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February 6, 2012
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五木寛之
A5判並製 本文横書き
☆☆☆☆☆
 2006年に著者の了解の元、本文横組みのA5判で出版された改訂新版。何しろ行間がかなり広いのですぐ一冊読めてしまう。
 ただ、著者が若い人にも読んでほしいと言って出版されただけあり、もう30年近く前の初版なのだが、今でも¥のためだけの開発や公共事業が取りざたされているから、この小説の一番深い部分は今でも何も変わっていないと思う。
 奈良の二上山や仁徳天皇陵に山の民、それに最近ウォーキングも好きなので、この本はかなり好みな題材だったのでとても楽しめた。
 出版社から取材を依頼されて奈良の二上山を訪れたことをきっかけとして、主人公の速見卓は日本に古代からずっと続いていた、漂泊民の系譜を知り、そこに関係していくことになる。このあたりの展開はほとんどどっかで聞いたような伝奇小説だが、それよりはストーリー展開がずっとあっさりしている。ただ、ヘンに大掛かりな展開になるよりは、こっちの方が自然かなぁという気もするが。そして、作中語られる、戸籍を持たず、国内を漂泊していた人々を口実を設けて強制労働にかりだそうとする施政者の姿が、 明治維新の時と大津皇子の死 にフラッシュバックする。しかし、どんなに迫害を受けても、身を潜めることで自分達の血脈を守っていこうとする主人公が属することになる集団の姿勢はちょっと不器用な感じも受けるがとても毅然としている。
 私にとっては、やはり大好きな奈良、行ってみたいと思っている二上山に行ったことのある仁徳天皇陵が出てくると分かったところでそれで満足だったのだが、この本の中には竹内街道という古墳時代から由緒のありそうな幹線道路が出てきて、本の最初のほうでこの竹内街道のバイパスが工事中となっているのだが、このバイパス、仁徳天皇陵に行ったとき、タクシーで応神天皇陵まで向かう時に通った片幅二車線の大きな道路のことかな、と思ったら南阪奈道路のことだった。私が通ったのは中央環状線だそうだ。私はこの本に出てくる竹内街道より西の堺市よりの場所を通っていた。でも大阪中央環状線と竹内街道はほぼ平行して走っている。時々交差もしているようだ。私が通ったあたりは今も昔も大阪と奈良を結ぶ大きな幹線道路だったのだ。

 二上山を歩き回る描写や日本史の暗部にあたるような話が各所に出てくるが、これがとても私好みの題材なので、多少登場人物の扱い方がご都合主義だろうが、展開が淡々をし過ぎだろうが、あまり気にならなかった。けれど、主人公の周りの人間関係も結構面白いので、ここをもっとしつこく通俗的に書いたら、かなり楽しめるエンタテイメント小説になっただろうと思う。まあ、結局このあたりに感想が落ち着くのだから、著者の改訂新版出版の意図をどこまで汲んでいるかははなはだ心許ない。





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Last updated  February 7, 2012 03:47:03 PM
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「やっぱり偽物」に上記の内容について、書きました。


(February 8, 2012 11:28:55 AM)

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