小村和也の建築家日記

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カテゴリ: カテゴリ未分類
安藤事務所をやっとの思いで探し当てたとき、驚いた。

安藤の初期の作品「富島邸」だった。それを買い取り、その右隣り
にも増築し、全体が安藤忠雄建築研究所になっていた。

事務所の中はまるで迷路のようだった。
窓が少なく、日中でも電気が必要な内部は、幻想的な雰囲気に包ま
れていた。

まず驚いたのは所員の謙虚な姿勢だった。
いわゆる威張っていなかった。

皆真剣だった。張り詰めた空気が流れていた。


(昨年、20年ぶりの再会を果たすため訪問したときも事務所の張
り詰めた雰囲気と所員の謙虚な姿勢は変わっていなかった。)


安藤はいつも怒っていた。いつも真剣だった。

訪問2日目の朝、所員の家族から、熱が出たため本日は出所できな
いとの連絡が入った。
「自分で電話かけれへんくらい重病なんか?夕べぴんぴんしとった
がな!」
電話口に慌てて本人が出たらしい。
安藤は言った。「お前にとってはちっぽけな家の設計かも知れへん。
でもな施主にとっては一世一代のことなんや!その家は子孫にも影
響を及ぼすんや!少々熱出たくらいでそれがどないしたんや!家族


1時間後、真っ赤な顔した所員が出所してきた。

安藤は私に、「我々設計者は絶対に施主には勝てへん。施主の思い
にどれだけ近づけるかや。それが勝負や。」

設計という行為の持つ厳しさを教えられたような気がした。

「今までどんな気持ちで設計してきたのかな?」・・反省した。


が分からへんかったら仕事する資格ない!」
安藤事務所は京大出身者が多かった。いわゆるエリートだが、その
片鱗はいい意味で微塵もない。

もう一つあった。

神戸の現場から工務店の現場担当者が来た。
安藤はその担当者を見つけ、「お前こんなところで何しとんのや?」
安藤事務所の所員が打合せのため呼んだことを知ると、「何で呼ぶ
んや!こいつを現場から離したらあかんがな!忙しい身やろうが!
なんでお前が行かんのや!」

すごい剣幕だった。所員は頭をしこたまたたかれた。

「設計者は思い上がったらあかん!その瞬間にしまいや!」

強烈だった。やさしさと思いやりが鬼の面をかぶって突き進んでいた。


20余年前の出来事だが、これらの瞬間が私にとりあまりにも衝撃
的だったためか、まるでさっきの出来事のように思い出される。


はじめての訪問。

私は抱えきれないほどの思いを手に、安藤事務所を後にした。

                            続く





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Last updated  2004/01/05 12:27:08 PM
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