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2005年10月29日
テロ後のバリ島に思う
(5)
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アジアの風に吹かれて・・(11598)
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カテゴリ未分類
*バリ島のはなし*
テロ後のバリ島に思う
成田空港出発ゲートにて
10月1日、テロが起こって
2005年10月1日、バリ島で2度目のテロが起こってから早1ヶ月が経とうとしています。テロの犠牲になられた方々のご冥福お祈りすると共に、最愛の家族、ご友人を亡くされた方々の心を思うと、テロという無差別で、多くの人の心に影を落とす犯罪行為に憎しみを覚えます。
私がテロのニュースを知ったのは、もうすぐ日付が変わろうという時間でした。眠くて閉じかけていた目が、一瞬にして開きました。
とても他人事とは思えませんでした。4日後に出発を控え、宿はクタのポピーズ、着替えを持って行かずに到着した夜からクタスクエアでショッピングの計画。私と同じようにワクワクしながらシャッピングやお食事を楽しまれていた観光客が狙われたテロに、背筋が凍りました。
なのに、なぜバリ行きを決めたの??って聞かれると思います。やっぱりいろいろな考えが頭の中を駆け巡りましたが、結局下記のように考えました。あさはかと思える考えも正直に書いてみます(これは、決して他の人に同じ考えを持つように促すものではなく、私がバリへ行こうと決めた時の思考の流れを記したものです。実際にバリへ行って、最終的に感じたことは文末にあります)
クタに2泊する以外は、アメッド、シデメン、タバナンなど田舎滞在がメイン。クタをキャンセルして田舎へ滞在しよう。田舎で無駄死にするテロリストはいないだろう。
滞在場所は田舎にすればいいが、必ず通らなければならない空港が少し心配。しかし2度もテロに見舞われて、のほほ~んとした空港があるだろうか?いくらインドネシアとはいえ・・・。
過去のインドネシアでのテロ事件を振り返って見ると、インドネシアのテロリストはラマダン中はおとなしいようだ。
バリ島でテロにあう確率と、東京で事件に巻き込まれる確率はそれほど変わらないのではないか?
旅の後半、ウブドへ行くかどうかは現地の様子を見て判断しよう。
テロリストの思考に立って、狙われそうな場所(娯楽的な商業施設など)は避けよう。
家族の心配を和らげるため、毎日電話もしくはメールでコンタクトをとろう(家族に反対されたら行かなかったと思います)。
上のような考えは「バリ島へ行きたい」と思う自分に対しての気休めかもしれません。しかし、都心の会社に勤める私は、毎日「いつテロが起こってもおかしくない」と思っているし、世界の観光地の中でバリが最も危険という意識はどうしても持てなかったのです。
機内の様子
バリ島へ向かうガルーダ航空881便は3分の2以上埋まっていました。家族連れ、カップル、サーファー、ご老人のグループツアー、顔ぶれはさまざま。すでにキャンセル料が発生する期間に入っていたから、思い切って来た方が多かったのだと思います。来たからには楽しむぞ!という意気込みが感じられます。テロの話をして暗い顔をしている人は見かけず、ガイドブックを読みふけっている人や、相方と観光の計画を立てている人が目立つ。
空港の様子
ングラライ空港は拍子抜けなほどに、何も変わっていない。少なくとも、警備員の人数が増えたとか、入国・出国に関する手続きや検査が増えるといった目に見える変化はない。テロ直後に行われていた「出国時にパスポートのコピーを提出する」というシステムも、私が出国する時にはすでに消滅。
送迎車やタクシーが空港敷地内へ入る際の検査も行われていないもよう。たぶん、顔見知りのガイドか?そうでなければこの人はバリ人か?それ以外か?という程度には、ゲートの係員が判断していると思われます。”それ以外の人”に対して、更なる検査を用意してあるかどうか、私には分かりません。顔見知りのガイドの車の下に爆弾を仕掛けられていたら・・・なんていう発想はないようです。
