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CAPTAINの航海日記
CAPTAINの一筆書き旅行記 その6
<CAPTAINの一筆書き旅行記 その6 ~中部・関西編(後編)~>
◎はじめに
今回の旅行は、中部・関西編(後編)です。
ではあるんですが、今後の旅行に際して、ここで気になる点を解消しておかなければなりません。
それは、四国の存在。
宮脇俊三の最長片道切符の旅の時点(1978年)では本州から四国へ向かう国鉄の連絡船が2本(宇野~高松の宇高連絡線と、仁方~堀江間の仁堀航路)あったので四国を通り抜ける形で行程を組めたんですが、仁堀航路は1982年に廃止。その後1988年には宇高連絡線が瀬戸大橋線へと転換され現在に至っていますが、本州から四国へのJR系ルートは1本のままになっているため、同じく本州へのルートが1本しかない北海道、九州に比べて鉄道の敷設距離が少ない四国は、一筆書きのルートから外れてしまうんです。
なので、関口知宏の最長片道切符の旅(2004年)では岡山を基点とし四国を一周する特別編を企画していますが、その過程で宇野線や瀬戸大橋線を2回通ってしまうので、一筆書きにならなくなるのがちょっと不満です。
そこで当方の旅では、あくまで一筆書きにこだわり、四国については、「瀬戸大橋線で入ってしまなみ海道を走る高速バスで本州に戻る」方式を採ることにしました。ルートの途中で鉄道じゃないものが混じるのはちょっと気になりますが、それよりももっといろんな所に旅したい(バーチャルだけど・笑)気持ちが勝った結果だと思って、ご了承願えれば幸いです。
で、なんでこんなことをここのマクラで話しているのかというと、上記の経路を採用すると近畿地方以西のルートが大きく変わってしまうからなんです(以前に発表したルートは
こちら
)。どのように変わってしまうのか、今回と次回の旅行をお楽しみ願えれば幸いです。
最後に、この項を書いている時点で2004年10月16日のダイヤ改正を迎えてしまったんですが、あくまで2004年3月13日改正のダイヤで記述しますので、ご了承願います。
1・中部・関西編(後編)・プロローグ(桑折~夜行バス車中)
◎本日のルート
桑折 19:11 ~ (東北本線) ~ 福島 19:24
福島 19:40 ~ (夜行高速バス・ギャラクシー号) ~ (車中泊)
※一筆書きルート=なし。距離=本日0.0キロ、通算8,070.3キロ。
◎あらすじ
最初の北海道編を除いてこれまでの旅行では出発日に一筆書き旅行ができていたんですが、今回以降は出発点にたどり着くまでに時間を要するため、そこまでどうやって効率的に移動するかも、重要な要素となってきます。飛行機、新幹線、夜行列車… 手段はいろいろありますが、今回は夜行の高速バスを使っての移動となりました。
従って、自宅を出発したのが午後7時のこと。夕食を摂ってから家を出ると言ったので、子供に泣かれてしまいました。「おしごとだよ~」ととっさにウソをついてしまいましたが、本当は物見遊山に行くのだから、良心が傷みます。子不幸なオヤジです。
福島駅から、高速バスに乗車。夜行の高速バスはかなり久しぶりでそれなりに興奮しましたが、車内の電灯が消えるやいなやス~ッと眠りに落ちてしまいました。
2・中部・関西編(後編)・初日(夜行バス車中~京都~山科~富山)
◎本日のルート
(車中泊) ~ (夜行高速バス・ギャラクシー号) ~ 京都 6:13
京都 8:10 ~ (東海道本線、湖西線、北陸本線・特急サンダーバード3号) ~ 敦賀 8:59
敦賀 9:08 ~ (北陸本線) ~ 米原 10:02
米原 10:09 ~ (東海道本線) ~ 大垣 10:43
大垣 10:51 ~ (東海道本線・新快速) ~ 岐阜 11:06
岐阜 11:23 ~ (高山本線・特急ワイドビューひだ5号) ~ 高山 13:18
高山 16:03 ~ (高山本線) ~ 猪谷 17:09
猪谷 17:24 ~ (高山本線) ~ 富山 18:13(泊)
※一筆書きルート=山科~(湖西線)~近江塩津~(北陸本線)~米原~(東海道本線)~岐阜~(高山本線)~富山。距離=本日375.4キロ、通算8,445.7キロ。
◎あらすじ
昨晩来の高速バスの長旅からようやく開放され、6時13分、京都駅の八条口に到着。車内ではそれなりに眠ったつもりなんですが、身体に眠気が残っており、しかも窮屈な体勢で寝たものだから、節々がちょっと痛みます。
とにもかくにももうちょっと寝たいので、キヨスクで買ったパンで軽く朝食を済ませると、目に付いたベンチでZZZ… 初日からこんな調子では、今後が心配になります。
