2018.04.25
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☆光の帝国・恩田陸
 常野物語(とこのものがたり)
・集英社
・1997年10月30日 第1刷発行
・初出誌「小説すばる」に連載 (1994年4月号〜1997年5月号)

*大きな引き出し
小学4年生の春田光紀は、既に江戸時代までのほとんどの日本の古典を暗記している。春田家ではそれが当たり前で、みんなもそうだと信じていた。春田家では子供が生まれると真っ先に、桜でできた美しい書見台(ヒロシ)をこしらえる。中学1年の姉は、シェイクスピアに凝っている。最初は日本語訳を片っ端から“しまって”いたが、最近はオリジナルで“しまい”はじめた。光紀が順調に日本の古典を“しまえる”ようになると、父の貴世誌は楽譜の読み方を教え、ピアノを鳴らして音を教えた。彼がたちまちオーケストラのスコアを読めるようになると「これで光紀は指揮者にだってなれるぞ」と大変喜んだ
だが、そのことは周囲に黙っているように、と固く言い渡されていた。ここは「常野(とこの)」ではないのだから・・・。

*二つの茶碗
初対面の客の未来を見る能力がある娘がいる店に連れていかれた。予め言われていた通り「お水を一杯いただけますか」と言った三宅篤に、娘は「お茶をどうぞ」と、差し出した。その茶碗を受け取ろうとして、目が合った。その静かな湖のような瞳に、すうっと吸い込まれそうになる。「あっ」と娘が小さく叫び、ぱきいんと小さな音がして茶碗が三和土で割れた。水が欲しいと言う客に、大したことがない凡人の場合は白湯を出す。お茶を出すのは、何か大きなことをする、世の中に顕れる可能性のある人物と見られたとき。それが美耶子と篤の出会いだった。「近いうちに父の田舎に行きましょうね。私も小さい頃に一度行ったきりなの」と美耶子が言った。常野に帰ってしまったと言う美耶子の父には、婚約の時と、式の当日と2度しか会っていない。妙に惹きつけられる、不思議な大きさを感じられる人だった。


泰彦は親友の克哉と2人、昔、父に連れられて来た達磨山に登っていた。達磨山は神かくしの山と言われていた。父は、ここは常野一族の聖地で、このあたりには不思議な力を持った一族がいたが、殺されたり、散らばったりして、だんだん力がなくなっていったと話した。人生の転機にある人間がこの山に登ると、その人にとって重要な場面が目の前に現れるというという。父は晩年、本気で常野一族のことを調べていたふしがある。
熊笹の海の中に、少女が立っていた。白いサマーセーターに紺のプリーツスカート。最初に感じたのは親近感だった。俺はこの子を知っている。「あたし、たかはあつみ。おじさんは?」突然、はっきりした声で少女がしゃべった。熊笹の葉が宙を舞っている。動悸が激しくなり、全身にびっしょり汗をか いている。見たことのある少女だった。懐かしさを覚える顔。どこで見たのだろう。
克哉の名は、鷹羽克哉。誰かに似ていると思ったら、あの少女は、泰彦から去って行った藍子に似ていたのだ。2人はおそらく、この先巡り会う運命にあるのだ。あの子は、克哉と藍子の娘なのだ。

*オセロ・ゲーム
一歩でも二歩でも先回りをして、絶対に後手に回らない、というのが拝島瑛子のモットーである。日々戦い続けている。不特定多数の人に会うのはなるべく避けなければならない。オープンになったカフェなどには、ここ数年入ったことがない。店の客が一目で見渡せる場所を選ぶ。いつも先手を打たねばならない。先に見つけられてはならないのだ。
会社のエレベーターの中に「あれ」が突然現れた。「裏返すのだ」素早くその宅配便の男の目の奥の、赤い光をめがけて激しく視線を注ぎ込む。ぎりぎりという音が頭の中で聞こえ、全身が震えた。裏返すには莫大なエネルギーがいるのだ。娘の時子が3歳のとき夫が裏返された。裏返した者より強大な者であれば、呼び戻すことができる。

*手紙
倉田篤彦と友人、知人たちとの「ツル先生」に関する往復書簡。
明治17年に書かれた俳人の記録によると、福島で子供に読み書きを教える、禿頭で白髪、膝を鶏のように曲げた「ツル老人」がいた。70歳を超えたツル先生は、戦前にも、戦中も、戦後も、変わらぬ姿で校長をしていた。青森の白神山地にあった分教場にもツル先生がおり、その分教場は謎の爆発事故を起こして全滅してしまった。事件は軍部が口止めをして闇に葬られた。日本中どれだけの場所でこの先生は草履を履いて校長をしていただろう。

