○篠田委員長 引続き高橋一夫証人より証言を求めることにいたします。
高橋さんですね。
○高橋証人 そうであります。
○篠田委員長 たいへんお待たせしましたが、時間の都合上、これから引続いてあなたの証人尋問をいたします。あらかじめ文書で御了承願つておきました通り、証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御承知おき願いたいと思います。
ただいまから桜木町駅国電事故に関する件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なっております。
宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師、歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられかつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。
では法律の定めるところによりまして証人に宣誓を求めます。御起立を願います。
宣誓書の朗読を願います。
〔証人高橋一夫君朗読〕
宣誓書
良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
○篠田委員長 署名捺印してください。
〔証人宣言書に署名捺印〕
○篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておりますときはおかけになっていてよろしいですが、お答えの際は御起立を願います。
証人の今おやりになっておる仕事をひとつ御説明願います。
○高橋証人 横浜市警察本部刑事部捜査第一課長でございます。
○篠田委員長 どういう仕事ですか。
○高橋証人 刑事部長の補佐としまして、犯罪の捜査一般をやっております。
○篠田委員長 この国電桜木町駅の問題につきまして、あなたみずから関係者をお調べになりましたか。
○高橋証人 調べておりません。
○篠田委員長 だれが調べましたか。
○高橋証人 それは全部分担して調べておりますから……。
○篠田委員長 総合したものはあなたのところに届いておりますか。
○高橋証人 記録は届いております。
○篠田委員長 あなたは一回も関係者を調べたことはないわけですね、自分では。
○高橋証人 ありません。
○篠田委員長 責任者ですね。
○高橋証人 そうでございます。
○篠田委員長 それでは現在まであなたが責任者として、あなたのところにいろいろな報告が来ておる思うのですが、その報告について、今度の事件の原因、結果あるいはそれに対するいろいろな処置に対する欠陥であるとか、施設の欠陥であるとか、そういう問題について、あなたのところに集まつた報告によって、結論を概略話してください。
○高橋証人 第一番の御質問の原因でありますが、御承知のように架線工事をしておりまして、架線が切れ、そこへ電車が突入して来て、パンタグラフが吊架線にひつかかつたというのが原因であります。それで電車が火を発してあれだけの死人を出したのであります。運転車、車掌、それから当時現場において実際にその事故の原因となった作業をしておりました工手というものを検察庁へ送致いたしましたが、なお三日おきまして工手長の中沢氏、それから信号手の芦原氏この人間を逮捕して検察庁に送致したわけであります。ただいまお問いの中に欠陷と申されましたが、私どもとういう電車の事件というものは初めて扱つたわけでありまして、従つてパンタグラフとかあるいは吊架線というような言葉も今度の事件を扱つて初めて覚えたのであります。従つてどこに欠陷があつたかということはわれわれには調べることができなかつたわけであります。
○篠田委員長 すると、できるだけのことをしなかつたというように警察では思つておるのですか。
○高橋証人 私はそう考えております。
○篠田委員長 どういう点で……。
○高橋証人 それは陳述によってそういうふうに私は考えます。
○篠田委員長 陳述のどういう点で……。
○高橋証人 運転士が……。
○篠田委員長 貫通ドアーをあけなかつたということは、運転士の責任として確かであるけれども、運転士はそれについていろいろ事情を言っていますが、車掌がもつとできるだけのことをしなければいけなかつた。それをしなかつたのだというふうにあなたは言われたのだけれども、それはどういう点であなたの方では認定されたのですか。
○高橋証人 今申し上げました通り、機械的に操作ができなくとも、前部にかけつけて窓をこわすなり、こっちのドアーをあけて出すなり、何かできたと思います。
○篠田委員長 車掌は出したと言っておるのだけれども、それは警察の方では認めていないわけですか。
○高橋証人 私が聞きました範囲では、車掌は二輌目か三輌目か自分ではっきりしないが、そこへ入つてドアーをあけたと言っております。
○篠田委員長 一輌目に対する操作を何もしていないというのですね。
○高橋証人 いたしておりません。
○篠田委員長 だれか御質問はありませんか。
○島田委員 取調べを開始したのはいつでしようか。
○高橋証人 被疑者に実際に当りましたのは、二十四日六時ごろだと思います。
○島田委員 二十四日というのは事件発生の日ですね。
○高橋証人 そうであります。
○島田委員 そうすると、事件発生が十三時四十四分ということだから、大体一両目に乗つておられた皆さんが被害をこうむつて、火災のために命を捨てられて、もうすでに事済みになったというその経過時間はどのくらいでしようか
○高橋証人 二時半ごろじやないかと思います。
○島田委員 そうすると、二時半ごろから六時までの間、三時間半ですか、このくらいの余裕が取調べまでの間にあつたわけですね。
○高橋証人 そうであります。
○島田委員 この時間のずれのある間において、事故を発生さすことについて非常に関係のあった人々やら、事故発生後、これが防止救済等について関係のあつた国鉄従業員の皆さんが、この善後措置について何かと打合せをする時間的な余裕はあつたように思われますが、事実こういう打合せをしたような形跡は見られぬのですか。
○高橋証人 自分の聞いた範囲では、そういうことはわかりません。
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