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今日は、またハナアブの1種を掲載しようと思って原稿を書いていた。しかし、よく考えてみると、それではハナアブ科が3回も続いてしまうことになる。其処で、急遽主人公をハエトリグモに変更することにした。 当Weblogの表題は「我が家の庭の生き物たち」である。従って、家の中に居る生き物はその対象にならない。しかし、こうネタが少なくなってくると、(私自身を除いた)家の中の生き物も紹介しないと間が持たなくなって来る。ブルーベリーの葉上で大人しくしているアダンソンハエトリの雌最初は台所の流しのゴミ受け付近で溺れかけていた(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) このハエトリグモ、台所の流しにあるゴミ受け網の辺りでウロウロしていたのを見つけた。幸い、洗剤を使っていなかったので窒息死することはなかったが(洗剤=界面活性剤の入った水が体に付くと、水が気管や書肺の中に入り込んで虫やクモは窒息死する)、かなり弱っていた。 屋内で生活するアダンソンハエトリだと思って手で掬って良く見ると、頭胸部や腹部にあるはずの白い半月形の紋が無い。全体の色も黒ではなく茶色である。一体、何ハエトリ? 庭に居るクモや虫が服に付いて部屋の中に入ってくることは良くあることである。取り敢えず、陽の当たる、ベランダからの入り口に置いてある足拭きマットの上に逃がしてやった。真横から撮ったアダンソンハエトリの雌一番良く見えるのは後側眼(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) 良く見てみると、腹背に2本の筋がある。これは、本来屋内に生息していたが、最近はアダンソンに負けて屋外生活を強いられているミスジハエトリではないのか? 暫くすると、大分元気になってきた。其処で、ブルーベリーの葉に載せて写真を撮った。ハエトリグモの魅力は何と言っても双眼鏡の様な前中眼屋内に生息するせいか、他のハエトリグモよりも大きい(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) しかし、写真をコムピュータで拡大してみると、ミスジハエトリではない。ミスジハエトリの腹部の紋は一直線で他に紋はないが、このハエトリの紋はかなり曲がっているし、腹部にかなり細い縦筋が沢山ある。これ一体何者?? 調べてみると、直ぐに分かった。何てことはない、アダンソンハエトリ(Hasarius adansoni)の雌であった。アダンソンハエトリは屋内生活者、即ち、「家の中」の生き物である。同じ様な写真をもう1枚(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) しかし、我が家の屋内で見るアダンソンは黒地に白い筋のある個体(雄)ばかりである。かなり小さい個体でも模様は同じ。ヒョッとして幼体は雄に似ているのかと思って調べてみたが、そんなことはない。幼体は雌に近い配色をしている(かつて掲載していた)。 かなり以前から眼が悪くなっている(比較の問題で老眼ではあるが視力1.5はある.昔は2.0をかなり上回る時もあった)ので、今まで気が付かなかったとしか思えない。ヤレヤレと落ち込むこと暫し。斜め前方から撮るのを忘れてしまった.斜め上からで御勘弁を(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) ・・・と云う訳で、今回は「家の中」に居たアダンソンを無理矢理庭に出して撮影したことになってしまった。1種の「ヤラセ」だが、アダンソンは暖かい時期には屋外でも普通に見られるので、そう気にする必要もないかも知れない。 家の中には、庭に居るのとは別の虫達が居る。我が家の中は常に乾燥させているので虫は多くないが、多少は居る。その多くは「害虫」である。このアダンソンハエトリの雌を機会に、今後は家の中の「害虫」も紹介して行こうと思う(「ゴキ」は居ないので御安心を!!)。
2010.11.08
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暫く昆虫ばかりが続いているので、今日はクモを紹介することにした。 ワカバグモ(Oxytate striatipes)、カニグモ科(Thomisidae)に属す極くフツーのクモである。林のある方へ行けば特に沢山居て、もう一つのWeblogでは既に2回(「ワカバグモ」、「ワカバグモ(その2:捕食)」)も紹介しているし、更に、共食いと思われる奇妙な絡み合いも撮影しているのだが、些か食傷気味で、未だに掲載していない程である。 しかし、何故か我が家の庭では殆ど見た記憶がない。住宅地の中には少ないのだろうか?クチナシの葉裏に居たワカバグモの幼体or亜成体(写真クリックで拡大表示)(2010/10/12) 我が家に何時も居る似た様な習性のクモはササグモである。何となく、ワカバグモに近い様な感じもするが、ササグモはコモリグモ上科のササグモ科(Oxyopidae)に属し、ワカバグモはカニグモ上科のカニグモ科(Thomisidae)なので、かなりの遠縁である。 ササグモの写真と比べると、ワカバグモとは、4対の眼の配置が相当異なっていることがお解り頂けるであろう。斜め横から見たワカバグモ(写真クリックで拡大表示)(2010/10/12) 写真の個体は、まだ幼体か亜成体である。眼の下にあるのが上顎で、それと第1歩脚との間にある小さい細長い脚の様なものを触肢と言うが、成体雌ではこれがずっと太くなり丸みを帯びる。また、成体雄の場合は、特殊な形をした移精器官に変わる。 その何方でもないから、この個体は幼体か亜成体なのである。正面から見たワカバグモ.中々カッコいい(写真クリックで拡大表示)(2010/10/12) クチナシのほぼ垂直に立った若い葉の裏にジッとしていた。3日位同じ所に居たが、その後どうなったかは知る術もない。 写真には写っていないが、直ぐ隣にオオスカシバの4齢位の幼虫が居た。しかし、これを襲うことはなかった。カマキリは芋虫毛虫を食べるが、クモが食べているのは見たことがない。屹度、習性として食べないのだろう。ワカバグモの顔.触肢は幼体か亜成体であることを示している(写真クリックで拡大表示)(2010/10/12) 別に大した問題ではないが、最近、アクセス記録がおかしい。このサイトは、楽天ブログ内の定期的読者諸氏の数が少なく、大半の訪問者はRSSか、Googleその他の検索結果を見て来られる様である。だから、3日も書き込みをしないと「最近のアクセス一覧(最新50件)」の利用者名欄には殆どURLだけが並ぶことになる。 ところが昨日から突然、広告目当て?の訪問者の数が増え、酷い時には3/5(最新50件の内の約30件)がその様な訪問者である。数日前に、楽天が投稿記事の紹介の仕方(新着記事の表示、アクセス数ランキング等)を変えたせいなのだろうか。私以外の楽天ブログの読者諸氏のサイトでは如何であろうか。
