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密告はうたう 警視庁監察ファイル【電子書籍】[ 伊兼源太郎 ] しかしそれにしても監察モノを小説にすれば、 警察だけで小説が完了するということなのだろうか。 しかしそれにしてもこれだけ読みづらい小説は久しぶりだね。 とにかく読了はしたものの、 これだけつまらない小説は本当に久しぶりだよ。 もしこれが紙の本であれば、ドブ川に投げ捨ててやったところだ。 それぐらい ひどい作品だった。 はて、論点 は一体なんなのだろうか。 監察が捜査部門の真似をして危険な部分に関わるわけがないじゃないか。 彼らは綺麗な手をして、 ただただ警察官の不祥事を暴くというのがその本業なのだ。 皆口という女性警察官は、 一体何だったのか。 その警察情報の漏洩疑惑はどこへ飛んでしまったのか。 ただ単に、最終盤に書かれていた通り、監察を出向かすだけの呼び水 だったのか。 とにかく、 警察の内部でも見えない部分である公安については書きたがり屋がいっぱいいるということなのだろう。 確かに彼らは見事に世の中に知られていない人たちだから監察という分野でも仕事が立つのはわかるけれども、 しかしそれにしたって、本作のような話になりうるのだろうか。 とても疑問だ。 本作のような話は何も警察の監察ということを出さなくても、 犯人が他の組織のメンバー、はっきり言えばそれはマル暴であるけれども、それですむ話ではなかったの。 警察が悪者にならなければならないわけがわからない。(9/9記)
2024.11.27
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なぜ格差は広がり、どんどん貧しくなるのか?『資本論』について佐藤優先生に聞いてみた【電子書籍】[ 佐藤優 ] 今更、 資本論もないだろうと思いつつ、 しかも、 資本論といえば左翼の聖典的な部分もあることが分かっていながら、 3大知的巨人+1という部分で興味があった。 Kindle Unlimited で探したら、 佐藤優の本として、 この本が出てきたということである。 様々な面白い記事があったけれど、その中でも 食品偽装については、 どうして食品偽装などの企業不祥事が起こるのでしょうか。 使用価値は他人事であり、 消費者に届く商品の安全性を大して意味がないと考える資本家もいるためです。と結局資本家から見れば消費者とかあるいは資本家の下にいる労働者も含めて富以外に興味がないという結論に至る。 その結果、 格差社会は広がり続ける。 なぜ格差社会は広がり続けるの? 経済発展で資本家の利益は拡大していくが労働者の収入はどんどん抑圧されるのです。と、資本家は自らの富しか頭にないことから、 労働者の収入は伸びるわけがない。 ただ、 労働者と資本家の関係は労働者が安定している(低空飛行ながら) に対して 資本家は、 ハイリスクハイリターンの危険が常につきまとっているということになる。 そして今、AIなどの発展著しくもはや資本家そのものもAI に凌駕されかねない時代に入った。 いずれにしても私自身、給料は10年以上据え置かれた経験があるので、悔しい思いしかない。 しかしながら、資本家vs.労働者の関係も、崩されつつあり、今更資本論もないんじゃない、というのが現時点での私の偽らざる感想である。(9/8記)
2024.11.26
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渡部昇一の世界史最終講義 朝日新聞が教えない歴史の真実【電子書籍】[ 渡部昇一 ] 要するに朝日批判、先の大戦の正当性、同戦争の米国の非道さを一気に書き上げたもの。 その渡部昇一先生、本題が最終講義とあるとおり、お亡くなりになって10年たらず、本書はしかも、産経の論客高山正之という方との対談という形を取っているが、先生は、そうですね、そのとおりですね、なんていう拍子トリしかしていない本で、私としては、えっ先生、何を言いたかったんですか、朝日もマッカーサーも徹底してやっつけてくださいと言いたいところ、もうおられないとこういうことだ。 敗戦直後は朝日もまともだった。 鳩山一郎に原爆の非人道性を指摘する論考を書かせたが、GHQは朝日を発行禁止にして脅しをかけ、この次はもう廃刊だと脅しつけたら、あっさりと転んだ。 GHQは朝日を一番の子分にした。 その他の新聞など当時、眼中になかったからだ。 日本軍による虐殺やバターン死の行進のようなホラ話を書かせようとし、まず新聞社には紙の割り当てを制限した。 先例がある。 英国はビルマを支配するとまず紙を専売制とし、キリスト教会でしか売らせなかった。 すると仏教徒がほとんどのビルマ人には紙が手に入らなくなって抵抗活動も停滞した。 情報伝達手段を押さえるのは、植民地支配の基本だ。 というのが朝日の姿。 そして、朝日は、髙山 大西巨人との論争自体、朝日新聞がねつ造したものですね。 あたかも紙上対談のようにレイアウトしていました。 1980年 10 月 15 日付朝刊の「大西巨人氏 vs 渡部昇一氏」、見出しは「劣悪遺伝の子生むな 渡部氏、名指しで随筆 まるでヒトラー礼賛 大西氏激怒」。 あれはひどかった。渡部 そうです。会ったこともないし、読んだこともない人と紙面で対談しているんです。 あんなひどいことをやるとは知らなかった。 社会面のたっぷり4分の1以上のスペースに6段抜きで報道されたこと自体が、まったくの虚構で、大西氏が紙面で私に反論したわけでもない。 虚構記事で悪質な紙面を作り上げ、朝日が気にくわない思想の持ち主として糾弾されたのです。 私の言っていることがねじ曲げられ、5段抜きで「ヒトラーの優生思想の礼賛者だ」と、正反対にされてね。と、渡部先生に牙を剥く。 特徴的なことは、朝日は、1980年代ころに様々な捏造を仕掛けてきたということなんだな。 あのサンゴ礁に落書き事件どころの話ではなかったわけだ。 それなのに、憎しと思う論客に関してまで上記のような反則をする。 ひどいもんだ。 ところが高山さんなり渡部先生が朝日を糾弾すればするほど、朝日は知らんぷりで押し通し、結果的に(この話に連結するのかどうかは怪しいけれど…)産経は部数を伸ばせず、山形の支局はなくなり、地元の記事なんざあ東北まで広げないと出てこないという為体だ。 まあとにかく、朝日を敵に回すと恐ろしい事になるんだなと、本書を読んで続くづく思った。 結局日本が左傾化している。 そして天皇制も危うい。髙山 憲法の次に、マッカーサーにいじくり回されて、まだ直せないでいる問題に、皇室典範があります。 戦後、新しい皇室典範と憲法の下で、宮家を一斉に皇籍から離脱させ、 14 家あった宮家は今は3家のみです。 華族制度も廃止して、五摂家(藤原北家の流れを汲む、摂政・関白に任じられる近衛・九条・鷹司・一条・二条の五家) も殿上人(昇殿して天皇の側に仕えることが許される貴族の位) もすべて廃してしまいました。 少なくとも旧宮家を今すぐ元に戻して、早急にマッカーサーの痛手から立ち直らないと、由々しきことになる。 宮家を減らすべく皇室典範を変えたのは、皇室の根を切るためでした。いまや衰亡に任せるような事態になっています。 渡部 そう、宮家がどんどん減って、皇室が裸になってしまいました。というようなことで、結局マッカーサーの思惑通りに天皇制の終わりも見えてきたというわけだ。 昭和天皇を助けた顛末はこれだったんだね。 結局美談の裏には、上記のような長期に及ぶ天皇制の廃止があったのだった。(9/8記)
2024.11.25
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京都寺町三条のホームズ 2 真贋事件簿 望月麻衣/著 1を読んでから、6、6.5から2まで逆読みしてよかったかなと本作、つまりシリーズ2を読んで思った。 というのは、この2できが非常に悪い。 ぶれてるんですね、ホームズだからそのライバルモリアティが必要となり贋作師円生をそのポジションにしたのはいいが何が森亜だ、まだまだこの時点ではこのシリーズ固まっていなかったんだなと思った。 もし順に読んでこの2にいたったら、おしまい、あと読まぬということになったろうな。 そしてライトミステリーの悪いところ、なんのミステリーも存しないというところ。 そこでライトミステリーですからと逃げてほしくないのだけれど、今回は全くライトミステリーにすらなっていなかったんじゃないか。 そもそもホームズを語ってほしくない。 ホームズはミステリー界の尊師だ。 ライトだからとか、葵がよろしいなどという話ではない。 その葵にしたって、バイトに入ってからなんでそんなに真贋を見極めることができるようになるのだ。 そして、その清貴と葵の話のなんとのたりくたりした動きだこと、6から逆読みしたおかげで安心してその恋愛譚は読める。 という事で2は全く精彩なし。 時間の無駄だということになる。 と言いつつ、とにかく、このKindle Unlimitedに入っているからには、読まないと気がすまない私なのだった。 そして、3以降はそれなりのライトミステリーだから、文句の言いようがないのだが、結構な多作で、しかもKindle Unlimitedにかなりの数の作品を出しているから、これから日数をかけて完読了しなければならないだろうか。(9/8記)
2024.11.24
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甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理【電子書籍】[ 塔山郁 ] 実によくできた話で感心する。 なにより、私の薬学知識不足から、本作で薬学を学ぶような感じなのだ。 本当に、私は、乱歩、正史、清張、森村、東野ときて、内藤を第六祖に指名したわけだが、そのあたりの優秀な作家にまた感動しているところだ。 この塔山、それから望月…。 さて本作はまだシリーズ第2作なので水尾爽太と毒島花織の間には、ラブの兆しも見えないが、本作では、ディズニーシーに行くことになりながら、結局花織の趣味で、目黒の博物館に赴くことになったのだった。 何しろ爽太はホテルマン、そのホテルで無銭宿泊的なことが起きて、残された薬から、花織が様々な推理を巡らすわけだけれども、ここのところちょっと叙トリ臭いと言うか、読み手を引っ掛けに来てるなと言う作為がプンプンするわけだ。 この無銭宿泊の部分をさらりと書いて忘れた頃にまた別のシーンで出すのだけれど、ここね、ミステリーリーダーには、全部みろっとめろっとお見通し状態、ホテルにおける長期連泊外人の無銭宿泊のことを忘れるわけには行かぬ、と思っていたら、実に効果的なストーリーで、睡眠薬の服薬の形で、出してきた。 そしてここで、かつての毒殺事件の薬学的考察が入る。 いわく、作動薬と拮抗薬の話だ。 つまり、トリカブトとフグ毒を一緒に飲むとお互いが拮抗薬でしばらくの間、症状が出ないのだが、時間がすぎるとどちらかの毒が出てきて中毒し、死に至るという話。 いやあ、本当に薬学は奥が深い。 本当に生まれ変わったら薬剤師になりたい。 なにより、Kindle Unlimitedに本シリーズの3巻以降を出してほしい。(9/7記)
2024.11.23
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降格警視【電子書籍】[ 安達瑶 ] ミステリーのお約束には、動機・機会・方法があって、昨今のミステリー業界は、 警察を中心にしたものを書いていることから、私はそれに、 警察組織、 刑事法、物語性の3つを加えて評価することにしている。 さて本作はその一番大事な3大お約束、動機・機会・方法についての詳細な記述はないものの物語性はある。 しかしながら刑事法については異常に詳しく、 そもそも常人逮捕などという(私人逮捕とは言っているが)ところから入ってくるし、 動物愛護法などという玄人好みの法律を勉強しているなと思われるものの、警察組織についてはかなりの粗さ が見えた。 2020年以降の作品にも関わらず今も生安が薬物犯罪の捜査をしているような書きっぷりでは、 リアルさにもとる。 薬物犯罪の資料については、 平成16年に生活安全課から刑事課に引き継がれたと聞いている。 それが本作では、 生安の事件捜査という形で語られているから、 もうこの時点で本作を読もうという気がなくなったのだった。 面白い要素が1つもないのだ。 例えば、 密室、 例えば暗号、 例えば交換殺人、 例えば顔のない死体などなど書き続けたら、きりがないが本作ではなんとなんと全くその気配がないのだ。 つまり、 薄っぺらいということになる。 一体この作家は何をもって本作を ミステリーと言おうとしているのだろうか。 生安は刑事、組織犯罪対策、 警備、 交通で担当する犯罪捜査以外の全ての事件の捜査をしていると述べるうすらバカさも私は気に食わない。 なのに、 もう2冊も読まなければならないのはどうも私にとっては拷問だ。 しかしながら私のポリシーとして最後まで読み届けなければならない。 これは私の義務である。 だからミステリーリーダーなのだ。 さて、 本作の殺人事件であるけれども、 世田谷一家殺人事件に似せた事件は犯人が半端すぎやしないか。 普通この容疑者としてあげられた人物は、最後に犯人ではないというオチが必ずつくのであるけれども、結局この犯人をそのまま使ってしまったのが私には気に食わない。 そもそも 猫殺しと人殺しは繋がらない。 こういうリアリティのなさがあまりにも目についたなあと私には見えた。(9/6記)
