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2008.07.04
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“Blackbird”by the Beatles (1968)

 ウィンブルドンが佳境に入ってきましたねえ。シャラポワさんもイバノビッチさんも早々負けてしまって、バイディソバさんもベスト4に残れなかった。残念。

 ウィンブルドンと言えば、ロンドン・・・。21年前、ちょうどウィンブルドンの少しあとにロンドンに行った。当時は当たり前の南回り。香港乗り換えのドバイ給油で、22時間かかった。
 一泊付きの航空チケットだったので、初日はノッティングヒル・ゲイトの安宿に泊まり、翌日からは日本で知り合ったイギリス人に紹介してもらったビッグマン君(仮名)のところに世話になった。

 イギリスにおける生活体験の第一歩ということもあって、テムズ河畔のパットニーにあったビッグマン君のフラットでの思い出のひとつひとつが、今でも心に残る。

 赤煉瓦造りの建物は、日本に持ってくれば、そのまま古い洋館として文化財にでもなりそうだが、これがごく一般的なイギリスの家屋だから驚いてしまう。
 明らかに何度もペンキを塗り直した扉を開けると、まず乳製品のにおいがする。これは英国滞在中あちこちでその後何度も体験するのだが、夕食の時その理由が判明した。
 イギリス人はバターを冷蔵庫に入れないのだ。
 後に、誰が教えてくれたか忘れたが、「パンに塗るには冷蔵庫に入れない方が良いだろう」ということだった。最近では真夏には30度を超えるようなことも良くあるようだが、その夏イギリスでは半袖になったことは一度もなかったから、涼しい気候ならではの習慣だと思ったものだった。


 ロンドン2日目。窓を開けて目に入ってくる景色のどれもが新鮮で、遙か異国の地で新たな生活が始まる実感が湧いてくる。その時あの窓辺で吸ったショートピースの香りは、全くたばこを吸わなくなった今も懐かしくよみがえる。

 7月の長い日がようやく暮れた頃、再び喫煙コーナーでたばこを吹かしていると、ふと、鳥の鳴き声がした。 
 夜にこんなに鳴くのは近所で飼われている鳥だろうと思ったが、それにしてもきれいな声でよくさえずる鳥だなあと感心して、声のする階下の方を見下ろすと、地面で何か動いた。目を凝らしてよく見ると、小型のカラスみたいな鳥が・・・。
 "Blackbird.(ブラックバードだよ)"
 ビッグマン君がいつの間にか横に来て、一緒に窓の下を見ながら教えてくれた。
 えっ!ブラックバード。そうか!これがあのホワイトアルバムのブラックバードなんだ!頭の中であの歌詞とメロディーが・・・

 ♪ Blackbird singing in the dead of night...

 「♪ 真夜中に鳴くブラックバード...」って、これのことだったんだ。
  "Blackbird(ブラックバード)=クロウタドリ" の実物を知らなかった僕は、この時すべての謎が解けたようなすっきりした気分を味わいながら床についた。


 その後、日本にも来て、何年か英語教師をしたりしていた時には、一緒に遊んだりしたが、僕らと同じように渡英してあのパットニーのフラットで世話になった美人女性(K子さん)と結婚し、息子が二人できたのを期に、ビッグマン・ペアレンツの住むグロスターシャーの田舎に家を買い、移り住んだ。
 息子と3人で2度目の英国行きを敢行した時も、その家に厄介になりずいぶん世話になった。いつか日本にまた来るようなことがあったら、恩返しをしなくてはと思っていた。

 最初 K子さんから久しぶりに手紙を貰った時、ひょっとしたら訃報かなと、悪い予感がした。ビッグマン・ペアレンツもそろそろそのような年齢になりつつあるので、覚悟しながら封を開けて、思わず凍り付いた。
 訃報という悪い予感が当たってしまった。しかし、まさかあのビッグマン君の訃報だなんて、誰が想像できたでしょう。
 正義感が強く、サイクリストで、教養もあり、何よりも家族を愛し、英国の美しい田舎町で幸せな家庭を築いていた彼が、突然いなくなった。

 神様は本当に残酷だ。僕は一生、ビッグマン君に何もお礼ができなかったという悔恨の念を携えて生きて行かなくてはならないのです。

 いくら気丈でしっかり者の K子さんでも、さすがに辛い思いをしているだろう。子供達は元気にしているだろうか。
 やっぱりさんざん世話になった、ビッグマン・ペアレンツもどうなさっているか、心配だ。
 子供達と海岸に行って化石を取ろうとしたのか、崖から転落したということだが、手紙を読み終えた僕の頭には、不謹慎にも "Blackbird" のフレーズが、あのとき一緒に聴いたクロウタドリのホントに歌うような鳴き声と共に、鳴り続けた。

 ♪ You were only waiting this moment to be free... 

 ビッグマン君、君は十分自由だったではないか。次に会うのがあの世だなんて、ひどい話だなあ。
 地下鉄の駅を降りてパットニー・ブリッジを渡り、あのフラットまで連れて行ってくれたロンドン2日目が、つい昨日のことのようです。とても21年たったとは思えませんね。
 どうぞ安らかに!





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Last updated  2008.07.04 17:40:56
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