タケノコmaxのパソコンでオーディオ

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2008年03月14日
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カテゴリ: CD紹介

Stuttgart Chamber Orchestra / The Tube (TACET S74) [SACD Hybrid]

前回 のDas Mikrofonといっしょに購入したのがこのThe Tubeで,マイクからアンプ,ミキサー,そしてテープレコーダーに至るまで,全て真空管式の機器のみを使って録音した,という,さらにマニアックなもの。こちらもTACETの代表的なディスクということで一応購入してみたが,聴く前はその試みにあまり意味があるとは正直思っていなかった。アンプに限っていえば,経験上,それが真空管アンプか半導体アンプか デジタルアンプ か,というよりは,個別に音を聴いてみないと判断できないと思っているし,むしろ真空管式にはトランスなど音質上不利な点も多いという認識があった。

The Tube (TACET S74) ライナーノーツ
ライナーノーツではディスクの制作意図についても触れられており,オーディオ技術が真空管から半導体へ移り変わる過程で何かが失われたのではないか,という問いから制作が開始されたという。その真空管へのこだわりは徹底されている。例えば,CDに収めるためにアナログ-デジタル変換する際に半導体の機器を使っていることは認めているものの,それでもその処理において音声信号が半導体の中を通らないよう注意したとし,あくまでも半導体が音に影響を与えることはなかったと主張している。これを読んで私はふと,アルバムのクレジットにいつも「No Synthesizers Used, No Computers Used.」と書いていたトム・ショルツ率いるロックバンド ボストン の頑固さを思い出した。

The Tube (TACET S74) Telefunken M5
テープレコーダーとエディターとして使われたTelefunken M5の中身。ライナーノーツには他にも,今となっては動かすこと自体大変そうな機器の写真が載せられており,録音の過程ごとに詳細な説明がある。ただし,ざっと最後まで読んでみても,上記の問いに対する回答は明確には書かれていないようだ。(私の拙い英語力と知識では文脈を捉えきれていないのかもしれませんが・・・)

もっとも実際に聴いてみると,真空管か半導体か,といったことはどうでもよくなるほどに優秀な録音だと感じる。#1の冒頭のバイオリンのピチカートから存在感のある音に驚かされる。#16では低音の重厚な響きから現れるバイオリンの瑞々しいソロが聞ける。また収録曲はバロック音楽で統一されているが,有名曲ばかりを集めたよくあるコンピにはないこだわりの選曲で,不協和音を含むこの#16なども,この時代の音楽の奥深さを感じることができる。シュトゥットガルト室内管弦楽団による演奏もすばらしい。

「松脂が飛び散る音」と評されることのあるTACETだが,確かに演奏されている様子が目に浮かぶようなリアリティがある。そういえば,最新の1-bitデジタル録音技術で録られた To the Limit でもギターの質感まで分かるような音に驚いたが,「Tube Only」にこだわった録音でそれに似た生々しさがあるのはおもしろい。

しかし,あんなに古い録音機器でこれほどすばらしい音が録れるというのはどういうことなのだろうか。全くの素人の想像になってしまうが,これは卓越したアナログ録音の技術を持った職人の執念に因るところが大きいのではないかと思う。 最近のDTM用機器・アプリケーション を見ても,昔よりはるかに簡単に高音質な録音が可能になってきていることは素人目にもわかるが,その分効率が重視され,音源に合わせてマスタリングを丁寧に行うといったことが少なくなってきているのではないか。現在の録音現場の様子が書かれている こちらのページ を読むと,録音エンジニアが試行錯誤を重ねることで積み上げてきた職人の技が失われてきているように感じる。(この方のページは以前 ベッドサイドオーディオ 設置の際に参考にさせていただいたが,他にも ライブとオーディオの違い などもおもしろい。)いくら録音技術が発達しても,ここをいじるとこんな音になる,という経験やセンスは必要なはず。The Tubeの高音質は,経験豊富な専門家が機能を熟知し思い入れのある機器を,マスター音源の性質に合わせて細かく調整した結果なのだろう。続編の The Tube Only Violin なども聴きたくなってきた。

01 Luigi Boccherini - La Musica Notturna delle strade di Madrid
02-04 Giovanni Battista Sammartini - Sinfonia F-Dur JC 35
05-08 Charles Avison - Concerto XII
09-12 Georg Friedrich Handel - Concerto grosso op.6 Nr.2 F-Dur
13-15 Antonio Vivaldi - Concerto alla Rustica G-Dur RV 151
16 Heinrich Ignaz Franz Biber - Battalia a 10
17-21 Arcangelo Corelli - Concerto grosso op.6 No.7 D-Dur

これまでにレビューした機器・CD一覧は こちら

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