2024.11.22
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地方消滅 東京一極集中が招く人口急減【電子書籍】 本書が世に出てきたのは、2014年のこと。 重大な示唆及び解決策が述べられている。 それが10年後の今、見事に当たっているのだ。 つまり、為政者はこの10年間、一体何をしてきたのか。 たとえば、菅前首相は、この人口急減問題につき、不妊治療云々の助成を打ち出したりしていたが、それは、この重大な国家の存亡にかかわる問題からは、大きく外れた、単なるアリバイ作りだったと評価されてもしょうがあるまい。 岸田首相はなにをしたか。 目に見える対策をしたとは言い難い。 ただただ我が国の人口が急減しているのを見ているだけ。 アリバイ作りという観点からみれば、とにかくお金のバラマキ。 何を何にどれだけばらまいたかもわからない。 それでなにが財政危機か。 もう10年も前に、 第五の誤解 近年日本の出生率は改善しているのでこのままいけば自然と人口減少は止まるのではないか。 日本は今後若年女性数が急速に減少するため、出生率が少々上昇しても出生数は、減少し続ける。 仮に今出生率が人口置換水準である2.07に回復しても今から生まれてくる世代が子供を持ち始めるまでの数十年間は、人口は減少し続ける。 第六の誤解 少子化対策はもはや手遅れであり、手の打ちようがないのではないか? 人口減少がもはや避けられないのは事実だが、将来人口をどの程度で維持するかは、これからの取り組みにかかっている。 出生率改善が5年遅れるごとに将来の安定人口が300万人ずつ減少する。 少子化対策は、早ければ早いほど効果がある。 第九の誤解 海外からの移民を受け入れれば人口問題は解決できるのではないか? 日本を多民族国家に転換するほどの大胆な受け入れをしなければ出生率の低下はカバーできず現実的な政策ではない。 出生率を改善することが、人口減少に歯止めをかける道である。という種々の問題について、これだけの研究がなされていたのだ。 それなのに、この真摯な研究をいったい誰が声高に叫んだのか。 マスコミすら知らんぷりをしていたのではないのか。 例えば次の、 つまり日本は2040年までの「老年人口増加+生産・年少人口減少」の「第1段階」、2040年から2060年までの「老年人口維持・微減+生産・年少人口減少」の「第2段階」、2060年以降の「老年人口減少+生産・年少人口減少」の「第3段階」という三つのプロセスを経て人口が減少していくことが予測されている。などという人口減少の形をもっともっと声高に叫ぶべきではなかったのか。 すべてはもう遅すぎという感じだ。 そもそも、 まず第一のケースとして生まれてから20~39歳になるまでの間に女性がほとんど流出しない自治体のケースを考えてみる。 このようなケースでは、現状の全国平均の出生率1.43が続くと仮定すると、2040年の「20~39歳の女性人口」は約7割に減少することとなる。 人口を維持するには、直ちに出生率が2.0程度になる必要がある。 次に第二のケースとして生まれてから20~39歳になるまで男女ともに三割程度の人口流出があるケースを考えてみる。 この場合現状の出生率が続くと仮定すると、2040年の「20~39歳の女性人口」はおおむね半減し、60~70年後には二割程度にまで減少する結果となる。 このような自治体において長期的に人口規模を維持するためには、出生率が2.8~2.9程度になる必要がある。ということであり、とにかく日本の人口問題は絶望的な段階に達しているのだ。(9/6記)
2024.11.21
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文明の逆説 危機の時代の人間研究【電子書籍】[ 立花隆 ] 昭和51年に出版された本だ。 つまり今を去ること48年前の話。 なのに、 子供を殺す母親、子供を虐待する母親たちが話題になっている。 新聞をくって、この十月(一九七三年) に起きた分だけを拾い出してみても、こんなにある。 十月五日、広島出身の二十七歳の母親は、東京で生後十二日の息子をふとんをかぶせて窒息死させ、石こう詰めにして郷里に送った。 十月七日、埼玉県の三十歳の母親は、自宅で出産した未熟児の男の子を絞め殺し、ビニール袋に入れて、洋服ダンスに入れていた。 十月十日、宇都宮の三十四歳の母親は、玄関をクギ付けにして三歳と二歳の息子を監禁したまま、男と四日間遊び歩いていた。 子供たちは、たれ流しの糞便の中で、シャツ一枚の裸同然の姿をしており、衰弱死寸前のところを助け出された。 十月十日、岡崎市の公衆便所でスーツケース入りの幼女の死体が見つかった。 母親は六日から行方不明。 「子供がいなければ働けるのに」と前からもらしていたことが判明した。 十月二十五日、埼玉県の三十一歳の母親は、三歳の娘が泣きやまないので、口におしめを押し込み、それでも泣きやまないので、毛布をスッポリかぶせて窒息死させた。 十月三十日、東名高速道路上に三歳の女の子が置き去りにされていた。 調べてみると、母親は子供を連れて愛人と 出奔。 途中で邪魔になって捨てたものとわかった。 おまけに、この愛人の男のほうも自宅に七歳の養女を置き去りにしていた(妻とは離婚)。 十月三十日、尼崎市の三十二歳の母親は、一歳の娘が泣きやまないので、抱いてあやしているうちに、発作的に二メートル離れた畳の上に放り投げて殺した。などという犯罪が世の中を揺るがし、さらに、 そして総犯罪が頭打ち傾向の中で、増加一方の少年非行。 その内容も質的に変わってきている。 遊び的なものが多い。 中学生三人が赤軍派をまねて郵便局強盗。 携帯用バーナーからノコギリまで七つ道具をそろえて、盗みまわっていた小学四年生二人と中学一年生の三人組。 五十万円盗んで一日に十五万円も使って豪遊した小学四年生などなど。 昔は非行少年といえば、半分以上が精神薄弱者で残りも恵まれぬ環境の子供だったが、最近は該当者はたかだか一割。 家庭環境も社会的に悪くなく、性格異常ともいえない子が多い。 正常児と非行児の間のカベがなくなったともいえる。 同じことはヤクザとカタギ、水商売の女性とカタギの女性の間でも起きている。 さきほどの分裂病の例といい、性倒錯者の社会的公認の風潮といい、社会全体で正常と異常の間のカベが取りはらわれつつあるといえるだろう。 これがどこまでいくのだろうか。というような時代背景の中書かれたものだけれど、特に気になるのは、この二つのことすなわち、子殺しは、今も変わらず発生しているのに対し、少年非行が驚くほど減ったという二つの事実だ(ただし、ヤクザとカタギ等2者のカベが取り払われたということは今に続く)。 そんな中、彼立花は、まるで現代を見据えたような記事を本書で書いている。 今回上記に紹介した子殺しはなくならないが、少年非行は天文学的に減少した点、ほぼ50年前に予測しえたこととしえなかったことがあるということになるか。 本書では、氷河期になる可能性と地球温暖化の可能性にも言及しており、ホモ・サピエンスは、凍死するか、溺死するかのどっちか、なんて書かれているが、うむ、これは二者択一で、必ず当たるような話だから、そういう意味では、約50年前にあげつらったことは、新しくもあり、古すぎてお話にならない部分もある、ということになりそうだ。 それにしても、50年前には考えられないほどの文明の発達がある半面、予測が大きく外れるということもあるんだなということ、これはたしかなことだ。 当たり前の話だが。(9/5記)
2024.11.20
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井上ひさし笑劇全集(上)【電子書籍】[ 井上ひさし ]井上ひさし笑劇全集(下)【電子書籍】[ 井上ひさし ] 勝手に、立花隆と渡部昇一と井上ひさしを三大知的巨人に祭り上げたまではいいが、そこでこの三人の著書を徐々に読んでいるところ、はて、本作品はいったい何だったのかと、えっ、井上ひさしってこんな感じだったけかと、はたと思い悩んだ。 本作は上下巻、戯曲集。 それもてんぷくトリオ用に書かれたもの。 そのてんぷくトリオのメンバーは、三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗だった。 私は、このトリオのファンだったが、戸塚の急逝でトリオがなくなり、その後焦点の司会などをしていた三波も急逝して、その存在すら忘れていた。 何しろ、本作を読むまで、伊東四朗がてんぷくトリオだったことをすっかり忘れていたのだ。 それはともかく、このトリオは、私の父が大好きだったなあと、今にして思い出す。 そして、なるほど本作はあの三人のために書かれたものなんだなと独り言ちた。 だが、読めば読むほど、昭和感が漂いすぎて、昭和生まれの私も、笑うに笑えないような感じだった。 井上にしてみれば、そもそもユーモア作家だろうから、このテの作品は、地のものだろうけれど、今の私には、毒が強すぎて参ってしまった。 そう、今書いた通り、昭和感漂うもの、差別用語はお手の物、人権などなんのその、的なスタンスですな、そういうので笑いを取る時代だったなあと、ふと思った。 毒による笑いとでもいうのかな。 今の人はそういう毒についていけなくなっている…と思われる。 しかし、こういう文化もあったのだということを覚えていてほしい。(9/4記)
2024.11.19
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京都寺町三条のホームズ 3 浮世に秘めた想い 望月麻衣 このシリーズは今まで何度も書いてきた通り、上質な京都ガイドブックだ。 実際京都を旅行した者にとっては、あああそこだ、ここだと楽しんで読める仕組みだ。 それが一本の伏線とすれば、もう一本が、家頭清貴と真城葵の恋愛譚である。 そして、作者そのものが自己の作品をライトミステリーと呼んでいるので、本格ミステリーからは程遠く、したがって吾々ミステリーリーダーからすれば、朱を入れにくい。 が、しかしあえてミステリーというカテゴリーの中の作品なのだから、ここはきちんと書かないといけない。 まず、だれが脅迫状を書いたのか。 ふむ、三人の女がからんで、それを清貴が見事に推理するという話だ。 1時間で往復不可能なアリバイ崩し。 うーむ、こういう翠富士の肩透かし的叙トリがあっていいのかな、と、ここまで極めて辛口の評価になる。 暗号解読と贋作見破り。 話は簡単なのだが、ムンクの叫びとか、さらには、外車の型式まできちんと覚えていないと暗号は解けない。 贋作の話になると、オタクレベルだ。 まあそれにしても京都の表現は見事だな。 例えば大晦日の錦市場の喧騒なんか、そこに行っているから、大晦日はそうなるんだろうなという想像が容易について、私の頭の中で京都市民が、そちこち歩き出しているのだ。 そもそも本シリーズは、6.5から逆走中なので、真城葵と家頭清貴の中については、全部みろっとめろっとお見通し状態というか知っている状態で、そういう面では実に安心しながら読める、ということも書いておきたい。(9/3記)
2024.11.18
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佐藤優の地政学入門【電子書籍】[ 佐藤優 ] 佐藤優の著書というよりは、佐藤優監修にかかる書物で、題名の通り、地政学の入門書だ。 いろいろ面白いことが書かれていて、抜き書きしたかったのだが、今回は本当に地政学の、チ、の字ということで、 現代地政学の祖と称されているのがイギリスの地理学者、ハルフォード・マッキンダーです。 マッキンダーは(略)ワールドアイランド(世界島)と呼び、1 ユーラシア大陸の中心部を指す「ハートランド(心臓地帯)」2 太平洋・インド洋の沿岸地帯3 ヨーロッパの諸半島・島々と地中海4 南のハートランド5 サハラ(砂漠)6 アラビア(半島)(略)シーパワーで世界を制したイギリスの海軍が及ばない大陸の最深部をハートランドと呼んだのです。と、イギリスの学者らしく、イギリス海軍を基準にして分けた。 日本も実に重要な地政学上の立ち位置にある。 日本列島はロシア、中国というランドパワー国家が太平洋に出るのを邪魔するような位置にちょうど浮かんでいます。 (略)さらに日本列島は、シーパワーのアメリカがランドパワー国家を抑え込むための防波堤ともいえる重要ポイントなのです。 このことは実に有名な重要な事実である。 そしてまた、本書では、米国をシーパワーと呼んでいるのも重要な部分である。 なるほど米国は巨大な島国なのだ。 そのことは、私にとっては初耳学だ。 日本列島を北極の方から見ると、まさに上記のとおりのポジションだ。 有名なこととはいえ、知らない人もいるだろうから、披露しておこう。(9/3記)
2024.11.17