2010.10.30
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先日、少し遅く帰って来たら、玄関の横の壁に体長1cm位のクモが1匹居るのを見付けた。我が家に多いハエトリグモではなく、地表性のクモの様に見える。折角のネタだが、もう遅いし、タイルに張り付いた写真では味気ないし・・・で、明日までシャーレの中で一泊して貰うことにした。 次の日、まだ多少寒い(動作が鈍い)内に、デュランタ・タカラズカの根元に放して撮ったのが以下の写真。ヤチグモの1種.メガネヤチグモである可能性が高いがシモフリヤチグモの可能性も否定できない(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 実は、この手のクモは(特に)よく知らない。地面を走り回るクモには、ヤチグモ科、コモリグモ科、ワシグモ科等の他、よく知らない小さなグループも幾つかあるらしい。普段は使わない保育社の「原色日本クモ類図鑑」には科への検索表があるが、細かい形態が指標になっているので、とても使えない。其処で、頭胸部の形態に注意しながら文一総合出版の「日本のクモ」のページをめくって行く。幸いなことに、始めの方にあるヤチグモ科(Coelotidae)が写真のクモの特徴を持っていた。横から見たヤチグモの1種(メガネヤチグモ?)(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 「日本のクモ」には、ヤチグモ科は現在約30種が記録されている、と書かれているが、図版には9種しか載っていない。しかも、よく似ている種類が多い。しかし、その中でもメガネヤチグモ(Paracoelotes luctuosus)が一番よく似ていた。 解説の方を読むと、「人家、倉庫、神社、寺院などお建造物の周囲、壁の隅、板のつぎ目、すき間、壁の隅、窓枠の隅、植木鉢の下、石垣のすき間などに管状住居を作り、入り口に小さな棚網を張る。都会型のクモで公園や庭園などに多く、産地や樹林地にはほとんど見られない」とある。我が家の環境にピッタシではないか!!正面から見たヤチグモの1種(メガネヤチグモ?)(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) しかし、その次にあるシモフリヤチグモも同様の環境を好み、大きさ、色彩や斑紋も似ている。調べてみると、この2種は、雌の腹の裏側にある外雌器の形状を調べないと区別が出来ないそうである。 ・・・と云う訳で、今日の表題は「ヤチグモ科の1種(メガネヤチグモ?)」として置くことにした。斜めから見た写真も1枚載せておく(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) しかし、このクモ、クモ相?が宜しくない。上顎の毛が顎髭の様に見え、凶暴なヴァイキングを思わせる。可愛らしさとか愛嬌と云うものが、まるで感じられない。まァ、クモの方としては遺伝子に従ってこの様に生まれ、他に選択の余地は無いのだから、クモ相が悪いと言われても困るであろうが・・・。ヴァイキングを想い出させる凶暴な顔をしている少し拡大し過ぎて荒れている(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 多くのクモには単眼が4対8個ある。このクモの眼を見ると、前中眼と前側眼がほぼ一列に並び、その後に後中眼と後側眼が、少し弧を描きながら、やはりほぼ一列になっている。各眼の大きさには殆ど差が認められない。 こう云う眼の配列や大きさは、科の特徴と言っても良く、近縁種間で差は殆ど認められない。 逆さに、各科の眼の特徴を知っていれば、科の同定に役立つ。但し、科が違っても眼の配列がよく似ている場合もあるので注意が必要。頭胸部を拡大.面白い形をしている(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 前方中央にある前中眼は光っていないので、その位置が少し分かり難い。角度の違いもあると思うが、これは眼の構造上の違いが原因となっている可能性が高い。多くのクモでは、前中眼(主眼とも呼ばれ他の眼とは構造が違う)以外の眼(副眼と総称される)の眼底にタペータムと呼ばれる反射層を持っている。これにより副眼は真珠色に光って見えるが、タペータムを欠く前中眼は光らないのである。 タペータムは1種の集光装置で、これにより暗い所でも眼がより良く見える様になるらしい。但し、明るい所に住む昼行性のハエトリグモや、全く光の届かない洞窟に棲む種にはタペータムを持たない種が多いとのこと。以上は、吉倉眞著「クモの生物学」からの丸写しである。木の葉で突かれて防御態勢に入ったヤチグモ(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 最後の2枚の写真(上と下)では、クモさんは脚を体に引きつけて縮こまっている。これは、デュランタの幹の間に逃げ込んだクモさんを木の葉で突いて追い出したからで、防御の態勢である。 クモの脚は簡単にとれてしまうが、容易に再生される。トカゲの尻尾と同じで、自切によることが多い。体を脚で囲んでいれば、攻撃を受けて外側の脚に被害が出ても、体は守れるし脚はやがて再生されるから、こう云う格好をするのであろう。横から見た防御態勢のヤチグモ(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 此処暫く、一段と寒い毎日である。しかし、昨年掲載した枝垂梅は今満開だし、まだ一度も紹介していないジンチョウゲやボケの蕾も膨らんできた。これからは、もう少し更新の頻度を上げることが出来そうである。
2010.02.06
