鉄道ジャーナリスト加藤好啓のblog 国会審議集

2023.05.14
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カテゴリ: 桜木町事故
今回も一ヶ月ほど開けてしまいましたが、桜木町事故の審問についてお話をさせていただこうと思います。

​​​検察の捜査見込みを問いただそうとする国会​
​この事件でのキーとなるのは中澤工手長及び高原信号手の証言が大きく食い違うと言う点で有り、この辺に関して、検事がどこまで知っているのか、否知らなかったのかと言うことで質問が行われており、今後の検察の捜査(どちらがより正しいことを述べているのか知りたいとして)の方向性を探ろうとするのですが、その辺に関しては検察もスルーすることとなります。
以下のような質問がなされています。​

 次の問題を伺いますが、たとえばこの上りという問題についての言葉が線を基点としての解釈になるのか、電車を単位としての解釈になるのかという問題、それから中沢と高原の言い分の完全な食い違いという問題、これは事件を捜査する者といたしまして、事実はもちろん一つしかありませんし、いずれかというよりも真実のものを究明しなければならないわけですが、今のところ二つのものが全然対立のままになって未解決である。これについて今後どういうふうに取調べるのか、なお検察庁の見込みとしれは、どちらが真実に近いものになっているのか、この点に対するお考えを聞きたいと思う。
○大津証人 本件はまだ検察官が起訴いたしておりません。検察官が意思を決定するときは起訴するときであります。特に本件の場合は、当委員会で非常に御関心を持っておるように、われわれの方の検察内部におきましても非常に関心を持っておりまして、高等検察庁、最高検察庁の指揮を受けておるのであります。従いまして本件の最終的決定につきましては、不日高等検察庁並びに最高検察庁に報告の上、十分議を盡しまして決定する、従つて今御質問のような点につきましても、目下十分に検討をいたしております。しかし結論は今申し上げる段階に至つておりません。
○山口(武)委員 結論は今申し上げる段階でないということを言われましたが、結論は出るというような確信は持っておりますか。
○大津証人 結論は出したいと考えております。

実際問題として公判の維持などを考えれば、安易に答弁は出来ないというのは当然ですので、優等生的な答えとも言えましょう。
さらに、以下のような質問が続きます。

​​証言の食い違う二人に交友関係はあったのか否か? ​​
○山口(武)委員 それから私昨日中沢君の話をいろいろ聞いたのですが、一つ中沢君の話についてわからない点があつたのですが、中沢君と高原君との日常の交友関係というもの、あるいは職場における交友関係というものがあつたのですか。それともそういうような関係はないのか、この事件でたまたま顔を合せたというようなことになっていのですか。​​​
​国鉄は特に縦割りといいますか、職能別に職場が分かれているため、機関区などに入れば、辞めるまで運転関係の業務に就くこととなっており、運転士を経験したが、車掌業務やたの業務に移行するというこは有りませんでした。
○山口(武)委員 それから私昨日中沢君の話をいろいろ聞いたのですが、一つ中沢君の話についてわからない点があつたのですが、中沢君と高原君との日常の交友関係というもの、あるいは職場における交友関係というものがあつたのですか。それともそういうような関係はないのか、この事件でたまたま顔を合せたというようなことになっていのですか。​​​

これに対して、検事は双方の交友関係はないと明言しているのですが。当時の国鉄という組織では、縦割り組織の典型のようなところがあり、お互いに顔は見知っていたとしても積極的に交流することはないと言う点は郵政も似たようなものでした。
郵政局の場合は特にそうで、事業部が違えば基本的に交流はない訳で、資材部に配属されれば資材部で、貯金部であれば貯金部内での移動が一般的であり、私のように貯金部でダメといわれて、資材部に回されて、逆に資材部で花開いたわけですが、再び貯金部に返り咲くということは出来ず、あくまでも縦割りの組織であることを実感したものです。(もっとも、例外はあったようですが極めてまれであったと思われます。)

国鉄の組織そのものに問題があるのではないかと言及!
かなり辛辣な表現で質問をしており、今ではその発言自体が揚げ足を取られそうな発言ではありますが、国鉄に限らず役所の組織が事なかれ主義に陥っている事。人命よりも鉄道車両の損失の方が大きな問題であると判断することに対して問題があると強く指摘しています。

