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2010.09.15
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カテゴリ: 読書
百田尚樹「永遠の0(ゼロ)」を読み終えました。


永遠の0

私はこの本、単行本で出た時に本屋さんでタイトルを見て
「えいえんのゼロ?
 0って無っていうこと?
 無が永遠ってどういう意味かな
 変わったタイトルだな」
と思っていました。

気になる作品ではあったものの、
百田尚樹という作者の名前になじみがなく、

そのうち忘れてしまって…
文庫化されたこの本が「感動した。読む?」と
私の手元に回ってきたのがつい先日のことでした。

おお、君か…という気持ちで読み始めました。
少し読み進めたところで胸がドキドキしてきました。
こんなにも、早く先を読みたいのに
読み終わるのが惜しい作品は久しぶり。
しかも読み終わるまでに何度胸が締め付けられ
泣いたことか。
いきなりお勧め度を出してしまいますと
★★★★★

100%お勧めできます。

では粗筋のご紹介。
感情の高ぶるままに、かなり突っ込んだところまで
書いてしまいそうなので、読む前に少しも知りたくない方は
ここから下を読まないでくださいね。

大切な部分は書かないようにしますから、ご安心を。
***
健太郎26歳、司法試験浪人といえば聞こえはいいけれど
実際のところはニート。
大学四年生の時から四年連続の不合格で
だんだんと意欲がなくなりつつある今日このごろ。
4歳年上の姉の慶子はフリーライターをしている。

それは終戦から60年目の夏。
健太郎は慶子とともに、死んだ祖父について調べることになった。
特攻で死んだという祖父のことを知っている人たちに会うのは
今しかないかもしれない、そんな夏だった。
いくつかの戦友会から教えてもらえた戦友や飛行機の整備士など
10人への聞き取り調査が小説の中核をなします。
「臆病者だった」と語る人、
「天才的な戦闘機乗りだった」と語る人、
「今生きていられるのはあの人のおかげだ」と語る人…。
徐々に浮かび上がる人物像。
立場によって感想は違っても全員が一致して語るのは
生への執着心。
みじかい結婚生活で生まれた娘と妻の写真を胸に
「娘に会うまでは死ねない」と
どのような激しい戦闘にも生きて戻ってきていた。
それは並はずれた技術があればこその結果ではあったけれど…。
そんな男が終戦1週間前に特攻で死亡。
なぜ特攻に志願したのか?
なぜ?
****

もうおわかりかと思うのですがタイトル「永遠の0」の
ゼロは零式艦上戦闘機、通称「零戦」のことでした。

この小説は亡き祖父のことを調べている孫たちに
生き残った戦士たちが語る形式をとっていますが
それがそのまま、戦争を知らない私に語りかけているように
読めます。
当時の状況やいくつもの空中戦の様子がまるで
目の前に繰り広げられているかのように読めるのは
すごい筆力だと思います。
戦争礼讃やゲームの戦闘シーンを見るように、ではなく
ドキュメンタリー映像を見るかのように、です。
感情的にならず、淡々と描かれるがゆえに
開発当初、世界一の機能を誇った零戦の戦果を
読む時は良いけれど、戦争も終盤になり
めちゃくちゃな指令を受けて飛び立っていく
あたりは胸が苦しくて痛くなります。

そして驚愕したことが。
私は戦争末期に開発された人間魚雷「回天」のことは知っていました。
「回天」のことを書いた横山秀夫「出口のない海」を読んで
深い憤りとやるせなさを感じたものですが、
その飛行機版ともいうべき「桜花」の存在を
この小説で初めて知ったのです。
飛行機の先に爆弾を搭載(搭載というより詰め込んで)
人間が搭乗。
目的に向かって操縦しそのまま体当たりするための
小型飛行機です。
桜花自身では航行もできず、母機にぶら下げられる形で飛行場を出て
敵に近付いたところで母機から切り離される…。
脱出用のパラシュートなどはなから乗っていない、
九死に一生ならぬ十死零生のこの桜花、
アメリカ スミソニアン博物館に展示されている桜花に
付けられたニックネームをここには書きませんが
小説の中で、生き残った証言者がそれを見た瞬間号泣した…
いくら泣いても涙が止まらなかった、というのが納得できます。
ひどい。

現場で戦う一人一人は必死で頑張っているのだけれど
上に立つ人が、ろくにリサーチもせずに
精神論でろくでもない作戦を立てて押しつける。
しかもその結果に対しては責任を取らない…。
ん?それって今もそうかも、と思わせる日本軍の
(この小説では海軍の)問題点なども
浮き彫りになっています。

誤解のないように書いておきますが
私は戦争を美化したり、擁護しようとは思っていません。
ただ、事実として(この小説はフィクションとしても)
自分の命がいつ終わるかわからない状況の中で
生きていき、死んでいった人たちがいることは
絶対に忘れてはならないし、慰霊の念や感謝の念を
忘れてはいけないと思うのです。

そして彼らがつきつけられた問題
自分の死を、どうやって受け入れるか。
どう納得するか、どう意味を見つけるかは
平和な今においては
自分がどう生きるのか に繋がるのだなと
深く感じました。

亡き祖父のことを調べ終わった健太郎と慶子が
それぞれ自分の答えを見つけたように
私もそれを感じたのです。

この小説は12章からなりたっています。
第一章はいわばプロローグ。
健太郎と慶子の現状と、亡き祖父を調べ始めるまでが
書かれています。
先ほど、戦友会から紹介された証言者は10人と書きました。
一人一章ずつですから、第十一章までとなります。
そして第十二章。
この章で「ああ、そうだったのか!」ということになります。
それまでに細かい伏線が張られていて、
ああ、この人があの時の…と絡まった糸がほどけて行くのです。
そして「必ず生きて帰ってくる」と約束した男が
なぜ死んでしまったのかが納得できるようになっています。

この小説の中に出てくる戦争のエピソードは
個々に「あ、これ聞いたことがある…」というもので
上手にそれを一つにまとめているなぁと思いました

一番感動したのは、一時帰宅後 最後の別れ際に妻に残した言葉
「必ず生きて帰ってくる、たとえ腕が無くなっても、
足が無くなっても、戻ってくる」
「たとえ死んでも、それでもぼくは戻ってくる。
生まれ変わってでも、必ず君の元に戻ってくる」
(「永遠の0」文庫本 P563より抜粋)
が現実となること。
それを現実にしたのは、一人ひとりの気持ちと縁。
小説だと言ってしまえばそれまでですが、
小説の枠を超えて、胸を打たずにはおかない力を
持っています。

また、読後感が嫌なものではないのも素晴らしいです。
文章の端々に死者への(登場人物だけではなく戦死者全体への)
畏敬の念を感じるのです。
この作品がデビュー作だとは
なんてすごい作家なんだろ、百田尚樹って。

著者紹介を見ると、百田さんってあの人気番組
「探偵ナイトスクープ」の放送作家さんだったんですって。
講談社BOOK倶楽部 に掲載された著者メッセージを読むと
思わず爆笑。さすがナイトスクープの作家さんだ~。

ちなみに私、 百田尚樹「風の中のマリア」にも満点付けてます わ。


風の中のマリア

こうなったら、百田作品、全部読むぞ~!


ボックス!



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最終更新日  2010.09.16 21:40:13
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