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薬も過ぎれば毒となる 薬剤師・毒島花織の名推理【電子書籍】[ 塔山郁 ] こちらもライトミステリーの範疇に入るんでしょうなあ。 家頭清貴を書いている望月麻衣の作品は、上質な京都ガイドブックの趣もあって、血生臭い事件がなくても面白いと感じる事が出来るのだが、本シリーズもどうやらその気配濃厚だ。 こちらはガイドブックじゃなくて薬の話が本当にためになるって話。 そして私は、もしも生まれ変わるのであれば、来世は薬剤師になりたい、なんて本気で考え始めたのだ。 翻ってミステリーの方は、私に限っては、全部みろっとめろっとお見通し状態、ビタミンkが云々かんぬんなんて言ってもわけわからん私も、血液サラサラ剤と納豆の取り合わせの悪いことなどわかっているから、このトリックは、済、なのだった。 同様、消えたステロイド剤は、私、先走ってしまいましたな、てっきり、薬の嫌いな子供が隠しちまったものと推理したが、それは、間違いだった。 そんなこんなでうろうろ読んでいたら、薬剤師毒島花織の素顔がじっくり見えてきた。 こういうふうに、物語に入っていけるということは、それだけ作家に筆力があるからなのだ。 たしかに、ライトミステリーではあるが、それ以上に薬の蘊蓄が面白い。 それから、このところのこういうミステリーでは、恋愛譚も入るのだが、今回は、祭文語り的な位置にいるホテルマンの水尾君との仲がこの先一体どうなるのかという点がポイントだね。 また楽しみなシリーズが増えた。(9/2記)
2024.11.16
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自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体【電子書籍】[ 石井暁 ] 警察の公安は、かなり知られていて、小説化もされているが、こちら自衛隊の別班は2013年まで公にされることがなかったらしく、共同通信の記者である著者が記事にするまで公にならなかった機関である。 この件に関し、 元外務省主任分析官で作家の佐藤優も出稿直後に初めて会った際、「 自衛隊は嫌がらせをするつもりだ。 いつ何をされるかわからない。 特に痴漢にでっち上げることに注意しろ。 酔っ払って電車に乗るな」とアドバイスしてくれた。 さらにその1ヶ月後には、「お前を巡って自衛隊と警察の公安の間でにらみ合いがあるようなので、 今のところ大丈夫だ。ただ両方ともお前をマークしているので気をつけろ」と教えてくれた。と、今や知的巨人である佐藤優が著者に注意を与えているのだから、ほんまもんのこっちゃということになる。 さてその諜報謀略活動であるが、 工作員は私服であるが、 本来は自衛官であり、 米軍と共同作業をしている。 そして 工作員は自身がいろいろと工作をやるのではなく、エージェントを使って情報を収集をするのが建前である。 身分を隠し、商社員、あるいは引揚者と旅行者などと接触し、彼らに対象国の情報を取らせるのだ。 情報を取ると言っても、スパイ映画のように派手なことは要求しない。 極東ソ連の遺骨収集団や参拝団があれば、写真をできるだけ多く撮ってきてくれと頼む、そうした 地道な活動だ。というものらしいが、著者はこの部分まで踏み込むことはできなかったらしい。 まあ、いずれにしても警察の公安のような組織が自衛隊にもあるのだという事実の追認にはなった記事だった。(9/1記)
2024.11.15
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被害者は誰?【電子書籍】[ 貫井徳郎 ] 本作はいわゆる、 アームチェアー・ディテクティブである。 本作内では、ベッド・ディテクティブと呼んでいるようだが、先輩は足の捜査を馬鹿にしているとワトソン役の現職刑事が語るようなシーンもある。 本作も、 シチュエーションでは吉祥院という作家先生がアームチェア・ディテクティブ、ワトソン役が警視庁捜一の桂島という若手刑事ということである。 そのようなシチュエーションがないことは分かっているし、 それは、 小説 だから許せるにしても、 例えば、戸籍を見れば判明することですしなんてことを 第一線の刑事が語っているようなことでは、 まだなの?とツッコミを入れたくなるし、 極め付きは、「オレがいないところでは、ずいぶんたいそうな口を利いてるじゃないか、 桂島ちゃん」 「吉祥院先輩!」 桂島先輩 は 素っ頓狂 な声を上げた。とこう言う叙トリばかりの短編集 だった。 初刊は2006年と言うから、 18年前。 しかしそれにしても、 18年前というのはずいぶん昔のことなんだなあと、 本作を読みながら思った。 18年の間に文明が大きく進化してしまったんだなあと改めて つくづく思う 。 当然科学捜査の分野も進歩したわけ。 当時の小説を読むと遺体の身元確認のために当時はDNA鑑定ができなくて歯型、 血液型、 関係者の確認によっていたわけだ。 今の人間から見れば、 この点がとても隔靴掻痒、そんな感じのもたもた感がある。 それにしても本作は叙トリいっぱい、ミステリーと呼べるような代物ではないということを書いておこう。 貫井徳郎という作家はこんなに能力のない作家だったんだろうか 。 とてもがっかりした。(9/1記)
2024.11.14
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渡部昇一、靖国を語る 日本が日本であるためのカギ【電子書籍】[ 渡部昇一 ] 渡部昇一といえば、 立花隆、 井上ひさしと並ぶ私にとっての三大知的巨人である。 この本、 平成20年代に書かれたもので、非常に勢いのある文章だ。 渡部昇一にとって靖国問題のポイントは、 私がターニングポイントだと見ているのは、昭和六十年十一月八日の衆議院の外務委員会において、外務省見解を代表したかたちで、当時の条約局長小和田恒氏が社会党の土井たか子議員の質問に対し、「日本は東京裁判を受諾している」と答えたことです。という部分だ。 この時点で、日本の外務省の正式見解は、「裁判」と「諸判決」をごっちゃにするという致命的な誤りを犯したのです。 「裁判」と訳せないのは、動詞を見ればわかります。 第十一条の後半「日本国で拘禁されている日本国民にこれら諸判決が科した刑を執行するものとする(carry out the sentences)」です。 先に述べたように、日本政府は平和条約締結後、戦犯の釈放に努めました。 東京裁判自体を受け入れたのなら、そんなことができるはずはありません。あくまで日本が受け入れたのは「諸判決」なのです。 すなわち今の皇后の父親が外務省幹部として致命的な誤訳をしたことによるというものである。 その結果、 日本の総理大臣は、国際社会の世論に反応する形で靖国に参拝できなくなった。 特に、 この問題については、終戦記念日である 8月15日あたりに必ず中国や韓国が大騒ぎする事態である。 渡部昇一もこの問題に関してはかなり政治的な視点から書いているけれども、今現在、果たして渡部が言うような正論が国民に受け入れられているのだろうか。 残念ながら、渡部昇一自身か亡くなったこともあり、 また先の都知事選挙で渡部が応援していた田母神は前回の都知事選挙では前々回の1/5も票が取れなかったようで、渡部が話しているような話にはなっていかない。 その上渡部が期待していた安倍晋三も暗殺されその後の安倍派は致命的な間違いを犯して、今や日本の敵である。 翻って自民党総裁選挙に出馬する予定の石破茂に関しては、渡部昇一にとっては不倶戴天の敵であることも明かしている。 靖国問題については、謝った史観に基づいている石破に自民党総裁を任せて総理大臣まで行ってもらっていいのかどうかは選ぶ人の判断であって 私の問題ではないけれども、渡部昇一が靖国問題を政治問題として述べているけれども私にとっては必ず涙が出るパワースポットである。 大東亜戦争によって一体どれだけ多くの人々か死んでいったのかということを考えた時に、果たして昭和天皇に責任があったのかなかったのかという観点からも本当は議論してほしいところである。(8/31記)
2024.11.13
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ケトン食ががんを消す【電子書籍】[ 古川健司 ] がん関係の本を最近立て続けに読んでいる。 たまたまブックオフの100円コーナーで目に付いたので買ったものである。 しかし読んでみたら本書は、2016年つまり8年前のもので、比較的新しいものだ。 本書の肝は、糖質を制限して、がんを抑制するというものである。 すなわち、 がん細胞が主な栄養源としているのは、炭水化物から合成されるブドウ糖(グルコース)です。 それも、正常細胞よりも3~8倍ものブドウ糖を取り入れなければ、生命活動を維持する事が出来ません。 一方、正常細胞の方はと言えば、ブドウ糖の供給が途絶えても、緊急用のエネルギーを皮下脂肪から作り出すことができます。 このブドウ糖に代わる緊急用のエネルギーが、私ががん治療の鍵としている「ケトン体」という物質です。ということで、がんが大好きなブドウ糖をまずカットするという食事療法で、がんを抑制するというものなのだ。 これが、 極端な糖質制限、つまり「ケトン食」なのです。 なぜならこうした悪性度が高いがんほど糖質がなければ、その活動性を弱めることが分かっており、したがって抗がん剤などの化学療法が有効に働くと考えられるからです。 というケトン食である。 またEPAのがん抑制力も多大であるが、 EPAは体内で合成されない必須脂肪酸です。 したがって食べ物その他で積極的に摂取する必要があります。 EPAはマイワシやサバ、アジ、サンマなどの青魚に多く含まれています。 マグロやブリ、サケ、アンコウの肝、さらにマダイやヒラメといった白魚にも含まれ、ほぼすべての魚から摂取する事が出来ます。 厚労省が推奨するEPAの摂取量は、1日1g以上です。 このEPAは前記魚類の刺し身から効率よく摂ることができ、マイワシや本マグロ、サバなどの刺し身を約100g食べることで、約1gのEPAを体内に取り入れることができます。 ということである。 私の家では、刺身が必ず食卓に上がるが、それは実に意味のある事であった。 また、大相撲秋場所が始まるが、これに合わせて炭水化物カットをするつもりでいる。 無理をせず、大相撲に合わせて炭水化物カットをすることが、実はケトン食ということだったんですなあ。 ここまで書いてきた以上に、興味深い記載が多々あった。 激しい運動もたまには必要だということなど、栄養と運動、そしてがんとの相関という点で、ケトン食を意識すべきであると思った。(8/30記)
2024.11.12
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京都寺町三条のホームズ : 4 ミステリアスなお茶会【電子書籍】[ 望月麻衣 ] 家頭清貴と葵の恋愛譚と良質な京都ガイドブックの趣を呈する本シリーズは、本作においても、 ちなみに京都では毎日十五日は百万遍知恩寺の「手づくり市」、二十一日は、当時の「弘法さん」、ニ十五日は、北野天満宮で「天神さん」と、大きな縁日がある。というように、その良質な案内をいかんなく発揮している。 翻って、主幹たるミステリーにおいては、相変わらず、私のようなミステリーリーダーでも簡単に謎が解けるようなライトミステリーである。 例えばアンティークドールがかかわる幽霊話などだれが考えても義祖父の仕業と全部みろっとめろっとお見通し状態だし、自殺に見せかけた殺人未遂事件なんかは、読み進んでゆくと三人共作が見えてくる。 このパターンは、二時間ドラマによく出てくるものだった。 逆に言うとこの作家は叙トリなど使わぬ極めてフェアな作家ということになる。 筆力も極めて高い。 そのうえ、きわめて多数の作品を世に出している。 私は1巻の後、6巻を読むという、逆行読みを今している。 この先2巻まで行ったら、今度は7巻からということになりましょうな。 最後に本作で全くその通りだと思った文章があったので引用して終わる。 「カフェに求めるのは「空間」でして、いかに心地よい時間を過ごせるかが大事なんです。 コーヒーの味だけでいえば、家で自分の好きなように淹れたら良いわけですから」 「はぁ。それはたしかに」 それはホームズさんのカフェ道なのだろう。 (8/30記)
2024.11.11
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がんを消す免疫薬の真実【文春e-Books】【電子書籍】[ 本庶佑 ] 私にとって立花隆(敬称略以下同)は三大知的巨人だ その他の二人は、渡部昇一と井上ひさしである。 その立花隆がノーベル賞受賞者本庶佑とがん免疫について対談したものが本書である。 さて件のがん。 私にとっては、祖父、父、叔父2人、従兄、さらには妻の父と妻の弟の死因で、憎々しい病なのだけれど、そのがん治療に関し、免疫療法でノーベル賞を受賞したのが本庶佑ということになる。 さてその免疫療法であるが、立花 本庶さんの研究チームが発見した、PD-1は、免疫細胞の表面にあって、免疫細胞に「攻撃ストップ」を命じるブレーキのような働きを持つ分子です。 免疫は暴走して自分の臓器や神経を攻撃し始めることがありますが、そうならないようにブレーキ機能がついているわけですね。本庶 そうです。 私たちの研究では、がん細胞は免疫細胞からの攻撃にさらされると、このブレーキを踏む分子(PD-L1)を出したり、他の未知の仕組みで免疫細胞の攻撃をストップさせることがわかりました。 がん細胞が免疫細胞による攻撃をはねのけ、際限なく増殖を続ける事が出来るのは、免疫細胞の監視を逃れる仕組みを持っているからなんですね。というものであり、その結果は、立花 いちばん効くと言われた抗がん剤にも大きな差をつけた。本庶 そうです。 あまりにはっきり差がついたので、臨床試験を続けるのは非人道的だからやめろ、と第三者委員会が途中でストップさせたくらいでした。 これ以上続けても学術的な意義はあるかもしれないけれども、ニボルマブの方が有効だとわかったのだから、倫理的に問題とされたのです。 その後、それまで抗がん剤を投与されていた患者にも、ニボルマブが処方されました。ということだ。 つまり、かなり画期的な発見だった。 なのになぜ未だ、手術か抗がん剤か放射線かという選択しか出てこないのだろうか。 有名人の帰趨を見ても放射線で脱毛し、ウィッグもつけました、なんて写真が載っているが、免疫療法で助かりましたなんて記事に当たったことがない。 本庶教授のノーベル賞受賞は2018年。 6年前のこと。 あれから、この療法は、現場に届いていないのだろうか。(8/29記)