で、一筆書き再開となる列車は、大阪始発の特急サンダーバード3号富山行。まずは湖西線を攻略となりますが、この特急に乗ってしまうと、なんと敦賀までノンストップ! 敦賀へは明日の日中に訪れる予定なのでいまいち腑に落ちませんが、湖西線と北陸本線との接続駅・近江塩津に停車する列車がないので、やむを得ません。8時09分、0番線に到着するや否や、空席を目指して自由席をウロウロ、サラリーマン風の小父さんの隣に座ると、県境のトンネルに入ったこともあってか、またもやZZZ…
気がついたら既に近江今津でした。琵琶湖の景色を堪能しようかと思ってたんですが、一番の見所を思いっきり見逃してしまいました。
その後もトンネルの連続で眠気を我慢しながら、8時59分、敦賀に到着。ここからは、9時08分発の普通列車で、米原まで折り返します。
敦賀を出た北陸本線は上下線が大きく離れ、私が乗っている上り線はループ線に入ります。トンネルの中をグルリと回って外に出ると、眼下に小浜線のレールが光って見えます。再びトンネルを潜って滋賀県に戻り、山中をしばらく走ると、久しぶりの平野。虎姫あたりの水田地帯を走り抜けると、右手には琵琶湖。そして左手の景色も長浜の市街地へと入ります。
このあたりまで来て、眠気がようやく落ちついてきました。なもんで、観光地である長浜では降りてみたい気持ちになりますが、今日は本数の少ない高山本線を走破しなければならないので、先を急ぎます。
長浜を出ると再び水田地帯に戻り、ほどなく東海道新幹線と東海道本線とがまとめて合流。米原に到着します。ここで、10時09分発の大垣行普通列車に乗り換えます。米原以東の東海道本線は、JR東海の所轄。車内では久々に、名古屋の雰囲気を味わいます。
天下分け目の関ヶ原を越えて濃尾平野に出、10時43分大垣着。ここで10時51分発の浜松行新快速に乗り換えて、11時06分岐阜着と、順調に行程を消化。更に息つく暇もなく、名古屋からやってきた11時23分発のワイドビューひだ5号で、一気に高山へと向かいます。
斎藤道三ゆかりの金華山に見送られ、岐阜を出発。ディーゼルカーですが特急なので、ノロノロ感はさほどありません。鵜沼の近くで木曽川が寄り添い、対岸には犬山城も見えます。さっきから長浜、岐阜、犬山と戦国絵巻をたどる旅をしているような気分になります。
太多線と長良川鉄道とが分岐する美濃太田を過ぎると平野が尽き、木曽川の支流の飛騨川にぴったりと寄り添います。周囲は山また山。ほどなく飛水峡に入り、高山本線は飛騨川へと落ちる斜面にへばりつくように走ります。
白川口の先で曲流する飛騨川を2回渡り、更にしばらく谷底を走ると、いよいよ飛騨国、行政区域は2004年に益田郡全域が合併してできた下呂市です。今世紀初頭の大合併では全国各地で広い市域を持つ市ができましたが、岐阜県はその先駈けで、この下呂をはじめ、飛騨古川を中心とした飛騨市、郡上八幡を中心とした郡上市が成立しています。おかげで、これから通る中山七里や下呂温泉はもちろんのこと、乗鞍岳の懐にある濁河温泉まで下呂市の市域内。駅間距離の長い高山本線ですが、市内の駅も8つ。うち4駅は特急停車駅です。
ちなみに私の乗っている列車は、下呂市内では中心駅の下呂にしか停車しません。周辺の景色を見るとなるほど、東海地方を代表する温泉街だからか高層建築のホテルが目立ちますが、それを差し引いても、山中に突然と出現した「都市」ではあります。
下呂市からようやく脱出して久々野を通過すると、太平洋側と日本海側とを分ける宮峠のトンネルへ。これを抜けると高山盆地に向かって勾配を降りていき、13時18分、高山駅に到着。この列車は富山行ですが、お昼時でお腹も空いたし高山観光もしたいので、途中下車します。駅の近くで昼食を摂ってからまずは上三之町へ直行。その後も駅で貰ったパンフレットを片手に、高山陣屋や高山屋台会館などを見て回りました。
すっかり高山を堪能してから、16時03分発の猪谷行普通列車で出発。高山~猪谷間は普通列車が9往復しかない閑散区間で、そのせいか、車内は高校生や買い物あるいは通院の帰りらしいお年寄りで混雑していました。その混雑も、飛騨市の中心・飛騨古川までに解消。高山盆地もこのあたりで尽き、線路は富山湾に注ぐ神通川の支流である宮川に沿います。岐阜から高山に至る飛騨川の渓谷も急峻でしたが、こちらも負けず劣らずといったところで、しかもこれまで高山本線と競うように走っていた国道41号線がこの地域を避けて走っているため寂寥感では飛騨川を上回ります。
そんな所をしばらく走っていると、右手から神岡鉄道が合流。河川の方も神岡鉄道と並行して流れている高原川が宮川に合流し、神通川となります。そして終点の猪谷。淋しいところにある駅ですが、JR東海とJR西日本の境界にあたる運転上の拠点駅です。
富山行の普通列車に乗り換えて出発すると、ほんの数分もしないうちに、富山平野に降ります。特にどうと言うことのない農村地帯をしばらく走ってから富山市街を迂回するように西に大きなカーブを描き、北陸本線に合流。夕暮れ真只中の18時13分、富山駅のホームに滑り込みました。
