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書評から、

知的で軽みのある筆致が印象的な今作でも、人の死を悼む「喪」の問題が変奏されている。タイトルが示すのは、量子力学での矛盾を説明する思考実験(*)。
(*)量子力学の確率論的なパラドックスを説明する“シュレーディンガーの猫”という思考実験がある。蓋(ふた)のある箱に、猫、ラジウム、ガイガーカウンター、青酸ガスの発生装置を入れる。

ラジウムが崩壊するとガイガーカンターが感知し、それがスイッチとなり青酸ガスが発生して猫は即死する、という仕組み。一時間以内にラジウムが崩壊する確率が50%だとすると、一時間後に箱を開けたときに猫が生きている確率も死んでいる確率も半々となり、箱の中の猫は、生きている状態と死んでいる状態が重なり合っている、という解釈となる。
この実験では理論上、 蓋を開けて観察されるまでは、箱の中の猫は生きている状態と死んでいる状態が「重なり合う」と解釈できる 。
ここから、「わたし」はパラレル・ワールド(並行世界)へと思考をのばす。娘が死ななかった現実もあるのではないか、との切実な思いをにじませながら。
「この小説で書いたのは、 世界は複数あり矛盾にも満ちている 、という見方です。例えば19世紀フランスの詩人、ネルヴァルは『夢は第二の人生』と書いた。想像力を働かせることで、人はいくつもの世界を生きることができるのだと」(以下略)
シュレーディンガーの猫(の実験)は実は脇役で、
キーは、重なり合いの存在、著者は、シュレーディンガーの猫を、
娘の死とラップさせ、 量子論の本質に迫る、
いや、正確には、癒し、慰めの世界に入っていく、死んだと自分が考えるこの世界、
実は生きているというあの世界、
死と生が同時に存在する、パラレルワールドは、ザックリ言えば、
この世以外にも別世界がありますよと言うこと、この世って、
あなたが(私が)見ているだけの世界でしょ、って、
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