鉄道ジャーナリスト加藤好啓のblog 国会審議集

2019.11.26
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テーマ: 鉄道(22234)
カテゴリ: 桜木町事故
本日も桜木町火災事故の証人喚問の記録から見ていきたいと思います。
私も、実は桜木町事故のことを調べていて、国会の議事録にないかと探したところ偶然見つけた次第です。
早速、当時の運転士の証言を元にお話をさせていただこうと思います。

篠田委員長が、中村証人に対して、再度確認の意味で質問していますが。
パンタグラフを上げようと試みたが、上がらなかった。
【実際には、パンタグラフに切断したトロリー線が絡みつき、パンタグラフ自体が上げられなかったと言われています。
そこで、もう一つの重大な疑問点、運転室のドアを開けずに運転台から飛びだした点について質問しています。

火の手が上がっているので開けても無駄だと思ったと証言

○篠田委員長 ひもを引いたところがあかなかつた。そこで自分は外へ飛び出して、うしろのドアをあけなかつたわけですね。運転手の部屋と客室とのドアをあけないで飛び出したのだが、それに間違いないですね。
○中村証人 間違いありません。

○中村証人 あけてもだめだと思いました。そこのところははつきりわかりませんけれども……。とにかく自分としては瞬間的に中に入れないと思つたので、うしろからまわつてあけようと思つたのです。

ここで素朴な疑問として残るのは、開けても無駄だと言ってとっさに諦めてしまった点です。
その後の質問で、逃げるためではないと証言していますが。
最初の質問では、椅子が邪魔であったと言っておきながら、今度は後ろを振り向くとガラス越しに中には入れないと思ったと証言しています。
ここでは、特にこうしたことに対して憶測で話を進めるわけにもいきませんが、やはり疑問は残るところではあります。

ドアが開かなかったのは誰のせい?

更に質問は続き、車掌もドアスイッチを扱ったけれどドアが開かなかったして、その原因を運転士が車掌スイッチを扱っていたからではないかという疑問を呈しています。
それに対しては、パンタグラフが下がった(実際には断線した架線が絡まったために、地気(架線が直接、地面とショートした状態、もしくは絶縁不良の状態)してしまったわけで、運転士の証言しているように、電源が切れた状態になったようです。

○篠田委員長 逃げるつもりではないのだね。
○中村証人 そういうわけではありません。
○篠田委員長 車掌がスイッチを扱つたけれどもドアがあかなかつたというのは、証人が切りかえスイッチを切つたためだというのだが……。
○中村証人 それはどういうわけですか。切りかえスイッチを切つても電源があればあきます。

○中村証人 そうです。

火災発生後も電流が供給されたことを運転手は知っていたのか?

電車が燃えているときにも電流は供給されていたと運転士は証言している点ですが、このやり取りだけでは、「運転士が電車の火災中にも架線から電流が流れていた」という証言が、変電所からの電流が供給されたいたか否かを証明する内容ではありませんが、篠田委員長側は、変電所でにき電停止が行われたことは知っていたように見えるのですが、運転士はその辺は知らなかった節があり、答弁に多少の違いが生じています。
以下、双方のやり取りから。

○篠田委員長 それはパンタグラフが下つてしまつているから、電源がないからあかないというわけかね。
○中村証人 そうです。


中略

○篠田委員長 自然に燃えているわけだね。
○中村証人 自然でありません。
○篠田委員長 どんどん電流が入つて来たのじやないか。
○中村証人 入つて来ております。
○篠田委員長 言いかえれば電車の方は電流が入つておるのだね。
○中村証人 電車の方じやありません。
○篠田委員長 どういうわけで。
○中村証人 結局アースしてしまうわけです。
○篠田委員長 アースしてしまえば、電車が燃えないわけじやないのですか。そうじやないのですか。
○中村証人 最初の……。
○篠田委員長 だから電車を通じてアースしているわけか。
○中村証人 アースでありますが、どういうぐあいにアースしたか自分としてもちよつとわかりません。
○篠田委員長 結局電車を一つのあれとして通じているわけでしよう。電車を通じて燃えているわけでしよう。
○中村証人 はい。
○篠田委員長 その電流はあなたの開こうとするスイッチの方には来なかつたというのですね。
○中村証人 自分の言うことですか。
○篠田委員長 スイツチのところへ電流が来ていればあなたがボタンを押してもあくわけでしよう。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 それがあかないというのは、あなたの押そうとするスイッチの方には来てない、しかし燃えている電車の方には電流は依然として行つていた、こういうことでしよう。
○中村証人 そうであります。

乗客は、後方の貫通出口ではなく、連結部の窓から脱出しようとしていた?

その後も尋問は続き、運転台を出た後の運転士の行動について審問しているのですが、ここでも最初の証言と異なるところが見られます。
記憶の混濁か、否かは判りませんが、「一両目と二両目のところから人が出ておつた」と証言していますが、これは、どうも事実とは異なるようで、連結面の三段窓から脱出を試みようとした人がいたのだと言うようにもとれる証言をしています。

ということで、再び同様の質問をしたところ、窓から出ていたと回答をしています。
そこで4人か5人ほど引っ張りだしたと証言しています。
実際、助かった例としては、わずか30cm弱の3段窓の隙間を縫って脱出できた人だけであったそうで、実際にそうした証言が残されています。【鉄道ピクトリアルだったかと思いますが、何時頃の記事だったか今すぐ思い出せないので、判れば追記いたします。】
また、詳細は「桜木町駅における国鉄電車火災事故調査報告書」という書籍もあるようなので、国会図書館で拝見させていただこうと考えております。

