話飲徒然草(S's Wine)

話飲徒然草(S's Wine)

2015年06月11日
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毎年この時期になると、「ワインエキスパート」の呼称資格認定試験を受けたときのことを思い出します。かれこれ15年以上前のことになりますが、学生の時以来、久しぶりに勉強らしい勉強をしたなあというような数ヶ月間でした。これで終わりかと思っていましたら、2007年には、「シニアワインエキスパート」が新設されまして、なんのかんので、こちらの資格も取得しました。

 ところで、「ワインエキスパート」といっても、一般の方への浸透度はあまり高くないと思います。このコラムをお読みの方々はご存じの方も多いかと思いますので、ここでは日本ソムリエ協会の「呼称資格の紹介」のURLを紹介(http://www.sommelier.jp/honbu/article/100374/)するに留めますが、ソムリエ/ワインアドバイザーとの違いは、ざっくりとひとことで言うと、ソムリエが飲食関係、ワインアドバイザーが酒販・流通関連なのに対し、ワインエキスパートはそれら以外という、職種による違いです。しかしながら、「ソムリエ」という名前の響きやブランド力もあってか、実情を知らない多くの人は、ソムリエがワインアドバイザー/ワインエキスパートよりも上位の資格だと思っているようです。ソムリエ協会のホームページには、以下のように明記されているのですけどね。



 直近(平成20年)の合格率はそれぞれソムリエ41.0%、ワインアドバイザー22.1%、ワインエキスパート39.7%となっています。
ワインアドバイザーの合格率が低い理由は、酒販会社などで、会社単位で受験を強いられる受験者が多いからだとも言われますが、真相は定かではありません。ちなみに平成20年現在の資格者数は、ソムリエ13409人、ワインアドバイザー10435人、ワインエキスパート6351人で、合計3万人近い有資格者がいることになります。これがシニアになると、ぐっと数は減って、それぞれシニアソムリエ1324人、シニアアドバイザー706人、シニアエキスパート69人となっています。
では、シニアの資格がそれほどの難関なのかというと、私自身が一昨年受験した印象では、難易度にそれほど大きな違いがあるわけではなかったように思われます。想像するに、資格を取得した数年後に改めて筆記の勉強をしなおさねばならない負担とか、世間的にはソムリエ/ワインアドバイザーの資格を持っていればそれで充分という認識が受験のモチベーション向上につながらないのかもしれません。

 では、実際にワインエキスパートの資格を取得したことよる損得は如何なものでしょうか?
履歴書の特技欄に書くことはできるでしょうけれども、そもそも私の場合、履歴書を提出するような機会がありません(笑)。せっかくいただいたブドウのバッジも、取得以来10年、一度も胸につけたことはありません。それでもまあ、間接的な効果まで含めれば、「取得してよかった」といってもよいと思います。
というのも、そもそも私のホームページ「S's Wine」をオープンしたのも、エキスパート受験の体験談を公開することが当初の目的だったし、そこから拡大した人的ネットワークは、今の私の大きな財産になっているからです。(逆にいえば、それぐらいしかメリットは思いつきません。)
次回は、この資格の割りに合わない点と、私が感じる試験の問題点などを書いてみたいと思います。

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前回からの続きです。ワインエキスパートの資格を取得して16年、シニアの取得後8年になりますが、これらの資格について、不満な点がないかといえば、あります。ありていに言えば、「割にあわない」資格だとさえ思います。
 まず、人と会話をするとき、とにかく疲れてしまうのが、「ワインエキスパートって、ソムリエの下位の資格でしょ?」という、この資格保有者の誰もが、おそらく耳にタコが出来るほど聞かされているであろう質問。
これについては、前回も触れましたが、いちいち資格のあらましを説明すること自体、言い訳がましく響くので、最近は「う~ん、まあ‥。」などと、適当にお茶を濁してしまいます。それにしても、世の中、「ソムリエ」という資格が、ものすごく取得するのが難しい、エクスクルーシブな資格だと思っている人があまりに多いのには驚きます。
まあ、我々のような一般愛好家は転職しない限り「絶対取得できない」という意味では、たしかにエクスクルーシブなんですが‥。
(個人的には、同期でワインエキスパート資格を取得された川島なおみ女史が、2年後に「ソムリエ・ドヌール」に就任されたのは、なんだかなぁという思いでした。)

 また、最近改正されましたが、以前は、ある資格の保有者が別の呼称資格を受験するときに、1次試験が免除されるという特例がありました。そのため、「ソムリエやワインアドバイザー資格対象の職業に従事しているが、勤務年数が規定に満たない受験者」が、まずワインエキスパートの資格を取得して、勤続年数が要件を満たすようになった時点で、ソムリエやアドバイザーを受けなおすという道筋をつけてしまったように思います。
そうなると建前上3つの呼称資格は同格だと言いつづけても、現実にはワインエキスパートは、ソムリエ/ワインアドバイザーの受験資格を満たさないプロの方々が取得する格下の資格という位置づけにいっそう見られがちです。

 一方、マニアや愛好家の間ではどうかというと、(少なくとも私の周囲の)愛好家の間では、ワインエキスパートの資格を持っていても、まったくといってよいほど評価や尊敬の対象にはなりません。というのも、ワインエキスパートの学習で得られる知識が、大学でいえば、「広く浅く」的ないわば「教養課程」のものであるのに対して、愛好家の世界というのは、ブルゴーニュやイタリアの愛好家に多く見られるように、対象の範囲を限定して、その部分とことん掘り下げる「専門課程」のようなものだからです。
エキスパート受験時に覚えなければならないスイスやギリシアの産地名がブルゴーニュ愛好家の間で話題になることはまずありませんが、彼らにとって重要事項であるブルゴーニュのドメーヌ名やヴィンテージの評価は、認定試験で出題されることはほとんどありません。
今までお会いした中で、アルマン・ルソーの名前すら知らないワインエキスパートの資格保有者の方がいたのには、正直驚きました。

 ということで、これから受験を考えている一般愛好家の方に「そもそも取得する意味があるのか?」と、正面から問われると、自信をもって「イエス」とはアドバイスしずらいのですが、なんだかんだでワインを系統立てて勉強する良い機会にはなるし、元来が実利目的でなく、「自己満足」的な資格なわけですから、それによって達成感を得られるのならば、取得を目指す意味はあると思います。

私も定年退職したら、もう一度受けなおそうかと思っています。(冗談です。)








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Last updated  2015年06月14日 12時40分12秒 コメントを書く
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shuz@ Re[1]:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) うまいーちさんへ お久しぶりです。コメ…
うまいーち @ Re:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) コロナですか。お大事に。 私もなりました…
shuz1127 @ Re[1]:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) maki5417さんへ コメントありがとうござ…
maki5417 @ Re:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) スパゲッティーは、材料費が安くお店にと…
shuz1127 @ Re[1]:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) Henryさんへ なんと、そうだったんですか…
Henry@ Re:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) アスリート食堂は、昨年8月に親会社(バル…
shuz@ Re[1]:2024年あけましておめでとうございます(01/01) Sugar7さんへ 本年もよろしくお願いしま…
成山裕治@ Re[1]:柴又帝釈天~その2(12/30) ダイアパレスさんへ

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