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2026.03.13
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カテゴリ: 読書感想
 高峰秀子女史の対談集「いっぴきの虫」から、藤山寛美さんとの対談の前書き部分です。
 脳のできがよくない人間を、関東では「馬鹿」といい、関西では「阿呆( アホ )」という。関東では「バカ」といわれると、カッときても「アホ」ということばには、なんとなく迫力に欠けて間のびのしたような愛嬌さえ感じられる。ことばのニュアンスとは不思議なものである。
 現代アホウ役者ナンバーワンといわれる「アホの寛ちゃん」こと藤山寛美さんは”アホウ”で売った人気男である。森の石松ではないけれど「バカは死ななきゃなおらない」のだそうで、アホウは間違っても利口にはなれないが、利口はアホウになれるというサンプルがここにいる。これは「藤山寛美」という人間がいかにすぐれた頭脳の持ち主であるか、という証拠でもあり、生まれつきのバカである私には、こういうこみ入った人間は苦手だ。
 大阪は道頓堀の「中座」の楽屋口に下がった水色ののれんをくぐったとたんに、藤山さんは鏡台の前の座ぶとんからバネ仕掛けの人形のように飛び上がった。四畳半ほどの部屋の中を、大きなネズミのごとくツツツと下座へ走り、四角にすわると、私の前にピタリと手をついた。「こんなところまで、わざわざ恐れ入ります。藤山寛美でございます」白ぬりに青いメバリを入れたメーキャップの下から、素顔の稲垣完治がせりあがってきた。
 藤山 ・・・
 あれだけ頭のよい高峰女史に「生まれつきバカである私」などと言われては、正真正銘生まれつきのバカである愚生には、発すべき言葉がなくなってしまいます。日々アホウを目指せども、それだけの利口さを持ち合わせない悲しさ。

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Last updated  2026.03.13 01:32:34
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