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日経夕刊のコラム「プロムナード」に作家の伊東 潤氏が書いておられた「不思議な話」と題するエッセイです( 8月14日 )。
私は、心霊現象というものを全く信じていない。ただし世の中には、不思議な話というものはある。
今から書く話は、私が聞いたままの話である。私にこの話をしてくれたA氏は、かつてのビジネス関係の知人で、冗談を飛ばすような間柄ではないので、私は、この話をどう扱ってよいのか分からない。
私は、ファミレスで仕事をすることが多い。ある時、そんな話を何人かの知人にしていると、その中の一人のA氏が、「私もファミレスで仕事をすることがあるけれど、深夜のファミレスには、あまり行かない方がいいですよ」と言うのだ。
その理由を問うと、「変なことがあったのですよ」と言い、その話をしてくれた。
ある夏、彼は一人で深夜のファミレスに行った。むろん深夜なので、客はほとんどいないのだが、家族連れが一組おり、昼と見まがうばかりに、楽しげに会話していたという。
こちら側に背を向けて父親、息子、娘の三人。対面に母親と娘という座り方で、子供は、三人とも中学生から小学生くらいである。
夏休みの家族旅行の帰りなのか、いかにもにぎやかである。
すでに食事は終わったらしく、テーブルの上には、食べ終わった多くの食器が置かれていたという。
子供がいるのに、なぜ帰らないのか一瞬、不思議に思ったが、すぐにA氏は自分の仕事に没頭した。
ところが数十分経ち、ふとした拍子にPCから顔を上げると、三人席の真ん中に座っている少女が、うつむいたまま動かないことに気づいた。彼女はA氏に背を向けているので、顔までは分からないが、家族の会話にも加わっている様子はなく、その頭も微動だにしない。
霊感が強いというA氏は、すぐにピンと来たのだが、家族連れが、どこかから連れてきた霊らしいので、無視していたという。
そのうち尿意を催したA氏は、家族連れの横をすり抜けてトイレに行った。その時、少女の顔を見ないようにしたという。
家族連れがいるので、あまり怖さを感じずに用を済ませたA氏は、トイレのドアを開けて、自分の席に戻ろうとした。ところが不思議なことに、その少女を除き、家族連れは忽然と消えていた。もちろんテーブル上にあった食器類もなくなり、コーヒーカップが一つ、置かれている。
この時、A氏は背筋に悪寒が走ったという。しかしよく見ると、少女は、うつむいて携帯端末を見ているだけではないか。
ということはーーー。
ここから先は、説明の必要もないだろうが、実は私も、ファミレスで奇妙な体験をしている。
昼間のファミレスで、十代後半とおぼしきカップルが、同じ側の席に座った。ところが数十分経って顔を上げると、その対面で、何やら書類を見ている中年の男がいる。ファミレスで相席はあり得ないし、双方の年格好に違和感があったので、「どんな関係だろう」と一瞬、思った。
しかし私は、すぐにそのことを忘れて仕事に没頭した。それから、また数十分が過ぎて再び顔を上げると、男は消えており、カップルが楽しげに会話していた。
それだけの話で、実は、男は実在の人物だったのかもしれない。しかしその時、私の背筋にも悪寒が走ったのは事実である。
この程度の不思議な話は、我が家にも何例もありますが、その一つ一つをどのように考えたらよいのかははっきり言ってよく分かりません。
本編へのコメントです。
(Edelstoffさん)
私は元来すごく臆病なので、このような体験がないことがありがたいです。それでも最近「あなたのうちで人の気配がしたけど心当たりある?」と友人に言われ、さすがにぞ~っとしました。鈍感でよかった・・。
(偏屈老人)
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