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今日は息抜き?にササグモの幼体を紹介する。 今、「北米原産シオンの1種(紫花)」が咲いている。先日紹介したクロマダラソテツシジミの様な珍品?を含めて結構色々な虫やその捕食者がやって来るが、先日、その花の上に小さなクモが居るのを見付けた。「北米原産シオンの1種(紫花)」で獲物を待つササグモの幼体体長は約3.5mmとまだ小さい(写真クリックで拡大表示)(2009/10/05) 体長は約3.5mm、ハエトリグモの1種かと思ったが、撮影画像を拡大してみると、ササグモ(Oxyopes sertatus)の幼体(若虫とも呼ぶ)であった。ササグモについては、既に成体雌雄とその求愛行動や、卵嚢を守る母グモ等を掲載したので、ついでに幼体も紹介することにした。3.5mmのチビ助でも格好は一人前(写真クリックで拡大表示)(2009/10/05) 昆虫は、生長に伴って卵、初齢~終齢幼虫(larva)、成虫の各段階を経るのが普通である。終齢は5齢が一般的。クモの場合はどうかと言うと、昆虫とはかなり異なっている。卵、幼虫(larva)、幼体(nymph)を経て成体になる。幼虫と幼体の2つの段階があるのである。正面から見ると、成体と同じ顔をしている(写真クリックで拡大表示)(2009/10/05) この幼虫の段階は、科によって大きな違いがあり、1回の脱皮で幼体になるものから4回脱皮して幼体になるものまで様々である。ササグモの場合は、卵膜の中で2段階を過ごし、表に出てから更に2段階を経て幼体になる。中々カッコイイが脚や体が半透明で如何にも幼体らしい(写真クリックで拡大表示)(2009/10/05) 幼体になった後、何回脱皮して成体になるかも、種類によって大きく異なる。環境条件にもよるが、小型のクモで4~5回、大型では10~13回、原始的で大型のトタテグモ類では20回以上脱皮し、成体になってからも更に脱皮する。ササグモは何回位脱皮して成体になるのか分からないが、中型のクモで7~8回とのことなので、まァ、その辺りであろう。 今日紹介したササグモの幼体はまだ体長約3.5mmである。成体の体長は1cm前後なので、今後更に2~3回脱皮して成体になるものと思われる。真横から見たササグモの幼体(写真クリックで拡大表示)(2009/10/05) 今日のクモの話は、実は、クモの聖典と呼ばれる吉倉眞著「クモの生物学」の丸写しである。冒頭に「息抜き」と書いたのは、丸写しは楽だからに他ならない。
2009.10.07
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ササグモ(Oxyopes sertatus:ササグモ科)は我が家の庭で見られる最も普通のクモの一つである。今年は特にその数が多い。枝から枝へ渡り歩いたり、或いは、葉陰にジッと身を潜めているササグモの姿を彼方此方で見かける。 最近は、ベランダの椅子からも、1匹のササグモの姿が常に見られる様になった。丁度その正面にあるヒュウガミズキの葉裏に産卵して、その卵嚢を守っているササグモがいるからである。ヒュウガミズキの葉裏で卵嚢を守るササグモの雌(2009/07/01) 以前、ササグモの求愛場面を掲載したことがある。この時は祈願成就はならなかった様だが、今日のササグモは、まァ、それが巧く行った後の姿である、とも言える。 実はこの写真を撮る数日前、この母グモが産卵しその上に網を一生懸命?張っていたのを見ていたのである。しかし、その時は雨が降っており、一寸写真を撮る気にはならなかった。それで、残念ながらその時の写真はない。葉をひっくり返しても直ぐに戻って卵嚢を守る(2009/07/01) 普通、クモは葉を裏返したりすればサッサと逃げてしまう。しかし、卵嚢を守る母グモは違う。驚いて一瞬葉の反対側に逃げても、次の一瞬にはもう戻って卵嚢の上に陣取っている。中々健気でついつい情が移る。もっと写真を沢山撮るつもりだったのだが、ストロボで何回も脅かすのが可哀想になって来て、途中で撮影を止めてしまった。卵嚢を守る母グモの真剣な顔.上の写真の部分拡大一番大きな眼はハエトリグモとは異なり前側眼(2009/07/01) そんな訳で今回は写真の枚数が少ない。最後に、卵嚢を守る母グモの真剣な?表情を載せておく。クモの眼はカメラ眼なので、良く見ると、哺乳類の眼の様に「瞳」があるのが分かる。瞳が見えると、クモでも、何となく近親感を憶える。
2009.07.05
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最近、駐車場のスレートの彼方此方に直径3mm位の丸い物がちている。毛虫・芋虫の落とし物に違いない。上にあるのはウメの木、或いは、昨年見かけたにも拘わらず写真を取り損ねたモモスズメの幼虫かも知れない。 そこで、眼を皿の様にして探してみた。しかし、幾ら探しても芋虫の姿は見えない。代わりに見付けたのが、ゴミグモの巣。ゴミグモとその巣.巣の長さは約6.5cm中央より少し上にクモが居る(2009/06/15) ゴミグモ類は、獲物の食べ滓や、脱皮殻、巣に引っ掛かったゴミ等を巣の中心部に集める習性があり、故に塵蜘蛛と呼ばれる。コガネグモ科(Araneidae)ゴミグモ属(Cyclosa)に属す。 以前紹介したギンメッキゴミグモは体長5~6mm(雌)と小さいし、溜めたゴミの量も余り多くない。しかし、この無印ゴミグモ(Cyclosa octotuberculata)は体長12~15mmとずっと大きく、巣に付けているゴミの量も相当なもので、長さが6~7cmもある。ゴミグモの拡大.多くのクモと同じく下を向いている同属のギンメッキゴミグモは例外的に上向き下方、脚の間から光っているのは後中眼(2009/06/15) ギンメッキゴミグモは小さいが、ゴミの量は少ないし、腹部は丸く普通は銀色をしているから、何処にクモがいるかは直ぐに分かってしまう。一方、ゴミグモの方は、輪郭がゴツゴツしており、色彩も迷彩的なので、多量のゴミの中に居ると、大型であるにもか拘わらず何処にいるのか些か分かり難い。上の写真の様に拡大しても、その輪郭は背景のゴミに紛れて不明瞭な部分がある。獲物を捕らえたゴミグモ.上の写真では隠れていた頭胸部が見える鋏角の牙を獲物に突き刺している(2009/06/15) 一通り撮ったつもりで居たら、横から撮るのを忘れていたことに気が付いた。そこで、もう一度撮りに行くと、ゴミグモさん、今度は何か獲物を捕まえていた。2番目の写真では眼しか分からなかった頭胸部が現れている。少し分かり難いが、鋏角の牙を黄色い獲物に突き立てているのが見える。牙の先端付近には毒腺が開いており、其処から毒で獲物は麻痺、或いは、殺されてしまう。 クモには通常、前中眼、前側眼、後中眼、後側眼の4対の単眼がある。ハエトリグモ類(例えばメスジロハエトリ)では前中眼が双眼鏡の様に大きく発達しているが、このゴミグモ(コガネグモ科)の場合、ストロボの反射で光っているのは後中眼である。斜めから見たゴミグモ.腹部はデコボコしている(2009/06/15) 背面からでは分かり難いので、少し斜めから撮ってみた。此の方がクモ全体の姿を理解しやすいであろう。もう、獲物をシッカリ抱き込んでいる。しかし、この黄色い獲物、一体何か? 撮った写真を全部見てみたが、結局何だか分からなかった。ゴミグモの頭胸部.後中眼、前中眼が見えるその側方に前側眼と後側眼がある(2009/06/15) 頭胸部を更に拡大したのが上の写真。頭の上面に付いている後中眼の下側に、前方を向いた前中眼があるのが見える。また、その側方にも眼と思われる構造が見える。