話飲徒然草(S's Wine)

話飲徒然草(S's Wine)

2016年09月14日
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2010年の夏に書いた記事です。2回分まとめて掲載します。

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 危険水域です。何がって? 私が長年続けているワインのホームページやブログへの来訪者が激減しているのです。ピーク時に比べて、平均すると一日あたり200アクセス近く減っています。このところ多忙にかまけて、更新がおざなりになったりとか、ツイッターに読者が流れているということもありますが、それにしても、ここまで急激に減るのは尋常ではありません。 

最初、今夏の猛暑が原因なのではと思いました。
我が家では、通常、梅雨が明けるころからワインの消費が減って、内容も白ワインが多くなりますが、8月も半ばを過ぎる頃になると、体が室内の冷房に慣れきって、だんだんと赤ワインが恋しくなってきます。
 ところが今年は、9月に入っても連日35度越えの日々。エコ気運の盛り上がりで職場もそれほど涼しくないし、夜は毎晩熱帯夜だしと、赤はおろか白ワインにすらあまり食指が動きませんでした。自宅でワインを飲まなくなると、セラーの空きスペースが増えず、ワインを買い足すこともできない。そもそも酷暑の中、配送のリスクを背負ってまでワインを買うという気が起こらない。そうなると、ショップからのメルマガも斜め読みになって、ますます興味が減退する。そんな悪循環でした。書いている本人の興味が減退しているのですから、アクセスが減るのも致し方ないところですが、この暑さゆえ、おそらく読者のみなさんのマインドも似たような状況だったのではないでしょうか。夏場はワイン愛好家にとってはオフシーズンのようなものですが、今年はそれを通り越して「夏枯れ」に近い様相だったのではないかと思ったのです。

となると、ショップやレストランの売れ行きはどうだったのでしょうか。何人かの知り合いのワインショップやレストランの方に伺ってみました。

*埼玉県の著名なワインショップ店主~8月に入り、世の中に人がいなくなったんじゃないかと思えるほど、厳しい売上の日が続きました。史上最低の利益だった月と言えると思います。
~とにかく、今までならいらっしゃるはずのお客様が店に来ない日が続き、ネットからの注文も微々たる件数で、しかも1件当たりの売上が少ないと言うのが今年の8月の特徴です。9月に入って持ち直しつつある感じはしますが、決して強い波では有りません。


*私と同年代の世田谷のワイン専門店の店主
~リーマンショック以降、ユーロ安とはなったものの不況によって顧客の財布の紐がグッと固くなり、その傾向がずっと続いている、と感じています。それが、5~6月頃からより一層悪くなっている傾向はあると思います。
→なるほど。この夏になって急に、というよりはリーマンショックからの流れということですか。

※私がよく利用させていただくワインレストラン店主
~本当にコアな常連さんでない限りは、継続して来店していただけるのは難しいようです。繁盛しているお店も客単価の減少に悩まされているでしょうし、人件費、固定費とのバランスには色々苦労されていると思います。インポーターなども本当に厳しい。軒並みきついというか、ここのところの過去最低だそうです。

こうして業界のプロの方の話を伺っていると、単に酷暑の影響ということにとどまらない、もっと根深い、構造的、複合的な原因によるものがここに来て一気に噴出したという見方の方が正しいのかもしれません。他にも貴重なお話を伺えましたので、その紹介も併せて、次回に続きます。

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前回の続きです。改めて、世田谷のワイン専門店店主のご意見を紹介しつつ、話を進めたいと思います。

~ユーロ安でヨーロッパのワインは一時より2割以上安くなっているのですが、5千円以上の、ブルゴーニュでいえばプルミエ・クリュ・クラス以上は本当に苦戦しています。以前は高いものから先になくなっていた傾向がありましたが。
~現在市場に出ているワインが2007~2008年といった比較的オフ・ビンテージであることも関心が薄くなる傾向があるのかも知れませんが、今後2009年になってもごく一部のコレクター以外は動かないような気がします。もしかするとブルゴーニュが先導したピノ・ノワール・ムーブメントが、そろそろ倦怠期に来ているのかも知れません。