3・中部・関西編(後編)・2日目(富山~京都)
◎本日のルート
富山 9:36 ~ (北陸本線) ~ 福井 11:59
福井 13:00 ~ (北陸本線) ~ 敦賀 13:55
敦賀 14:24 ~ (小浜線) ~ 東舞鶴 16:14
東舞鶴 16:16 ~ (舞鶴線、山陰本線・特急まいづる8号) ~ 京都 17:53(泊)
※一筆書きルート=富山~(北陸本線)~敦賀~(小浜線)~東舞鶴~(舞鶴線)~綾部~(山陰本線)~京都。距離=本日377.0キロ、通算8,822.7キロ。
◎あらすじ
北陸地方3県は、一筆書き旅行にとって、ある意味鬼門の地域です。
というのも、出入りできるルートが限られてしまうから。昨日高山本線で富山入りし、その前に敦賀以南の北陸本線に乗ってしまったので、あとは北陸本線と小浜線を使って舞鶴へ抜けるしか術がありません。乗り継ぎの妙が一筆書きの魅力ですが、今日はそれが完全に殺がれています。
それはともかく、前日の不規則な睡眠パターンを少しでも修正しようと、昨晩は早めに就寝。朝7時半にセットした目覚ましの音に、気持ち良く目覚めることができました。繁華街の総曲輪の近くに宿をとったので、路面電車で富山駅へと向かいます。
9時36分発福井行の普通列車で、一筆書きを再開。比較的人家の多い地域を走って9時53分、二本の盲腸線と接続する高岡に到着します。この二つの盲腸線、北へ延びる氷見線は県境を越えて能登半島まで延びる計画があったようだし、南へ延びる城端線は終点の城端から五箇山や白川郷へと向かうバスが出、白川郷からは郡上八幡までのバスがあります。せめて氷見線が七尾線の羽咋か七尾あたりまで延びていたら、あるいは城端線と長良川鉄道(旧越美南線)、ついでに言えば越美北線あたりが繋がっていたら、一筆書きの旅も多少は楽しいものになってたのかな… と悔やまれます。
その高岡を過ぎると倶梨伽羅峠に差し掛かり、石川県へ。この石川県は、鬼門の北陸地方の中でもひときわの存在で、一筆書き旅行では北陸本線だけしか使えません。通過する駅数も、わずか18。後で集計しますが、恐らく通過する駅数では全国最少の県でしょう。
そんなかわいそうな石川県だからせめて車窓だけでも気合を入れてみようとすると、左手から建設中の北陸新幹線の高架橋が近づいてきます。先刻通過した富山県の石動から金沢の間で先行して着工しているもので、完成後はこの高架橋はスーパー特急方式で活用されるとのことです。
新幹線乗り入れに伴う改修工事でごった返す東金沢を過ぎると、金沢に到着。石川県には申し訳ない気持ちもあるので途中下車しようかと思いましたが、列車が福井行ということもあり、薄情にも乗車を続けます。
JRの工場がある松任、松井秀喜の故郷である根上町の玄関口・寺井など、その後も個性的なところを通り、高架駅の小松へ。ここはその名の通り駅の東側にコマツの工場があります。隣の粟津にもコマツの工場があり、まさに企業城下町といった風情。
加賀温泉郷の只中を通り、牛の谷トンネルを抜けると福井県。平野に出ると芦原温泉、次いで「日本一短い母への手紙」で知られる丸岡と停まりますが、いずれも芦原、丸岡の町とは離れています。右手に福井空港の滑走路が見える春江を過ぎ、九頭竜川を渡ると終点の福井で、11時59分着。ホーム上で正午の時報となったので、街へ出て昼食と参ります。
福井発13時ちょうどの普通列車に乗車し、旅行再開。武生までは福井平野を走りますが徐々に山間の雰囲気を漂わせていき、南今庄のすぐ先で北陸トンネルへ。こうした長大トンネルの先は県境、というのが常なんですが、ここの場合はトンネルを抜けてもまだ福井県。山梨県の笹子トンネルと並んで、ちょっと珍しいケースです。北陸トンネルを抜けるとさほど間をおかず市街地が展開し、13時55分、敦賀に到着。丸一日ぶりの再訪です。ここで小浜線へと本日初の乗り換え。
2003年に電化された小浜線は、車両も新しくてキレイです。14時24分発東舞鶴行の普通列車がホームに到着するやいなや、海が見えるかなと期待して、右側のシートに腰掛けます。
ところが、出発した車両はまずはグングンと高台を登っていきます。遠くに敦賀の街そして鶴賀湾が見えますが、どうせ海が見えるなら、やっぱりすぐ近くの方がいいです。今回の旅行では海に接する機会がまだないので、その瞬間を心待ちにしながら、景色を眺めます。
低い山を越え、気山のあたりでようやく海か?と思われる景色が展開しますが、地図で確認すると、三方五湖。車窓から見えるのは久々子湖、菅湖、三方湖の三つです。
