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先般、知人の三十代のご子息と定額給付金について議論し、考えさせられてしまいました。
彼は、政府与党が実施しようとしている定額給付金のような愚策には絶対に反対で、そのことへの抗議の気持ちも込めて、受け取りを辞退するというよりも、寧ろ拒否したいと言います。愚生などは、この点かなりいい加減ですから、くれるものは貰っておいて、その有効な使い途( みち )は後から考えようなどと思っていましたので、この発言には考えさせられてしまいました。
自分のいい加減さへの自己弁護の気持ちから、彼には、「君が辞退したって、政府与党は屁とも思わないよ。それよりも、貰うものは貰っておいて、ユニセフとか社会事業に寄付するなり、神様のために教会に献金すればいいじゃないの」と言いましたが、こちらの気持ちを見透かしたのか、彼は、必ずしも納得せず、「まあ、考えてみますけど・・・」と言い置いて、話は終わりました。
この話の何日か後、全く同じ問題を取り上げて、日経夕刊の「あすへの話題」というコラムに作家の長部日出雄氏が「『定額給付金』辞退の弁」というエッセイを書いておられました( 11月12日 )。
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ところで政府与党の「定額給付金」について「バラマキだ」「所得制限を設けるべきだ」「高額所得者は辞退すべきだ」「所得の査定に税務情報を利用せよ」「いや、それは個人情報保護法に触れる」・・・などと議論が百出しているが、ぼく個人についていえば、昨年度の総所得が九百十八万円で、貯蓄額は日本人の一所帯平均に遥( はる )かに遠く及ばない人間であるけれど、「定額給付金」は固くご辞退申し上げたい。自分の価値観を大切にしたいからで、「精神のない専門人、心情のない享楽人」の仲間入りはしたくない。
原題では『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の《精神》』と「精神」が二重のカギ括弧( かっこ )で括られている書に籠( こ )められた真の主題は、実は唯物史観にたいする根本的な批判で、経済の核心には「エートス」( 倫理的気風 )がなければならないのだ・・・というのが、生涯を通じて変わることのないヴェーバーの信念であった。「定額給付金」が実施されたとき、収入の額に関係なく辞退する人の数がどの程度になるかは、わが国の「エートス」の実質を自ずから明らかにするであろう。
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知人のご子息の一本気な気持ち、そして、この長部氏の所論に、「エートス」に欠ける愚生は、ぐらついています。読者諸賢ならどうなさいますか?