2024.11.10
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死は存在しない〜最先端量子科学が示す新たな仮説〜【電子書籍】[ 田坂広志 ] 本書の結論は、 この世界に「物質」は存在しない、すべては「波動」である。 すなわち、料理力学的にみるならば、我々が「物質」と思っているもののっ実態はすべて「エネルギー」であり、「波動」にほかならず、それを「質量や重量を持った物質」や「固い物体」と感じるのは、われわれの日常感覚がもたらす「錯覚」に過ぎない。(略) 量子物理学的にみるならば、我々が日常的に感じる「物質」というものは、本来存在しないのである。というものである。 つまりだ、つい最近まで私が追い求めていた終活の命題「私は何者?」の答えなんだな、これが。 そのために私は長きにわたり、坐禅を組んだりして探し求めて訳なのだが、それこそ終活終了宣言をして間もない今、ずばりこの本で解答を得ることになろうとは思わなかった。 終活終了宣言前、歎異抄にいたり、今は称名念仏の毎日だ。 聴聞の聴から聞へ。 私は、今日、その、南無阿弥陀仏こそ光明なんだと何の疑いもなく思えたのだった。 もしかして聞の領域に入ったのではあるまいか。 次、死後の世界の問題。 ここで最大の問題は、この「現実世界」での「現実自己」が「死」を迎えた後、ゼロ・ポイント・フィールドの中で何が起こるかである。 結論から述べるならば「現実自己」が死を迎え、消え去った後も、ゼロ・ポイント・フィールド内の「深層自己」は残り続ける。 「現実自己」が消え去ってもそれとともに「深層自己」も消え去ってしまうわけではない。 いやむしろ、「現実自己」が消え去った後も「深層自己」は、ゼロ・ポイント・フィールド内の「様々な情報」に触れながら存在し続け、変化を続け、生き続けていくのである。 「湖上の風」が止んだ後も、「湖面の波」が変化し続けるように。というような考えは、信じて南無阿弥陀仏と称えようと思った瞬間に南無阿弥陀仏にからめとられていることではないのか。 図らずも終活終了宣言をして間もなく本書を通じて、その解に通じたというわけである。(8/28記)
2024.11.09
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夢探偵フロイト ーナイトメアの殺人実験ー【電子書籍】[ 内藤了 ] 「本日より事務職員としてお世話になります、城崎あかねと申します」 これが本シリーズの結論。 それにしても、六祖内藤の、堀北恵平と言い、藤堂奈々子と言い、そして本作の城崎あかねと言い、なんと別嬪さんぞろいなんだろう。 それが、この作家の魅力なんだろうな。 さて本シリーズ、フロイト教授率いる夢科学研究所の物語、つまり、夢の研究なんですな。 本作になり、脳波を駆使することにより、なんと他人の脳波と同化して、共通の夢を見る事が出来るようになった。 それはストレスによって、 眠ること自体が怖くなったり、たびたび心機能の異常を生じるような事態が起こっていたのだとすれば、悪夢に罹患した人たちが心臓発作を起こす可能性はあるのです。というように、ナイトメアによる殺人が可能であるとする。 事件は、ある福祉施設におけるみとりに入った高齢者の連続不審死だった。 ここにフロイト教授、ヲタ森、あかね、プリンスメル、翠が敢然と立ち向かうわけだ。 そして、 本当に心が死んでしまったんだ。 苦しすぎて耐えきれなくて、自分を殺してしまったんだ。 そう思うと、かわいそうすぎてあかねは泣けた。 天使もバットマンも泣いている。 フロイトもだ。 ああ、そうか。 これはナタリアの悲しみだ。 それが私に染みてきて、泣かずにいられないってことなんだ。となり、思わず私も泣いてしまった。 内藤作品連続の泣きである。 すごい筆力だとつくづく思った。(8/28記)
2024.11.08
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統一教会 性・カネ・恨から実像に迫る【電子書籍】[ 櫻井義秀 ] この本では、統一教会が、コングロマリットにして、宗教としての体を為していないこと、日本のそれは、集金団体であること、そして、その組織を日本の政治家が選挙のために利用していたことなどが書かれている。 いわゆる韓国のミッションスクールに対し同教会は、 梨花女子大事件 1955年劉孝元から布教された梨花女子大学校音楽科講師の梁充永が入信すると同大学教授の崔元福と金永雲、舎監の韓忠燁が相次いで導かれ、 教授たちの薫陶を受けた学生たちも多数教会に通うことになった。 梁充永は女子大学校の総長金活蘭と副総長朴瑪利亜にも布教しようとした。 瑪利亜の夫である李起鵬は李承晩政権で後に副大統領となる大物政治家である。 しかし、 トップから布教しようという戦術が失敗し、梁充永は 大学側から正統派のキリスト教へ戻るよう説得されることになり、 これに応じなかったために4名の教員と14名の学生がそれぞれ免職・退学処分となった。 これだけでは事件は収まらず連日新聞がこの事件を報道することで社会の関心が集まり 、4月4日に文鮮明、金元粥、劉孝元、劉孝永が逮捕された。 文鮮明については兵役法違反と女子大生を3日間不法監禁したという容疑で取り調べられた。 検察は文鮮明に懲役2年を求刑したが、 10月4日に文鮮明には無罪、劉孝元は罰金5000ウォン、 その他3名には懲役8ヶ月の判決が言い渡された。 控訴審では文鮮明と劉孝元は原審維持で無罪、金元粥に控訴棄却、劉孝敏と龍孝永には執行猶予 1年がついた。 裁判では勝訴したようなものだが、 この事件によって統一協会の異端的教説や教祖の淫教イメージが定着し、 韓国内においてキリスト教会に勢力を拡大するのは難しくなった。と、名門梨花女子大にも手を出したのだが、そのことで裁判沙汰となり、キリスト教からは遠く離れた存在になってしまった。 しかし、日本においては、 統一協会の組織票 岸信介元首相から安倍元首相へ3代続いた政界きっての名家が統一協会とその関係団体である 国際勝共連合と深いつながりを維持していた。 一般には衝撃的な事実であろうが、 第2章をはじめ、 本書の前半部分を読んだ読者なら、 腑に落ちるかもしれない。 派閥の選挙対策という側面も大きい。 自民党には平成研究会(元は経世会、吉田茂、 佐藤栄作、 田中角栄、 竹下昇、小渕恵三、 橋本龍太郎を経て現在の茂木派につながり、 8月22日現在所属議員54名)、宏池会(池田勇人、 大平正芳、鈴木善幸、 宮沢喜一、加藤紘一らを経て岸田文雄、43名)の保守本流に加えて清和政策研究会( 岸信介の派閥を継いだ福田赳夫、 安倍晋太郎、 森喜朗、 小泉純一郎、 細田博之を経て安倍晋三、 97名) という大派閥がある。 現在清和会は群を抜いて大きく、 これはこの20年間で、 小泉純一郎、 安倍晋三というキャラクターが濃く選挙に強い政治家を得た結果である。 自民党が大勝する場合はいわゆるチルドレンも増える。 しかしもともと名前が荒れておらず選挙区に地盤と業界団体の票を持たない議員は毎回支援者の確保に苦しむ。 そこで、 派閥の選挙対策に大きく依存し、 統一教会の組織票のような危ない票にも手を出さざるを得なくなる。として自民党の集票マシンだったことが記されている。 この組織は明らかに宗教の顔をした利権団体だ、ということが本書を通じてわかった。 しかしあの桜田淳子をはじめとした集団結婚はいったい何だったのだろうか。 そのいかがわしい宗教の名をした団体に集票を依頼した自民党というのはいったい何なのだろうか。 この先この政党に日本のかじ取りをさせていいのだろうか。 この大問題が、政治パーティ券未記載裏金事件に消されてうやむやにされてしまうのは許せない。 先の抜き書きには日本きっての名家などという記載があるが、その名家は地に堕ちたのではないのか。 故安倍晋三は、ただただ任期が長かった総理大臣で、何ら実績を残せなかったと後に評価されてしまうのではないのか。 自民党の統一教会まみれ事案は、日本における一大スキャンダルであると私は本書を読んで思った。(8/27記)
2024.11.07
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歎異抄/唯円/親鸞/川村湊【3000円以上送料無料】 本書では歎異抄を関西弁訳している。 例えば第一章は、 アミダ(阿弥陀)はんの誓いの不思議な力に助けてもろうて、 極楽往生 は、こりゃあ、間違いなしと信じて、「ナンマンダブ(南無阿弥陀仏)、ナンマンダブ(南無阿弥陀仏)」と、よう、となえようと思う心が起こったときには、もうすでにお助けにあずかり、アミダはんにお引き受けいただき、(もう)捨てられまへん(= 摂取不捨)というご利益 にあずかっとるんや。というように。 このように訳してもらうとわかりやすいことは間違いない。 この第一章がわかれば、聴聞の聞ということだ。 素直にそのことがわかることはないけれど、上のような訳をしてもらえれば、聞、として、阿弥陀仏にお引き受けいただき、もう捨てられない利益に預かった、ということになる。 つまり、阿弥陀様にお引き受けいただいた、ということ、このことを、すっと自分のことにするということ、それが聞であり、阿弥陀様から頂いた信心、ということになるということなのだ。 なんとありがたいことか。 このことについて、 その理由は、アミダはんの光明に照らされておるからこそ、一ぺんでも念仏しよういう気持ちが湧いたときに、ダイヤモンドみたいに堅い信心をいただくからや。 そのときすでに絶対に悟りをひらけるちゅう境地に達しとるわけで、ましてや、命が終わればもろもろの煩悩や悪い妨げなんぞを転じて、もう怖いもんも疑いもないという悟りの境地に入ったということや。と訳しているが、けだし名訳である。 この文章もまた歎異抄である。 この名訳で概念をつかみ、原文を味わってほしい。(8/26記)
2024.11.06
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新装版 修羅の終わり(下)【電子書籍】[ 貫井徳郎 ] 下巻になって、 話がかなり混乱してきた。 基本的な話は、 1に公安、2に防犯 、3に記憶喪失者なのだけれども、記憶喪失者が記憶を思い出すにつれ、 真相が明らかになってくるだろうという予想はできた。 のだけれども、 私は巻末の笠井潔という人が書いた解説を読んで初めてやっとこの話の真相を理解することができた。 解説によれば3つの話が混線しているが、 時代的には、 1971年と1992年の2つの時代なのだそうだ。 解説にはすでに解答も書かれているのだけれども、ここで書くのはよそう。 ただ 作者は作者なりに工夫を凝らしていたようで、斉藤、斎藤といった違いなどで話を成立させようとしているのだ。 話が混戦した もう一つの理由は、 2組の姉弟の話がほぼ並行して走って行って、 しかも先に書いた斎藤、斉藤のような話も紛れ込ませ、公安の協力者としては、 ほんの少ししか登場していない女性が、解説によれば、 大きなキーパーソンだったというところなど、 最後に爆破事件などが起きるものの、暴力以外には何もないような 話の中で、 作者としては、 それなりに 読み手を意識して、 読み手に挑んできた物語だったとはいえよう。 上巻の話が非常に円滑で、下巻も期待したのだったけれども、 先に書いた通りになってしまい、 ネタバレ をしている解説を読まなければ、 とてもじゃないが本件真相に近づくことはできなかった。 その上、もう一度この本を読もうなんていうことには到底なれないのだった。 3つの話を混線させて、 読み手を混乱させる手口はそれはそれでありだけれども、 この作者の筆力はとてもじゃないが、 私は評価できない。(8/25記)
2024.11.05
