「松脂が飛び散る音」と評されることのあるTACETだが,確かに演奏されている様子が目に浮かぶようなリアリティがある。そういえば,最新の1-bitデジタル録音技術で録られたTo the Limitでもギターの質感まで分かるような音に驚いたが,「Tube Only」にこだわった録音でそれに似た生々しさがあるのはおもしろい。
しかし,あんなに古い録音機器でこれほどすばらしい音が録れるというのはどういうことなのだろうか。全くの素人の想像になってしまうが,これは卓越したアナログ録音の技術を持った職人の執念に因るところが大きいのではないかと思う。最近のDTM用機器・アプリケーションを見ても,昔よりはるかに簡単に高音質な録音が可能になってきていることは素人目にもわかるが,その分効率が重視され,音源に合わせてマスタリングを丁寧に行うといったことが少なくなってきているのではないか。現在の録音現場の様子が書かれているこちらのページを読むと,録音エンジニアが試行錯誤を重ねることで積み上げてきた職人の技が失われてきているように感じる。(この方のページは以前ベッドサイドオーディオ設置の際に参考にさせていただいたが,他にもライブとオーディオの違いなどもおもしろい。)いくら録音技術が発達しても,ここをいじるとこんな音になる,という経験やセンスは必要なはず。The Tubeの高音質は,経験豊富な専門家が機能を熟知し思い入れのある機器を,マスター音源の性質に合わせて細かく調整した結果なのだろう。続編のThe Tube Only Violinなども聴きたくなってきた。
01 Luigi Boccherini - La Musica Notturna delle strade di Madrid 02-04 Giovanni Battista Sammartini - Sinfonia F-Dur JC 35 05-08 Charles Avison - Concerto XII 09-12 Georg Friedrich Handel - Concerto grosso op.6 Nr.2 F-Dur 13-15 Antonio Vivaldi - Concerto alla Rustica G-Dur RV 151 16 Heinrich Ignaz Franz Biber - Battalia a 10 17-21 Arcangelo Corelli - Concerto grosso op.6 No.7 D-Dur