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昨日「生活保護者への後発医薬品の強制」について書きましたが、なぜ「恐怖」を感じたのか?こちら(Yosyan先生の「混合診療のお話」 "新小児科医のつぶやき"より)を読ませて頂いたらなんとなくわかったような気がしました。もちろん難しい分析などはわたしにはできませんが…。生活保護世帯の話だけで終わらないからなのですね。「金のないものはまともな医療は受けられませんよ(もしくは「受けさせませんよ」)」というアナウンスだったからなのだと思います。「混合診療のお話」を読んで思ったことを、同記事を参考にして書きたいと思います。(以下、青字は同記事からの引用・転載です)経済諮問会議に代表される財界は、現在の公費保険制度の枠組みを壊して、国庫負担分、地方負担分、事業主負担分を無くして、民間保険を導入したい考えです。そして、民間保険を100兆円市場になる(する)と考えています。さらに医療提供側にとっては「自由診療になれば競争が起こって価格が低下するというより、採算が取れるように価格の上昇が起こります。そうなれば自由診療部分は鰻上りに増えていきます。」ということですので、病院にとっても歓迎されることでしょう。国、地方、事業主(財界)、病院、全てにとっていいことだらけ。いつこうなってもおかしくないのに、「とりあえずのところ、医師会を始めとして多くの医師は混合診療解禁に反対」してくれているのでまだ「混合診療解禁」とはなっていないのです。なぜ、自分の利益に反してまで医師・医師会は「混合診療」に反対しているのか?詳しくはYosyan先生の記事を読んでいただくとして。混合診療解禁となり、100兆円規模の民間保険で医療が施行されると、国民負担は現在の8倍以上になると考えられるから。そこまで価格が上がると、必要な医療が受けられない人が多数でてくるから。つまり、困るのは利用者・患者だけなのですね。それを阻止しようとしてくれてるわけです。現在の医療費削減政策では、皆保険制度の堅持はもはや困難である。国が医療費を少しでも増大してくれれば…。国が医療費を現在の3割増しにするだけでも、現在の体制維持には有効と考えられるそうです。Yosyan先生の試算によると、医療費3割増しにした場合、患者自己負担率は現在の1.7倍。これを高いと考えるか?受け入れられないと思うか?でも、混合診療解禁、民間保険下での患者負担は現在の8倍以上と想定されるんですよ。今、国はどんどん医療費を削減し続け、医師を「兵糧攻め」にしているのです。医師にとっても「世論としても混合診療阻止なんて声は蚊の鳴くほどで、歓迎派の声ばかりが財界の意向を汲んでマスコミは流し続けていますから、無理に踏ん張って悪役になり続ける必然性は乏しいといえば乏しい」ということです。Yosyan先生の最後のまとめを転載させていただきます。「日医(淡紫注:日本医師会)首脳は既に転んでいます。ある公式の会で県医の副会長の挨拶があり、そこではっきりと、日医は混合診療になるのはやむなしとの判断です こういう趣旨の発言をされてました、これが去年の話です。後は一般会員が医療費削減路線に耐え切れなくなったタイミングを見計らって一挙になだれ込む算段かと思います。本当にそれで良いかを決めるのはもはや医師ではなく、国民の手にあるのですが、後期高齢者医療制度と同様に本当に痛みを感じるまで無関心です。どうなることやら。」決断の責任はわたしたち国民の手の中にあるのです。わたしたちは正しい選択が出来るのか?自分の下した決断に責任を持てるのか?その結果を受け入れられるのか?わたしは「医療費削減政策、NO!!」と言い続けたいと思います。Yosyan先生の「混合診療のお話」 、コメント欄もあわせてお読みになっていただければ、と思います。
2008.04.30
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「医師、社会常識欠落している人が多い」首相が問題発言 (リンク切れの可能性あり)以下、記事引用 (強調は淡紫によります)麻生首相は19日午後、首相官邸で開かれた全国知事会議で、地方の医師確保策に関連し、「自分で病院を経営しているから言うわけではないが、医師の確保は大変だ。もっとも社会的常識が、かなり欠落している人が多い。とにかくものすごく価値観が違う。そういう方をどうするか、という話を真剣にやらないと……」と述べた。 首相がかつて中核企業の社長を務めた「麻生グループ」は、病院を経営している。 首相はこの後、首相官邸で記者団に対し、自身の発言について、「まともなお医者さんが不快な思いをしたというのであれば、申し訳ない」と陳謝した。 ◇ 首相が19日の全国知事会議で行った医師確保に関する発言の要旨は次の通り。 自分で病院を経営しているから言うわけではないが、医師の確保は大変だ。もっとも社会的常識が、かなり欠落している人が多いと思ったほうがいいなあ。うちは何百人と預かってますからよく分かりますよ。とにかく、ものすごく価値観が違う。それはそれで、そういう方をどうするか、という話を真剣にやらないと。 これは本当に大問題なんで、小児科、婦人科というところが猛烈に問題になっている。これは急患が多い。急患が多いところはみな人が引く。だったら、その分だけ点数を上げたらどうですかとかいろいろ言っていると、問題点がいっぱい指摘できた。 医師会もいろいろ、厚生(労働)省も、この指摘は5年前くらい、(自民党)政調会長の時したと思うが、必ずこういうことになりますよ、と申し上げて、そのまま、答えが出てこないままになっている。 医者の数を減らせ、多すぎると言ったのはどなたでした、と申し上げて、党としても結構激しく申し上げた記憶がある。ぜひ、そういった意味では、この問題については、臨床研修医制度の見直しなどについては改めて考え直さないといけないもんだ。 大学の医学部の定員も、過去最大限まで増やすという話もあるが、出てくる医者は今から先のことですから、目先のことをどうするのか、というところで、医師不足の声というのは真摯(しんし)に受け止めないといけない、と思っている。(2008年11月19日21時11分 読売新聞)引用終わり問題発言であることには違いないのですが、いくつかの医療系ブログを読んだ限りでは以下のような認識が示されていると思いました。あくまでわたしが「そう読み取った」ということであり、誤読かもしれないし、真意を読み取れていない可能性も高いですけれど、一応わたしの考えたことを述べさせていただきたいと思います。1. 「社会的常識が、かなり欠落している人が多い」「ものすごく価値観が違う」自虐的、と言ったら失礼ですが、ある種、あきらめの境地で(とわたしには見えた)肯定している医師の方が多かったです。「病気になるほど、あるいは過労死するほど働く自分たちは、確かに常識からは外れているだろう。」「当直明け連続勤務、休みの日や夜間でも呼び出されればいつでも出て行くような『非常識な働き方』をしてきたことを言われているのならばその通りだろう」というような感じです。また、わたしが思うに、医師という職業の特性として技術系の職人であるという一面があり、その能力は患者をたすけるという方向に発揮されるため、コンビニの時給より安い給料でも、労基法違反の過酷な勤務状況でも、自分がやりがいがあると思うところではその低待遇を甘んじて受けてきていた。逆に数千万を積まれても、その価値がないと判断したところには医師は集まらない。こういう状況は「経営者としての麻生氏」の「常識」では理解できないのだろう、という(ある種皮肉を込めた?)論調が見られるように思いました。結果、麻生発言は医師に「それならば世の中の常識にのっとった働き方をしようじゃないか」という方向に向かわせるインセンティブを与えることになってしまったのではないか?2.「急患が多いところはみな人が引く。だったら、その分だけ点数を上げたらどうですか」先般の「医者のモラルの問題」という二階発言に比べれば、よほどまともな捕らえ方ではないか、という意見を見かけました。3.「医者の数を減らせ、多すぎると言ったのはどなたでした」これに関しては、つい先頃までは「医師は不足していない。偏在しているだけだ。」と言い張ってきた厚労省および政府の責任回避で、医療側はずっと不足に対して訴え続けてきたではないか、という、麻生氏(政府)・行政の二枚舌に対する怒りが感じられました。また、この記事には書かれていない3.見出し前段の「(医師不足は)これはちょっと正直、これだけ激しくなってくれば、責任はおたくらの話ではないですか。おたくってお医者さんの。」(47NEWS 首相の医師をめぐる発言要旨 全国知事会議 2008/11/19 21:53 共同通信 (魚拓))この論理展開が理解できないという意見が多かったと思います。「低医療費政策」で医療を締め付け縮小させてきたのはそちらの方でしょう?と。※追記(2008/11/21)Drbamboo先生 より、>「医者の数を減らせ、多すぎると言ったのはどなたでした」>と言うのは、医師会のかつての対応のことだと思います。>パイが小さくなることを恐れた医師会が、以前その様なことを言ったと記憶しています。とのご教示をいただきました。医師会のかつての対応が麻生氏にこの発言をさせたという面があるのかもしれません。しかし1984年に、「将来の医師需給に関する検討委員会」設置されて以降、「医療費亡国論」に基づき2006年に至るまで方針を変えなかったのは、全て医師会の影響とまで言うのはどうなんだろう?そこに便乗しようとした政府の怠慢はなかったのか?という気はします(医師会のあり方の問題点は問題点として)。難しい問題で、わたしの知識や理解力では手に余る部分が多いと感じます。「将来の医師需給に関する検討委員会」最終意見の要約(新小児科医のつぶやき より)を参照していただければと思います。Drbamboo先生、ありがとうございました。追記終わり全体として、山田・二階発言の時に比べて非常に冷めた見方がなされているように感じました。「どうしようもない」という感じでしょうか。いずれにしてもわたしたちが「低コスト」「フリーアクセス」「高クオリティ」の医療を甘受できてきていたのは、医療側の「非常識」と言われるほどの過重労働と「低医療費政策」のおかげなのは確かでしょう。今後現状のままで「常識的」な医師が増え、「診療報酬引き上げ」が行われると、医療は一般人の手には到底届かなくなるものになっていくでしょう。(医師の皆さんに「非常識」な労働を望んでいるわけではありませんし、「診療報酬引き上げ」に反対しているわけではありません。念のため。)ただ、このような浅薄な理解しかしていない人ではなく、以前にも述べましたが、よく勉強していて理解のある政治家を選ぶ努力はしなければ、と思います。それが結局自分のためなのだと思います。最後に、ちょっと唐突ですが、奥田碩氏(トヨタ自動車取締役相談役、日本経団連名誉会長)が座長を務める「厚生労働行政に関する懇談会第4回」で、奥田碩氏が「新聞もそうだけど、特にテレビが朝から晩まで、名前を言うとまずいから言わないけど、2~3人のやつが出てきて、年金の話とか厚労省の話に関する話題について、ワンワンやっている。あれだけ厚労省だけ叩かれるのは、ちょっと異常な話」「なんか報復でもしてやろうかな。それくらいの感じは、個人的に持っている。例えばスポンサーにならないとかね」。(J-CASTニュース 2008/11/13 (魚拓))こういう「恫喝」ともとられかねない発言をしています。しかも、この第4回の懇談会に限り議事録は公表されていないそうです。(九州企業特報 2008年11月17日 15:06 (魚拓))経団連、経済諮問会議なんて、ほんと傲慢で信用ならないし大嫌いです。こういう人たちに国の方向性を決めるような政策の決定を任せているようでは、未来は暗い、と言うほかないでしょう。
2008.11.20
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