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アキヨシ♪

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2004.01.08
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カテゴリ: カテゴリ未分類
僕と彼女と彼女の生きる道

「#1 離婚の朝」

 新築のおしゃれなマンション。
小柳徹朗(草なぎ 剛)はいつもの朝のようにダイニングテーブルで新聞を読みながらココアを飲んでいた。
「話があるんだけど・・・」。

洗濯をおえた妻の可奈子(りょう)が静かにきりだした。
「離婚してください」
「朝から冗談、やめてくれよ」。

しかし可奈子が本気と気づいて、徹朗は動揺した。
「とにかくなるべく早く帰ってくるから、ちゃんと話そう」
「こんな時に会社行くの?」。
それでも徹朗は逃げるように家を出た。

 都市銀行の法人営業部。
それが徹朗の職場だ。
2歳年上ながらシングルの先輩、宮林功二(東 幹久)、部下の坪井マミ(山口紗弥加)と岸本肇(要 潤)、そして上司の井上啓一(小日向文世)が同僚だ。

「今夜、得意先の宴席に出てくれないか?」。
一瞬ためらったが、仕事第一の徹朗は断らなかった。
だから帰宅は遅くなった。

 「ただいま」。
部屋を明るくして驚いた。
可奈子のものすべてが消えていた。
もちろん本人も。

 翌朝、7歳になる一人娘・凛がいることに気づいた。
「なんでいるんだよ」。
可奈子は一人娘の凛だけ残していったのだ。

「お母さんは旅行に出かけたんだ。急いで支度しなさい」。
そうは言ってみたが、家の中のことはすべて可奈子任せだったため、着替えだけでもひと苦労。
娘と2人きりの朝食は気まずい。

「お母さん、いつ帰ってくるんですか?」。
小学生らしからぬ他人行儀だった。
徹朗は、凛のことがよくわからない自分に気づいた。
徹朗の返事はその場しのぎで、トイレにいきたがる凛を急かして、徹朗は家を飛びだした。

 会社に着くと、「可奈ちゃん、出ていったって?」。
宮林からいきなり聞かれて徹朗は息をのんだ。
可奈子から電話がかかってきたという。
「パリへ行くらしい。子供はお前に育ててほしいって」。
まるで事務連絡だ。
「ふざけてる」。いったい可奈子は何が不満なんだ。
徹朗には離婚の理由がまったく思い当たらなかった。

 「ただいま」。
徹朗がコンビニ弁当を下げて帰宅すると、トイレから見知らぬ女が出てきた。
「凛ちゃんのお父さんですか?」。
凛に英語を教えてくれている家庭教師の北島ゆら(小雪)だ。
「奥様、今日はどうされたのですか?」
「旅行なんです」。
本当のことを言うわけにはいかない。
凛は少し元気がなかったらしいが、ゆらは何事も気づくことなく帰っていった。

 徹朗がホッとしたのも束の間、今度は可奈子の母親、大山美奈子(長山藍子)がやって来た。
「何が原因なの?」
「まったくわからなくて」。
そう答えるしかない。
「凛ちゃんの面倒みましょうか?」。
願ってもない申し出に徹朗は内心しめたと喜んだが、美奈子はすぐに考えを改めた。
「やっぱり実の父親と暮らすのが一番よね」
「も、もちろんです」。
徹朗は良き父親を装った。
その後徹朗は、美奈子の家にいかないかという話を凛にすると、凛は涙を流した。
「あ、この話はもういいから」。
徹朗は、美奈子の家の近くに転校させようと考えていたのだ。

 29歳にして念願のマイホームを建てた。
夏には家族でハワイにも行った。離婚の原因がわからない苛立ちはいずれ凛に向けられた。
「早く寝なさいって言っただろ」。
「ごめんなさい」。

 しばらくすると、徹朗はようやく可奈子を見つけた。
「どうして離婚したいんだ?」
「本当にわからないの?」。
たったそれだけのやりとりで可奈子は徹朗の前からタクシーで走り去った。

徹朗は凛の担任教師の石田(浅野和之)から呼びだされた。
凛が毎日忘れ物をするようになったという。
「奥様、どうかされたんですか?」。
徹朗は屈辱をグッとこらえた。

 休みは朝からたまりにたまった家事に悪戦苦闘することになった。
洗濯機すら解説書がないと動かせない。
可奈子がいないと何がどこにあるのか皆目わからない。
徹朗の苛立ちはつのるばかり。
だから凛のたどたどしいハーモニカについ怒鳴ってしまった。
「うるさいんだよ」。

 その後、仕事中に凛からひっきりなしにケータイがかかってくるようになった。
「まだ仕事だと言ってるだろ」。
うんざりして無視していたが、ある日、病院から連絡が入った。

 深夜の病院の廊下で待っていたのはゆらだった。
「仕事で遅くなりました」。
言い訳する徹朗をゆらは呆れたように見返した。
「ひどい便秘でした」。
そういえば毎朝、徹朗は凛のトイレを急かしていた。
「お父さんと一緒に家を出たくて我慢してたんです。
あなたにまで捨てられたくなかったんです」。
可奈子がいなくなってから、凛は徹朗に言われるままに従ってきた。
しかしそれは父親を慕っていたからではなかった。

 徹朗が一言もいえずにいると、やがて美奈子もやって来た。
「凛をお願いできますか」
「もちろんよ」。
明日からは凛に振りまわされずにすむ。
「ホッとしてるんじゃないですか?」。
ゆらはそう言い残すと帰っていった。
その夜、パソコンで会社の仕事をしていると徹朗の脳裏に、さっきのゆらの言葉がよみ返った。
図星だった。
俺は娘を捨てたかったのだと。
しかしそうまで思って、代わりに守りたいものが何なのか、徹朗にはわからなかった。






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最終更新日  2004.01.09 06:25:12
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