そういえば、アライバルビザの値段が改定されましたね。7日以内なら10ドル。短期旅行者には嬉しい15ドルもの値下げだけど、高くてもいいから、空港の警備に力を入れて欲しい。
街・人の様子
現地の人と話すと、必ず「テロについてどう思う?」って聞かれます。近いうちに渡バリされる方は、何か言葉を用意しておくといいと思います。
【チャンディダサ】私が宿泊したホテルはダイバーが多いせいかほぼ満室。しかし、街の中心部では観光客をほとんど見かけませんでした。他のホテルも見てきましたが、セキュリティーを強化している様子はなし。あんなに閑散としていたら、その必要もないのか・・・。
【パダンバイ】港町だけあって、チャンディダサよりもずっと賑やか。ダイビングやシュノーケリング目的の観光客も多く見かけました。港はテロリストの玄関口となる可能性もあるので、町の人が独自に警備をしているよう。
【ウブド】どのエリアへ行っても「ウブドは大丈夫!町中みんな顔見知りだからテロリストがいたらすぐ分かる」という妙な励ましを受けました。だからじゃないけど実際にウブドへ行ってみると、日本人とオーストラリア人の姿が確実に減っている。そのかわり、ヨーロピアンとインドネシア人のお金持ち観光客の姿が目立つ感じ。警備の面では、街をあげて強化しているという様子はなし。ホテルの警備はそのホテルによる。夜の芸能公演会場入り口でのセキュリティーチェックはなし。いちおう警備員風の人やガタイのいい人が立っていたりします。まずまず盛況で、昼間はあまり見かけない日本人観光客の姿も目立つ。日中は郊外のリゾートホテルで過ごし、夜になると舞踊を観にやって来るのでしょう。
【観光地】観光地を訪れるお客さん自体少ないようですが、どこへ行っても日本人はほとんど見かけない。会うのは好奇心の強いヨーロピアン、インドネシア人のハネムーナーなど。商売にならないからか、物売りの人も驚くほど少ない(そんな中でも、やっぱりキンタマーニの物売りさんたちはパワフルだった)。
テロ後のバリ島へ行って思ったこと
結論から言うと、私自身はバリ島が好きだしこれからも行くと思います。しかし友達から、バリ島へ行こうか迷っているという相談を受けたとしたら、大丈夫!行っておいで!とはとても言えない。それは「バリ島はやっぱり危険な場所だった」という意味ではなく、2度もテロの標的にされた事実があるかぎり、それを払拭するだけの努力をしてくれなければ、3度目のテロの可能性を絶対に忘れることができないということです。
今のバリ島は、テロのことをすごく悲しんでいますし、テロリストを激しく憎んでいます。バリ島の観光業の未来、自分たちの生活のことを不安に思っています。しかし、自分たちや観光客の身を守るために、テロリストの標的になったという汚名を挽回するために、いま何をすればいいのか?というところへ意識がまわっていない。もしかしたら「時間が解決する」と思っている部分もあるかもしれない。南部リゾートエリアのデパートや免税店、ホテルでは自主的に厳重なセキュリティーがしかれているそうですが、テロの標的となりうる空港や交通渋滞の起こる大きな道路、人が流れてきているウブドは、ほぼいつも通りです。
テロの直後だから、厳重な警備がしかれていると思い込んでいた私。それが観光客として訪れる私たちと、インドネシアという様々な問題を抱え社会の仕組みもまったく異なる国との、安全に対する意識のズレなのでしょう。これを埋めることはとても難しいと思います。
島単位で考えるとバリ島はテロリストの温床ではなくても、国内にバリ島の観光客を疎ましく思うテロリストがいるということは事実。時が経ち、みんなが夜の街へ戻っていったからといって「私も行っちゃえ!」という意識ではなく、他人に流されず、常に自分自身の安全基準で行動しなければならない時代に入ったと実感した今回の旅でした。
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最終更新日 2005年10月29日 14時33分19秒
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