ようやく間近で海が見えるようになったのは、小浜を過ぎてからのことでした。そかしそれもつかの間、若狭本郷を過ぎると、再び山の中へと入ります。この辺りでも海に近いところを走ってはいるんですがなにぶん地形がリアス式海岸なものだから、半島の基部にあたる峠を越えるときに遠くにチラッと海が見える程度です。
松尾寺から京都府に入り、16時14分、真新しい高架駅の東舞鶴に到着。ここで特急まいづる8号に乗り換えて一気に京都まで行くんですが、発車が16時16分で、時間がありません。この駅のホームは島式1面だけなので迷うことはありませんでしたが、気が急いていたので慌てて乗り込みます。
肩で息をしているうちに、特急は出発。すぐに山の中に入ったかと思うと再び市街地が登場し、西舞鶴。その後は丹波の山間を行き、16時41分着の綾部で福知山から来た特急たんば6号を併結し、方向転換。標高は低いとはいえ日本海側と太平洋側との分水嶺を越え、園部からは「嵯峨野線」と愛称される郊外電車区間へ。といっても、園部もその先の亀岡も、ベッドタウンと呼ぶにしてはどこかのどかな風景で、何となく心が安らぎます。
亀岡の次の馬堀からは、新線に入ります。トンネルだらけになりますが、合間に保津川の渓流が見えたりして、意外に飽きません。嵯峨嵐山からは京都の市街地に入り、17時53分、終点京都の31番ホームに到着します。
また京都に舞い戻ってきました。一筆書き旅行を通算して3回目の来訪ですが、今日は初めて、この街に泊まります。
4・中部・関西編(後編)・3日目(京都~豊岡~城崎)
◎本日のルート
京都 9:21 ~ (東海道新幹線、山陽新幹線・ひかり301号) ~ 西明石 10:02
西明石 10:18 ~ (山陽本線、東海道新幹線) ~ 尼崎 11:03
尼崎 11:18 ~ (福知山線、北近畿タンゴ鉄道宮福線、北近畿タンゴ鉄道宮津線・特急タンゴエクスプローラー1号) ~ 天橋立 13:22
天橋立 15:21 ~ (北近畿タンゴ鉄道宮津線) ~ 豊岡 16:38
豊岡 16:43 ~ (山陰本線) ~ 城崎 16:54(泊)
※一筆書きルート=京都~(東海道新幹線)~新大阪~(山陽新幹線)~西明石~(山陽本線)~神戸~(東海道本線)~尼崎~(福知山線)~福知山~(北近畿タンゴ鉄道宮福線)~宮津~(北近畿タンゴ鉄道宮津線)~豊岡。距離=本日342.7キロ、通算9,165.4キロ。
◎あらすじ
今回の旅行で2度目となる、京都の朝です。
前回は湖西線に乗って琵琶湖の沿岸を旅しましたが、今日は東海道新幹線の客です。次の新大阪でも東海道本線に接するのに何故新幹線に乗っているのかというと、この区間は新幹線の方が在来線よりもわずか0.1キロではありますが距離が長いから。また感情論としても、JR東海の路線の乗り納めという意味合いもありました。
もっとも、京都からわずか15分で新大阪に着いてしまい、乗り納めはあっけなく終了。その後はJR西日本の山陽新幹線となって六甲山をトンネルで抜け、10時02分、西明石着。ここから在来線で再び大阪方面へと戻ります。乗る列車は、10時18分発の姫路発野洲行普通列車。大阪や京都を通る普通列車には、しばしばこのような長距離列車が見られます。明石海峡大橋、須磨海岸、そして神戸の街並みを抜け、11時03分着の尼崎で、福知山線に乗り換え。
尼崎からは、11時18分発の特急タンゴエクスプローラー1号で、一気に天橋立まで行きます。思い切ったチョイスですが、第三セクターの北近畿タンゴ鉄道を走る特急に乗りたいとの誘惑には、結局勝てませんでした。久々にワクワクする思いで尼崎の2番線ホームで待っていると、天井近くまである大きな窓をもった銀色の車両がやってきました。
宝塚までは大阪近郊の住宅街を走りますが、宝塚の次の生瀬を過ぎるとトンネルの連続になってしまい、ようやく抜けると道場。道場は神戸市北区に所在しますが、周辺の景観は行政区域の名前とは似つかわしくないひなびた佇まいです。それでも線路は、複線電化の幹線らしい堂々さ。福知山線の近代化は1980年代になってやっと着手されましたが、今では篠山口まで複線電化が完成しています。
篠山口から加古川線の分岐する谷川にかけては加古川支流の篠山川に沿いますが、田んぼの中を走っているうちにいつの間にやら日本海に注ぐ由良川の水系に出、12時44分、福知山に到着。
ここから先は、いよいよ北近畿タンゴ鉄道の宮福線。12時49分に発車した列車はしばらく山陰本線と併走してから右に別れ、宮津へと向かいます。下天津トンネルを抜けると酒呑童子で知られる大江町に入り、その中心の大江駅に停車。更に北へ進んで宮津市に入り、左手から同じく北近畿タンゴ鉄道の宮津線が合流し、宮津に到着します。宮福線は1988年に全線が新規開業した新しい路線のせいかトンネルも多く、あっという間に過ぎてしまった印象です。
宮津で進行方向が変わり、宮津線を5分ほど走って、天橋立へ。到着時刻は13時22分。少し遅くなりましたがここで昼食を摂り、ついでに天橋立の見物と参ります。
