たとえば、「手を洗う」なんて簡単な表現でも、日本人が作ると、ウォッシュ ハンド? みたいな感じになります。aを付けるの? the を付けるの? あれ、ハンドは単数・複数どっち? なんてことは、考えるだけ無駄です。子どもに言うのであれば、"Wash your hands." これで覚えてください。
さらに、長くモノリンガル環境(=日本語だけの環境)で暮らしてきた人は、思考と日本語がへばりついていて、なかなかはがれません。「電話をかける」を英語にしようとすると、「かける」は洋服をかけると一緒かな~、という連想から、「hang up the phone」としてしまうと、これは「電話を切りなさい。」という逆の意味になってしまいますね。単語は、ばらばらに辞書を引かずに、フレーズでまとめてひく必要があります。
これに慣れてくると、日本語で考えてからその字面を訳すのではなく、日本語になる前の状態から、その言語に導いていくことが可能になります。「テレビをつける」というイメージが、英語なら"Turn on the TV" 、中国語なら、「開電視 ( kai1 dian4 shi4)」と出てくるようになります。二言語操れる人は、これができているので、第3言語、第4言語を習得するのも、ずっと容易になります。
そういう、挨拶とか慣用句は、英語にするのは難しいのです。これは、日本の文化の文脈の中で意味を持つ言葉ですから。仕事中に会った人に、英語で、"You are tired." と言ったら、どんな気持ちがするのか私はネイティブでないのでわかりませんが、少なくとも、そういうやりとりを聞いたことはありません。仕事中に人に出会って、ねぎらいたいなら、"How's it going?" とかって聞いて、相手の答えを待つかな、と思います。中国語だと、「疲れましたか?」に相当する挨拶はあるのですが、中国人の先生によれば、これには、「疲れてません。」と必ず答えるのだそうです。仕事で疲れた、と答えることは、その仕事をやる能力に欠けていることを示すもので、弱みを見せることになるからだ、ということです。確かに、私も、「疲れましたか?」「疲れてません。」以外のパターンを例文集で見たことはありません。
日本人が書くメールを見ると、最初は必ず、"Thank you for your email." で始まります。「メールありがとうございます。」の訳ですね。これ自体は、正しい英語ですし、完ぺきに通じますが、私は、アメリカ人からこういうメールをもらったことはありません。"I'm glad to hear from you." は、たまに書いてあります。だから、こちらのほうが自然なんだろう、と思います。
そして、日本人のメールの最後は、「Thank you in advance.」です。これは、「よろしくお願いします。」の訳だと思います。でも、毎回それを書くのはどうかと思います。先に日本語を作ってから、英語にしていくから、こんな風になるのです。英語なら、英語のコミュニケーションのやり方をEメール例文集を見て、あとは、実際にやりとりしながら、増やしていきましょう。最初は、間違いをすることは恥ずかしいことではありません。こちらは外国人ですから、相手もわかってくれます。でも、こちらも、日本語に固執しないで、英語のコミュニケーションの仕方を一から学んでみる努力をしてみるとよいでしょう。