セミリアイア「晩年」日記

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2020.01.23
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カテゴリ: 倫理学講義
(9)家族「的」人間関係の構築

 我々は現代の社会において「家族的」人間関係を構築していかなければ、共同性を失ってしまう。

 「家族」自体は、核家族であり、一つの家族は子育てが一段落し、子どもたちが社会に出て新たな核家族を形成したところでその役割を終え、後は夫婦二人のどちらもが健康であれば、その終焉まで穏やかに続いていくだろう。幸い、私は今、その段階にあるのだが、いずれどちらかが介護を必要とする時が来るだろう。その時は、施設に入るというのが、夫婦の約束事である。
 そして、その施設を選ぶ際に、介護の程度にもよるだろうが、他の入居者と擬制的家族関係が取り結べるような状況があるかどうかは大きなポイントである。
 若い独身者なら、先述のように、気の合う友人たちと先述のようなシェアハウスという住居形態の中に入ってみるというのも、擬制的家族関係を取り結ぶ上で効果のあるやり方だ。個の空間と時間がしっかり確保できた上での共同性の確保、というのがこれからの社会の住居のテーマになるだろう。幸い、人口減少社会においては、空き家が続出するから、基本的に地価も下がり、家賃も下がる。少し経済的に余裕のある子どものいない中年層の夫婦、あるいは独身者が、シェアハウス向きに改装して、副業としてのシェアハウス事業を行う、といったビジネスモデルは地方中核都市でも十分成立するのではないか。

(10)共同体に属さない個人

 個人は共同体の中で生きなければ、生の実感を得ることは難しい。たとえ、その中でマージナルマン、いわば「外れ者」として生きていたとしても、どの共同体にも属さず、テレビとSNSだけで社会とつながっているように思うことが錯覚であるのは、当の本人が一番よく知っている。そういう生には「虚しさ」という感情がつきまとうからだ。
 「引きこもり」、「閉じこもり」の最大の問題はそこにあるだろう。世の中には奇特な人がいて、そういう分断された個人を集めて新たな「共同体」を作ってくれる場合もある。もし、そういう場があるのなら思い切って出かけるべきだ。
 家族の中で引きこもっている場合なら、共同体としての家族の再構築が課題になる。しかし、これはなかなか難しい。親に依存しながら、親を虐待しているような生き方の出口は見えないのだ。親も歳を取れば、家族を再構築する力はもう残っていないし、依存し虐待する子どもには、その在り方でしか家族という共同体を保持できなくなっているからだ。虐待は犯罪なのだから、子どもを犯罪者として社会的に隔離するほか方法はないだろう。しかし、親の方も依存され、虐待されてもなお、家族共同体を維持していこうとする場合も多い。


(11)個人にとっての新しい共同体の形

 個人にとっての共同体とは、「そこで個人が個人として生きられる場」と端的に定義できる。
 個人は一人だが、その場には複数の個人がいる。しかも、その集まりは多分に偶然性によっており、何らかの目的のために必然的にそこに集まったというわけではない。
 そこで、お互いの顔と名前、職業、年齢など一通りのことは分かっているが、プライバシーは尊重される。共同体の共同性を維持するための、最低限の仕事はある。シェアハウスの例でいえば、ゴミだしや居間の掃除の当番、年に一度の全員での大掃除、そこで新年を迎える場合の雑煮つくりなどが考えられる。
 こういう擬制的家族は、子育てを除いた家族の機能の多くを果たし、適度な年齢差があれば、一人前になった子どもたちとその親世代に似た擬制的家族構成も可能である。
 もちろん、そこでは家族に特有のしがらみ、軋轢も年を経れば生じる。メンバーの入れ替わりもでてくるだろうが、中心的メンバー(シェハウスのオーナー)が変わらなければ、ある種の「家風」のようなものまで醸成されてくるかもしれない。

(12)個人の選択

 個人主義は、個人が生き方を主体的に選択することを、至上の価値とする。上に述べたような擬制的家族の形態の中に入り、疑似共同体の中で生きるか(もちろん、そこには一定のリスクと不自由がある)、あくまでも一人の個人として、社会に対峙して生きるか(そこには共同体に属さないことからくる不安や落ち着きのなさがある)。そのどちらを選ぶかは、個人の自由であり、その選択肢以外の解を見つける自由ももちろんある。
 私個人について言えば、今のところその選択をする必要がない。仮に妻に先立たれたとしても、そういう選択をするかどうか分からない。おそらく適当な施設を見つけて入居するだろうが、その時に擬制家族的な雰囲気は選択条件の一つとはなるだろう。しかし、できることなら、そういう選択をすることなく、人生を終えたいとは思っている。





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最終更新日  2020.01.23 07:09:53
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