PR
本書『蒼ざめた礼服』は、アメリカから購入する自衛隊の潜水艦の選定をめぐって起きる汚職をテーマにしている。
ことの始まりは、片山幸一が古雑誌『新世紀』昭和24年10月号を買ったことだ。ある週刊誌に同書を持っていたら譲ってほしいという投書が載り、片山は『新世紀』を関口という随筆家に譲った。 しかし、その雑誌のどこがそんなに重要なのか、片山にはまったく分からなかった。誰でも知っているようなことしか書いていなかったからだ。『新世紀』は、今は廃刊になっており、当時の編集長は本橋秀次郎といった。
片山は、親しくなった関口の紹介で、柿坂経済研究所で働くことになった。部署は調査部だ。
そんな時、「本橋」とネームの入った上着を着た男が、東京湾に溺死体で浮かんでいるのが発見された。 さらに、西岡豊次郎という写真家も東京湾に浮かんでいるのが発見され、片山の同僚の友永まで、死んでしまった。
政治の世界では、自衛隊がアメリカから買う予定の潜水艦をどのメーカのものにするかでもめていたが、最終的にコンノート社のものにすると閣議で決定した。
しかし、その決定にあたって不正があったと柿坂経済研究所が、パンフを発行し暴露した。パンフではいろいろと事実を上げて、コンノート社のものが優れているという根拠がないことを示した。
この小説の面白さは、この2つの柱が絡み合って、読者の推理を困難にしているところだ。読みすすめてゆくと、片山が独自の推理を展開し、またそれが逆に読者をこんがらせる。 あともう少しで、本書が終わってしまうのに、これで解決するのかと読者をどきどきさせるが、最終的に、片山と別の人が謎解きを行うという意外な結末を迎える。
ホーム・ページ『推理小説を作家ごとに読む』も、ぜひ、ご覧ください。
http://bestbook.
life.coocan.jp
『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき―… 2019.05.09
『それまでの明日』原尞――調査の報告をし… 2019.03.21
『ファーストラヴ』島本理生――父を刺殺し… 2019.03.01