調べてみると、コガネグモ科では前側眼と後側眼は前後に相接しているとのこと。この側方にあるのが、それであろう。ゴミグモの略側面.ゴミの多くはグルグル巻きにされた獲物の滓(2009/06/15) 側面からも撮ってみた。随分背中がゴツゴツしている。また、ゴミの多くは、糸でグルグル巻きにされた獲物の滓であることも分かる。 しかしこの写真、側面と言うより側面上方から撮っている。そこで、真横から撮ろうと思い、脚立(今日の此処までの写真は脚立に乗って撮った)を動かしたら、クモさん、どうも身の危険を感知したらしく、ツーと糸を引いて下に降りてしまった。スレートの上に降りたゴミグモ.ゴミがないので見易い(2009/06/15) しかし、下は草むらでもヤブでもなく駐車場のスレート。急いで逃げるかと思いきや、ジッとしたまま動かない。予想が狂ったので、戸惑っているのだろうか。或いは、「死んだふり」をしているのかも知れない。 その間に、こちとらはゴミの上に居ないゴミグモを撮ることにした。背面からはストロボの反射で撮れないので、横と前の2方向から撮った。当たり前だが、ゴミがないのでクモの輪郭がハッキリしている。脚の間から見えるゴミグモの頭胸部.前側眼と後側眼は相接している(2009/06/15) 前方からの写真は、被写界深度が浅いので、頭胸部のみを拡大した。前中眼、後中眼は明らかだが、前側眼と後側眼は殆ど癒合して一つになってしまったかの様に見える。 クモさん、そのままジッとして動かない。しかし、何分にも駐車場なので、誰かに踏み潰される可能性が無くもない。其処で、木の葉に載せて巣に戻してやった。巣に戻ったクモさん、慌てて巣から伸びる糸を伝って木の葉の裏へ隠れてしまった。
2009.06.21
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先日、ベランダで一服していると、クリスマスローズの葉上で何かがキラリと光った。まるで、アシナガキンバエの様な鮮やかな燦めきであった。 しかし、良く見てみると、何と、ハエトリグモの1種。腹部に太い黄色い縦筋があり、これに日光に当たってキラリと光って見えたのであった。 中々綺麗なハエトリグモである。シッカリ撮影した後、早速図鑑で名前を調べてみた。メスジロハエトリの雄.雄は雌と違って白くない(2008/09/20) その途中で、アレッ、と思った。以前掲載したメスジロハエトリの雄であることに気が付いたのである。全く、年を取ると、一度掲載したことのある種類すら憶えていない。困ったものである。 昔のページを開いてみると、その時は直ぐにクモを見失ってしまって、載せた写真はたったの2枚、しかも同じ様な写真である。それに対して、今回は様々な方向から撮れた。これはもう一度掲載し直しすべきであろう。 ・・・と言う訳でメスジロハエトリ(雄)の再登場と相成った。真横から見たメスジロハエトリの雄背面から見たのとは随分感じが違う(2008/09/20) ハエトリグモの模様や形は、雌雄でかなり違うのが普通である。特に、このメスジロハエトリではその違いが大きく、雌は白地に暗色の小斑が多数散在し、雄とは全く異なる外観をしている。恐らく、昔はそれぞれ独立の種として記載されていたに違いない。真っ正面から見たメスジロハエトリの雄これが上2枚の写真と同じ個体とは信じ難い第1脚の内側が青く、前中眼が非常に大きい(2008/09/20) しかし、このクモ、見る方向によって随分違って見える。特に背面(最初の写真)から見たのと真っ正面から(上の写真)とでは、とても同じクモとは思えない。真横から見た場合(2番目の写真)も、これが最初の写真や上の真っ正面から見た写真のクモと同じとは、俄には信じがたい。斜め前から見ると、最初と3番目とが同じクモであることが分かる(2008/09/20) これは、第1脚の内側が青いのと、前中眼がハエトリグモの中でも特に大きいのが、背面や横からでは見えないのが主な原因であろう。 斜めから撮った写真を見れば、な~るほど、と納得できる。やはり、生き物の写真は様々な方向から撮らないと全体像を掴めない、と言うことである。白、黄、黒、青と彩りに富んでいる(2008/09/20) 今日は、ここ数日とは打って変わった雲一つ無い秋晴れ。投稿が終わったら、カメラでもぶら下げて散歩に出掛けることにしよう。
2008.10.02
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夏になってから、まるで新顔の虫が現れない。最後に撮った写真は7月20日のクサギカメムシの初齢幼虫で、それから昨日まで15日間、実に1枚も撮っていない。我ながら一寸信じがたい。 今日、16日目になって撮ったのも、虫ではなくハエトリグモである。チャイロアサヒハエトリ、体長6~7mm、ハエトリグモとしては中位の大きさである。チャイロアサヒハエトリ.体長7mm程度(2008/08/05) 今日の朝、ベランダの椅子で一服していた時に、クリスマスローズの葉上に現れた。ハエトリグモと言うのは、体長が小さい割りに厚みがあり、しかも、チョコマカ歩き回ってはピョンピョン跳び跳ねるので、写真を撮る方にとっては、何方かと言えば、厭な相手である。今回もシッカリ撮る前に、幹が何本も叢生しているデュランタの根元に飛び移られて見失ってしまった。だから、余り写真が良くない。普段ならば没にするのだが、毎回古い写真ばかりを出すのも気が引けるので、この際あえて掲載することにした次第。ハエトリらしく前中眼が大きい(2008/08/05) 撮る方にとって厭な相手でも、ただ、眺めている分には、ハエトリグモは中々可愛い生き物である。写真を撮るときには厄介な行動であるチョコマカ歩いたり、ピョンと飛んだりするのが何とも言えず愛らしい。地色が白っぽいので眼の位置が良く分かる右上から前中眼、前側眼、後中眼(小さい点)、後側眼(2008/08/05) その愛らしいハエトリグモが、この夏は何故か少ない。最普通種のネコハエトリですら殆ど見かけない。家の中に何時も居る筈のアダンソンハエトリも極く僅かである。その代わりに、我が家では珍しいチャイロアサヒハエトリが現れた。チョウやセミの出現も年によってムラがある様に、ハエトリグモの消長も毎年異なるのであろう。
2008.08.05
