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2006/06/14
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カテゴリ: 本のレビュー

王妃の離婚


西洋の歴史小説をお得意とする佐藤氏の、直木賞受賞作。
以前、pian pianoさんが佐藤氏の紹介をされていたのがきっかけで購入。これがとても面白くて、429ページもあるのに1日半で読了しました。
15世紀末のフランス、国王ルイ12世は、王妃ジャンヌとの離婚裁判を起こします。証言はすべて王が優位になるよう捏造され、王の望み通りに離婚成立かと思われた時、「零落した中年弁護士」が義憤に駆られ、王妃の弁護に乗り出す・・・。

初めにあらすじを読んで、ヨレヨレクタクタの、もっさりした中年男をイメージしていたのですが、主人公フランソワは、なかなか才走った怜悧な男でした。彼は若かりし頃、パリ大学法学部で将来を嘱望された、「伝説の人」なのですが、とある事件で大学をやめて、田舎で弁護士稼業をしているのです。実は王妃ジャンヌとは、ちょっとした因縁があり、はじめ彼は裁判のゆくえを冷淡に見守っていました。王妃が屈辱を味わう姿を見てやろう・・・そんな思いで裁判を傍聴していたフランソワは、因縁の張本人(昔の恋人の弟)を介して、王妃と言葉を交わし、彼女を知ることになります。王妃からの弁護依頼を一度は断るフランソワですが、裁判中、自分の証人にさえ裏切られた王妃が孤独に戦う姿と、自分の青春時代の情熱が交錯し、ついに弁護を引き受けるのです。

この作品は法廷サスペンスに分類されるようです。王優位の、権力を背景にした不正な審議を、フランソワが法解釈や新証言を繰り出して崩していく過程は、胸をすくような展開。そこに、当時のカトリックの結婚概念や、婚姻取り消しの条件(なにしろカトリックは、原則的に離婚を認めないので、現代から見るとなかなか興味深い理屈をつけて婚姻を解消するのです)、フランスの文化史や都市と人々の生活に関する豊富なウンチクが絶妙な形でストーリーに織り交ぜられていて、歴史好きには、たまらない面白さ。(笑)また、外見が十人並みで足が不自由なために「醜女」と嘲られてしまう王妃ジャンヌは、随所で心の強さと高貴さを見せてくれる、大変魅力的な女性で、この作品の面白さに大きく貢献しています。彼女の心理描写は、かなり現代的な解釈で描かれている反面、フランソワの恋人がいう、結婚は愛の義務化であり、虚飾と堕落だ、という自立的な発言は、どこか19世紀的な香りがしてくるような?
敵役である国王と手下は、読み手が焦るほど弱いので、対決シーンにイマイチ迫力が足らない面はあるのですが、活劇の楽しみは佐藤氏の別の作品に譲るとして、久々に「一気読み」したくなる作品でした。う~ん、これはハマる・・・今は同氏の『双頭の鷲』を読んでいます。






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Last updated  2006/06/14 08:41:39 PM コメント(4) | コメントを書く
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