 今夏の酷暑以前に、07年08年と必ずしも評価の高くないビンテージが続いたことが、総じて沈滞ムードに輪をかけているのは明らかです。巡り合わせが悪いというべきか、買い手の立場からみると、最近ワインが安くなっているのは、ユーロ安の恩恵なのか、オフビンテージだからなのかがよくわからず、価格下落の有難味を素直に喜べない面もあります。  プルミエクリュクラスが苦戦しているというのは、皮膚感覚で頷ける部分です。私の場合、1級クラスは、日常飲むには高価すぎるし、持ち寄りワイン会等に持参するには迫力不足だしと、買っても飲む場面を想像しずらいのです。名の知れたドメーヌものを買おうとすると、1級で1万円近く、村名ですら5千円前後を覚悟しなければならない現在は、一般サラリーマンがブルゴーニュをデイリーに飲むには厳しい時代になってきたなぁと改めて思います。氏が指摘する「ピノノワールムーブメントの倦怠期」も、こうした要因が大きいのではと思ったりもします。



「憧れのワイン」が遠い世界のものになってしまったという実感は私にもあります。
私がワインに興味を持ち始めたころは、「PP100点ワイン」とか「1級シャトー」、「DRC」、「82ビンテージ」といったワインについても、記念日に奮発するとか、何人かでワリカンで飲むなど、頑張れば手が届く世界でした。しかし、世界規模での需要の増大や投機対象化により、今や1級シャトーやトップドメーヌのワインは、新たに興味を持ち始めた人たちが、ちょっと背伸びをして買おうとか、レストランで飲んでみようというプライスではなくなってしまいました。
~ワイン誌の読者のような、コアなマニアは別としても、より一般の消費者達が気軽に楽しめる裾野をもっと広げていかないと、健全な方向ではないでしょう。マニア自体の関心も以前より鈍っているようですし。
 気になるのは、私の周囲で、最近になって「ワインに興味を持ち始めた」という人がほとんど皆無といってよいことです。この10年を振り返ってみると、90年代後半のような大ブームこそありませんでしたが、自然派ワインの台頭とか、国産ワインとか、泡物ブームとか、そういった盛り上がりはありましたし、コミック「神の雫」のヒットなどもありました。にもかかわらず、自分の周りで愛好家の裾野が広がっているという実感がないのです。
 一方で、「コアなマニア層」が磐石かというと、家族持ちになって可処分所得が減ったり、健康の問題でアルコールを控えねばならなかったり、仕事が多忙だったり、その他やむをえない事情などで、ワインから離れていく人たちも少なくありません。

 90年代のブームが終焉を迎えていたころ、「もはやワインはブームではなく、日本人の日常に定着した」というようなことが喧伝されました。たしかに、居酒屋などで気軽にワインと接することができるようにはなりましたが、そこから先、ワインが導いてくれる広く深い世界に踏み込もうとする人があまりいなくなってしまっていることは、一愛好家としても残念に感じます。











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Last updated  2016年09月14日 07時53分08秒
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shuz@ Re[1]:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) うまいーちさんへ お久しぶりです。コメ…
うまいーち @ Re:今になって新型コロナ感染(8日目)1週間ぶり出社(04/25) コロナですか。お大事に。 私もなりました…
shuz1127 @ Re[1]:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) maki5417さんへ コメントありがとうござ…
maki5417 @ Re:【竹橋ランチ】マンマ・ミーヤ再び(娼婦風)(02/09) スパゲッティーは、材料費が安くお店にと…
shuz1127 @ Re[1]:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) Henryさんへ なんと、そうだったんですか…
Henry@ Re:【悲報】東京アスリート食堂ランチ値上げ(02/08) アスリート食堂は、昨年8月に親会社(バル…
shuz@ Re[1]:2024年あけましておめでとうございます(01/01) Sugar7さんへ 本年もよろしくお願いしま…
成山裕治@ Re[1]:柴又帝釈天~その2(12/30) ダイアパレスさんへ

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