兄やんの日記。

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2012年01月09日
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お通夜の前日、おばあちゃんは久しぶりに台所に立った。
足を悪くしてから、もう何年も自分で何かを作ることはなかった。
でも、死んだおじいちゃんが好きだった味噌汁を、最後に作ってあげたいと言うのだ。

冷え切った台所。仙台の3月は、春先とは言えまだ寒い。
心配する周りをよそに、気丈に振舞うおばあちゃん。

野菜を切る手元は、覚束ない。
でも、おじいちゃんとの日々を思い出すように、ゆっくりと、しっかりと…。
そして、静かに凍える部屋に、温かな湯気が立ち上った。

おじいちゃんの枕元、ご飯と共に、おばあちゃんの味噌汁が供えられた。


コートは着たまま、お椀を持つ手はかじかんでいる。
温もりを感じながら、そっと口元にお椀をあて、一口啜る。

それは…もう言葉にならなかった。
近くにいた弟と目が合ったが、同じ気持ちだった。
私と弟は就職し既に家を出ていたが、その味噌汁は紛れもなく、母が作る味噌汁の味だった。

おじいちゃんが好きだった味噌汁。
それは、おばあちゃんから母へ引き継がれ、私たちを育ててくれた。


芯から冷え切った身体を、温かな味噌汁が通って行く。
なんだか、その温かさが、まるでおじいちゃんのようで、おじいちゃんがそこにいるようで。

それまで我慢していた涙が一気に溢れ出て、もう止まらなかった。



あれから2年が経とうとしている。


もうすぐ4カ月になるが、生まれた頃と比べると、もうかなり大きくなった。
母乳だけなのに、ここまで大きくなるんだと驚いている。

おじいちゃんにも、またその後を追うように死んでしまったおばあちゃんにも、
ひ孫を抱かせてあげることはできなかった。

でもいつか、娘がもう少し成長した時に、2人の話をしようと思う。





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最終更新日  2012年01月09日 10時23分56秒
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