売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2023.03.21
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カテゴリ: ファッション
ジャンポールゴルティエがパリコレで人気絶頂だった頃、ゴルティエのショー会場に入った瞬間異様な光景に「なにこれ」。幅の広くて長いステージの頭上には照明機材のトラスの下に大きな白無地の布が張ってあったのです。観客を驚かせる特別な演出に使う小道具かと思いましたが、布には何の仕掛けもなく、一度も揺れることもなく、演出小道具ではありませんでした。

後日、ランウェイ写真をカラー掲載した新聞や雑誌を見て、布の意味が理解できました。強めの照明が布フィルターを通してモデルや服に優しく当たったので、掲載された写真はどのメディアも明るく、美しく、柔らかでした。

あの時代カメラマンはランウェイに沿ってズラリ並んでフラッシュを使って撮影、現在のように長い望遠レンズでノーフラッシュではありません。ゴルティエのステージは布フィルターを通した優しい光だったので服の微妙な色合いは鮮明、写真は別格の美しさでした。

今シーズン、「ここに二瓶さんがいてくれたら」と思うショーがいくつかありました。

1993年度毎日ファッション大賞鯨岡阿美子賞を受賞した二瓶マサオさんは日本を代表する照明デザイナー。イッセイミヤケ、ヨウジヤマモト、コムデギャルソンのパリコレを担当、個性の強いデザイナー三人三様の照明を毎回デザインするのは大変なプレッシャーだったでしょう。二瓶さんの照明はまるで演劇のようにストーリー性がありながらモデルが歩くステージに均等に光が当たり、光量が弱い場所もあれば明るい場所もあるなんてステージはありませんでした。

ステージを長く、あるいは広く設営すれば、トラスに吊る照明機材の台数は増えます。当然機材のリース代金も増えます。モデルが歩く場所に万遍なく光を当てるなら、大きなステージのショーでは機材費はかなりかさみます。機材費はかけられない、でもステージは長くあるいは広く取りたい演出となれば、ステージには光のムラが生じて結果的にカメラマン泣かせになります。

撮影許可のあるカメラマンだけが会場で撮影できた時代は終わり、いまは観客の誰もがスマホでショーの写真やビデオを撮影、SNSを通じて広く拡散する時代です。ゆえに以前にも増してステージの照明は重要です。いい写真が撮れる照明であれば、プロのカメラマンでなくてもそれなりの写真をSNSにアップできます。時には実際の服以上に魅力的に見える写真をアップすることも可能です。しかし、ショーでいい写真が撮れなければSNS効果は期待できません。

ステージに万遍なく光の当たらない、あるいは演出上ステージを暗くて服がはっきり見えないというのはネット時代のファッションショーとしてどうなんでしょう。せっかくお金をかけてショー発表するのであれば、カメラマン席のプロも観客席のスマホ撮影者も綺麗な写真を撮れるような照明プランにすべきではないでしょうか。今シーズンは照明デザインが非常に気になりました。

今回Rakuten Fashion WeekのラストショーはKEISUKEYOSHIDA(ケイスケヨシダ、吉田圭佑さん)でした。会場は渋谷駅前の工事現場の地下、まだ満足に電気が供給されていない空間でしたが、ステージのモデルにはちゃんと照明が当たり、私のスマホでも難なく撮影できました。














写真は全てKEISUKEYOSHIDA





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Last updated  2023.03.21 22:52:09
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