ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2009.01.23
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カテゴリ: 民衆の歴史
マリア信仰の形成(8)

西ヨーロッパ世界の乳幼児は、常に身体を布でグルグル巻きにされていました。顔だけ出して、首から下はさなぎのように蔽われているのです。動き回られては困るというなら、まだ動けない乳児をグルグル巻きにする必要はありません。でもグルグル巻きは乳児からであり、王家のプリンスやプリンセスも例外なくグルグル巻きにされています。

何故そうしたのか。中世以降のヨーロッパでは、乳児から2~3歳までの幼児までは、グルグル巻きにして、身体の自由を奪っておかないと、獣と同じように四足で動くようになると信じられていたのです。両手は胴と一緒に巻かれており、両足も一緒に巻かれていたのです。ですから、股関節脱臼で歩行が不自由な男女は、とても多かったのです。

さすがに住み込みの乳母や、農村の乳母が預かり育てている、6歳頃までの全期間をグルグル巻かれているわけではありませんが、小さな大人とされる6歳頃までは、親は子に関心を払いません。ですから、幼子がどういう存在であるかを知らないのです。

それが西洋絵画に描かれた「幼子イエス」の姿や、イエス以外の幼子の姿が、良く見ると、大人のような表情を浮かべ、そして骨格や筋肉も幼児のそれではなく、まるで大人のような手足の筋肉や太さを持っているのです。人の良い日本人は、神の子イエスを描いているのだから、幼児にして深遠な思索に耽っていても不思議はないとか、手足も大人のようであっても不思議でないなどと、考えてきたようですが、決してそうではなかったのですね。画家達が乳児や幼児の身体を見たことがなく、どんな身体(特に手足)をしているかを知らなかったからなのです。

まさしく、小さな大人となるまでの子ども達の生活は、受難そのものだったのです。どうして出自の貴賎を問わず、貧富の差を問わず、乳幼児への関心が著しく希薄だったのでしょうか。それは、この時代の子ども達の死亡率の高さにありました。

西欧全体の平均で、1歳未満の乳児の死亡率は、なんと誕生した子どもの30%に達しているのです。さらに、10歳までに、また全体の3割近くが命を落としているのです。医学的知識の乏しい時代とはいえ、10人中6人が成人に達することなく、命を落としていた社会だからこそ、高貴な家柄や富裕層の家庭においても、幼児を家族とみなさない習慣が出来上がっていたのです。

ですから、「幼子イエス」に人々が祈りを捧げるわけは、神の子であるイエスその人が、人間視されず動物と同じように放置される赤子に身をやつして、辛い生活に耐えてくださっていることに対する、感謝の念に拠るものだったのです。

聖母マリアへの崇敬という、マリア信仰が誕生するには、母子の情愛が生まれてこなくてはなりません。西欧世界では、いつ頃、どのようにして、母たちはわが子を発見したのでしょうか。


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最終更新日  2009.01.23 20:18:22
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