漫望のなんでもかんでも

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まろ0301

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2005.06.28
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まず以下の文章を読んでいただきたい。

 「十二、三歳まで育てたが、背丈が人並みにならないので、二人は、これはただ者ではない。化け物のような奴だ。どのような罪の報いでこんな子が出来たのかと嘆く。
 あいつをどこかへやってしまいたいものだと話していると、その話を聞いて、こんな風に思われるのも残念な事だ、こうなったら、どこかへ行ってしまおう、と思って、刀の代わりに針を一本もらい、舟の代わりに椀と箸とをもらって、名残惜しいと留めるのを振り切って出発してしまった。」

 どこかで聞いたような・・・、そう、『一寸法師』のお話。

 一寸法師は都へのぼり、そこで三条の宰相のところに住むことになる。三年後、宰相の娘で十三歳になるとてもきれいな娘がいるのだが、この娘に一寸法師は惚れてしまう。

 どうしたか。

 「一寸法師は、貢物の米を取って袋にいれ、姫君が寝ていらっしゃるうちに、お口に米粒を塗り、袋だけ持って泣いていた。宰相が気づいて、なぜ泣いているのかとお訊ねになると、一寸法師は泣く泣く、『姫君が、私が取り集めておきました米をお取りになって食べてしまわれました』と言う。
 宰相はすっかりお怒りになって、ごらんになると本当に姫の口に米粒がついている。このようなものは都には置けない、殺してしまおうと、一寸法師にその役を仰せ付けられた。」

 で、一寸法師はまんまと姫君を連れて出て行く事となり、舟に乗って変な島に着き、そこで鬼に出会って打ち出の小槌を取り上げてしまい・・・、と続く。




 「こんな話じゃなかった!」と、夢を壊されて怒る人もいると思うけれど、ごめんね、こんな話なのだ。

 「童話が一部の童話作家の思っているように、最初から児童に聴かせる為に考案したのでないこと、是には大切な別の起源があって、今ある形はその変化に過ぎぬ事、その改造は歴代の思慮と知巧との累積であって、是と近頃の新作とを同じ名前で呼ぶのは誤りだ」
と、『童話小考』に書いたのは、民俗学者の柳田國男氏。

 一寸法師は、室町時代あたりから江戸時代までこの形で伝わってきている。そして、この作品だけでなく、「御伽噺」というものは、子どもに聞かせる為に作られた作品ではない。
 対象は大人だったのだ。

 それが、子どもに聞かせる必要が出てきた。いつの頃からか。

普通の身長ではない子どもを授かって、十二・三歳まで育てたけれど一向に大きくならない。それでも両親はニコニコしてました、という設定よりも、「なんで私たちだけこんな目にあうのか」と嘆くほうが自然な設定であったという事だ。
 なごり惜しい・・・と、とってつけたような部分はあるものの。

 さらに、計略を持って姫君を我が物とするという設定。これは、中々秀逸だ。「そうか、こういう手があったか・・・」というところ。
 普通の身長ではない、身分も低い一寸法師のような者が自分の思いを遂げようとすれば、才覚と計略に頼るしかないのは当然なのだ。



 それは、明治・大正時代以後の「一寸法師」像だといえよう。

 一寸法師は、大切に育ててくれた両親の元を離れて、「お椀の舟に、箸の櫂・・京へはるばる登りゆく」と歌にまで歌われるようになる。
 お姫様を手に入れるのも、計略なんかは使わない。姫と散歩しているときに鬼が出てきて、鬼を退治して「打ち出の小槌」を手に入れて、小槌を振ると立派な青年となり、姫と一緒になる・・という筋に変わる。
 「正々堂々」なのだ。

 御伽噺は、「これなら子どもが喜ぶだろう」という形へと、そして、「おっと、こんな事を子どもに教えちゃいけないな・・」「良い子はマネしちゃいけません」という部分は慎重にカットされていく。


本当にこんな風に変える必要があったのだろうか?

 「子どもなんて所詮こんなもんだ」という多寡の括り方が、どうも気に喰わない。





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Last updated  2005.06.28 17:54:59
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象さん123 @ Re:騙す、騙される(11/21) 斎藤知事の件では私も驚きました。 民主主…
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