売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

Nobuyuki Ota

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2023.03.17
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カテゴリ: ファッション

​(以下写真は全てSUPPORT SURFACE)​


ファッションデザイナーに関わって長い私ですが、これまでデザイナーやパタンナーに「もっと売れるものをつくって欲しい」と言ったことはありません。「あなたの信じるものをつくってください」と接してきました。デザイナーたちが考案したコレクションをどう売るのか、マーチャンダイジングは我々ビジネスマンの仕事ですが、クリエーションには口を挟まないというスタンスで仕事をしてきました。

コレクションを発表したあと注文が入ったものはたとえ枚数が少なくても生産する。逆に、ショーで見せるだけで生産販売するつもりのないものはショーで見せないでくださいと言ってきました。日本のファッション雑誌によくあった「参考商品」、私にはあり得ない表記でした。生産するつもりのないサンプルを平気で貸し出す神経が私には理解できませんし、販売予定がないとはじめから分かっていてもサンプルを掲載するメディア側の姿勢も理解できません。

ファッションビジネスは何もたくさん売ることだけが目標とは思っていませんし、たくさん売る会社が偉いとも思いません。少ししか売れない、少ししか売らないコレクションがあっても良いと思います。消費者に売るつもりのない服をショーで見せる、売らない服なのに雑誌で読者に紹介する、言い換えれば「フェイク」もっと強く言えば「サギ」、これだけはやめてくださいと言い続けてきました。

展示会では販売スタッフに「売れるか、売れないかではなく、せっかくつくったんだから売ってみようよ」とよく言います。「お客様をなんとか試着室までご案内しようよ。それでお客様の反応が悪かったら、そこで諦めよう」、これが私が販売スタッフに奨励してきた販売の心構えです。

また、デザイナーやパタンナーが徹夜までして完成させたコレクションなんだから、プロパー消化率が50%なんて惨めな数字では情けない。せめてお客様の4人に3人はプロパー価格で買っていただけるようメリハリのある発注を求めました。4人に3人、つまり目標プロパー消化率75%(腹の中では70%で及第点と考えての数字でした)。

親しいアパレルメーカーの経営者たちは「75%は無茶苦茶だよ」と笑いましたが、無茶ではありません。実際には70%以上の数値をコンスタントに叩き出しました。販売が難しそうな服もちゃんとつくっての70%、まずまずの数字ではないでしょうか。


たとえ売りにくい服であろうが、特定のお客様しか買ってくれそうにない服だろうが、デザイナーのクリエーションを尊重、彼らが創作したものをそのまま販売を試み、マーチャンダイジングの知恵と工夫で消化率を上げるのがプロの仕事だと信じてやってきました。だから「もっと売れるものをつくって欲しい」なんてセリフは言いません、言ってはいけないのです。

マーチャンダイジングの講義でよく受講生たちに言います。

コレクションを見て「これじゃ前年8掛けしか売れないな」というシーズンであっても絶対に諦めるな、自分たちの腕で前年トントンは目標にしてみようよ、と。反対に「これなら前年を軽く上回れそう」というシーズンなら、大幅アップを狙って営業と発注枠の増加を交渉、可能な限り高い目標を掲げてください、と。毎回コンスタントにコレクションが良いとは限りません。楽なときもあれば難しいときもあるのがファッションビジネス、そう教えてきました。




今日のSUPPORT SURFACE(サポートサーフェス 研壁宣男さん)のコレクション、細かいところに技術の詰まった丁寧なものづくり、いつもながらモデルさんの後ろ姿が凛として美しく、見ていて心地良い内容でした。私がバイヤーなら写真のパンツに入れ込みます。マーチャンダイジングの目線で言えば「前年比120%を目標に前向きな発注をしてみようよ」でした。





















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Last updated  2023.03.17 12:09:19
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