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今日は久しぶりにクモ類を紹介する。ネコハエトリ、雄の成体である。 ネコハエトリは既に昨年の春に掲載しているが、それは雌や幼体で、雄の成体はまだなのである。ネコハエトリの雄.雌よりも歩脚が長い(2008/05/17) 幼体や雌は淡褐色の部分が多く全体的に明るい色調となるのが普通である。しかし、雄の成体は、御覧の通り、黒を基調としている。見た感じは雌の方がずっと可愛い。 一般にクモ類の雄は、同種の雌と較べると、胴体に比して脚が長い。人間の場合、世間様では足の長い方が高く評価される様だが、何故か、クモの場合は足が短い方が可愛く見える。跳躍する前の格好.もう少し脚を縮めてからピョンと飛ぶ(2008/05/17) このハエトリ君、庭木から庭木へと飛び移り、10数分の間に直線距離で2mばかし移動した。餌を探すと言うよりは、雌を捜していると言う感じで、実際、雌の近くに来たときには、それまでよりも動きが激しくなった。尤も、雌の方は、サッサと逃げてしまったが・・・。雄は屡々第1歩脚を前方に振りかざす動作をする(2008/05/17) ハエトリグモ類の雄は第1歩脚が他の脚よりも長いものが多い。時々、それを持ち上げて前方にかざす動作をする。獲物を捕る、或いは、捜す動作と言うよりは、求愛の動作の様に見える。クモに関する「聖典」とされる「クモの生物学」を調べてみると、やはり、「求愛誇示に関係があると言われている」と書かれていた。正面から見たネコハエトリの雄.大きな牙が見えて不気味(2008/05/17) ハエトリグモを正面から撮ると、普通は前中眼が円らで可愛い感じがする。しかし、雄の成体では牙(上顎)が発達するものが多く、これが見えると、可愛いどころか不気味な感じとなる(上の写真)。しかし、触肢でこれを隠してしまえば、それ程でもない(下の写真)。牙を触肢で隠せば少しは可愛くなる(2008/05/17) 最近このWeblogで掲載している生き物には、どうも愛嬌に欠けるものが多い様な気がする。次回からは、もう少し可愛気のある虫達を紹介したいと思っている。
2008.06.01
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先日コナラの葉裏を調べていたら、赤っぽい色をした「アリ」が居た。昔はムネアカオオアリ等も居たので、その仲間かとも思って一応写真に撮っておいた。 ところが、後で画像をコムピュータに移して見てみると、何と、アリグモの雌、まんまと騙されてしまった。アリグモの雌.背側から見るとアリに実によく似ている(2007/11/08) アリグモの雄は既に紹介済みだが、雄は大顎が非常に大きいので、少し近づけばアリグモであることが容易に分かる。しかし、雌は背側から見た場合、余り大顎が目立たないので、騙されやすい。 このアリグモは背より高い所に居て、しかも、数枚撮ったところでもっと高いところに行ってしまったから、背側からしか見ることが出来なかったのである。別個体と思われるアリグモの雌.左第1脚が欠けている(2007/11/09) 次の日、同じ木にまたアリグモの雌が居るのを見付けた。一寸変な格好をしている。良く見てみると、左の第1脚が欠けている。前日に撮った個体と同じかも知れないが、腹部の模様を見ると、どうも別個体の様である。正面から見たアリグモの雌.ハエトリグモの顔をしている(2007/11/09) この個体は低い所に居たので、正面からも撮ることが出来た。正面から見れば、やはりハエトリグモの顔をしている。
2007.11.10
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木曜日の夕方に旅行から帰った。しかし、その後の天気は不順で虫は殆ど来ない。それまでに撮った写真も丁度使い果たしていたので、ネタ切れになっていた。 今日になって漸く良い天気となり、虫どももやって来たが、何れも掲載済みの種類ばかり。そこで、以前から居間の入り口の傍で巣を造っているクモを取り上げることにした。 体長5mm強の小さなクモである。名前は知らないが、コガネグモ科に属すことは明らかである。ギンメッキゴミグモ.体長5mm強.羽虫を食べているところ(2007/11/04) 調べてみると、ギンメッキゴミグモ(銀メッキ塵蜘蛛)と言う何とも奇妙な名前のクモであった。確かに腹部が銀色をしている。他の部分は、飴色をしている所が少しあるが、大部分は真っ黒。 こう言う手合いは撮り難い。ストロボを使うと、腹部の明るいところは直ぐに白飛びしてしまうし、黒い部分は背景と区別が付かなくなる。 そこで、灰色の厚紙を左手でクモの後にかざし、右手でカメラを持って撮影した。だから、今日の写真の背景は総て灰色である。網にかかった虫に向かうギンメッキゴミグモ(2007/11/04) 丸い巣(円網)を張るクモは、普通頭を下にして巣の中心に陣取る。しかし、このギンメッキゴミグモやその近縁種は頭を上にする。これは、種類を識別する際の手立ての一つになる。 最初写真を撮ったときは、丁度アブラムシの有翅虫の様なものを食べているところであった。其処へ以前紹介したミドリグンバイウンカが網に引っ掛かった。慌てふためいて出動するのかと思ったら、意外にも、ゆるりとお出ましになった。横で何やら怪しげな光をピカピカさせている不審者(私)が居たせいかも知れない。ミドリグンバイウンカを襲うギンメッキゴミグモ.腹部の裏側は螺鈿(らでん)細工の如し(2007/11/04) 普通は獲物を糸でぐるぐる巻きにするはずだが、この時は何故かしなかった。しかし、写真を見ると、腹部から糸を何本も獲物の方に出しているのが見える。下にその部分拡大を示した。上の写真の部分拡大.腹から糸が何本も出ているのが見える(2007/11/04) 毒液を注入されたらしく、ウンカは直ぐに動かなくなった。するとクモさん、ウンカを其処に置いたまま、また巣の真ん中に戻り、それまで食べていた羽虫に再び取り付いて、御食事を継続。ウンカに口を当てている.毒液を注射しているのかも知れない(2007/11/04) ウンカは食べないのか、とも思ったが、暫くして見に行くと、今度はウンカを巣の中央の運んで食べていた。「ウンカを捕まえた」と言うことを、クモはチャンと憶えていた訳である。
2007.11.04
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久しぶりに今日は良い天気になった。虫の新顔が現れるのを大いに期待していたのだが、最初に現れたのは、昆虫ではなくてハエトリグモであった。 メスジロハエトリ、この個体は雄なので白くはないが、名前の通り雌は白地に斑点があって全体に白っぽい。雄の体長は6~7mm、かなり小さいハエトリグモである。メスジロハエトリ(雄).まだ後の脚が透き通っている(2007/10/04) 良く見ると、前の1対の脚は色が黒いが、後の2~3対はまだ透明、どうやら、脱皮直後らしい。 それでも外骨格は充分固まっているらしく、矢鱈に彼方此方飛び歩く。こう小さいものが素早く動き回ると、一眼レフでは写真を撮るのが容易ではない。御蔭で、何とか使い物になる写真は2枚だけであった。メスジロハエトリ.その2(2007/10/04) ハエトリグモは、アリグモを含め、これで漸く6種。その他にも居るのだが、小さい割りに動きが速いので、まともな写真が撮れない内に逃げられてしまうことが多い。特に、ファインダーを覗いているときにピョンとやられると、それで一巻の終わり、見失ってしまうことが屡々ある。このメスジロハエトリも、撮影中にピョンと跳んで、何処かへ雲隠れしてしまった。