天橋立でまずやってみたいのは、何と言っても「股覗き」。昼食もそこそこに駅の裏手から出ているリフトに乗って飛龍観展望台へ登り、早速実践。その後は再び下界に降りて、レンタサイクルで橋立の上を少し走ってみました。
久しぶりに観光をして過ごし、15時21分発の普通列車で、天橋立を出発。しばらくは海が見えるのかなと思いましたが残念なことに次の岩滝口を過ぎると内陸に入ってしまいます。
かつて加悦鉄道が分岐していた野田川の次の丹後大宮から兵庫県境の久美浜までは、2004年に6つの町が合併して成立した京丹後市。一昨日の下呂市といい、今回の旅行は市町村合併の視察が目的なんじゃないかと思わず勘違いしてしまいます。別に市になっても風景はむしろこれまで以上に鄙びているので、退屈して寝ます。気がつくと久美浜で、少しだけ海を見てから低い峠を越えると、再び兵庫県。ほどなく終点の、カバンとコウノトリの街・豊岡で、16時38分の到着です。
豊岡から先のルートは、山陰本線で和田山に出、播但線で姫路へと抜けることになっていますが、沿線に格別の街がないので豊岡で一旦旅行を中断し、山陰本線を逆に進んで城崎に泊まります。ホームで待機していた浜坂行のディーゼルカーに飛び乗ると、すぐに出発。広々とした円山川沿いをしばらく進むと城崎です。まだ日暮れ前。これから温泉にゆっくりと浸かって、リフレッシュしたいと思います。
5・中部・関西編(後編)・4日目(城崎~豊岡~鳥取)
◎本日のルート
城崎 8:18 ~ (山陰本線) ~ 豊岡 8:30
豊岡 8:36 ~ (山陰本線) ~ 和田山 9:08
和田山 9:14 ~ (播但線) ~ 寺前 10:06
寺前 10:13 ~ (播但線) ~ 姫路 10:53
姫路 11:02 ~ (山陽本線) ~ 相生 11:21
相生 11:24 ~ (赤穂線) ~ 西大寺 12:42
西大寺 14:08 ~ (赤穂線) ~ 東岡山 14:16
東岡山 14:20 ~ (山陽本線) ~ 上郡 15:09
上郡 15:17 ~ (智頭急行) ~ 佐用 15:36
佐用 15:38 ~ (姫新線) ~ 東津山 16:31
東津山 16:33 ~ (因美線) ~ 鳥取 17:48(泊)
※一筆書きルート=豊岡~(山陰本線)~和田山~(播但線)~姫路~(山陽本線)~相生~(赤穂線)~東岡山~(山陽本線)~上郡~(智頭急行)~佐用~(姫新線)~東津山~(因美線)~鳥取。距離=本日313.6キロ、通算9,479.0キロ。
◎あらすじ
今回の旅行は、1日に乗る列車の本数が、前回までと比べて少ない傾向にあります。3日連続で特急を利用するなど安易に走った傾向がなくはないんですが、細かい乗り継ぎという一筆書き旅行の妙が減殺されているのは、やや淋しいです。
ところが今日は一転して、一筆書き区間内だけで10本の列車に乗る予定。もっともこれは電化区間との兼ね合いで乗り換えざるを得ないケースがあったりもした結果なんですが、ひなびた路線が多い割には絶妙の乗り継ぎが続くので、これまでの旅行を通算して、作ったスケジュールの中では1、2を争う出来じゃないかと思っています。
城崎の宿で朝風呂を浴びてから浜坂から来た8時18分発のディーゼルカーに乗り、8時30分に一筆書き再開となる豊岡へ。ここで福知山行の電車へと最初の乗り換えとなりますが8時36分発で、のっけから絶妙の乗り継ぎです。
豊岡を出てからも線路は丸山川と着かず離れずの関係を保ちながら、谷を遡ります。これまで何度となく見てきたイナカの風景ですが、ここ但馬では市町村合併の波がかなりドラスティックに進んでおり、豊岡市の隣が2004年に成立した養父市、更にその隣は今のところ朝来郡和田山町ですが、2005年の4月に周辺の町と合併して朝来市となる予定です。
その和田山で、これまたわずか6分の接続待ちで、播但線のディーゼルカーに乗り換え。円山川を更に遡り、分水嶺を越えて姫路へと向かいます。その分水嶺は新井と生野の間にあるんですが、越えてもまだまだ新・朝来市の区域内。かつて銀山で栄えた日本史の教科書でもおなじみの生野町は私の住む桑折町にも半田銀山という銀山があったものだから銀山つながりでそれなりの近親感を抱いていましたが、合併で消えてしまうのはちょっと残念です。今回は通過するだけですが、昔日の栄華をしのばせる町並みも残っているそうなので、いずれじっくり訪れてみたいと思います。
生野から先は、市川沿いを南下します。あともう一つ、こちらは既に和田山から絡みつくように行程を共にしているんですが、播但連絡道路の存在も、さっきから目につきます。播但線は特急こそ走っているものの一部未電化のローカル線だし並行する国道も312号線と名前からは重要度がさほど感じられませんが、そんなところに一際目立つ高速道路。遠目にはクルマの通行具合はわかりませんが、やはりこちらも閑散としているのかあるいは新しい需要を開拓してそこそこ賑わっているのか、商売敵に乗っている身としては、ちょっと気になります。