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新装版 修羅の終わり(上)【電子書籍】[ 貫井徳郎 ] 上巻は下巻の始まり。 果たして、 下巻でどのような話が展開するのか、 とても楽しみだ。 しかしながらこの上巻の出来事が下巻で全て伏線回収のようにしてまとまっていくんだろうな。 私自身、 読み方が下手なんだろう。 この話が3つの話から出きていることに気づくまで結構時間がかかった。 そうだな、半分ぐらい読んでからだろうか。 1つは、 公安の話。 1つは、 防犯の話。 一つは、 記憶喪失者の話。 上巻巻末にあった解説を読むと、かわいそうな女ベスト3 なんていうことが書いてあったから、きっとそれが1つのキーワードなんだろうな。 読んでいるうちだんだんだんだんこの3つの話が1つにまとまってくるような感じがした。 それは下巻を読んでのお楽しみなんだろうけれども…。 さて、 公安の話はよくわからないけれども、こんな風にして協力者を獲得していくんだろうなとひとりごちた。 防犯の話だが、これだけ荒くれた刑事がいるとすれば、それはもうすでに懲戒免職の対象になるだろう。 留置施設に刑事が入ること自体、 それは、絶対にあってはならない行為だし、 この小説が書かれた、 2000年にはそれこそ、 それだけで間違いなく懲戒モノだったろう。 つまりこの小説にあるような被疑者に不利益な形が、 冤罪を醸し出したということなのだから、ゆめゆめ こんな違法な捜査が認められてはならない。 さて、 この防犯、上巻の最後で被疑者から訴えられるようなことになったが果たしてどのような決着をつけるのだろうか。 下巻が楽しみだ。(8/25記)
2024.11.04
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京都寺町三条のホームズ(5) シャーロキアンの宴と春の嵐 [ 望月麻衣 ] 作者望月麻衣は、シャーロッキアン倶楽部に招待されたとか。 外したくないネックレスは彼がいる証拠という推理は一般的かな。 とすればやはり家頭清貴はホームズと言えるのだろう。 けれどもこの推理を確率で表すとして100%当たりということはありえないだろうから、 やはりそれは小説中の話としか言いようがない。 そのような推理を60の短編と4つの長編の中でシャーロックホームズもしているわけで、 シャーロッキアンはそれをこよなく愛しているのだ。 望月麻衣にしてみれば、 ほんのちょっとしたひらめきでライトミステリーの主人公に家頭清孝、 その恋人に葵を添えたのだろう。 いい配役だと思う。 ライトミステリーという言い方で、 例えば京都サンガの話で、 生徒と教員の ラブストーリーになって 行くのだが、この話にはうるっと来てしまった。 こんなふうな自分が怖い。 このところ立て続けにミステリーを読んで泣かされている。 前回は、夢探偵フロイトだった。 体の弱い子供をなくした母親の独り言を読んでいるうち涙が出てきたのだった。 今回もまた京都サンガの選手になった教え子が恩師に恋をし試合でその結果を見せるというようなざっとした話ではあるけれどもその中で時計の数字のやり取りがある。 それは百人一首に合わせた数字だったというところ一応ミステリー 的には、成立はしているだろうけれどもそれ以上にラブストーリーとしての要素が非常に高いという内容で あった。 望月麻衣は、むしろミステリーで生計を立てるよりも、このようなラブストーリーで生計を立てた方がいいんじゃないのかなと私は、思った。 けれどもなんとこの作家は、このシリーズだけでもかなりの量産をしているようでこの先私は、何冊読むことになるのだろうかと今から危惧しているのだ。(8/24記)
2024.11.03
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夢探偵フロイト ーアイスクリーム溺死事件ー【電子書籍】[ 内藤了 ] シリーズを書き続けているうちだんだんだんだん話は落ち着いてくるんだね。 キーワードは、代理ミュンヒハウゼン症候群という症状だ。 それがアイスクリーム溺死事件を生み出す。 いやあ、内藤了に泣かされるとは思いもよらなかった。 この題名でですよ、泣くことになろうとはね。 やはり内藤は第六祖だ。 筆力、取材力は本当に極めて高い。 そして、余計なことを書かない。 刑事法に関しては、殺人の時効問題をさらりと書いたもの。 警察組織に関しては、長野県警のケイジケイジから千葉県警にきちんと連絡がなされている。 きわめてリアルだね。 そして今回は、前作で稀代の悪役だった、プリンスメルの悪夢が端緒となる。 彼女は、どうやら未来世紀大学のAO入試を受けるらしいぞ。 夢研究所のメンバーがまた一人増えそうだ。 そういやああかねは卒業して就職するのだろうか。 どうも本作では、内定にこぎつけたみたいだぞ。 しかし作家の力量ということを本当に考えさせられるね。 内藤の場合、堀北恵平や藤堂比奈子のシリーズで、その一作一作がシリーズ全体を構成していくという手法を取っている。 この辺が、他の追随を許さないところだ。 もう本当に次作を読むのが楽しみだ。(8/23記)
2024.11.02
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正法眼蔵 1/道元/増谷文雄【3000円以上送料無料】 いやあ実に難しい本だ。 これだけ難しいことをかの道元禅師は考え書いたんだな。 アンダーラインを引いても抜き書きしても全く意味不明だ。 それでもついていくほかない。 私は、つい最近終活終了宣言をした。 私は何者?という命題につきずいぶん長いこと考えて、道元禅師の曹洞宗の只管打坐にいたり、無門関にはいり、歎異抄に行き…はて、次は?なんて考えているうち、結局最期の最後の意識残るんじゃないかなんて勝手に考え、そして、終活終了宣言をした。 今、私は仏教的には、南無阿弥陀仏をとなえ、三密をし、坐禅をしている。 その際、歎異抄と無門関を音読している。 無門関に替え、正法眼蔵にしようかと考え、そういえばかつてこの本を買っていたことを思いだし、また読んだのはいいが、冒頭の感想に立ち至ったのである。 仏道をならうとは、自己をならうことである。 自己をならうとは、自己を忘れることである。 自己を忘れるとは、よろずのことどもに教えられることである。 よろずのことどもに教えられるとは、自己の身心をも脱ぎ捨てることである。 悟りに至ったならば、そこでしばらく休むもよい。 だが、やがてまたそこを大きく抜け出てゆかねばならない。 ならうとは忘れることなんだな。 そうしてよろずのことに教えられて、悟るんだとか。 いやあ、本当に難しい。 これじゃあ無門和尚のコミカルな話を読んでいた方がよかったか。 薪と灰の問題も結局、どういうことなんだ、と思わず考えてしまう。 無門関より始末に負えぬ。 薪は灰となる。 だが、灰はもう一度元に戻って薪とはなれぬ。 それなのに、灰はのち、薪は先と見るべきではなかろう。 知るがよい、薪は薪として先がありあとがある。 前後はあるけれども、その前後は断ち切れている。 灰もまた灰としてあり、後があり先がある。 だが、かの薪は灰となったのち、もう一度薪とはならない。 それと同じく、人は死せるのち、もう一度生きることはできぬ。 だからして、生が死になると言わないのが、仏法の定まれる習いである。 この故に不生という。 死が生にならないとするのも、仏の説法の定まれる説き方である。 この故に不滅という。 生は一時のありようであり、死もまた一時のありようである。 例えば、冬と春とのごとくである。 冬が春となるとも思わず、春が夏となるとも言わないのである。 ようするに生と死は別物よ、とうことを言っているんだね。 生と死が別物だということを四文字で表すと不生不滅だ、と言っているのだと思う。 死が生にならないから不生、生と死は別だから不滅、か。(8/22記)
2024.11.01
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ユリ迷宮【電子書籍】[ 二階堂黎人 ] 石造りの豪邸が忽然と姿を消す謎。 興味津々と読み進めていくと…。 二階堂黎人の作品についたレビューに、「また期待を裏切られた」的なものがあったが、その評価は果たして正しいものなのかどうか。 このトリックを考えただけでも大したものだと私は思う。 しかし現実的でないことは確か。 二階堂は火災現場を見たことないんだろうな。 私は雪に埋もれてしまった全焼現場を見たことがあるが、この小説のようにきれいさっぱりなくなるなどということはない。 何らかの臭いや痕跡が必ずある。 録音は別の案件? 殺されたのは上の階のモデルルーム? 想像は際限なく広がる。 なんて思いつつ実は単純なトリックだった。 お見事でした。 犯人も単純で…。 ただ、蘭子が話を聞いてすぐわかってしまうのが気に食わん。 そもそも得体のしれぬカードゲームなんて、読書で知りたいとは思わぬ。 なぜ蘭子はすぐ犯人がわかるのか。 確かに現場に行かないで謎が解けなければ、アームチェア・デティクティヴとは言えまいが。 完璧な叙トリ。 本当に叙トリは癖が悪い。 エラリー・クイーン症候群だと。 なんといやらしい言葉だ。 読み手をバカにしている。 レビューの最低評価もむべなるかなだ。(8/22記)
2024.10.31
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キネマ探偵カレイドミステリー 〜再演奇縁のアンコール〜【電子書籍】[ 斜線堂 有紀 ] 奪われたのはそもそもDVDじゃない。ビデオテープだ。なんてね。 そして吹替キャストが違うって。 ピンクの足跡事件では、モノクロの世界ではピンクと灰色それに白の3種類はかなり誤認しやすい。んだって。 とにかく半端ない映画に関する蘊蓄。 それが主となって残念ながらミステリーはイマイチ。 そりゃあね、映画ファンなら、泣いて喜ぶような話なんだろうが、ミステリーリーダーはミステリーを読んでいるのだから、過度の映画話は必要ないのだ。 たしかに私も映画は好きだった。 高校大学時代は毎年100作以上観ていた。 その調子で今日まで来ていたら、たぶん本シリーズなど泣いて喜んで観たろうな。 残念ながら就職して同時くらいに結婚して子育てに入ったら、映画どころではなくなったものな。 VHSで映画が観られるようになった時はうれしかった。 でもそこまでだった。 いつの間にかDVDに変わった。 令和になってつまらん作品が増えた。 私は洋画党、吹替無用者だったが、妻は邦画党、洋画は吹替でないと観ないということもあって、今私が観ているのはほとんどが邦画だ。 なんかさあ、本題から大きく外れているよね。(8/21記)
2024.10.30
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名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇【電子書籍】[ 法月綸太郎 ] 本短篇集は6作からなる。 過ぎにし薔薇は…は、臍帯巻絡で死産した子を思って、図書館の本のスピンの切り取りをした話。 背信の交点、は、これは一回読んだことあると思っていたら、点と線ばりの列車アリバイの話。 二ひねりした心中話。 世界の神秘を解く男、も読んだ記憶がある。 ポルターガイスト現象は、幻聴と妄想によるもの。 リターン・ザ・ギフト、は、交換殺人の話。 都市伝説パズル、は電気をつけなくて命拾いしたなという血で現場に書かれたメッセージの謎。 縊心伝心、は、ホットカーペットの位置から法月親子が推理するが、とにかく法月モノは、能書きが多すぎて退屈だ。 どうもこの人の場合、能書きが多くてしつこいから、途中で眠たくなってしまう。 それはともかく、この短篇集の複数の作品は以前読んだことがあるものだった。 それがかすかな記憶でたしか以前読んだことがあるという程度の衝撃度では、大したことないなということだよな。 それは法月だけの問題ではない。 つまり小説というのはいつまでも心に残るものではないのだ。 従兄から、大した蔵書でないな、と揶揄された私の図書館の本の背表紙を見ていると、たしかに数多くの推理小説が林立しているけれど、どんな話だったかなど覚えていない。 その他の本も同じではあるが、どちらかというとノンフィクションの方が記憶にとどまりやすい。 立花隆が言っていたのは、この辺のところなんだろうな。(8/21記)
2024.10.29
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闇の底【電子書籍】[ 薬丸岳 ] 薬丸は稀代のストーリーテラーだ。 筆力が甘くて読みずらい、脳内に映像が入ってこないなどと酷評したこともあるけれど、何しろストーリーが安定している。 そのうえ、とにかく警察組織に明るい。 それだけリアルな話が読める。 そりゃあ、幼女対象の事件がこの小説のように次から次へと出てくるわけがないだろう。 そして、幼い妹を殺されてしまった無念の男は警察官に。 殺された幼女の父親はそもそも弁護士で、幼女対象事件の被告人の弁護活動にもあたっている。 これが伏線だ。 そして終盤伏線回収に走る。 みごとな書きっぷりだ。 小説そのもので私たち読み手をだますテクニックがすごい。 あたしゃあ、まるきり別の人を犯人として見立てていたものな。 しかも作中の刑事たちもどうやら私と同じ考えになっていたらしい。 幼女嗜好者の心理が実に見事に描かれていたな。 結局前出の妹を殺された警察官は、警察官をやめることになった。 普通に読んだら彼は、真実がばれない限り罪に問われることはないだろう。 その辺の心理の綾がじつにみごとだ。 本作は佳作だね。 もっとKindle unlimitedに入っていればいいのにね。(8/20記)
2024.10.28