2007.10.04
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今日は、久しぶりのハエトリグモである。シラヒゲハエトリ、建物の外壁や塀などに生息する種類らしい。一寸ネコハエトリに似ているが、腹部に殆ど紋が無く、全体的に白っぽい。眼の下に白い帯があり、これが頭胸部の後の方まで繋がっているのがこの種の特徴である。 ハエトリグモとしては、かなり毛深い。しかし、何故かクモは足が短くて毛深い方が可愛い。スイレンボクの枝を匍匐前進するシラヒゲハエトリ(2007/09/03) 実は、このハエトリさん、前の日に何処からか私の服にくっ付いて来て、仕事部屋の中で行方不明になっていたのである。部屋は外光が入らない様に締め切ってあり、スタンドが一つあるだけなので、一旦逃げ出したハエトリグモは直ぐに闇の中に消えてしまった。潰されなければよいが、と思っていたら、次の日、消えた場所と寸分違わないところに現れた。今度は、チャンと捕まえて、庭に放してやった。シラヒゲハエトリ.こう言う変な顔がお得意(2007/09/03) 放したのは木の葉の上である。建物の外壁や塀などが住処なのなら、一寸不適切だったかも知れない。正面から見たシラヒゲハエトリ.ハエトリらしく前中眼が大きい(2007/09/03) かなり敏捷で、彼方此方休む暇もなく歩き回り、また、葉から葉へ飛び移り、焦点を合わせるのに結構苦労した。背側から見たシラヒゲハエトリ.体が厚いので被写界深度に入り切らない(2007/09/03) クモの呼吸器官には、余り効率の良くない書肺と昆虫と同じ気管系の2つがある。原始的なトタテグモや所謂タランチュラなどは書肺しか持たないので、直ぐに息切れがする。獲物を捕らえる一瞬は、体内に既に溶けている酸素を使うので素早いが、後が続かない。一旦酸素を消費してしまうと、その補充に時間がかかるのである。 一方、ハエトリグモ類は、クモとしては効率の良い気管系が発達している。だから、この様に休む暇もなく素早く歩き回っても息切れしない。ハエトリ共通の姿勢.黒い上顎が目立つ(2007/09/03) クモさんは、スイレンボクからブルーベリー、西洋シャクナゲと移り歩き、やがてニワナナカマドの茂み中へ姿を消してしまった。 これまでに紹介したハエトリグモは、アリグモを含め、全部でたったの4種。この辺りにはもっと沢山のハエトリグモが居る筈で、4種とは如何にも寂しい。次にはどんな種類が現れるであろうか?
2007.09.12
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今日は、蜘蛛の話である。 「何時ものベランダの椅子」の目の前、僅か1mもない所にキショウブが生えており、其処に春先から雌のササグモが棲み着いている。我が家のカナヘビ君(昔から居る個体)が何時も日向ぼっこしている所から目と鼻の先なのだが、食べられることもなく、今まで無事共存している。ササグモの雌.後中眼で上方を見ている(2007/07/09) ササグモは何時も葉の上で獲物を待っている。かなり敏感で、人が近づくとサッと葉裏に逃げ込み、時にハエトリグモの様に跳躍して逃げる。 しかし、跳躍はしても、良く見てみると、脚が細く長く、長い刺毛が生えていて、ハエトリグモとは随分形を異にする。やや前方から見たササグモの雌.眼が4対8個あるのが分かる(2007/07/16) 眼は8個でほぼ環状に配列する。背側から見ると後中眼しか見えないので、眼が1対しかないように見えるが、正面からみるとチャンと4対8個あることが分かる。何だか、眼が沢山あって変な顔!! 其処へある日、雄のササグモが1匹やって来た。雌よりも脚が長く、胴体は逆にずっと小さい。ササグモの雄.雌より細長い(2007/07/16) クモは昆虫と同じ節足動物門に属すが、昆虫とは異なり交尾はしない。代わりに、イカ・タコ、エビ・カニの様に交接をする。しかし、クモは、エビ・カニやイカ・タコとは異なり、交接に際し精包を渡すのではない。 雄のクモは、成体になると、第1歩脚の前方にある蝕肢の形が変化し、先端がスポイトの様な移精器官に変わる。 交接の前に雄は一寸した準備をしなければならない。まず、精網と言う特殊な網を張り、その上に精液を出してから、蝕肢の先にある移精器官で精液を吸い取り、そこに溜めるのである。 その後、雄は山野?を放浪しながら雌を探す。雌を見付けるとこれに接近を試み、旨く近づくことが出来て交接体勢に入れれば、移精器官を雌の生殖口に差し入れて精液を注入する。 種類に拠っては、この時、雌に食べられてしまう雄もある。求愛中の雄.移精器官を雌に示すように前に突き出す(2007/07/16) ところで、読者諸氏は蜘蛛の生殖口が何処にあるか御存知だろうか。昆虫の様にお尻の先端に開口するのではない。雌雄共に腹部の中央よりやや前方の腹側に開口する。 因みに、エビの生殖口は頭胸部(大きな殻に囲まれている部分)の第3歩脚(雌)、或いは、第5歩脚(雄)の基部に開口する。一寸意外かもしれないが、尾部(主に食べる部分)には筋肉の他に腸管と神経しかないのだから、当然と言えば当然である。考えてみると、胴体の末端近くに生殖口がある生き物は余り多くない。お見合いを始めたササグモの雄と雌(その1).まだお互いに警戒して離れている(2007/07/16) 雌の交接に際し使用されるのは交接口であるが、単性域類と呼ばれる原始的なクモでは産卵口と交接口は同一、より高等な完性域類では別々になっている。ササグモは完性域類に属すので、産卵口と交接口の2つを持っている。ササグモの雄と雌(その2).かなり接近(2007/07/16)ササグモの雄と雌(その3).雌はこの後余所へ行ってしまいお見合いは不首尾に終わった(2007/07/16) 雄グモは、ほぼ1週間に亘り雌の近くに留まっていた。丁度梅雨の降りしきる最中で良く観察できなかったが、果たして首尾良く務めを終えたであろうか? 天気が良くなってからも、少し離れた所で、この雄グモを時々見かけた。しかし、3日も経った頃には、もう何処かへ行ってしまったのか、居なくなってしまった。 雄グモは雌グモとは異なり、何度か交接を行った後はもう何もすることがない。ただ死ぬだけである。自然の摂理とはいえ、やはり何とも空しい感じがする。
2007.07.27
