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まろ0301

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2016.12.27
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『抗うニュースキャスター』金平茂紀 かもがわ出版  2016

 金平さんが、「テレビ・ジャーナリズムを考えるための 10 冊」の中に、『デスク日記』が入っています。今は、『原寿雄自撰 デスク日記  1963-68 』弓立社 として出版されている本です。学生時代に読んで、「新聞記事というものがどのように出来上がるのか」という事をある種のショックとともに知ることができた本です。大正製薬のドリンク剤を飲んで何人かの死者が出ているという事実を、なぜ新聞は書くことができないのかというあたりの消息を今でも記憶しています。

 仕事柄、新聞記者の方と話をすることもあるのですが、記者の書いた記事がすべて紙面を飾るわけではない。取捨選択する人がいて、その人のゴーサインが出ないと記事は没になる。そういった話をうかがうと、取捨選択する基準は何なのか ? と訊ねたくなります。「いや、いろいろあってね」という答えが「大人の答え」らしくて、よく聞きました。

 かなり親しくなると、どの筋から待ったがかかったかを具体的に教えてもらったこともあります。

2015 6 25 日、自民党本部で開催された「文化芸術懇話会」において、「マスコミを懲らしめるためには、広告料収入がなくなるのが一番」「日本を過つ企業に広告料を払うなんてとんでもないと、経団連などに働きかけしてほしい」 ( 大西英男衆議院議員 ) という発言が飛び出し、さすがにこれは報道されました。「文化芸術懇話会」において、「文化・芸術」を真っ向から否定する発言が出るあたり、さすが、「自由」「民主」党の面目躍如です。

NHK の籾井会長の発言は、およそメディアのトップたる資格なしと断ずるに足るものでした。

 さて、金平氏が取り上げている多数の例の中から、まず一つ取り上げてみます。

 広島テレビの岡原武氏のドキュメンタリー「プルトニウム元年」 3 部作は、地方の時代映像祭で大賞を受賞するなどきわめて評価の高い作品だ。被爆地・広島の視点から原発問題を直視した鋭角的な視点がきわだつ。

 放送前の社内プレビューで社長が「内容が一方的だ。君らこれを放送するんか」と言い放ったという。放映から一年後、岡原氏と上司の報道局長、プロデューサーら 4 名がそろって営業局に配転された。電力会社は CM 出稿をストップした。電力会社の第二労働組合がかなり露骨に局に抗議を申し入れてきたという。…岡原氏はそれから丸十年間、報道現場から外された。以降、広島の地から原発問題を正面から扱う番組はほぼ消滅した。原爆は OK だが原発は NO とされたのである。 (P57)


 問題は、作品の出来不出来ではなく、電力会社の機嫌をそこねたことにあったという事です。これは、大西発言が、根も葉もない発言ではないことを示しています。

さきほど紹介しました「文化芸術懇話会」のなかで、「福岡の青年会議所理事長の時、マスコミを叩いたことがある」「スポンサーにならないことが一番こたえることが分かった」 ( 井上貴博衆議院議員 ) と、私の眼から見れば犯罪行為としか言いようのない行為を得々と自慢げに語っている「議員」が所属している政党の事ですから、表に出ていないことをどれほどやっているかわかったものではありません。

この本のおおきな特徴は、著者が、独自に設定している「論点の整理」にあります。「原発事故」のケースを紹介しましょう。

①今回の原発事故の重大性、深刻さをテレビは伝えることができたか ? メディア自身にとって「想定外」だったことはないか ? 当初の「レベル 4 」という原子力安全・保安院発表に追随するような「発表ジャーナリズム」に疑義を呈することができていたか ?

②事故について解説する専門家、識者、学者の選定に「推進派」寄りのバイアスがなかったか ? その一方で、「反対派」「批判派」にたいして、排除・忌避するようなバイアスがなかったかどうか ?

③原発からの距離によって描かれた同心円による区切り ( 原発から何キロ圏内 ) を設定して、メディア取材の自主規制を行っていたことをどう見るか ? さらに、各メディアによってもうけられた取材者の被爆線量の基準は妥当だったのか ? 一方で、線量計を持参して原発至近距離までの取材を試みたフリーランスの取材者をどのように評価するか ?

④「風評被害」の発生について、テレビはどんな役割を果たしたのか ? パニックの発生を恐れるあまり、過剰に安全性を強調することがなかったか ? 安全性を主張する際に、その根拠にまで遡及して報じていたか ?

⑤「国策」化していた原子力発電推進について、テレビが果たしてきた役割を検証する自省的視点があったかどうか ? 電力会社の隠ぺい体質や情報コントロールについて批判する視点が担保されていたかどうか ?

⑥テレビにおける過去の原子力報道の歴史を共有できていたか ? 原発を扱う事をタブー視する空気にどこまで抗してきたかどうか ? スポンサーとしての電力会社を「相対化」する視点が、しっかりと担保されていたかどうか ?

⑦テレビに限らず、企業メディアにおける科学部記者、専門記者の原子力発電に対する視点、立ち位置が批判的に検証されてきたことがあるか ? 何よりもテレビにおいて、原発問題に関して専門記者が育成されてきたかどうか ? 記者が推進側と「癒着」しているような構造はなかったかどうか ?(P46~8)


原発事故が起きて、建屋が吹っ飛んだ時、テレビは長い間その瞬間を伝えませんでした。そして、私が見ていたテレビの「専門家」は、建屋というのは、風雨を防ぐようなもので、吹っ飛んだからと言ってどうってことはありません、と述べていました。その「専門家」はいつの間にか姿を消したのですが、名前を覚えていないのが残念でたまりません。

「ウォッチドッグ」 ( 権力を監視する番犬 ) か、プードルか ?

ブッシュ大統領に対して、「ブレア首相はあなたのプードルですか ? 」と質問したのはブレア首相に同行してきた新聞記者だった。 (P106)

マスコミの首脳が頻繁に首相と会食し、その事を恥とも何とも思っていない国に私たちは住んでいます。

政府の意に沿わぬジャーナリストを公然と辞めさせろという国に私たちは住んでいます。

言論の自由など歯牙にもかけない権力者が本音を丸出しにして恥じない、そして国民の多数がそれを許容し、あるいは無関心である国に私たちは住んでいます。

私たちにとって必要な情報源はどこにあるのか ? どのようにそれを育て、守っていくのか ? 私たちに問われている問題であると思いますし、それを考えるうえで絶好の一冊であると思います。






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Last updated  2016.12.27 23:02:26
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Comments

まろ0301@ Re[1]:ファクトチェックはやめます(01/11) maki5417さんへ  ただ、不法移民が居な…
maki5417 @ Re:ファクトチェックはやめます(01/11) 米国は、古い移民が新しい移民を搾取して…
まろ0301@ Re[1]:ハンナ・アーレント(01/08) maki5417さんへ  「倫理」は、本来は、…
maki5417 @ Re:ハンナ・アーレント(01/08) 「受験の倫理」とはおさらばだ。 今は倫…
まろ0301@ Re[1]:1月20日(01/06) maki5417さんへ  上下両院で、トランプ…

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