○田渕委員 大体国鉄の施設上の欠陥とか、あるいは機構組織の細分化というような点はわかつた。あとの証人で技術的なことはわかると思いますが、私は平素の教育訓練というようなものを、この捜査上からつかみたいというのが私のねらいである。人的要素の問題で、責任観念の完全、不完全というようなことについて、当委員会において中沢証人と高原証人の間に大きな食い違いがあり、お互いに責任のなすり合いをするということは、すなわち職分に対する責任観念あるいは一つのはっきりした理念がないからであります。中略・・・・
有能でないまでも、かように三十年近く一つの職場におつて、もう経験とすれば十分できている人間が、もう一つつつ込んだ親切味がないために、要するにこういう事故を起したというふうに思えるのであります。検察側がそういうような点で対決させなかつたというような点についても、証人のどれがいいか悪いかは、われわれも常識によって判断はいたしております。けれども、とにかく日本の官庁機構というものは、寄らずさわらず、よけいなことをしないでじつとしておれば経済部長になり知事になる。(「よけいなことを言うな」と呼ぶ者あり)こういうような非常な寄らずさわらずの態度がこの問題を起しておる。 私たちは国鉄の機構をかえると同時に、国鉄の訓練をしなければならぬ。つまり国鉄は、乗客は乗せてや売るのだ、貨物は運んでやるのだというような思想がずつと古い憲法の天皇制時代から来ておる。終戦後のどさくさなどには、ことに哀訴歎願してやみ切符まで頼んでおった。主人公であるお客が外の寒いところにさらされて、駅長その他の職員がストーブをたいてあたっておる。こういう考えがこの三十年もいる連中の思想に入つている。よけいなことはしないでいいという線と、一つは乗客に対する関心がないということは、運転士の証言ではっきりしております。器物の方が大事だ、国鉄の電車が大事で、お客は大事ではないという態度であつたが、将来は運ぶところの生命、われわれの車体を完全に守る訓練をしなければならぬ。それに対しては、今の国鉄の監理委員会がいいのかどうかというような点にも行かなければならぬので、私たちはここへ証人を呼んで、あなた方に材料を提供してくれとか、あるいはもつと刑罰を重くしなければならぬというようなことは言わない。国会はもつと大きな観点からお願いするのですが、少くとも中沢証人と高原証人の食い違いというよう点になって来ると、われわれはもうこれ以上聞く必要はない。私から率直に言わせれば、無能な人間を使つているというところに間違いがあるのだ。・・・以下省略

といった具合でかなり辛辣な発言をしております。
ちなみに、田淵委員は、和歌山選出の国会議員で、2期議員を務めた後に連続三回落選となり政界を引退しています。
参考:​ 田淵光一


これに対して、検察は国鉄の教育については、 鉄道教習所側 から資料を取り寄せてどのような訓練なり教育を行っていたのかを確認しているところであると証言しており、更に、今回の事故のような事故時の扱いについても鉄道教習所に確認しているものの明確な答えが返ってきていないとして、質問に対して回答は直接は回避しています。



以下続く

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国鉄があった時代 JNR-era


国家異議記事録本文は、以下の通り
**********************桜木町事故国会審問の議事録***********************
    〔委員長退席、島田委員長代理着席〕
○山口(武)委員 証人はこの事件に関する調査の責任者ではないですか。
○大津証人 一応責任者であります。