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親鸞が導く歎異抄【電子書籍】 釈徹宗 これまで何回か書いてきた通り、私は終活として、「私は何者?」という課題を解決すべくいろいろやってきた。 とりあえずそれは、気づきでありサティであるなどと思いつつ、それでも足りず、曹洞宗の、只管打坐であるところまで行きつき、そして、無門関に首から上をグラグラさせられ、その結果、ある日、仙台泉のタピオの書店で、歎異抄に出会って、何とかその課題をクリアしようと頑張ってきた。 昨日の夜のこと(8/18)私は、ふと、最期は最後の意識なんだ、その最後の意識が永遠なんだ、という事に気付いた。 そこで私は、「終活終了宣言」をした。 弘法大師空海の「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し」である。 親鸞仏教ではまず往相回向と還相回向がある。 独特の考え方でそれは、 無力な自分と向き合う 他力の教えには「往相回向」と「還相回向」があります。 往相は浄土へ往生すること。 還相は浄土からこの世に還って来ることを意味します。 回向は阿弥陀様の本願力のことです。 私たちは阿弥陀様の本願によって浄土へ往生すると悟りを開き仏となります。 そして菩薩となってこの世に戻り人々を救うのです。というものである。 浄土で悟ってまたこの世に戻って人々を救うという考えだ。 その方法論として念仏が浄土教系では出てくるのだが、それに関しても親鸞仏教では、 仏に導かれる言葉 南無阿弥陀仏という念仏の南無は「お任せします」や「帰依します」という意思の表明とされています。 しかし親鸞はこの言葉は仏さまから「任せなさい」と呼びかけられているのだと説きます。 自分のとなえた念仏が仏様の呼び声となって聞こえてくる。 それが他力の念仏なのです。と独特な解釈をする。 とにかく終活終了だ。(8/19記)
2024.10.27
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夢探偵フロイト ー邪神が売る殺意ー【電子書籍】[ 内藤了 ] 実に難しいテーマをもとに話を作り上げるというのは、内藤の独壇場だ。 私なんざあ、夢のこと、それを取り巻く心理学的なことなど何もわからないから、ふむふむなるほどとうなずくよりほかに手はない。 そういう難しい問題を、堀北恵平のシリーズでも藤堂比奈子のシリーズでも、ヒロインのみならず、その周辺の魅力的なキャラの活躍にくるんで見せるから、ますますこの作家が好きになる。 さて今回は、 夢売りは夢を売った後買った人の近くに行ってマインドコントロールしていたのかもしれない。という夢売りの話で、夢を買った人は、吉夢、凶夢にさらされることになる。 吉夢を買ったはずのあかねは、 なのになんで凶夢が送られてきてるんですか。 次のターゲットに選ばれたから。ということで、まあそれがこの話の被験者的な部分でその夢を映像化しそして犯人に行きつく話だ。 この内藤了の独特の世界は、各々の脳の中で見事に映像化されて話が紡がれる。 そういう筆力を内藤は持っているのだ。(9/6記)
2024.10.26
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AIの衝撃 人工知能は人類の敵か【電子書籍】[ 小林雅一 ] 2015年3月20日第1刷発行の講談社現代新書である。 この時点では、 AIによる雇用の浸食は「運転手」「ウェイター」 「看護師」等々様々な職種に広がろうとしている…。 今から20年後、 現在の労働者が持っている各種職能への需要は大幅に低下しているだろう。 しかし、 現時点で人はそれに全く関心を寄せていないように思われる。うという指摘がされながら、 もう一つ、 コンピューターやロボットが苦手とする仕事は例えば、 庭師や理髪業者、 あるいは、 介護ヘルパーや料理人など非定型的な労働です。 この人の仕事では対象とする人や物に対する注意深い 観察や器用な手先の動きが必要とされます。 より専門的な用語でいい直せば資格や聴覚のような高度なパターン認識と繊細な運動神経や 移動運動などを組み合わせる仕事です。 これは数百万年に及ぶ進化の歴史を経て、 高度な発達を遂げた人間の脳にしかできません。 つまり、 ある意味ではハイレベルの作業でありながら、 これらの職種はどちらかといえば、 低賃金です。 この逆説的な傾向は「モラベックのパラドックス」と呼ばれ、 1980年代に AI 専門家のハンス・モラベック氏や、 マービン・ミンスキー氏らが指摘したことです。と若干楽観的なコメントが述べられている。 しかし今日AIの人間の職業に対する侵食はかなり進化しており、 この先どの程度の AI による人間との入れ替えがなされるのかは全く予想がつかないのではなかろうか。 すでに自動運転が本格化しつつある。 実験的ではありながらも、 例えば山形県南部置賜地方の長井市では無人バスの運行が具体化している。 上記の通り AI による人間との入れ替えは一方では介護福祉の分野に言及しつつ、 それは楽観的な反応ではないかということとその職種があまりに低賃金だという問題が指摘されているのだけれども、早晩この職種は AIにとって変わられるだろうと私は予想している。 自動運転がさらに発展した場合本書でも指摘されていたけれども、 つまりは事故回避のために、 AI がどのように判断して、例えば、 犠牲者についてどのように考えるのか、すなわちその事故によってどれだけの犠牲者が出るかということを判断するという人間以上の高度な判断も必要となるのであり、 それをいかにルール化するかということも今後必要な作業になると思われる。(8/18記)
2024.10.25
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【中古】 アダルト・ピアノ おじさん、ジャズにいどむ PHP新書/井上章一(著者) 私は本ブログ(今日、何読んだ? 150416)で「今ギター弾き語りを楽しんでいるので今更ピアノをどうこうするつもりはない。 このままギター弾き語りを続けていこう。 ギター弾き語りのレパートリーは59曲になった」などと書いた。 ところがですな、 実はこの本にも書いてある親父のピアノ、エレピを導入して1年半以上になる。 つまり 昨年の正月に通販でカシオからエレピを購入したのだ。 この先のブログを書いたのは15年の話だから9年前のことだ。 この時点で、 ギター弾き語りのレパートリーが59曲、今もう70曲近くになっている。 この時までは、 1曲1曲覚えて番号もふっていたのだけれども、 先のコロナ騒動で在宅勤務を余儀なくされた際、我流楽譜に全てを書き写し、 今はそれを見ながらギター弾き語りをしているのだ。 おっと、今日の話はピアノの話だったね。 入門モノや大人が始めるにあたっての簡単なピアノ本はもう5冊になった。 この1冊の演奏が終わる度、 ギター 弾き語りを12 曲やってまたピアノの楽譜に戻るという作業を今はしている。 著者はまずナイトクラブで弾いてみようなどと言う。 本書に街角ピアノは出てこないけれども、 街角 ピアノなどで弾くよりはナイトクラブで BGM として弾いている方が誰にも気兼ねなくできるのだ そうだ。 その次の段階として、 私のレパートリーで一番結婚式向きなのは「星に願いを」 である。 だからそういう機会には、 この曲ばかりを弾いてきた。 おかげで聴衆を前にした時でも、 これなら大丈夫という度胸は着いたと思う。 (中略) 私も最初にピアニストとしてデビューした披露宴では失敗した。 ごめんなさいね、 佳美さん。 でもその後回を重ねることで、 だんだん自信もついてくる。 おかげで「星に願いを」 に関する限り、 舞台でも萎縮しなくなった。と、 結婚式で披露するのだそうだ。 ピアノに関しては今のところまだ大勢の前で披露していない 。 しかしギター弾き語りは親戚の集まり、 知人の結婚式、 息子2人の結婚式でも披露した。 この先生きていればの話だが、孫の結婚式が控えている。 その際はピアノでお祝いをしたらと妻に言われた。 結局私は、 曲の中に目が鍵盤から話せる箇所をいくつか作ることで、 この難問へ対処した。 「アズ・タイム…」はあそことあそこで 顔を上げられる。 「 ミスティ 」ならあの部分で視線を鍵盤から外すことができる。 そんなやり方で万が一 という場合、 女性客と会釈を交わす機会に備えている。 実はこの本は何回か読んでいて別のブログ(夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記 160625)にもアップしている。 このブログにも載せている通り、 私自身勤続20年で何が欲しいかと職場から聞かれた際、ピアノ 、と答えていたのだった。 結局それは腕時計に変わったが、いつかはピアノを弾いてみたいなと思っていたことは事実だったのだ。 さてそのおじさんピアノ…。 ステージピアニストとして生きてゆく。 そのためには、 基本がほとんど、 本当に大切だと思う。 幼年時代から片にはまった指技を押し付けられるのもやむを得ない だが、 ステージピアニストになどなりっこない中高年 までどうして同じことをする必要があるのか。 4歳からの英才教育をなぜ四十面下げたおっさんにまで強いるのか。 私はその点が不可解でならない。 指に妙な癖がついてしまう、 ピアノの先生方は我流の欠点を異口同音にそうあげつらう。 でもそれが悪いのか。 そのクセ こそがおっさんの個性であり、 輝きなんじゃないか。 これを教科書めいたトレーニングで殺してしまってもいいのか。 私はかれらにそう言い返してやりたいと著者が叫んでいるのは快哉だ。 その通り、趣味は何事もそうだが、ヘタウマ、でよろしい。 このヘタウマという言葉は、 絵手紙を書く際に教えられた言葉だが、 楽器にも当てはまるものだと私は思う。 ギターと違ってピアノの場合、 レパートリーが何曲なんて数え方はしていないけれども、最終的にはピアノを弾きながら聴衆と目を合わせるなどという技術も身につけたいものだ。(8/18記)
2024.10.24
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米沢ベニバナ殺人事件【電子書籍】[ 鳴神響一 ] 読んでいるうち、あっという間に80%になった。 これまたガイドブック。 米沢を知るにはこの一冊で十分だ。 その分、ミステリーとしてはいまいちだった。 しかし米沢は、京都があの京都寺町三条葵モノで何冊もの本になっていくのにこの本 一冊で足りてしまうんだな。 それほど京都と米沢では違う。 そもそも始まりの事件が上杉祭り直後の話だ。 読み進んでいったらといつの間にか 稲刈り後だものな。 えっ?と思って前に戻って読み返す。 そういえば 朝倉はノマド調査官だ。 事件発生直後には現場に出向きませんか(笑)。 米沢丸の内署のネーミングには笑ってしまった。 鯉は酢味噌よりは甘煮を食べてほしい。 専務が東京出張…となれば彼が犯人だ。 そして話はアリバイ崩しに繋がって行く…のか。 東京米沢間は、つばさで2時間ですからね。 とにかくツッコミどころ満載だ、 検事はその3つが揃っていれば起訴します。 送検前になんとかしなくちゃ。 しかしどうしてこうもミステリー作家は刑事法を知らないのか。 ミステリー作家は少なくとも刑訴法、刑法、少年法の研修を受けてからなるべきだ。(8/17記)
2024.10.23
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コロナ後の世界を生きる 私たちの提言【電子書籍】[ 村上陽一郎 ] そもそも本書はコロナ騒動の最初に書かれた本だ。 2020年ですからな、4年前。 もうそんなときにコロナ後の世界を書いているんだから大したもんだ。 複数の識者がそれぞれの立場から書いたもので、書きっぷりは実にしっかりしている。 ただ、今の世のコロナの状態までは読み切れていなかったようにも思う。 今は亡き安倍晋三氏がエビデンスのない、休校、そしてアベノマスクを配布した点を批判しているのは、全くその通りだ。 安倍さんは結局超長期政権についていただけだったという評価しか出ないんじゃないか。 裏金問題についてもこのコロナ禍の問題にしても結局うやむやなまま暗殺されてしまったという感じだ。 さてその本書の結論であるが、 高山義浩 今回の新型コロナウイルス感染症は私たちの社会が過密になっており、感染症に脆弱であることを教えてくれた。 私たちはワクチンや治療薬を心待ちにするばかりでなく、持ち込まれた感染症が自然に消えゆく社会を目指していく必要がある。 発熱などの症状があるときは外出自粛をこころがけ、学校や会社を休むのがあたり前の社会。 混雑を生じないように時間的、空間的に分散しており、自転車での移動が標準となるような都市設計。 在宅でできる仕事は、できるだけ在宅でやれるような業務管理。 出張を減らしてオンライン会議を定着させること。 咳エチケット、特に手のひらに向かって咳やくしゃみをしない心がけ。 外出した後と食事の前には手を洗う衛生習慣。 病院や高齢者施設に行くときは体の弱い人が集まっていることを認識し、とりわけ周囲への感染予防を心掛けること。 こうした暮らし方を身に着ける事が出来れば、ウイルスは持ち込まれにくくなり、持ち込まれても流行できずに消えていくはずだ。 これこそが、「新型コロナウイルスのある世界」で暮らすうえで求められていることであり、感染法に強い社会へと成長するために学び取るべきことだろう。ということ。 既に2020年すなわちコロナ初年の段階でこのような結論を出されていたとは、敬福に値する。 次、これもコロナ騒動初期の段階で 出口治明 全世界が直面している課題は共通して以下の3つだと思います 1つはウイルスは人を乗り物にしているわけですから感染を避けるためにステイ・ホームを要請するというのはまっとうな政策だということです。 人との接触がなければウイルスは移動できなくなります。 ワクチンや治療薬が見つかるまではステイ・ホーム以外の方策はありません。 二番目としてそのステイ・ホームが可能になるのはエッセンシャルワーカーと言われる人たちが働いていてくれるからです。 医療従事者を筆頭にスーパーで働く皆さんや流通にかかわる皆さん、食料品を生産している皆さん、あるいは交通・運輸を担当している皆さんなどそういう人たちはステイ・ホームが出来ないわけです。 だからそういう人たちにどのようにモチベーション高く働いてもらうか。 感謝と支援をどのように行うかが要請されます。(中略) 3番目の問題はステイ・ホームはほとんどの人にとっては収入減になってしまうということです。 そういう中で誰が一番ダメージを受けるかと言えば、パートやアルバイトなどの社会的弱者であることは明らかです。 その弱者に対して所得の再分配政策をどのように短期間で設計、実施できるかということを今各国が競っているのです。とまで分析していたことは素晴らしい。 新型コロナが収束した今も十分に通用する。 恐れ入る。(8/17記)
