漫望のなんでもかんでも

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まろ0301

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2005.06.06
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 フィリピンで、「元日本兵」生存の可能性が高まってきたという新聞報道があった。虚報かもしれないと言うことになりつつある。

 その時の新聞を読み返した。『毎日新聞』5月28日付に、以下のような記事が小さく載っていた。

 「防衛庁防衛研修所戦史室(現・防衛研究所)がまとめた『戦史叢書』によると、フィリピンの守備軍を統括する第35軍(司令官・鈴木宗作中将)は、永久抗戦を行う『鈴木王国構想』をたて、徹底抗戦を命じた。この命令のもと、第30師団は1万5500人のうち、死者2518人、病死2137人、不明5593人を出した。」

 引き算すると、生き残りは4252人となる。

 「一将功なって万骨枯る」という言葉があるが、功もならずに万骨のみ枯れる、という事になっている。


 フィリピンというと必ず思い出すのが、大岡昇平『レイテ戦記』。中公文庫全三巻。

 大岡には、『俘虜記』『野火』等の名作もあるが、私はこれが最高傑作と思っている。
 およそ、「日本軍」という組織体が歴史の中でどのように愚劣な組織になっていったかを検証した作品としてこれ以上のものはない。
 高級将校が愚かになるということは、彼らが自己の部下を「私兵」と考えるようになったという地点で極まる。


 四国に行ったときに、どうしても行ってみたかったのが、「坂東」だった。ここには、ドイツ村がある。ドイツ村の前身は「坂東捕虜収容所」だった。
 第一次大戦でドイツと戦った(中国のチンタオ(青島))日本は、ドイツ兵を捕虜とした。そして彼らを「国際法」に従って処遇し、捕虜の感謝と尊敬を勝ち得た。

 ソーセージ、ハムの本格的な製法、バウム・クーヘン、みんな「捕虜」が伝えてくれた。

 捕虜に対して人間的待遇を保障するというのは簡単な事ではなかった。それをやりぬいたのは、松江豊寿という会津出身の中佐だった。

 捕虜収容所の責任者がみな松江の如くであったわけではない。久留米収容所の責任者、真崎甚三郎は、捕虜を殴打する事を規則で認め、自らも捕虜を殴りつけている。この行為は問題となったが昇進には影響はなかったようで、真崎は後に陸軍参謀次長、教育総監となって、二・二六事件の陰の首謀者と見なされて失脚した。

 この時の真崎の醜態は、こんな人間が陸軍の「教育総監」になるのか・・・と思わせるに十分だが、また別の話だ。

 松江豊寿の事だ。

 『二つの山河』中村彰彦・文春文庫 という本に、松江の事が書いてある。人の痛みが分かる人間だ。こういう人物は、ついに軍の中枢をしめなかった。


 太平洋戦争で、日本軍は、戦時国際法の存在を兵に知らせず、ついでに「戦陣訓」なるものを作り上げて、「捕虜になるくらいなら死ね」と命じた。
 当然、以下のような事が生じた。



 アタリマエだ。「もしも、捕虜になったら」という事を前提とした教育が施されていないのだから。

 『レイテ戦記』は、分厚い。500ページ近くある文庫本で三冊。

 読んでいって、印象に残った箇所はページの右隅を折るという癖があるのだが、何箇所折った事か。付箋もつけた。付箋だらけ。意味がない。

 「どこにも行くところはなかった。七十までも生きられるかもしれない命が、たった二十五でおしまいになってしまう、という胸がつぶれるような思いに若い兵士は圧倒されていた。雨と火の後から、米兵が進んで来、通り過ぎていった。しかしほかに行くところはないのだから、日本兵はそのまま蛸壺の中に残って、狙撃兵となった。そして結局焼き殺された。」上巻p427

 ここを目にしたときはボロボロ泣いてしまった。




 降伏する自由を与えなかったために何が生じたかについては以前に引用した(「『靖国神社』は誰の問題か」)

 『レイテ戦記』の最後の文章を引用する。 

「レイテ島の戦闘の歴史は、健忘症の日米国民に、他人の土地で儲けようとする時、どういう目に遇うかを示している。それだけではなく、どんな害をその土地に及ぼすものであるかも示している。その害が結局自分の身に撥ね返って来ることを示している。
 死者の証言は多面的である。レイテ島の土はその声を聞こうとするものには聞こえる声で、語り続けているのである。」下巻p323

アメリカはすでに「他人の土地で儲けようとして」どんな目に遇うかを身を持って示してくれている。戦争にたかるハイエナのような(ハイエナさんごめんね!)「戦争請負会社」の存在も明らかになってきた。

日本人が、傭兵として活動し、「戦争請負会社」で働いていた事も明らかになった。死亡が確認された彼は、何を求めていたのだろうか?
 彼を英雄であるかの如く思う若者もいるという。

 日本は今、岐路に立っているなと思う。

 「戦争」という手段をとってまで解決すべき問題はあるのか?そういうことを考える。同じ愚を繰り返すのなら、250万人の日本側の死者と、おそらく1千万を超えるだろうアジアの死者は犬死となる。





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Last updated  2005.06.06 00:24:10
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象さん123 @ Re:騙す、騙される(11/21) 斎藤知事の件では私も驚きました。 民主主…
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