10時06分着の寺前で、ディーゼルカーから電車へと乗り換え。JRの都合で乗り換えさせられるんだから当然といえば当然ですが、ここでも乗り継ぎ時間は短く、10時13分発。その後は広々とした播州平野をトコトコと進み、10時53分、終点の姫路に到着します。
ここで適度な接続待ち時間があれば姫路城でも見に行くところだったんですが、ここでもわずか9分しか待ち時間がありません。ちなみに、次に乗る電車は11時02分発の山陽本線三原行。「三原」という中国地方の地名に新鮮さを感じます。三原に行くのは次回の旅行の話になるんですが、その日が待ち遠しくなります。
山陽本線ではわずか4駅だけ乗車し、11時21分着の相生で下車。ここでもなんとたった3分の待ち時間で、赤穂線に乗り換えます。
相生は造船所のある街だし、船坂峠を越える山陽本線に対して赤穂線は海沿いを走るというイメージがあったんですが、実際に乗ってみると、南側に丘陵があって、海は全然見えません。播州赤穂も赤穂浪士の他に製塩の街として知られていますが、海の雰囲気は皆無。ちょっとがっかりです。
麻雀好きなら駅名に一瞬ドキっとする天和(てんわ)の次が、備前福河。いよいよ岡山県に突入です… と思ったら、この駅までが兵庫県。赤穂線の開業当時はここは岡山県だったんですが、1964年に兵庫県赤穂市に越境編入されたんだそうです。
次の寒河からが岡山県で、その次が日生。小豆島や日生諸島への玄関口だけあって、この駅の前後では海がはっきりと見えます。穏やかな、瀬戸内の海です。
ところがその後は再び丘陵の中に入ってしまい、備前焼で知られる備前市へ。備前焼の窯はあまり見られませんでしたが、代わりに見えたのが新幹線の高架橋。この辺りに新幹線が走っているという認識はなかったので、少し驚きました。新駅の誘致運動なんかやってるのかなぁ? ここに駅ができても一筆書きのルートには影響がないようですが。
その後も丘陵や田畑が広がる中を走りぬけ、吉井川を渡って12時42分着の西大寺で途中下車。昼食がてら、会陽で知られる西大寺の見学と参ります。寺はなかなか大きく、三重塔など見ごたえがあったんですが、平日のせいか参拝客が少なく、ちょっと淋しい印象でした。その代わりといってはなんですが、門前町、あるいは高瀬舟の舟運で栄えた古い街らしい趣のある家並みが、印象に残りました。
14時08分の列車に乗り、東岡山で山陽本線に乗り換え。ここでも接続待ちはわずか4分。今日は本当に乗り継ぎ運が良いです。
東岡山からは兵庫県に戻ります。沿線の風景は、赤穂線より山がちになった程度で、特段の変化なし。車外を見る目にも気合が入りませんが、それでも目だけは覚めていたので、和気駅で1991年に廃止された片上鉄道の遺構を必死に探します。
和気のすぐ先で船坂トンネルを越え、兵庫県に逆戻り。下り勾配を進んで、15時09分発の上郡で下車します。
上郡からは、1994年に開通した智頭急行に乗車。大阪と鳥取市とを最短距離で結ぶ路線として第三セクター鉄道の中でも活況を呈している路線ですが、私の乗る15時17分発の普通列車は1両だけのいかにもローカル線然としたもの。それでも車両に入ってみると座席は高校生が占拠しており、結局立ちんぼに。新しい路線らしくトンネルだらけの景観の中を走って、15時36分、姫新線と接続する佐用に到着。今日の宿泊先は鳥取の予定なのでこのまま智頭急行の列車に乗れば一気に智頭、更に因美線に乗り換えて鳥取まで行けますが、もちろん私は遠回りして、姫新線に乗り換えます。姫新線の列車も接続が良く、15時38分の発車。
中国地方の幹線といえば、一般に山陽本線と山陰本線が思い浮かびますが、実は今乗っている姫新線(姫路~新見)および新見から広島までを走っている芸備線も、一筆書き旅行をする際には重要な鍵を握っています。上手い表現が思い浮かびませんが、中国地方の鉄道路線図を簡略化すると、山陽本線、姫新線&芸備線、山陰本線を縦軸としたアミダクジ状になっているので、どうしたってこの路線を活用せざるを得なくなるのです。ついでに言えば、この路線では東津山と津山、新見と備中神代、塩町と三次といった具合に他路線との接続駅が近接しているので、重要度がますます高まってくるんです。そういえば、中国自動車道も、この路線にほぼ並行して走っています。隠れたメインルートなのかもしれません。
そんなことを考えているうちに岡山県に再突入し、16時31分、因美線と接する東津山に到着。と同時に「車両待ち合わせのため5分ほど停車いたします」とのアナウンス。実はその待ち合わせの列車こそが本日の旅行のラストを飾る東津山16時33分発の鳥取行普通列車。結局、今日は最初から最後まで、接続運に恵まれた一日でした。
