★アカネのアノネα

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August 19, 2005
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カテゴリ: 愛、不確かなもの


「違う人生をやり直してみたい」と、突然の引退声明を出した。

今からちょうど26年前、1979年8月21日のことである。
歌姫は、その年の12月26日の引退コンサートを終えると、
そのまま、1人でNY(ニューヨーク)へ飛んだ。

NYに知り合いはいない。
歌姫は、街のカフェで知り合った女性と一緒に、アパート探しを始める。
アパートが決まるまでという約束で、2人はNY在住の女性カメラマンの
世話になることにした。

女性カメラマンのアパートに1人訪ねて来た歌姫は、
小柄で、小リスのような少女のあどけなさを持っていた。

初対面の女性カメラマンに、芸名ではなく本名を名乗って
「早く英語がしゃべれるようになりたい」とバッグから、
ウォークマンを取り出して耳に当てた。

そして、日本の著名な作家の書いたノンフィクションの本を開いた。

「この作家のことは知らなかったけれど、
 本人に会ったらとてもステキな人で、
 たちまち好きになってしまった。
 もうすぐニューヨークで会うことになっている。
 そういって、その本をぎゅっと抱きしめ、
 作家の名前を小さく叫んだ」


 手を洗わせて下さいと言って、歌姫はキッチンに立つと
 彼女は手を洗いながら、ヒット曲を口ずさんでいた。
 少女のような人なのに、その口からはあの暗い歌声が
 こぼれ出ていることに女性カメラマンは、はっとして息を飲んだ。

しかし、
歌姫の待つNYに、妻のいるその作家は、
結局、表れなかったのである・・・。

歌姫は日本には帰らず、そのままNYに残って、
2年後、彼女は日本企業に勤めている日本人と結婚し、
翌年、女の子を出産する。

一方、NYに来なかった作家も、
同じ頃、第1回新田次郎文学賞を受賞し、その後も数々の賞を受けて、
ノンフィクション作家の第一人者としての活躍を続ける。

NY在住の女性カメラマンは大竹昭子さん。
大竹さんのエッセイ集『旅ではなぜかよく眠り』に収められている
小エッセイ「歌姫」に登場する歌姫の待ち人が自分であることを
ノンフィクション作家は認めている。

しかし、彼が1年間に亘って取材したという、
歌姫に関する数百枚の原稿は、発表されずに、
反故にされたままなのである。

好きなCDを聴きながら、
夏になると私は時々、このエッセイを思い出す。










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Last updated  August 19, 2005 12:46:55 AM
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り_ょ_う @ Re:★『生存者ゼロ』安生 正/著(07/18) こんにちは 昔、ブログでお世話になった …
り_ょ_う @ Re:★『生存者ゼロ』安生 正/著(07/18) こんにちは 昔、ブログでお世話になった …
キラキラ星@ Re:★『微笑む人』貫井徳郎/著(03/14) ノンフィクション専門で読んでます。が、この中途…
カツラ―@ Re[1]:★「恋するカツラ」小林信也/著(02/28) 追記 S社に20年以上世話になり大変良…
カツラ―@ Re:★「恋するカツラ」小林信也/著(02/28) 小林氏賞賛の声に不快感を覚えます。 数…

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