示したものと拝察します。「観察や対話による評価(言葉による評価)」によって児童生徒の資質・能力を伸ばすことこそが、評価の最優先事項になるべきだと愚考します。
特別支援教育は確かに基礎知識の研修機会はあるものの、「基礎知識がなく、指導に自信が持てない」という声は絶えません。もしかすると実践に対する構え(子どもへの向き合い方)の問題であり、往還の余裕がないせいかもしれません。
清水先生やしょうさんのような「高度専門職」に向かって生涯、子どもからも学び続ける教師を育成できるような条件整備をどう図っていくべきか。次期指導要領改訂と連動した学習基盤の一体改革の在り方について(働き方改革の停滞はもちろん「教師不足」など論外です)、引き続き考え続けたいと思っております。 (2024.04.16 06:56:19)

Re[1]:教育評価と特別支援 「基礎知識+実践」を学ぶ(04/15)  
しょう さん
渡辺敦司さんへ

ていねいなcommentありがとうございます。

>理論と実践を往還する必要性を現場教員の立場から示したものと拝察します。
>「観察や対話による評価(言葉による評価)」によって児童生徒の資質・能力を伸ばすことこそが、評価の最優先事項になるべきだと愚考します。

 述べようとしたことをしっかり受け止めていただきうれしく思います。

>特別支援教育・・・「基礎知識がなく、指導に自信が持てない」という声は絶えません。もしかすると実践に対する構え(子どもへの向き合い方)の問題であり、往還の余裕がないせいかもしれません。

 おっしゃる通りだと思います。そのような声の背景には、「とにかく(発達特性のある子どもに対して)具体的にどうすればいいか知りたい」という切実ではあるがやや性急な要請があるのではないでしょうか。
 そのような現場教職員に対して、清水さんをはじめ優れた実践は「目の前にいるこの子」に対して「いったいどうしたんだろう」という関心を共有していくことの大切さを知らせてくれます。

>次期指導要領改訂と連動した学習基盤の一体改革の在り方について(働き方改革の停滞はもちろん「教師不足」など論外です)、引き続き考え続けたいと思っております。

 「改訂と連動した一体改革」を好機として活かしていく、という発想はもともと希薄でしたので、渡辺さんの文章から学ばせていただいています。 (2024.04.17 23:00:28)

Re:教育評価と特別支援 「基礎知識+実践」を学ぶ(04/15)  
渡辺敦司 さん
>おっしゃる通りだと思います。そのような声の背景には、「とにかく(発達特性のある子どもに対して)具体的にどうすればいいか知りたい」という切実ではあるがやや性急な要請があるのではないでしょうか。
>そのような現場教職員に対して、清水さんをはじめ優れた実践は「目の前にいるこの子」に対して「いったいどうしたんだろう」という関心を共有していくことの大切さを知らせてくれます。

重要なご指摘です。問題の一つは若手を中心に性急なノウハウ・マニュアルに頼る傾向が強まっていること、もう一つは教委にさえ何かというと診断書を求める傾向があることではないでしょうか。発達特性による「できないこと」を知るのは不可欠ですが、そこからはどう指導したらいいかが出てきません。「目の前いるこの子」に関心を向ける物理的・精神的余裕がなくなっているとしたら心配です。子ども個々の成長より指導要領をこなすこと、「学力」という成果を優先する風潮も気になります(だからこそ「評価」の捉え方が重要ですね)。 (2024.04.18 07:55:37)

Re[1]:教育評価と特別支援 「基礎知識+実践」を学ぶ(04/15)  
shchan_3  さん
渡辺敦司さんへ

 再度のcommentありがとうございます。また、応答が遅れて申し訳ありません。

>「目の前いるこの子」に関心を向ける物理的・精神的余裕がなくなっているとしたら心配です。

 この4月から大規模普通科高校(県内では進学率の高い学校)に勤務していますが、小規模であった前任校以上に物理的・精神的余裕が奪われているという印象があります。うわさは以前から聞いていましたが、「不登校をはじめた生徒」や「特別な配慮が必要な個人」にたいして充分時間をかけて向き合うことが難しいようです。

>子ども個々の成長より指導要領をこなすこと、「学力」という成果を優先する風潮も気になります。

 私自身、授業(や生徒会指導)などにあたって、そのような「空気」の中で大切な原点を見失わないよう心掛けているところです。そのためにも渡辺さんとのやり取り、貴ブログや自分自身の過去記事の読みかえし、内留報告書の読み返しなど、大変役に立っています。

>(だからこそ「評価」の捉え方が重要ですね)。

 その通りだと思います。「総合的探究の時間」の一環としての「課題研究」などについても管理職にはAO入試(総合型選抜)に直接役立つことを期待する傾向が見えますが、複数の職員と(学年の「結団式」〔懇親会〕で)話をしたところ、「そういうものではない」という明確な見解を聴くことができました。「探究し考察することで対象への関心を深め、よりよい状況を模索していく構え」を形成すること、それが本人の「たくわえ」になることを目ざしていく必要があるという大枠で一致できたのは幸いでした。

 微力ではありますが、職員同士「疲れ」をためないよう互いに気遣いながら引き続き精進していきたいと考えています。 (2024.04.20 20:48:30)

Re[2]:教育評価と特別支援 「基礎知識+実践」を学ぶ(04/15)  
渡辺敦司 さん
>「探究し考察することで対象への関心を深め、よりよい状況を模索していく構え」を形成すること、それが本人の「たくわえ」になることを目ざしていく必要があるという大枠で一致できたのは幸いでした。

こういう校内論議こそが、教育課程の実施はもとより次期改訂に向けた「下からの改革」の第一歩になると確信しております。今後の実践にも期待申し上げます。
(2024.04.21 06:38:06)

Re[3]:教育評価と特別支援 「基礎知識+実践」を学ぶ(04/15)  
shchan_3  さん
渡辺敦司さんへ

>こういう校内論議こそが、教育課程の実施はもとより次期改訂に向けた「下からの改革」の第一歩になると確信しております。

 ありがとうございます。懇親会以外の場でもそれができるような職場づくりに取り組んでいきたいと思います。 (2024.04.21 10:32:55)

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