津山からの高校生をたくさん乗せたディーゼルカーは、次第に鳥取県への県境へと勾配を登っていきます。中国山地にはさしたる高山はないという認識でしたが、人家が異常に少ないので、美作河井あたりでは深山幽谷の趣が深くなります。ここを過ぎると、いよいよ鳥取県。千代川に沿って鳥取へと向かいます。
若桜鉄道が分岐する郡家に着くと、あとは平野を進むだけ。鳥取の市街地に入ると線路は高架となり、右手から山陰本線が合流して、終点の鳥取に到着します。いろいろな路線に乗りまくったのでとても疲れましたが、実は今日の出発点の城崎から鳥取までは、山陰本線を使えば距離わずかに72.3キロ。特急ならば1時間ちょっとしかかからないのでした。
6・中部・関西編(後編)・5日目(鳥取~宍道~桑折)
◎本日のルート
鳥取 8:14 ~ (山陰本線) ~ 米子 10:41
米子 10:46 ~ (山陰本線、伯備線・特急やくも12号) ~ 新見 11
:54
新見 12:27 ~ (伯備線、芸備線) ~ 備後落合13:56
備後落合14:27 ~ (木次線) ~ 出雲横田15:23
出雲横田15:56 ~ (木次線) ~ 宍道 17:26
宍道 ~ (タクシー) ~ 出雲空港
出雲空港18:50 ~ (飛行機) ~ 羽田空港20:10
羽田空港20:39 ~ (東京モノレール) ~ モノレール浜松町21:00
浜松町 21:14 ~ (山手線) ~ 東京 21:20
東京 21:38 ~ (東北新幹線・やまびこ167号) ~ 福島 23:17
福島 23:25 ~ (東北本線) ~ 桑折 23:43(帰宅)
※一筆書きルート=鳥取~(山陰本線)~伯耆大山~(伯備線)~備中神代~(芸備線)~備後落合~(木次線)~宍道。距離=本日282.0キロ、通算9,761.0キロ。
◎あらすじ
今回の旅行の題目は、「中部・関西編(後編)」です。
が、昨日までの行程で、中部地方も関西地方も、すべて乗り終えてしまいました。
今日のルートはすべて中国地方。看板に偽りアリですが、非電化の閑散としたローカル線が大半で後から出直すのも面倒なので、今日のうちにある程度乗り終えてから、帰途につくことにします。
そうそう、帰途についてなんですが、旅行に出るときに、福島のJTBで一枚の航空券を購入しているんですが、これが役に立つのかどうか? ダイヤ通りに列車が走ってくれないと大変なことになるので、ちょっと心配です。今日は曇り空。鳥取の状況を見る限り雨の降り出す心配はなさそうですが、今日のルートの大半は中国山地の只中なので、どうなるか予想がつきません。
とりあえず、まずは鳥取を発ちます。通勤通学客で賑わう鳥取駅を8時14分に出る米子行の普通列車に飛び乗り、西へと向かいます。
湖山池に近い鳥取大学前で学生の一群が降りると、列車はガラガラに。ここからはゆっくりと、景色を眺めることができます。海に近い右側の席に陣取ったですが、お目当ての海が見えたのは、青谷を過ぎてから。ここから泊までは、国道9号線と仲良く、海の近くを走ります。
少し内陸に入って、松崎着。しかしここでも東郷湖に接しており、何かと水分の多い路線です。湖の向こう岸にははわい温泉のホテル街も見えています。倉吉を過ぎ、浦安あたりから線路は再び海に接近。といっても遠くにちょこっと海が見える程度で、福島県浜通りの常磐線の風景に近いものがあります。
このあたりまでくると、海の反対側にも見所が。山陰随一の名山・大山ですが、今日は天気が悪いせいか、なかなか全貌を見せてくれません。その大山の名を冠した伯耆大山で、次に乗る伯備線と合流。ですが鳥取県内の伯備線は普通列車の運行本数が少なく、今回は特急に乗らざるを得ないので、終点の米子まで乗り通します。次に乗るのはやくも12号。最近は伯耆大山に停車するやくももありますが、残念ながらこの列車は米子から根雨までノンストップです。
米子を出たやくもは伯耆大山で向きをプイと南に変え、日野川に沿って進みます。相変わらず曇り空で大山の頂上はよく見えませんが、その代わり山すそははっきりと見え、名山の風格を備えた山彙であると理解できます。でもそんな山すそを米子自動車道が遠慮なく横切っていて、ちょっと興ざめでした。
江尾で米子自動車道と分かれ、岡山県境まで伯備線と日野川の競演が続きます。根雨、生山… 停車駅を通過するごとに山は深くなっていき、分水嶺を越えて1日ぶりに岡山県にカムバック。次は芸備線に乗って広島県を目指しますが、やくもはあいにく芸備線との接続駅・備中神代にも停車しないので、新見まで乗り越します。新見は次回の旅行で立ち寄る予定なので、4日前の敦賀で体験した気まずい思いが残りますが、やむを得ません。その備中神代を無情に通過し、11時57分、新見に到着。新見市は人口2万4千ほどで決して大きな街ではないんですが、山中を走った身からすると意外に大きな街に見えます。
