Supica's room

Supica's room

2006.03.22
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僕は寝巻きからスーツに着替えながら、窓の外を見てそう思った。

地平線が終るところにまでびっしりと雲は敷き詰められている。

しかし雨は落ちてきそうに無い。

時折ものすごい音を轟かせて雲の中を飛行機が飛んでいく。

振動する物質が多いと、やはり音も大きくなるのだろうか。

僕はテレビを点けた。

天気予報ではこのまま曇りが続き、雨は明日の昼くらいにならないと降らない、と言っていた。

雨といえば、世界のどこかで赤い雨が降っていた。

日本の原爆のあとも黒い雨が降った。

羅生門の映画を撮る時、クロサワは黒い雨を降らせた。

どうでもいい。

僕はテレビに観点を戻すと、一人の男と目が合った。

天気予報は、ビルの中庭のようなところで行なわれ、キャスターの後ろには一般人が群がっていた。

その中にその男は立っていた。

そして、その視線は、僕を完璧に見据えていた。

もちろん、彼のいる場所と僕のいる場所には何十キロと言う隔たりがある。

しかし、彼は僕を見ていたのだ。

体から滲み出てくるような深い憎しみを込めて僕を見ていたのだ。

僕はその男を見返した。

知っている顔でもない。

記憶にさえ存在しない顔だ。

おそらく彼は「憎しみの象徴」なのだろう。

しばしば僕は彼のような人物を見てきた。

彼らは全国各地に点在し、人々を悩ませるのだ。

彼ら自身も彼ら自身によって悩んでいる。

どうしようもない。


僕はネクタイをきつく締めて、玄関の扉を開けた。

僕はテレビを消さなかった。





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Last updated  2006.03.22 15:38:32


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