2024.10.22
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新型コロナワクチン 誰も言えなかった「真実」【電子書籍】[ 鳥集徹 ] この本の結論は、 コロナが(中略)死のリスクの高い感染症でないことが分かったからこそ海外の人たちも抵抗運動を繰り広げているのです。 少なくとも、コロナワクチンの接種は「任意」あり、接種証明を導入してまで多くの人に打たせるべきワクチンではない。 そのことを改めて強調しておきたいと思います。というものだ。 やはり本ワクチンは、 コロナウイルスは抗体が厄介なのです。 ところがこのワクチンは感染防御を狙ったのか、抗体の誘導も強力にされるようです。 私はそれは間違いだと思っています。 あと、ワクチンを接種すると39℃とか40℃もの高熱が出ることも多い。 「免疫が誘導されている証拠だからいいんだ」という人もいますが私はそこが怖いのです。 コロナに感染してもそこまで熱が上がらないことがほとんどです。 そんな高熱が出るということは免疫が強く誘導されてサイトカインがたくさん出ているということです。 大げさと思われるかもしれませんがやはり慎重に考えるべきだと思います。というものらしい。 私の表現が正しいかどうかはともかく、ようするに弱いウイルスに効きすぎるワクチンだった、ということなんだろうな。 とにかく本書を通じ流れているのは、新型コロナウイルスにワクチンは必要ないというもの。 それなのに、権力の側はあわてふためいて、とにかくワクチンを打つことにした。 その結果、大阪府は、 大阪府が発表したデータのまやかし鳥集 もう一つ、いしい先生はブログで重要なことを指摘しておられます。 大阪府が発表したコロナ陽性者を分析したデータのまやかしについてです。 2021年9月10日吉村洋文大阪府知事がツイッターに表を添付し、「ワクチン摂取群は40代50代の陽性者237人のうち、重症1人(0.4%)、死者0人(0%)です。 ワクチン未接種群は40代50代の陽性者1万5726人のうち重傷277人(1.8%)、死亡28人(0.2%)です。 ワクチンの発症予防効果だけでなく、重症予防効果も驚異的です」とツイートしました。 しかし表をよく見るとこの数字は実は①「2回接種後14日以降に発症」群と②「未摂取+接種歴不明」群、③「1〜2回接種後14日未満+発症日不明」の3群を比べたもので、すべての年代をまとめた総計の死亡率を比べると、①と②が同じ(0.2%)で③は0.6%、つまり②「未摂取+接種歴不明」群よりも③「1~2回接種後14日未満+発症日不明群の方が死亡率が3倍も高いことを示していました。 いしい先生は、「ドクチン1回目接種者は死亡・重症化ともに増え、2回接種者でも死亡率は下がらなかった。 それがこのデータがしめす事実である」と指摘していますが、よくこのまやかしに気付きましたね。のようなまやかしを堂々と述べたのだ。 私はこのことをテレビか何かで見たので覚えている。 直感的に嘘くさいな、根拠が薄弱だな。大阪がここまで言うのかい、政府ならともかく、なんて思ったものだ さて2年前の私のワクチン禍は、本当にワクチン禍だったのかそれとも実は新型コロナウイルスに罹患していたのはは定かでない。 ただ、私はあの日以来、ワクチンの接種はしていない。(8/16記)
2024.10.21
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公式読本 京都寺町三条のホームズ 6.5 ホームズと歩く京都 [ 望月麻衣 ] 本書は本当に上質な京都ガイドブックだ。 この本に出てくる名所を全部回りたいと京都ファンの私は思った。 次の京都旅行は、本書が一番のガイドブックになると思う。 写真もないのに行った気になる。 それもGooglemapと首っ引きでだ。 それでも著者が言う通り本シリーズはライトミステリーだから、トリックも忘れない。 その1。 本物の絵画の裏に贋作を置き、本物を欲しがっている者に裏に印をつけてもらい、その贋作を欲しがっている者に売りつける詐欺は、買いたい者が裏にある印を見つけて信じてしまうという手口。 その2。 暗号文で、赤と黒。 ときたらトランプ。 ここに小ネタが必要。 農民はクローバー。 商人はダイヤ。 聖職者はハート。 王はスペード。 それで暗号が解ける。 さてその寺町三条だが、その付近に錦市場があるとのこと。 最後に、家頭清貴のお香の好みを書いておく。 冬から早春は梅 春は桜 初夏はジャスミン 夏は荷葉 秋は金木犀とのこと。(8/16記)
2024.10.20
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新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体【電子書籍】[ 宮坂昌之 ] 四年前つまりコロナ大騒動の始まりに書かれた本だから、著者自身にもかなりのブレが認められる。 例えば、 最近新型コロナウイルスに対する自然免疫の重要性がクローズアップされつつあります。 その理由の一つは自然免疫を強く刺激することによって種々の感染症の発症率を押さえる事が出来ることが海外のいくつもの論文で報告されているからです。 日本でも最近自然免疫の重要性等の関連でマスコミで大きく取り上げられていて、その一つに国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授が提唱している説があります。 「新型コロナウイルス感染症の感染予防には獲得免疫ではなくてもっぱら自然免疫が重要である」というものです。 この説においては次の3つのことが仮定されています。1 新型コロナウイルスは病原性が弱く増殖力も弱いので、獲得免疫がなかなか立ち上がらない。2 日本人の約3分の1はすでに新型コロナウイルスに曝露されているがそのほとんどは自然免疫によって排除されている。3 日本人が欧米人に比べて重症化率、致死率が低いのは自然免疫力の差による。 というように、かなりのスペースを割いて紹介している論に、著者自ら、根拠薄弱であるとかの反論を載せている。 としつつ、 新型コロナ感染症では、(略)感染後に症状がほぼない人が半分くらいいてこのため、学校や仕事をあまり休まないので、行った先で感染を広げてしまうことがよくあるのです。とも論じている。 軽症で済むか、重症化するかの分岐点は? 新型コロナウイルスの感染者で重症化するのは1割程度の人でそのほとんどが高齢者です。 どうして感染後大過なく無事に快復する人たちと重症化してしまう人たちがいるのでしょうか? 端的に言うと軽症の人はⅠ型インターフェロンをはじめとして炎症反応にかかわるサイトカインが適切なタイミングに適切な量だけ産生されるため、正常な炎症反応が働いて最終的にウイルスを排除するのに対して重症の人は、Ⅰ型インターフェロン産生や放出の不良を引き金にして様々な炎症性サイトカインが過剰に産生・放出されることで、ドミノ倒し的な炎症反応が広がったうえにそれにブレーキがかからず免疫系を疲弊させます。 その結果、肺を含む様々な臓器の機能不全(多臓器不全)が起きるのです。 とする。 これらのことは今だからゆっくり読める。 4年前の騒動の時には決して読む気にはなれなかったことでもある。(8/15記)
2024.10.19
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誰も書けない「コロナ対策」のA級戦犯【電子書籍】[ 木村盛世 ] 全く本当にあのコロナ騒ぎはいったい何だったのかというほど騒ぎが収まっている。 本書はあのコロナ騒ぎの検証の一冊である。 騒いだ人がいたのは間違いないし、今になってコロナは風邪の一種などと言われても、あのときは恐怖の一殺だった。 ただ本書のように改めて落ち着いて書いてもらうと、そうか、我々はただの風邪を見誤っていたのかと落ち着いて思う事が出来る。 とにかくあのダイヤモンドプリンセス号に始まる4年前の騒動はきちんと記録かし論文化しなければならないことなのだと改めて思う。 本書の結論は、 新型コロナで死亡する人は世界人口のうちごくわずかです。 そして多くの人にとって新型コロナは通常の風邪かインフルエンザ程度です。 この客観的な事実を受けいれるということは極めて重要です。 コロナ以外の疾患でも人はなくなるからです。 というもの。 そのほかいろいろなことが書かれているし、書かれていることはテレビなどで報道されていることだから、そんなことがあったのかなんて驚くほどのことでもないけれど、ただ、とにかく日本人の忘れっぽさには驚くばかりだ。 そんな中、本書を読んでふと思い出したのが、西浦論文だ。 そう、かなり悲観的なデータをそろえて、もうコロナで日本がどうしようもなくなるというような話だった。 それすらもう昔の話で私なんざあとっくに忘れ去っていた。 しかし、たしかに、彼の話はコンピュータによるシミュレーションであり、その当時は信憑性があったのだ。 結果、 テレビや新聞などの大手メディアは西浦氏の話に便乗し恐怖をあおるばかりでした。 (略) 橋下徹氏(21年9月のミヤネ屋でのコメント)「予想が外れたことには、なぜ外れたかを言ってもらわないと。 はっきり言って西浦さんのいうことは信用できません」ということでちゃんちゃん。 本当に彼の話はいったいなんだったのだろう。 ただ言えることは、大したことなくてよかったね、ということだ。 これに尽きる。(8/15記)
2024.10.18
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青春漂流【電子書籍】[ 立花隆 ] 昭和60年ころの本。 出てくる人々はアラサーくらい。 つまり私と同世代と考えていいんだよな。 この本に出てくる人々は、とにかくいちずだ。 そして、学歴を必要としない。 猿が死んでは泣き、鷹が獲物をとってはなく。 そのようないちずな人々の話だ。 学力も金もないのにフランスに行ってしまう行動力。 そして厳しい教えについていく根性。 私の中学時代の同級生にもこのような人がいた。 今はこちらに帰っているけれど、言葉も何もわからないけれど、とにかくがむしゃらにやったということだけは本書に出てくる人々と同じだと私は思った。 さて、本書のような人々と同じようなことを今のアラサーがしているだろうか。 私にはそうは見えない。 もっと合理的でsmartに生きているのではないかと思う。 それが今の日本の低迷を生んでいる?かどうかはさておき、本書のような全編に流れる根性論を振りかざしたら、それは無理とのっけから言われるに決まっている。 つまり、もうあの時代のやり方は通用しないのだ。 翻って、本書に出てきた成功者の裏側にはその何倍もの失敗者がいたに違いない。 そのことを無視するわけにはいかないのではなかろうか。 立花隆渾身のインタビューだったんだろうが、それこそ立花自身が思っている通り、この人たちの裏側にいる何倍もの人々は結局日が当たらなかったのだということ、それがおろそかにされているなあというのが私の感想である。(8/15記)
2024.10.17