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先日、ベランダを歩いていたら、何か綿ゴミの様なものが目の前に漂っている。肉眼では良く見えないので、最近はすっかり虫眼鏡代わりになっているマクロレンズで覗いてみると、ハエトリグモのごく小さいのがカガンボを捕まえて、庇からぶら下がっているのであった。 まだ体長3mm、赤ちゃんとは言えないが、小学生位である。それがチャンと大きなカガンボを捕まえて食べている。まァ、これが赤ちゃんの時から出来なければ、とっくに餓死しているのだが・・・。アダンソンハエトリの幼体.カガンボを捕らえている(2007/07/16) 何分にも幼体なので種類は分かり難い。しかし、腹部の模様とこの辺りにいるハエトリグモの種類から判断すると、普段は家の中に居るアダンソンハエトリらしい。暖かくなると、屋外に出てくる。腹側から見たアダンソンハエトリの幼体.外骨格が透けて見える(2007/07/16) アダンソンハエトリの成体は既に紹介済みである。較べて見ると、クモでも子供は大人よりもずっと可愛らしい。 裏側から見ると、まだ外骨格が透き通っている。如何にも幼体という感じ。斜めから見たアダンソンハエトリの幼体.円らな後側眼が愛らしい(2007/07/16) ハエトリグモは正面から見た双眼鏡の様な前中眼が可愛いのだが(写真では見えない)、こうして見ると、後側眼も中々円らである。 考えてみると、昔はそこいら中に蜘蛛の巣があった。ジョロウグモが庭の茂みの彼方此方に網を張り、屋根と庭木の高いところの間にはオニグモの大きな巣が幾つかあった。庭のサツキやドウダンにはコクサグモ?の棚網が無数にあって霧雨が降ると白く輝いていた。しかし、今は全くと言っても良い程見当たらない。何故居なくなったのか分からぬが、餌になる虫も減ったであろう。 それでも、「何時もの椅子」の目の前では、何処からかササグモの雄がやって来て、春から棲んでいる雌に求愛中である。ここ1週間位ず~と逗留していたが、2日前から姿を見ないところを見ると、思いを遂げたのかも知れない。その内、紹介するつもりでいる。
2007.07.20
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一昨日の昼過ぎ、ベランダのスレートの上に、普段この辺りでは見かけない大きなクモが居るのに気が付いた。大きいと言っても、体長(脚を含めない)は15mm位だが、タランチュラの様に脚が太く短い、如何にも強そうなクモである。 ジグモに似ているが、ジグモはもう少し縦長で、こんなにゴツクはない。キシノウエトタテグモ.所謂タランチュラに似ている左側には脚が5本ある様に見えるが、最先端のは蝕肢(2007/06/29) 何故か、クモさん、余り元気がない。種類はよく分からないが、何れにせよ、地面に穴を掘る仲間には違いないので、ジグモの巣の近くに置いてある石の上に移した。前から見たキシノウエトタテグモ.何故か、左右の第1歩脚を折り曲げている(2007/06/29) 数枚写真を撮ったところで、小さなアリがやって来た。アリが一寸チョッカイを出したら、クモさん、慌ててシダの茂みの中に逃げ込んでしまった。見かけによらず気が弱いのか、或いは、病気で戦闘意欲が無いのか、それとも、やはりアリは苦手なのか・・・。キシノウエトタテグモの顔.上顎が大きいが、ジグモではもっと大きい(2007/06/29) 図鑑で検索してみると、頭胸部の中窩はU字型で、第3脛節に窪みがなく、また、生息地から判断して、どうやらキシノウエトタテグモの様である。上記写真の部分拡大.中央に見える粒々が眼、よく見えないが全部で8個ある.ハエトリグモと較べると眼は非常に小さい(2007/06/29) トタテグモは、昔からこの辺りに居るとは聞いていたが、実は、見るのはこれが始めてである。 Internetで調べてみると、何と、環境省の準絶滅危惧種に指定されている。「準絶滅危惧種」とは、”(存続基盤が脆弱で)現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有するもの”だそうである。図鑑には、「東京、神奈川、名古屋、京都、大阪などの都心部に多産。他の県ではあまり見られない」と書かれている。この辺りにはまだ結構居るのかも知れない。横から見たキシノウエトタテグモ.頭胸部の中窩はU字型(2007/06/29) しかし、何故穴から出て来てベランダに居たのであろうか。クモが水に溺れて弱ったときに似ていたが、別段大雨が降ったわけでも無し、少しの雨で水没するような所に巣を作ったりはしないだろう。やはり病気なのだろうか? 本当のところは「御当人」に聞いてみなければ分からないが、何はともあれ、クモさんのその後の無事を願うばかりである。
2007.07.01
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今日は久しぶりにクモの話。しかし、余りクモらしくないアリグモである。第1脚を恰もアリの触角の様にフラフラさせて早足で歩く。遠くから見るとアリと全く区別が付かない。 このアリグモも、最初見たときはオオクロアリだと思った。マンリョウの木を下りるアリグモ.姿がアリに似ている(2007/05/29) 下の写真で分かるように、アリグモは双眼鏡の様な前中眼を持っており、ハエトリグモの仲間である。ハエトリグモだからそれらしく、時々ピョンと跳躍する。これでアリでないことが分かる。 写真のアリグモも、ピョンと跳んだので、漸くアリではないことが分かった次第。正面から見たアリグモ.双眼鏡の様な前中眼を持っている(2007/05/29) しかし、観察していて意外だったのは、普通のハエトリグモは下の葉へ移動するときなど専らチョコンと跳ぶのに対し、このアリグモは如何にもクモらしくお尻から糸を出してツーと下りる。マンリョウの葉上を徘徊するアリグモ.上顎が大きい(2007/05/29) このアリグモは雄。アリグモの雄は、写真の様に、体全体と不釣り合いなほど強大な上顎を持っているので一目で区別が付く。一方、雌の上顎は体に釣り合った、普通の大きさである。 クモ類では一般に雌の方が大きいが、アリグモの場合は、雄の上顎が長いので、全長としては雄の方が大きくなる。地面に下りたアリグモ.前から見なければやはりアリに似ている(2007/05/29) アリグモ君、盛んにマンリョウの木を上がったり下りたりしていたが、獲物は全く捕れなかった。ハエトリグモもそうだが、どうも徘徊性のクモは造網性や待ち伏せ型のクモよりも、獲物を抱えているのを見ることが少ない様に思う。家の彼方此方に居るアダンソンハエトリも何時も手ぶらである(時々CRTの上にやって来る。マウスカーソルを虫と思って追いかけ、時々飛びかかったりする。何も掴まるものが無くて気の毒だが、何とも可愛く、ついつい遊んでしまう)。 まァ、獲物が少なくてもクモは簡単に餓死しないから、それでも別に構わないのだろう。
2007.06.26
