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昔、土浦市の近くに4年を暮らし、水戸の試験場で免許を取った。
茨城県の住宅地とか、農地、山林、郊外の星空、については、ストックされた背景の記憶は少なくない。
海辺はちょっと手薄だったが、銚子には一度行っている。
この本のモデルは、水戸にある高校の戦前からの伝統行事だと、いわれている。そんなわけで、読み進めていくにあたって、背景に不安はない。もともと、栃木県生まれの自分だけから、北関東の風景は得意だ。
本年の9月から10月にかけて、 1か月ほどかかって、読み終えた。主に、病院の待合と、その行き来のすいている電車の中で。
自分自身の遠足の記憶に、テレビでみる学園ドラマの記憶をあわせて、服装や小道具もほぼ完ぺき。 実写風にそれぞれの場面が思い浮かぶ。白いジャージは、化繊ではあるがちょっと網目が大き目のあの素材。水筒はステンレスのあのタイプ。
夜になると妙に元気になる彼や、人の良い水泳部の彼には、高校時代の友人知人のイメージが重なる。主要な女子数名の心象が定まらないのは、自分が男子校へ通っていたためのデータ不足、だけどテレビドラマなどの疑似記憶で補えるので、あまり問題はない。
わざわざ、アメリカくんだりからやってきた彼だって、何人かの帰国子女の知人の印象を援用できる。
さて、それほど読みやすい本なのだけど、感想はまとまらない。
主人公である二人が、意思疎通を獲得するクライマックスや、ありったけの気遣いで二人を見守る友人たちには、温かいものを感じる。また、いびつな二人の関係を作り出してきた大人の意地の張り合いには、げんなりもする。
登場人物の行動にともなって、感情は動くのだけれど、大きな解放にはつながらない。 彼らが、現実に則した社会のなかで、リアルな行動をしているのだから。 (つづく)
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