セミリアイア「晩年」日記

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2024.12.25
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カテゴリ: 仕事


「私が貴学を志望したのは、私の父が小学生の時に、大病を患って入院したのですが、その時に、看護師さんたちの笑顔に救われた思いがして、それ以来看護師になりたいと考えていたからです」

面接練習の一コマ。上の生徒の答えを読んで、即座にそのおかしい所を三点くらい指摘できない教師は、面接練習などしないでもらいたい。

「オマエね。普通、『キガク』なんて言う?日常会話で。言わないでしょ?『貴学』なんて、例えばそこに文科省から通達がいくとして、その時に『貴学においては』とかは使うよ。だから、例えば、志望理由書なんかでは使っていいけど、面接はダメ。まあ、『こちらの大学』とか『○○大学を』とかかな。会話ならね」

「それからさ、『どうして本学を志望したのですか?』って聞かれてるんだから、『私がこちらの大学を志望したのは』って言う必要ある?例えば、『オープンキャンパスの印象はどうでしたか?』ってさっき聞いた時も、『オープンキャンパスの印象は・・・』ってやったでしょ?普通、『今日のお昼、どこで食べる?』って聞かれたら、『今日のお昼を食べるのは・・・』なんてやらないよね。だから、相手の問いをオウム返しに繰り返すのは、まあ、ちょっとはやってもいいけど、全部やったら完全にオカシイ」

「後は、中身だよね。『
私の父が小学生の時に、大病を患って入院したのですが、その時に、看護師さんたちの笑顔に救われた思いがして、それ以来看護師になりたいと考えていたからです』っていうのは、志望理由書の冒頭のところ使ったんだよね。だけど、それ、『こちらの大学』を志望した理由なの?おかしくない?看護師になりたいと思った『きっかけ』だよね、それは。その後、志望理由書では『高校の職場体験で看護師の方の話を聞き、看護師が患者に一番近い医療従事者であり、時にはその生活習慣、環境などを患者から聞いたことが、治療に役立つこともあり、今、目の前にいる人のために役立つ仕事だと思いました』ってあるよね。まあ、最低、そこから始めないと」

「それにしてもさ、それは『どうして看護師を志望したのか』ってことでしょ?看護師を養成する学校はたくさんあるんだから、その中でこの大学を選んだのはなぜなのかに答えてないでしょ?まず、それ答えないと」

まあ、長々と書いて、もうイヤになったのでやめるが、上で指摘した3点はすべて、別の教師がそう言え、と指導していたのだ。

まず「『○○大学』じゃなく、面接の時は『貴学』と言った方がいいよ」などと平気で言う。「御社」なら、大学生の就職試験面接ではよく使うが、「貴学」は日本語としてあまり使わないだろう。

それから「相手の質問をまず復唱してから、答えるのがいいよ」とやる。その方が落ち着いて答えられるから、とも。面接試験をあらかじめ用意した解答を正確に暗唱する場だと思っている。まったく・・・

最後の志望の理由については、「うーん。ちょっと具体的でないかな?」などといい加減なことを言う。「小学生の時、父が大病で入院した」という話は「具体的」この上ないではないか。ただ、「どうして本学を志望したのか」という問いの答えになっていないだけだ。

講習が終わった後、駆け込み寺のように生徒が来るから、つきあってはいるのだが、生徒は、いろいろな先生の「ご指導」を受け、何が何だか分からなくなってしまい、結局自分のところに来るのだ。大体、担任が「先生、お願いします」と言う場合には引き受ける。

確かに面接官はいろいろな人がいるから、いろいろな教師を相手に面接練習をしてもらうのは悪いことではない。悪いのは、「面接」の本質を知らずに、「貴学」と言うのだ、とか、「相手の質問をまず復唱して」とかいうウソを指導し、しかも肝心の中身については何も指導できない教師がゴロゴロいることだ。何の勉強もせずに、面接の試験官ができると思っているところからして、不遜だし、怠け者である。

面接の本質とは何か。それは「会話」だ。面接官は、志望者について知りたいから、面接をする。まあ、「貴学」とか「復唱」なら、そういう生徒ばかりだから、「ああ、高校でそんなバカな指導を受けたんだね」と察して、許容してくれるかもしれない。しかし、質問の答えになっていないとなると、もうアウトだろう。それを「う~ん、ちょっと具体的でないなぁ」などと訳知り顔に「指導」するのだ。

自分が担任を持っていたころは、面接を受ける生徒には、まず50問くらいの問いを考えさせて、答えを書かせる。その過程で、面接は会話なのだから、質問されたことにまず端的に答え、それから補足する、ということを教える。書き直しをかなりさせ、さらに、先の例で言えば「お父さんが入院していた時と、今のあなたでは、看護師という仕事についてのイメージは変わりましたか?」という追加の質問を書いてやる。職業に直結する学校なのだから、受験生なりのしっかりした「職業理解」があるかどうかは、自分ならぜひ確かめたい。そういうふうに、1つの問いに対して2つか3つ追加質問を書き、答えを書かせ、直す。つまり、この時点で生徒は最低、100の質問に対する対応はできるようになっている。相当に忍耐が必要な仕事だ。そういうことも知らないで、「面接練習」に気軽に応じるバカな教師が多すぎるのだ。

「オレの仕事は『授業』だからね。まあ、志望理由書とか小論文があれば、見てあげるけどさ。面接の練習まではしないからね。業務外だから」と4月早々に宣言するのは、それが途方もなく時間がかかることを知っているからだ。それでも、今年も4,5人の生徒にどうしてもと頼まれたので、指導はした。来年こそ、面接の指導はもうしないぞ、と思っているのだが。







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最終更新日  2024.12.25 08:04:42
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