分太郎の映画日記

分太郎の映画日記

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

分太郎1999

分太郎1999

カレンダー

2007.06.02
XML
 ザ・ピーナッツといって、今の若い人にどの程度通じるか分からないが、かつて一世を風靡した、歌唱力抜群の双子の女性デュエット。
 そのザ・ピーナッツが初めて主演した歌謡青春映画。
ラピュタ阿佐ヶ谷 で開催中の「 添えもの映画百花綾乱 SPパラダイス 」での上映を鑑賞。併映は『 チャンチキおけさ 』。

 『可愛い花』 評価:☆☆☆

 世代的にザ・ピーナッツというと、イコール、1961年公開の映画『モスラ』に登場したインファント島の小美人(あの♪モスラーーや、モスラー♪を歌っていた双子)だったりする(と言っても、実際は私が生まれるよりも以前の公開で、幼い頃に何度となく『モスラ』はテレビで放映されていたのを見たのだが)。
 その2年前の1959年、彼女らがデビューした年に、本格的に映画出演したのが本作である。


 産まれてすぐに離ればなれになっていた双子の姉妹が再会し、デュエットとして華々しく世に出ていくまでを描いた軽いタッチの歌謡映画。
 レコード会社のディレクターに岡田真澄が扮し、またライバル会社の人気歌手を平尾昌章が演じていて、その喉を聴かせてくれる。

 深みやドラマチックな展開がある訳ではないが、こういう“歌手”を歌手としてきちんと使った話は、個人的には結構好きだったりする。
 併映の『チャンチキおけさ』で、出演の三波春夫と歌が映画の中では完全に“浮いて”いたのとは対照的だ。

 そして、50分という短い時間の中で、ディレクターとその妻である興信所の調査員との、倦怠期?にある夫婦が絆を取り戻す話が、全体を貫くもう一つの糸として織り込まれていて、これが単なる歌謡映画を味のあるものにしている(ラストを見ると、こちらが話の本筋のような感じだ)。
 まぁ展開そのものはご都合主義以外の何者でもないが(とくに投資云々あたり)、この夫婦の姿が、双子姉妹の両親とダブってくるあたりの展開は、なかなかに効果的だ。

 もっとも演技的には、主演のザ・ピーナッツの二人は、セリフが棒読みだったり、ちょっと厳しい感は強い。
 しかし、映画中で聴かせてくれる数曲の歌は(当たり前だが)さすが絶品ものだ。
 私が知る限りでは、日本の女性デュエットの中で、彼女たちを越える歌唱力のコンビは、その後、出てきていないのではないか。
 確かにレコーディング技術の発達で、(それらしく)聴かせてくれるデュエットは数々あるが、お腹の底に響く歌声とハーモニー、そして歌謡曲から民謡まで歌の種類の広さでは、ザ・ピーナッツがピカ一だろう。(と思うのは、単に自分が“おじさん”だからかもしれない……)
 その歌声を楽しめるだけでも、この映画の価値はあるであろう。


 彼女らを形の上では見出したことになるディレクターに扮した岡田真澄は、デビュー4年目で、まださほど演技力がある感じではないが、ちょっとドジでまぬけな役がらを軽妙に演じていて、なかなかによい。
 ある意味、クライマックスでおいしいところを持っていく平尾昌章は、出番が多い訳ではないが、歌唱を披露することとあいまって、味わいのある演技をみせる。
 双子の父と母に扮した松下達夫と相馬千恵子は、互いに頑固で意地っぱりな両親を巧みに演じていて、姉妹をうまくサポートしていた。

 なお、映画の中に出てくるテレビ番組「ザ・ヒットパレード」は、実際にフジテレビで放映されていた番組で、この1959年からザ・ピーナッツはレギュラー出演している。

 言ってみれば、ザ・ピーナッツを売り出すためのたわいない映画ではあるが、昭和30~40年代に、日活ほかの映画会社が数々つくった中篇の歌謡映画――ヒット曲をモチーフに、歌手本人が出演した――の中では、ザ・ピーナッツの魅力と心の離れかけた夫婦が絆を取り戻す話とをバランスよくまとめた、ちょっとした佳作ではなかろうか。