*光の帝国
ツル先生の名は「遠山一郎』。ツル先生は常野の人たちに頼まれて学校を作った。上野の音楽学校に行っていたコマチ先生。大男のジロ先生。細い竹でジロ先生が作った笛を完璧な音程で吹いた、みさき。遠目のあや。健一。信太郎。

ツル先生は、子供達がプレゼントしてくれたホーキンスのサンダルを履き、丘の上にぼんやり立って風に吹かれている。自分でも思い出せないくらい長い間、校長先生をしている。数えて見たら先生になってから200年は越えていることに気が付いた。今年こそ、今年こそ、きっとみんなが帰ってくるに違いない。ツル先生は、今年も丘の上に立って待っている。

*歴史の時間
*草取り
*黒い塔

*国道を降りて・・・

雑木林の中にちらちらとたくさんの明かりがみえた。それは、木造の古い小学校の校舎らしかった。美咲にはなんだか夢でも見ているかのような景色だった。
校門のところに、膝を軽く曲げた、白髪の老人が後ろで手を組んでのんびり立っていた。「ツル先生だ。一族の長老なんだよ。変わらないなぁ」律が懐かしそうな声を上げた。
律が挨拶するとその老人は顔を綻ばせた。「こちらは、今日一緒に演奏する田村美咲です。僕の婚約者です」と紹介すると、老人は美咲を振り返り、何かに打たれたような表情になった。「ーみさきか、みさきちゃんか」美咲も吃驚する。その老人は、じっと美咲を見ていたが、やがてかすかに震えだした。目に涙を浮かべる老人を、律が戸惑うように2人を交互に見比べた。その老人の顔を見ているうちに、美咲もなぜか胸がいっぱいになった。なぜだろう。とても懐かしい。なんでこんなに胸が苦しくなるのだろう。
大勢の歓声を聞きながら、美咲はフルートケースを取り出した。老人がちらりとそれを見た。「そうだな、みさきは笛がとっても上手だったな」納得したように呟く。





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Last updated  2018.04.26 10:55:54
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Re:光の帝国・恩田 陸(04/25)  
 katananke05 さん
最初に恩田陸をよんだのは 何だったか忘れたけど
[蛇行する川の ほとり」? とか [夜のピクニック」とか
しばらく 私の読書癖で 同じ作家ばかり 読破していき
此の[光の 帝国」あたりから ちょっと 離れだしたんだわ〜
常野のひと シリーズが もひとつあったような、、

地底の 迷路のような 道をとおり 飛び出したところが
都市のまんなか、、というようなはなしもあったような、、
それは のちに 村上春樹が書いた(どっちが先 か 判らない)のと
そっくりの設定だったのも ちょっとなあ〜とおもったりして、、

でも このとおり 筋もろくにおもいだせないのでは
読んだとは言えないね〜
[夜のピクニック」は 好きだけどね〜 (2018.04.25 18:34:52)

カタナンケさん こんばんは  
☆末摘む花  さん
私が読んだ恩田陸作品のダントツ一位は「蜜蜂と遠雷」
次が「夜のピクニック」
その次は無し・・・かも。

今回一緒に借りてきたのが、この「光の帝国」と「中庭の出来事」でした。
最初に読んだ「中庭の出来事」は、「もう少しで面白くなるかもしれない」と、じっと我慢で半分まで読みました。その辺りで我慢も限界。バカバカしくなり投げ出しました。まだこの「光の帝国」の方が、メルヘンだと思って読めばマシでした。
常野シリーズは、『光の帝国』『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』の3冊みたいです。

こんなに我慢してまで読むこと無いですよね。
私は恩田作品は当分よいかなー、と(^_−)−☆ (2018.04.25 21:24:49)

Re:光の帝国・恩田 陸(04/25)  
 かたなんけ さん
もう一つ書いたのが はいってないけど
屹度欠くだけ書いて 送信をしなかったような、、
なにか別のことを 夫にたずねられ 中途で 席をたったんだわ

蒲公英草紙、、
これだったかなあ、、 2.26事件の当日をもとにしてるのは、、
ほかと 間違えてるか、、
いい加減な カタナンヶで ございました、、 チャンチャン〜 (2018.04.28 21:01:37)

カタナンケさん こんばんは  
☆末摘む花  さん
そういうことでしたか。
投稿したはずなのに無い…。私も時々やってしまいます(^_^;)

光の帝国では、登場させていながら尻切れトンボのままになっている登場人物が「何人か」います。その行方が気になって、「続編」だと言われている2冊を借りてきました。
でも、又々作者に裏切られそうな気がしています。 (2018.04.28 22:12:20)

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