駅構内の売店でパンを買い込んで、12時27分発の芸備線備後落合行普通列車に乗車。列車といっても単行のワンマンカーで、乗客もまばら。これから中国山地の深くまで入るというのに、淋しい布陣です。
車内で買い込んだパンを食べているうちに、布原に到着。かつてはSL撮影の名所として知られていましたが、ホームが1両分しかなく、かなり閑散としています。当然、乗降客もゼロ。
次の備中神代から、いよいよ芸備線。人気の少ない山峡を、坂根、市岡、矢神、野馳と停まります。いずれも瓦屋根を載せた小さな駅舎ですが、揃いも揃って無人駅。というか、芸備線の新見~三次間で駅員配置駅は備後庄原たった1駅だけで、野馳の次の広島県最初の駅東城も、中国自動車道のインターチェンジがある町の中心に位置するのに無人駅なのでした。
その東城で10分ほど停車してから、列車は更に西へと進みます。淋しいところばかりを走る芸備線ですがこのあたりは特に際立っており、1日5往復しか列車が走っていません。
13時56分、終点の備後落合に到着。何もない所ですが、ここで木次線が接しており、乗り換えなければなりません。次の列車は14時27分発の出雲横田行で、またもや1両だけのディーゼルカー。しかも第二木曜日に運休するという妙な曰く付きの列車です。
列車の中で雑誌を読みながら待っていると、いつの間にやら出発。沿線の山は一層険しく、東に道後山、西に比婆山と、中国地方きってのスキーゾーンとなっています。そうそう、比婆山といえば、かつて話題になったヒバゴンは、どうなちゃったんでしょうか? まぁ眉唾物でしょうが、どことなく「もののけ」の似合いそうな山容ではあります。分水嶺でスキー場が広がる三井野原から、島根県に突入。今日は辺ぴなところばかり走っていますが、これで県境を越えるのは3回目です。
ところで、このあたりは地形が峻険で、陸路では大きな障害となっています。そこで、三井野原を出た木次線は山肌を大きなカーブで描くと出雲坂根の3段スイッチバックに差し掛かるし、木次線とほぼ並行している国道314号線は三井野原の近くで奥出雲おろちループと呼ばれる二重ループを描いて高低差を埋めています。鉄路と道路はライバル関係にありますが、ここでは障害を克服する「同志」の印象が強いです。
出雲坂根からは順調に勾配を下り、15時23分、雲州ソロバンの産地として知られる出雲横田に到着。駅には民間委託とおぼしき駅員の姿。新見以来久しぶりに、駅で働く人を見ました。
出雲横田を15時56分に出発し、宍道へ。車内は高校生で結構込み合っています。どの地域でも高校生は五月蝿い人種ですが今はその騒々しさすら嬉しく思います。
ところで、ちょっと気になるのが、彼らの話す言葉。松本清張の「砂の器」で知られるように、この辺の言葉のアクセントはどうも東北弁に似通ったものがあるらしい。そこでちょいと耳を澄ませて会話を聞いてみたんですが、結局、類似点がどこにあるのかわからずじまいでした。
そんな感じで時間潰しをしていると何時の間にか山を降りていて、間もなく宍道のアナウンス。時計を見ると、時刻はダイヤ通り。ヨシ! 今回の旅行は宍道が中断地点となりますが、実は今日の帰りが大旅行。列車が宍道のホームに滑り込むやいなや、改札を飛び出して駅前広場のタクシーに乗り、「出雲空港まで」と告げます。
田んぼの中を10分ほど走って、出雲空港着。家族へのお土産を急いで買いこみ、18時50分発の羽田行最終便に搭乗手続を済ませます。
空港内で市場に比べて値段が嫌に高い食事をしてから、飛行機に搭乗。外は既に闇。だから列車に乗っていれば確実に寝ているところですが、飛行機に慣れていないので恐怖感が先に立ち、なかなか眠れません。機内での1時間少しを目がさえた状態で過ごします。
20時10分、ようやく羽田に到着。駆け足でモノレール乗り場へと急ぎ、浜松町へ。更に山手線に乗り換えて東京駅へとたどり着きます。もう深夜に近いというのに、モノレールも山手線も5分間隔で走っており、日中体験した1日数往復の世界とのギャップを痛感します。
そして東京駅で、21時38分発のやまびこ167号に乗車。仙台方面への最終列車なので混雑しているのが常ですが、この列車の指定席券も念のため押さえていたので、悠々着席。ここでようやく、眠りにつくことができました。
眼が覚めたらもう郡山。あとはなんとか眠気をガマンして福島で下車し、藤田行の最終電車に乗り換えて23時43分、桑折に到着。日暮れ時には出雲にいたのに、日付が変わらないうちに自宅に着いてしまうなんて、とても信じられません。起きて帰りを待っててくれた妻にそのことを話すと、大きく肯いておりました。
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