 化粧品会社の社長・荒谷しずえは、娘・ユミがテレビ番組のCMソングを歌っているのをみて、烈火のごとく怒るが、その頃、当のユミは家出していた。しずえは、興信所の腕利き調査員・岡本ミヤを雇って娘の居所を探させる。
 一方、ミサイル・レコードの社長・銭山は、ライバル会社の看板歌手・平田昌彦のリサイタルに顔を出すが、その平田から、かつて銭山の会社のディレクター・岡本信一を訪ねた際に、岡本がラジオの株式情報に夢中で、ろくに歌を聞いて貰えず追い返された経験があったからこそ現在の自分がある、との話を聞かされた。慌てて会社に戻った銭山は岡本に、新たなヒット歌手を見出さなければ馘だと言い渡す。
 折しも、かつての流行歌手の竹下が、娘・エミの歌を聞いてほしいと岡本を訪ねてきたが、エミの歌は彼の胸には響かなかった。そこに岡本の妻でもあるミヤが、ユミを探しにやってくるが、当のユミ自身も、歌を聞いてもらいたいと飛込んできて、ばったりエミと対面することになった。
 同じ顔をした二人に竹下は、実は二人は双子の姉妹で、妻との離婚とともに、一人ずつ引き取ったと打ち明ける。しずえがユミが歌手になることに反対なのは、別れた夫が、売れなくなっても歌手にしがみついて苦労したことが原因だった。
 その夜、しずえがミヤを相手に甲斐性のない夫・男性はダメだ、自分を頼ればよいのにと愚痴ると、夫の岡本よりも稼ぎのよいミヤは、それに激しく同調する。一方、竹下も岡本を相手に、女房が何だと気勢をあげ、それに激しく共感した岡本はミヤと離れて暮らすことにした。
 岡本のところで再会したエミとユミは、互いに入れ替わって、父と母に甘えることにした。が、いずれも頑固に相手を批判するだけの両親の姿に、エミとユミは入れ替わっていることを明かし、仲直りしなければ自分たちだけで暮らしていくと訴える。
 その娘の姿に反省した竹下としずえは、よりを戻し、歌手になりたいという娘たちの希望を叶えるために、改めて岡本のもとを訪ね、歌を聞いてほしいと頼みこむ。どちらが先に歌うかで譲りあったエミとユミは、たまたま一緒に歌うことになった。いつものように岡本は、一旦はラジオの株式番組をきき始めるが、二人のデュエットの素晴らしさにラジオを切り、その歌声に聞き惚れるのであった。
 たまたま、その場に同席していた平田は、慌て自社に戻った。社長に凄い新人がいるので是非契約をと話し、手数料の受け取りの条件を取りつけると、再びエミとユミの歌っているミサイル・レコードに引き返してきた。そして、竹下としずえを密かに呼び出し、契約書に判を押させてしまった。
 歌のテストが終わり、銭山が(二人が未成年のために)両親と契約を取り交そうとするが、後の祭り、エミとユミはライバル会社の専属になっていた。岡本は馘になる。
 その夜、平田とミヤは、岡本がミヤの元に戻るために会社を馘になるようにしたと打ち明け、平田が受け取った手数料を全額手渡すが、岡本はその金を手に姿を消してしまう。
 エミとミヤのコンビはザ・ピーナッツと名付けられ、レコードにテレビにと華々しいデビューを果たした。そして、デビュー・リサイタルが開催されることになった。会場に着いたミヤの前に、スポーツカーで颯爽と乗りつけたのは岡本であった。彼は受け取った金を元に、好きであった株式投資を始め、巨額の財産を築いていた。ザ・ピーナッツの歌を聞きながら、岡本とミヤは厚く手を握りあうのであった。


『可愛い花』

【製作年】1959年、日本
【製作・配給】日活
【監督】井田探
【脚本】高橋二三
【撮影】柿田勇
【音楽】中村八大
【出演】伊藤エミ(エミ)、伊藤ユミ(ユミ)、岡田真澄(岡本信一)、白木マリ(岡本ミヤ)、平尾昌章(平田昌彦)、松下達夫(エミとユミの父:竹下)、相馬千恵子(エミとユミの母:しずえ)、深見泰三(ミサイル・レコード社長:銭山)、堀恭子(銭山の愛人:ミドリ) ほか


CD『ザ・ピーナッツ
ベストセレクション』

CD-BOX
『ザ・ピーナッツ全集』

CD
『可愛い花』

DVD『モスラ』





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007.06.07 16:46:24
コメント(0) | コメントを書く
[日本映画(1951~60)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

バックナンバー

・2024.12
・2024.11
・2024.10
・2024.09
・2024.08
・2024.07
・2024.06
・2024.05
・2024.04
・2024.03

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: