話飲徒然草(S's Wine)

話飲徒然草(S's Wine)

2016年08月13日
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4~5年前にヨミウリオンラインに書いた記事です。同じテーマでリアルワインガイドにもコラムを書いたことがあります。世の中広しといえども、こんなテーマでワイン専門誌にコラムを書いたのって、私ぐらいでは(笑)。

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みなさんはワイン以外にどのような趣味をお持ちでしょうか?浅く広くさまざまなことに首を突っ込んでいる私ですが、この数年というもの、ワインの次に凝っているのが「金魚飼育」です。熱帯魚でもなく古代魚でもなく、「金魚」です。

もとはといえば、子供たちが祭の金魚掬いで獲ってきたのがきっかっけでしたが、いざ飼い始めてみると、ワイン同様、幅広いバリエーションや奥深いマニアの世界があり、いろいろな意味でワインの世界と似ているな あと思ったりもします。ワインと金魚の一体どこに共通点が?と思われるかもしれませんが、たとえば以下のような点です。

1.種 類がバラエティに富んでいて価格がピンキリであること
背びれがなく、丸っこい独特 の形をした「らんちゅう」という品種があります。ときに「金魚の王様」とも呼ばれるこの品種は、品評会も盛んで、入賞を狙えるような個体には大層な値段がつきますし、愛好家や専門家の方々同士の交流も盛んです。その一方で「らんちゅう」のような品種は、フナ型の一般の金魚と比べると、体質的に弱いといわれています。ワインにたとえると、さしずめピノノワールといったところでしょうか。
逆に金魚すくいでおなじみの「和金」は、安いものなら一匹数十円からあり、大変丈夫で飼い易い品種です。もっとも、和金も上物になると、レア度も高まりお値段も高くつくあたり、カベルネブレンドのワインを彷彿させます。(ちなみに我が家の金魚は一匹数百円のものばかりです。)

2.凝りはじめると置き場所や容量不足に悩まされること。
小さな30センチ水槽ひとつで始めた我が家の金魚飼育ですが、今では60センチ水槽3つになってしまいました。さすがにこれ以上水槽が増えたり大きくなると、定期的な水換えの手間が大変になるので現状で留めようと思っています。ワインの場合は懐事情とセラーの空きスペース、金魚の場合は手間と労力がさらなる深みへ嵌らないための抑止力になっています。


「酵母」がなければブドウの発酵が始まらないのと同様、アクアリウムの世界においても、魚の排泄物から生じるアンモニアや亜硝酸を分解する「バクテリア」の存在が不可欠です。こうした点にあらためて自然の偉大さを思い知らされます。

4.誤った常識やイメージが世間に流布していること。
雑誌や映画のワンシーンで、金魚鉢の中で優雅に泳いでいる金魚が登場しますが、現実にはよほど手をかけない限り、小さな金魚鉢では酸素不足となって、金魚たちを長く飼うことは出来ません。
また、金魚すくいですくってきた金魚たちにすぐにエサをやるのも大きな間違いです。環 境が変わったばかりで体力を消耗している金魚に、一度に大量にエサを与えると、胃のない金魚は、すぐに消化不良を起こしてしまうからです。新しくもらってきた金魚は最低でも 2~3日絶食させるというのがセオリーなのです。
こうしたことが語られないまま、数日から1週間ぐらいで死んでしまう 金魚をみて、「金魚すくいの金魚はやっぱり弱いねえ。」などという話になってしまうのって、扱いの悪い店で買った劣化したワインばかり飲んで、 「ワインって高いだけで美味しくないよねぇ。」というのに似ているよなあ、と思いませんか。

5.手元において育てる(=熟成させる)楽しみがあること
一匹数百円の金魚たちに、膨大な手間と労力を割いて世話をしている姿を見た知人からは、よくもまあそこまで、と言われます。しかし金魚たちが水の中をヒラヒラと泳いでいる姿や、エサを求めて寄ってくる姿など、日常の中で大いに私を癒してくれますし、うまく飼えば10年近く生きたり、大きく育ったり、産卵させたりといった楽しみもあります。ワインにしても、大きなセラーが家の中に陣取り、しかも中身の大半はまだ飲めないというのは、一般の方から見ればなんて非合理な世界だろうと思われるかもしれません。しかしいろいろと苦労して入手したボトルたちを手元において、いつか飲む日を楽しみに待つのも、愛好家冥利につきるというものです。

他にも、たとえばマニア同士の会話は解説なしに一般人にはわからないこととか、挙げればキリがないのですが、今回はこの辺にしておきます。
ところで、金魚とワインで決定的に異なる点があります。それは(少なくとも私の場合)、ワインという趣味の方が、明らかに金魚飼育よりも金がかかる、ということです。
お後がよろしいようで。

LR-2307
現在、我が家の金魚は、4年前に金魚すくいで捕ってきたワイン、じゃなかった和金一匹だけになってしまいました。

LR-2310

ちなみに我が家で生まれた三十匹近いネオンテトラたちはあいもかわらず元気で、おかげでいつまでたっても60センチ水槽を減らせず、水換えが大変です。








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Last updated  2016年08月13日 11時36分32秒
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shuz@ Re[1]:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) うまいーちさんへ お久しぶりです。コメ…
うまいーち @ Re:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) コロナですか。お大事に。 私もなりました…
shuz1127 @ Re[1]:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) maki5417さんへ コメントありがとうござ…
maki5417 @ Re:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) スパゲッティーは、材料費が安くお店にと…
shuz1127 @ Re[1]:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) Henryさんへ なんと、そうだったんですか…
Henry@ Re:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) アスリート食堂は、昨年8月に親会社(バル…
shuz@ Re[1]:2024年あけましておめでとうございます(01/01) Sugar7さんへ 本年もよろしくお願いしま…
成山裕治@ Re[1]:柴又帝釈天~その2(12/30) ダイアパレスさんへ

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