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京都寺町三条のホームズ(6)新緑のサスペンス [ 望月麻衣 ] 一気に6番目まで飛ばした。 そうしたらなんと2人はできてしまっていたではないか。 つまり、家頭清貴と真城葵のペアが誕生していたのだ。 いずれこの2人が恋人同士になるのはお見通しであったけれども、結局 これだけ時間が必要だったんだろうな。 つまり 1巻から5巻までの時間が必要だったというわけだ。 恋愛小説 として この話を見ればとても面白い。 また京都ガイドブックとしては秀逸だ。 この作家は血だらまっかというようなミステリーを好まないんだろうな。 本作は窃盗事件だ。 盗まれたのは薬師如来の掛け軸と十二神将像である 。 仏教に詳しい人や、 仏像に詳しい人から見れば、 盗まれたのが十二神将像であったから、 それは、 薬師如来の脇侍であり、 京都の方角に散らばっているということのパズル はすぐ解けるだろう。 作者本人にしてみれば、 これこそミステリーなんだろうけれども私たちミステリー リーダーにとってはつまらない話だった。 ホームズの名前をぜひとって欲しい。 作者自身ライトミステリと言っているような代物のヒーローがシャーロックホームズでは私は納得できない。 本小説においては、 恋愛小説の部分はとっても面白い部分だし、京都ガイドブックとしてはとてもためになるのだが、本筋であるミステリーが何とも情けなくて、 つまり 67点ということになるのかな。 結局それでも私はグダグダグダグダと読了してしまうのだった。 何しろ頭を使うことがほとんどないのだから、楽しく進むことができるというものだ。(8/14記)
2024.10.16
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新訳歎異抄 松本志郎 毎日毎日お勤めとともに歎異抄を音読している。 なかなか意味が通じないところもある。 そのせいでまだまだ歎異抄の真髄に到達していない。 この度新訳で歎異抄を読んでみた。 ふむなるほど原文では理解できなかったことが次から次へと明らかになる。 来世での成仏は必定、したがって仏に感謝せよというわけだ。 第4章 我々 他力にすべてをお任せする念仏者は自力という殻を投げ捨てて直接に弥陀の光明に照らされているから本願に帰依する心が起こると同時に金剛不壊の信心を賜って往生確実の身となり、死ねばお約束通りにすぐさま 浄土に招かれ、 生前のあらゆる煩悩や罪業を転じて絶対の悟りを開かせていただけるのだ。 従って、 我々は当然こう考える。 我々のような浅ましい罪人がこのように成仏できるのもひとえに大悲の本願のおかげである。 これからはこの広大無辺の恵みに対する報恩感謝のしるしとして一生をかけて 念仏を唱え続けよう。 本当の念仏とは、 この報恩感謝の言葉に他ならない。 真宗親鸞聖人の教えでは、真言宗のようにこの世で成仏してしまうように、物の本を読み進めるとそう思うことがある。 しかしそれは違う。第5章 「来世(死後)において悟りを開く」というのが我々の信ずる他力浄土の宗旨であり、信心第一主義の教えである。 これは前と反対の易行道で資質能力の劣ったものでも容易に勤めうる教えであり、 善人でも悪人でも分け隔てなく救いたもう絶対救済の広き門である。 というのが大原則なのである。 すなわち、来世で成仏できるのだから今生では何もあせる必要がないというわけだ。 つまり私は何者などという命題は来世に持ち込もうよ、今は今で一生懸命生きようよ。 というわけだ。(8/13記)
2024.10.15
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夢探偵フロイト ーてるてる坊主殺人事件ー【電子書籍】[ 内藤了 ] せっかくのよくできた話もたった数文字で台無しになる。 地域課の〇〇刑事ではここまでやってきた緻密な話は一体何だったのかと臍を噛む。 私は、内藤のやり方はそれはそれでありだと思っている。 堀北恵平のときは、地域課のことをよく取材したものだと感心したのになぜ今回長野県警の地域課の高山刑事になるんだい。 つまりだ、せっかくのいい話も数文字で台無しになるってことだ。 それだけで多分本作を読む気にならない読み手も現れるかもしれない。 この点、何しろミステリーは読み手あっての文学だから、書き手は気をつけたほうがよろしい。 その点を抜くと実に素晴らしい作品に仕上がった。 あの数文字は長野県警の高山刑事で何故悪かったのか。 たしかに起きている犯罪が県警単位の範囲で起きているとは限らない。 それが今の警察の問題点だということはかなり前から語られていることだ。 その点、一刑事同士のやり取りで長野県警、山梨県警、警視庁と連絡が取れているんだから、この小説の中の警察は実に素晴らしい。 そんなことばかり論じていては、針小棒大、やはり本筋の凄さを語らなければなるまい。 内藤の素晴らしいところは、そのキャラづくりの素晴らしさだ。 今回前作と違って彼本来のおどろおどろしさが戻ってきた。 それは、決して血だら真っ赤だというような話ではなく、人形とかロリータとかをまとったソフトなものだった。 それにしても、翠という被験者の茜に対する敵愾心は、なるほど伏線だったかと後で思えるほどの見事な伏線回収だった。 伏線回収というのは、ミステリーだけではなくて、ドラマでもよく使われる手法だが、ミステリーでも大事な要素なんだなとふと思った。 第7の要素である。(8/13記)
2024.10.14
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キネマ探偵カレイドミステリー 〜輪転不変のフォールアウト〜【電子書籍】[ 斜線堂 有紀 ] 本作では嗄井戸の姉の死の真相が明らかになる。 一応ミステリーの体裁を整えて謎解きをしたつもりなんだろうが、本格的ミステリー好きにはなにか物足りない。 それより映画の裏話満載で、まるで増田明美の解説のような作りで、そっちの方に惹かれてしまうけれど、それは本筋ではない。 それにしても、ラストタンゴ・イン・パリの話はショックだったな。 あれは、演技ではない本物だったなんてね。 それから、BACK TO THE FUTURE絡みの話で、デロリアンを、消す話に鏡を使っていたが、このトリックは、つい最近読んだどれだかのミステリーにあった話だ。 鏡を利用したトリックというのは、かなり緻密に細工しないとすぐバレると思うけれどね。 そのほか、フィルムの保存の話やら、今の時代ではCGですぐ決まるシーンも大きなセットやら小さなセットを作ってそれらしく見せることに並々ならぬ努力をしていたことなど、映画の小ネタがぎっしり詰まっているのだ。 京都のことを知りたかったら、望月麻衣、映画のことを知りたかったら、斜線堂有紀で、ということであろうか。 でもこの2人、今のところミステリー的にはパッとしないね。 ライトミステリーと言われても釈然としませんよ。(8/12記)
2024.10.13
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【中古】 京都寺町三条のホームズ(1) 双葉文庫/望月麻衣(著者) 姓が家頭だからホームズなのだそうだが、そのホームズ譚のようなミステリーを期待する向きにはちょっと調子外れな作品だ。 著者本人がライトミステリーと称しているとおり、本当に軽い読み物だということを覚悟して読んでほしい。 事件らしいものは、本短編集には2くらいしか入っていなかった。 これはミステリーリーダーにとっては、翠富士の肩透かしを食らったような感覚だ。 犯人は誰かなどという話ではなくて、遺児に残された美術品の意味は何なのかとか斎王代に選ばれた女性によこされた脅迫文の真実などのほんの少しのミステリーは出てくるが、それでは心がウキウキしませんな。 それよりも本作全編に漂う京都案内が何より面白い。 ガイドブックとして読んだらこれくらい面白い本はないと私は思った。 何しろ私は東北にいながら、妻と京都を旅行するのが何よりの趣味でして、そんな私がこの本を読むと、あああそこだ、今度行ってみようとか、そんな風に考えてしまうのだった。 家頭でホームズはよろしいものの、大サー・アーサー・コナン・ドイルに失礼じゃないのか。 ホームズという名前にしなければならない理由があったのだろうか。 シャーロッキアンには本当に目障りなシリーズになりそうだ。 しかも大量の作品が出ているようだし…。(8/12記)
2024.10.12
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夢探偵フロイト ーマッド・モラン連続死事件ー【電子書籍】[ 内藤了 ] 待ってました、第六祖。 今回のシリーズは夢を中心に語られる。 まだ第一作だから、たとえば、堀北恵平やら藤堂比奈子のように待ってましたとはまだならない。 しかしながらすでにおもしろキャラが早速登場しているのでかなり期待できる。 内藤の場合、夢かうつつかうつつか夢かという話でなくて、きちんと根拠を示してくれるから、安心して読める。 さて本作は、数十年前の災害によって甚大な被害を被った医療福祉施設が舞台になる。 現場に行き着くまで紆余曲折したけれど、夢の可視化に成功するなどして、真相を突き止める。 恵平や比奈子の時のような血生臭さはない。 先述の施設の不正を暴くにとどまった。 現場死体は自殺体のみ。 ということはここまで意外にクリーンに話が進んでいるということだ。 第六祖といえばおどろおどろしさ。 それがないクリーンさはなんとも不気味だ。 果たしてこれからこのペースで行ってしまうのだろうか。 そうだとすると、路線変更という感じになりますかな。 夢の世界というのは未だ解明しきれない部分が多いだろう。 現実に夢の可視化というのができているのかできていないのかはわからないが、本作を読むと、そんな事が可能になっているのでは、なんて思えてしまうから不思議だ。 今回、出てきた警察官は、2人。 今までとはその点も違う。 はて、夢探偵と探偵を謳っているだけに今後一体どのような進展を見せるのだろうか。 楽しみである。(8/11記)
2024.10.11
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雨の日も、晴れ男【電子書籍】[ 水野敬也 ] 小僧の神様がアレックスという男を徹底的に叩きのめす算段に出る。 アレックスはそのたび 表題に書いてあるような雨の日も晴れ男的な、 つまり、 起きた悪いことを全てに良いことに考え直すという前向きというのか、 それとも、 バカというのかは不明だけれども、 とにかくなんとかしてその苦境から逃げ出したいという思いで様々なポジティブな行動に出るのだ。 例えば、 上司から怒られたら土下座作戦をするとかストレスで脱毛症になったらそれをハート型に整えて売り出そうと考えるとか。 そして余の辞書に出世という文字はないという生き方。 余の辞書に出世という文字はないという考えには賛成だ。 読み手である私は読み進むにつれ だんだんだんだん辛くなり、不快感に苛まれた。 一体この男はどこまで不幸に陥ってしまうのだろうか。 普通に考えたら会社をクビになる、若い者から暴力を振るわれ、 さらには、 クリスマスに自分の家か燃やされてしまうという、 不幸な出来事の中、 それでもポジティブに行こうとするアレックスの生き様に私は畏れを感じたのだった。 結局この不幸は小僧の神様が運命のペーパーに書き込むことによって現れるものだった。 それは たった1日のことで 翌日の午前0時0分になった瞬間にその内容は全て消え去るものだった。 小僧の神様はそれからの3分間に何とかアレックスを立ち直らせようと ペーパーに書き込んだ。 その後のことはよくわからない これら小僧の神様は、 これらと書いたのは、 小僧の神様が2人だったからでこの2人は後にゼウスからいたく 怒られることになるのだが、 1日終わって アレックスを何とか幸せな道に踏み込ませたいと思うところまで行ったのだったけれども、 途中から、 とても不快な思いにさせられた私はもう読むのをやめようかと思ったほどだった 。 結局 、小僧の神様は本編をこうまとめた。 アレックスはただ人を喜ばせることを考えながら生きていたのだと…。(8/10記)
2024.10.10
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最後に臼が笑う 森絵都 なんとも言えませんな、この商品ばかりでは。 小説のジャンル的には何に入るんだろうな。 昭和年代にあった、ユーモア小説というやつだろうか。 たった24ページの小品をこんなに大事に読んでしかもブログにアップしたのは初めてなのかもしれない。 私は、この題名を読んで、最終盤女たちが集まって悪い男を成敗するための作品会議をしたときに、やっとのことで話の骨格が見えてきたという為体だった。 読み手の中には、表題を見てすぐ感づいた人も相当数いただろうな。 そう思うと、悔しさもあるけれど、それは大した話じゃない。 さるかに合戦か。 そもそも私が東京で暮らしていたのは今から50年前の学生時代で、本作のような電車の問題など考える必要性もなかったのだが、この頃、優先席に若者が堂々と座っているのを見ると本当にがっかりするな。 それくらいだ。 それが本作では逆の話なのだった。 つまり、四十代くらいの女の人が自分の前に立つとすぐ席を譲る男の話だ。 それを作者は意地の悪い男と称する。 代わられた女性は、それほど私がくたびれてきたのかしらと思うのだそうだ。 そのへんの心理は女性でないとわからないところだ。 そのへんの、男性の意地悪さと女性の心理、そしてそれに制裁を加えるさるかに軍団の存在、どれをとってもそつがないのだが、果たしてこれを商業ベースに上げていいのかなとも思った。(8/10記)
2024.10.09
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