○篠田委員長 あなたがうしろへまわつて行つたときに、うしろの窓からお客が出ようとしていたわけでしよう。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 それを何人かひつぱり出したか。
○中村証人 ひつぱり出しました。
○篠田委員長 何人くらい。
○中村証人 自分が連結器に上つたときに、そのときに一両目から二両目へ出て来たのであります。
○篠田委員長 うしろのドアからガラスか何か破つて出ようとしているわけか。
○中村証人 そのときに、自分としてもはつきり記憶がないのであります。
○篠田委員長 ドアはあいていないんでしよう。
○中村証人 結局窓のところです。
○篠田委員長 窓を破つて出て来ようとしたのかね。
○中村証人 はい、それをひつぱり出したのです。
○篠田委員長 あとはどうしてやめたのか。
○中村証人 結局火災がどんどんうしろへ来てしまつて……。
○篠田委員長 うしろへ来てしまつて……。
○中村証人 連結器まで来てしまつたからです。中が結局煙と火とでわからないのです。

火勢が強くなり、「何人かをひっぱりだした」とう表現をしていますが、どうやら、後方の出入り口は開いておらず、旅客自らも開けて脱出することは出来なかったようです。


画像 wikipediaから引用

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国家異議記事録本文は、以下の通り
**********************桜木町事故国会審問の議事録***********************

○篠田委員長 それであなたは発火すると同時に、今言つたようにパンタグラフをまず下げた。そうしてみたところが火花がなかなかおさまらないので、うしろを見たところが燃えておる。そこでこれはいけないと思つてドアをあけるために、またパンタグラフを上げてスイツチを押したけれども、パンタグラフが途中でひつかかつたかどうかしてあかなかつた。
○中村証人 スイッチでなくてひもであります。
○篠田委員長 ひもを引いたところがあかなかつた。そこで自分は外へ飛び出して、うしろのドアをあけなかつたわけですね。運転手の部屋と客室とのドアをあけないで飛び出したのだが、それに間違いないですね。
○中村証人 間違いありません。
○篠田委員長 そのときに――あとの祭りだが、ドアをあけるのに気がつかなかつたのだね。
○中村証人 あけてもだめだと思いました。そこのところははつきりわかりませんけれども……。とにかく自分としては瞬間的に中に入れないと思つたので、うしろからまわつてあけようと思つたのです。
○篠田委員長 逃げるつもりではないのだね。
○中村証人 そういうわけではありません。
○篠田委員長 車掌がスイッチを扱つたけれどもドアがあかなかつたというのは、証人が切りかえスイッチを切つたためだというのだが……。
○中村証人 それはどういうわけですか。切りかえスイッチを切つても電源があればあきます。
○篠田委員長 それはパンタグラフが下つてしまつているから、電源がないからあかないというわけかね。
○中村証人 そうです。
○篠田委員長 シヨートして電車が燃えておつても、電流はまだ通じておつたのではないかね。
○中村証人 通じておりました。
○篠田委員長 電車の方には電流は通じておつたけれども、スイツチの方には電流は通じてなかつたというわけですか。
○中村証人 それは技術的な問題になります。
○篠田委員長 片方はどんどん燃えておるが、電流は通じていたわけですね。
○中村証人 シヨートしておると、そこでもつて電圧というものは、ほとんどゼロに近い程度になつてしまいます。
○篠田委員長 自然に燃えているわけだね。
○中村証人 自然でありません。
○篠田委員長 どんどん電流が入つて来たのじやないか。
○中村証人 入つて来ております。
○篠田委員長 言いかえれば電車の方は電流が入つておるのだね。
○中村証人 電車の方じやありません。
○篠田委員長 どういうわけで。
○中村証人 結局アースしてしまうわけです。
○篠田委員長 アースしてしまえば、電車が燃えないわけじやないのですか。そうじやないのですか。
○中村証人 最初の……。
○篠田委員長 だから電車を通じてアースしているわけか。
○中村証人 アースでありますが、どういうぐあいにアースしたか自分としてもちよつとわかりません。
○篠田委員長 結局電車を一つのあれとして通じているわけでしよう。電車を通じて燃えているわけでしよう。
○中村証人 はい。
○篠田委員長 その電流はあなたの開こうとするスイッチの方には来なかつたというのですね。
○中村証人 自分の言うことですか。
○篠田委員長 スイツチのところへ電流が来ていればあなたがボタンを押してもあくわけでしよう。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 それがあかないというのは、あなたの押そうとするスイッチの方には来てない、しかし燃えている電車の方には電流は依然として行つていた、こういうことでしよう。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 あなたがうしろへまわつて行つたときに、うしろの窓からお客が出ようとしていたわけでしよう。
○中村証人 そうであります。
○篠田委員長 それを何人かひつぱり出したか。
○中村証人 ひつぱり出しました。
○篠田委員長 何人くらい。
○中村証人 自分が連結器に上つたときに、そのときに一両日から二両目へ出て来たのであります。
○篠田委員長 うしろのドアからガラスか何か破つて出ようとしているわけか。
○中村証人 そのときに、自分としてもはつきり記憶がないのであります。
○篠田委員長 ドアはあいていないんごしよう。
○中村証人 結局窓のところです。
○篠田委員長 窓を破つて出て来ようとしたのかね。
○中村証人 はい、それをひつぱり出したのです。
○篠田委員長 何人くらいひつぱり出した。
○中村証人 自分としてもはつきりわかりませんけれども、四、五人くらいと思つているのです。
○篠田委員長 あとはどうしてやめたのか。
○中村証人 結局火災がどんどんうしろへ来てしまつて……。
○篠田委員長 うしろへ来てしまつて……。
○中村証人 連結器まで来てしまつたからです。中が結局煙と火とでわからないのです。





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最終更新日  2022.10.04 00:19:59
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