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裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その1裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その2 見覚えのある光景だった。 空を埋め尽くす、純白の翼。 その下では、慣れ親しんだ俺の住む街が燃えている。 異形の化け物達が悲鳴をあげる人々を追い回し、逃げ遅れた人は一瞬の後に悲鳴を止めた。 これはフィクションの光景だ。 そう思った時に、それをどこで見たのかを思い出した。 どこかの宗教の聖典、その黙示録。 人間を滅ぼすのは悪魔ではなく天使だと、その本には書いてあったと思う。 やがて天使のような翼の生えた人間が地上に降りてきた。 「ああ、天使様、救いを……」 制止を振り切って外に出た男が、舞い降りた天使に向かって叫ぶ。 天使はにっこりと微笑み、右手に持った剣でその男の首を刎ね飛ばした。 初めて間近で見る人の死に、吐き気がこみ上げてくるのを必死で耐える。 恵が危険だ。こんな所に閉じ篭っている場合じゃない。 天使が誰かが放った銃弾に倒れるのを確認し、レストランを飛び出した。 基地局は既に壊滅しているのか、携帯電話は繋がらない。 家にいる事を願いながら、炎の中を走った。 通りには防衛軍やライフルを構えたハンター達が大勢いたが、押し寄せる天使や化け物の数に比べると些細な物だ。 できるだけ長く食い止めてほしいものだが、この様子じゃ一時間持つかどうか。 幸い、恵の家の周りにはまだ奴らは来ていないようだ。 「恵!」 玄関に飛び込むと、いつも恵がいるリビングに走った。 「早かったね、修二」 この緊急事態に、恵はいつもの面倒そうな調子でそこにいた。 「無事だったか。早く避難しようぜ」 「……逃げる所、あるの?」 「ジオフロントだ。まだ工事中だが、内部構造はもう出来上がってるらしい」 巨大なシェルターとも言える地下都市なら安全だろう。 問題は、そこまで行く道のりだが。 「車は使えないから、歩きで行くしか無いな」 「それ、結構時間掛かるね」 ジオフロントまでの距離は15km程。 歩いて行けない距離では無いが、それは普段の話だ。 護衛がいればいいんだが、この状況じゃそんなに都合よく見つける事も出来ないだろう。 「仕方ないな、出発しよう」 「わかった」 そのまま大した準備もしないまま、俺と恵はジオフロントに向かった。
2006.10.22
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裏新ジャンル「猫耳」に便乗する その1 「桃太郎」は近所の居酒屋だ。 普段は夜にならないと開店しないが、その日は夜明け頃からお祭りのような賑わいを見せていた。 何でも、直接民主主義システムを悪用した独裁者の政権がクーデターで倒されたとかで、その日は国中で同じような騒ぎだったらしい。 新しく政権を取った「W.O.L」という政党はヒューマノイドに人権を付与する事を宣伝しており、その日から晴れて俺も「人間」になったわけだが、今まで不便に感じた事は無いのでどうでもいい事だった。 しかし、友人がお祝いと称して奢ってくれると言うのなら話は別で、携帯電話で呼び出されて早朝だというのにすぐに駆けつけたと言うわけだ。 その友人は影司と名乗る金髪で赤目の男で、どう見ても日本人じゃない怪しげな奴だ。 仕事も何だか日に当たらないような事をやってるらしく、今回もW.O.Lに肩入れしていたとかで上機嫌になっていた。 特にこのクーデターの事を語るわけでもなく、いつものように冗談を言いあいながらしばらく飲んでいたが、影司は唐突に今後についての話題を振ってきた。 「で、お前は人権をもらったわけだが。ハンターになったりしないのか?」 「ハンター?考えた事無いな」 前の独裁者の時代、犯罪の凶悪化に伴って警察の力は低下して行った。 政府が対策を決めかねている中、民間の出資者がそれら凶悪犯に賞金を掛け、腕の立つ者達が賞金を得る為に警察の代理をやり始めたのがハンターの原型らしい。 「働きもしないってのはどうかと思うからな。お前もヒューマノイドなんだから、素質はあるだろ」 「素質ねえ」 猫耳を含むヒューマノイドは、労働等にも使われる為に見た目だけではなく能力も底上げされている。 まあ本来の用途はそっちで、耳や尾の方がヒューマノイドを見分けるためのおまけのような物らしいんだが。 「剣でも銃でも、教えて欲しければ教官を紹介をしてやる。あと、魔術とか」 「何故そこで魔術か」 いくら俺がファンタジーな見た目をしているからと言って、存在が証明されてないものの習得に努力をする程ファンタジーな脳は持っていない。 こう冗談っぽく言われるとどこまで本気なのかわからないが、とりあえず。 「必要ない。そういう危険な仕事は嫌いだからな」 「そうか?まあ、気が変わったらいつでも言ってくれ」 この話題はそれで終わり。 それからまたしばらく飲んでから帰ったわけだが、やけに心にひっかかったので恵に質問するきっかけになったわけだ。 結論として、俺はこのままでいいと思った。 普通に生活しているだけでも、恵と俺が満足ならいいじゃないか。 ハンターを薦めてくれた影司には悪いが、まあ就職するとしてもありきたりの仕事にしようと思う。 ……そう思っていた。その3に続く
2006.10.20
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ある時何とはなしに調べてみたのだが、猫耳というのは本来フィクションに描かれる少女達に付いているものらしい。 少なくとも猫耳付きで平穏な暮らしをしているキャラクターは俺が読んだ物語には存在せず、冒険に出てみたり異形の者と戦ったりと派手な活躍ばかりが描かれている。 それが人間が望む、猫耳の有り方なんだろうか。 「……って事なんだが、どう思う?」 そんな事を突然訊ねても、彼女はいつものように面倒そうにしながらも答えてくれた。 「フィクションなんてみんなそんなものでしょ。現実には、修二みたいなのがいても全く問題ないと思う」 「そうか」 現在の社会状態を考えると妥協な答えだ。 50年前ならただの妄想だが、遺伝子操作でフィクションの生物を作ってしまうバカが現実にいる今、俺のように仕事も無く煙草を吸って過ごす猫耳なんて100人単位でいると思う。 ただ、そんなのを養う事を彼女が望んだのかという疑問から質問してみたのだが、これ以上訊いてもまともな答えを聞ける事はなさそうだ。 まあ、10年以上一緒に暮らしていているのだから、今更そんな事はどうでもいいんだろう。 お互いこの関係が気に入っている事は、何となく空気から感じられる。 彼女の名は伊倉 恵。 俺の母であり、姉であり、最近は恋人のようなものでもある。 先に言ったように彼女が何を望んでいたかは知らないが、俺がガキの頃に連れてこられたのが彼女の家だった。 ヒューマノイド製造業者の所で教え込まれた家事なんかをさせられるのかと思っていたが、そういう事をやれと言われる事も無く、意外に思ったのを覚えている。 ちょっとした決まり事はあったが、後は特に何かを命令される事は無い。 噂に聞いていたヒューマノイドの扱いとはかけ離れた事に疑問を持っていたが、今になって思えば人間の子供に対する接し方をしようとしていたんだと思う。 その結果が現在の俺というわけだが、10年も経って生き方を考え直すような事を始めたのは、一週間ほど前の些細な出来事がきっかけだ。その2へ続く
2006.10.19
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