○大津証人 お答えします。しないでよろしいのではありません。検事の捜査は、検事が一人ですべての関係を自分で担当いたして取調べる場合もございます。しかし複雑多岐な事件になりますと、数名の検事がいわゆる共同捜査というものをやります。そうして各検事の担当部門をきめまして、それぞれ担当関係者を取調べ、そうしてそれはやがて総合さるべき問題でありますが、一人の検事がすべての被疑者にわたり、あるいは関係人にわたって調べることは事実上不可能であります。川島検事は私の属する特別捜査局の一人でありまして、私よりも先に本件にタツチしておりまして、そうしていろいろな関係人を取調べております。そこで私は川島検事について、その部分については十分に捜査を頼んで、その報告を受けておりますから、それで十分と考えております。
○山口(武)委員 しかしこの寺山の言葉というものは、少くともこの事件のポイントの一つをなしているものだ。この証言の言い違いという問題について、あなたはそれほどあまり詳しく知っていないというようなことでよろしいかどうか、あらためてお聞きします。
○大津証人 お答えします。高原信号手並びに中沢工手長は私も直接調べました。川島検事も高原、中沢、寺山そのほか関係者を調べております。つまり一人が一人を専属してやっておるわけでなく、それぞれ重複し、あるいは相互に関連して取調べをいたすのであります。従いましたわれわれとしては十分に連絡してありますから、その点で別に遺憾なことはないと考えております。しかし御意見は御意見として拝聴いたします。
○山口(武)委員 私は今の証人の答弁では少々了解しがたい。
 次の問題を伺いますが、たとえばこの上りという問題についての言葉が線を基点としての解釈になるのか、電車を単位としての解釈になるのかという問題、それから中沢と高原の言い分の完全な食い違いという問題、これは事件を捜査する者といたしまして、事実はもちろん一つしかありませんし、いずれかというよりも真実のものを究明しなければならないわけですが、今のところ二つのものが全然対立のままになって未解決である。これについて今後どういうふうに取調べるのか、なお検察庁の見込みとしれは、どちらが真実に近いものになっているのか、この点に対するお考えを聞きたいと思う。
○大津証人 本件はまだ検察官が起訴いたしておりません。検察官が意思を決定するときは起訴するときであります。特に本件の場合は、当委員会で非常に御関心を持っておるように、われわれの方の検察内部におきましても非常に関心を持っておりまして、高等検察庁、最高検察庁の指揮を受けておるのであります。従いまして本件の最終的決定につきましては、不日高等検察庁並びに最高検察庁に報告の上、十分議を盡しまして決定する、従つて今御質問のような点につきましても、目下十分に検討をいたしております。しかし結論は今申し上げる段階に至つておりません。
○山口(武)委員 結論は今申し上げる段階でないということを言われましたが、結論は出るというような確信は持っておりますか。
○大津証人 結論は出したいと考えております。
○大津証人 私が聞いたところでは、交友関係というものはなかつたようであります。顔は幾分知っているという程度であつたかもしれませんが、名前までは知らなかつたということを高原君が言っております。そういう特殊な交際関係というものはなかつたようであります。​​
​​ ​​ ○田渕委員 大体国鉄の施設上の欠陥とか、あるいは機構組織の細分化というような点はわかつた。あとの証人で技術的なことはわかると思いますが、私は平素の教育訓練というようなものを、この捜査上からつかみたいというのが私のねらいである。人的要素の問題で、責任観念の完全、不完全というようなことについて、当委員会において中沢証人と高原証人の間に大きな食い違いがあり、お互いに責任のなすり合いをするということは、すなわち職分に対する責任観念あるいは一つのはっきりした理念がないからであります。そこでいいか悪いかということは検察庁にまかせておけば、刑罰を科するのであるからよろしいが、私たちのねらつているところはそうではなく、有能でないまでも、かように三十年近く一つの職場におつて、もう経験とすれば十分できている人間が、もう一つつつ込んだ親切味がないために、要するにこういう事故を起したというふうに思えるのであります。検察側がそういうような点で対決させなかつたというような点についても、証人のどれがいいか悪いかは、われわれも常識によって判断はいたしております。けれども、とにかく日本の官庁機構というものは、寄らずさわらず、よけいなことをしないでじつとしておれば経済部長になり知事になる。(「よけいなことを言うな」と呼ぶ者あり)こういうような非常な寄らずさわらずの態度がこの問題を起しておる。こういうような点から行くならば、私たちは国鉄の機構をかえると同時に、国鉄の訓練をしなければならぬ。つまり国鉄は、乗客は乗せてや売るのだ、貨物は運んでやるのだというような思想がずつと古い憲法の天皇制時代から来ておる。終戦後のどさくさなどには、ことに哀訴歎願してやみ切符まで頼んでおった。主人公であるお客が外の寒いところにさらされて、駅長その他の職員がストーブをたいてあたっておる。こういう考えがこの三十年もいる連中の思想に入つている。よけいなことはしないでいいという線と、一つは乗客に対する関心がないということは、運転士の証言ではっきりしております。器物の方が大事だ、国鉄の電車が大事で、お客は大事ではないという態度であつたが、将来は運ぶところの生命、われわれの車体を完全に守る訓練をしなければならぬ。それに対しては、今の国鉄の監理委員会がいいのかどうかというような点にも行かなければならぬので、私たちはここへ証人を呼んで、あなた方に材料を提供してくれとか、あるいはもつと刑罰を重くしなければならぬというようなことは言わない。国会はもつと大きな観点からお願いするのですが、少くとも中沢証人と高原証人の食い違いというよう点になって来ると、われわれはもうこれ以上聞く必要はない。私から率直に言わせれば、無能な人間を使つているというところに間違いがあるのだ。無能な人間であるからしてああいう小さい箱の中で三十年もおる。気のきいた者はおりはせぬ。とかく日本の人的な配置の使い方が間違つておる。これはきのうなんかでも、まことに高原証人なんか気の毒な人間であると思う。ほんとうにこういうような大事なところの信号手に配置しておったということが間違いである。今度は逆にわれわれは洗つて行かなければなりませんが、科学的に私はまだどうしても納得の行かない点があるのです。これは今主任検事さんに聞いてみてもわからぬので、あとの証人に聞いてみたいと思いますが、結局あなたが今この事件を取調べ中でありますけれども、そういうふうな点について、あらゆる施設、機構、六・三型いろいろな話があつたのでありますが、二人の証人、あるいは運転士、車掌をお調べになって、こういうような点についてお感じになった点を伺いたいと思います。率直なことでけつこうです。あなたから見て、いわゆる印象と申しましようか、そういう点でけつこうであります。
○大津証人 国鉄職員の訓練、教育の問題につきましては、実は鉄道教習所側から現在の教科書、教材等を取寄せまして、どういう訓練を行っているだろうかということを目下検討しておるのでございますが、まだこの点については結論が出ておりません。それから事故時における非常措置についていかなる訓練を行っているかという点についても、実は回答を求めているのですが、まだ参つておりません。

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最終更新日  2023.05.14 22:31:44
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