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久しぶりにハエトリグモの仲間を紹介する。と言っても、これもかなり以前に撮ったものである。 今日の主人公アオオビハエトリは、普通のハエトリグモとアリグモとの中間的な形をしたハエトリグモである。第1脚を振り上げるアオオビハエトリの雌(2007/04/05) アリグモは御存知と思うが、一見アリの様に見える細長い胴体を持ったクモである。クモの脚は4対、アリを含む昆虫は3対がだ、アリグモはその一番前の1対を触角の様に動かすので、昆虫の様に見えるのである。 アリグモは、ハエトリグモとはかなり雰囲気が違うが、ハエトリグモ科に属す。一番前の眼(前中眼:クモは昆虫と異なり複眼は持たず、単眼を0~4対持つ)は、ハエトリグモと同じく双眼鏡の様に大きく真っ正面を向いている。アオオビハエトリ(雌).跳躍する直前(2007/04/05) このアオオビハエトリ、写真からはどう見てもアリの様には見えない。しかし、屡々第1脚を上に振り上げて、一見触角の様に動かすので、少し遠くから見ると一寸アリに似た感じになる。 大きさは、体長約7mmと小型、人間の眼には近づいて見ないとアリだかクモだか分かり難い。専らアリを餌としていると言うから、アリから見ても仲間の様に見えるのかも知れない。第1脚を振り上げるアオオビハエトリの雌(2007/04/05) このアオオビハエトリも以前紹介した愛らしいネコハエトリも、4月下旬までは沢山居たのだが、最近は殆ど見かけない。どうしたのだろうか? 不思議に思っていたら、昨日我が家のカナヘビ君が実は1匹ではなく、何と3匹以上も居ることが判明した。久しぶりの好天で、カナヘビが同時に3匹現れたのである。それぞれ僅か1m程度の間隔でクリスマスローズの葉の上に出て来た。 クリスマスローズの茂みは他にもある。だから、更に1匹以上居てもおかしくない。思うに、カナヘビ君達がハエトリをみな食べてしまったのではないか?? 一見平穏そうに見える我が家の庭でも、目に見えぬ所で熾烈な弱肉強食の生存競争が行われているのであろう。
2007.05.21
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先日メダカの鉢の横を通ったら、水面に変なものが浮かんでいる。何かと思ったらハエトリグモである。 五十路を過ぎてからは、遠くのものは良く見えても、近くにあるものには焦点が合わない。そこでマクロレンズで覗いてみると、普段は家の中にいる筈のアダンソンハエトリ(雄)であった。 夏になれば庭にも出てくるが、まだ少々早過ぎるのではないか。前日に大風が吹いたので、何処かの家から吹き飛ばされてきたのかも知れない。水面に浮かぶアダンソンハエトリ(2007/04/14) 水面に浮かぶクモを撮るのも面白いと思って、助ける前に写真を撮ることにした。すると、表面張力で歪んだ水面にストロボの光が当たって、ダイアモンドの指輪(脚飾りか?)を指一杯(脚一杯)嵌めた様なアダンソンハエトリの写真が出来上がった。 しかしハエトリ君、アメンボの親戚じゃあるまいし、やはり水の上では身動きがままならない。何となく、途方に暮れてしょげている様にも見える。余り格好良くない感じ・・・。 写真を撮り終わってから、水面に浮かぶハエトリグモを指で掬い上げた。何処か草の葉の上にでも移し、しょげていない写真を撮って名誉挽回を図ってやろうと思ったのだが、自分から跳んで草むらの中に逃げてしまった。獲物を求めてクリスマスローズの葉上を徘徊するアダンソンハエトリ(2006/09/22) そこで、昨年撮ったアダンソンハエトリの雄姿を紹介することにする。 如何にもハエトリらしい元気さが感じられ、今にもピョンと跳ね飛びそうである。
2007.04.21
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クモと言う生き物は、世間様では余り評判が芳しくない。確かに、ユウレイグモやゴケグモなどに頬擦りしたいとは思わないし、薄暗い木々の間を歩いていて蜘蛛の巣が顔にベチャッと張り付いた時、それで気分が爽快になるという人も決して多くはないだろう。 しかし、クモの中にも愛らしい種類がいる。その代表はハエトリグモ。脚は長くないし(短足が評価されるのは珍しい)、動作は機敏でピョンと跳ねる。それに何と言っても蜘蛛の巣を張らない。 今日はその中からネコハエトリを紹介する。色々写真を用意したのでハエトリグモの可愛さを大いに楽しんでいただきたい。なお、ハエトリグモの和名には「クモ」を付けないのが習慣だそうで、此処でもそれに従うことにする。クリスマスローズの葉上を徘徊するネコハエトリ(2007/04/05) ネコハエトリは日本全国に分布し、最も普通に見られるハエトリグモである。縁側で日向ぼっこをしていると、何処からともなくクリスマスローズの葉の上にやって来る。長さは1cmに満たない。東京周辺では「ホンチ」と呼ぶそうだが、確かに、子供の頃この名前を聞いた覚えがある。ネコハエトリ.ハエトリグモはこの様な体を曲げた姿勢を取ることが多い.前方中央の大きな単眼(前中眼)と横の少し小さい単眼(前側眼)がよく見える(2007/04/05) 真上から見ると、毛ガニに似ている。1番目の写真ではよく分からないが、2番目では4対の脚の先に白っぽい剛毛が沢山生えた1対の触肢が見える。これをカニのハサミに見立てれば脚の本数もカニに一致する(タラバガニやハナサキガニはカニではなくヤドカリの仲間なので脚が1対少ない)。ネコハエトリ.最後方の単眼(後中眼)とその前にあるやや細めの単眼(後側眼)が見える(2007/04/14) クモは昆虫とは異なり、複眼は無く、単眼を0~4対持つ。ハエトリグモには4対8個の単眼がある。多くのクモは蜘蛛の巣や地面の震動を感知して餌を捕らえるので余り眼は発達していないが、ハエトリグモは巣を張らず、専ら眼で獲物を見て捕らえるので、目は良く発達している。特に最前方の1対(前中眼)は非常に大きく、まるで双眼鏡で覗いている様な感じ。真っ正面から見たネコハエトリ.まるで双眼鏡の様な眼が愛らしい(2007/04/05) ハエトリグモは歩き回って獲物を探すほかに、獲物の来そうな所で待ち伏せしていることも多い。先日、何気なく西洋シャクナゲの花を見たら中に何か居るので、マクロレンズで覗いてみたらネコハエトリであった。下の写真はその時撮ったもの。御行儀良く待ちかまえているところは、ネコを思い起こさせる。西洋シャクナゲの花の中で獲物を待ちかまえるネコハエトリ.中々御行儀が宜しい(2007/04/05) 如何であろうか?ハエトリグモの可愛さを充分堪能していただけたであろうか。 今年はクモは勿論、もっと奇怪、異様、不気味な生き物も紹介するつもりで居る。閲覧者数が減るかも知れない。
2007.04.17
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