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突然ですが、あなたは「言葉」の力を信じますか?
励ましの一言で救われた経験、逆に、たった一言で深く傷ついた記憶。
誰でも一つや二つ、思い当たるはずです。
言葉には不思議な力がある——そんな感覚、きっと人類は太古の昔から抱いてきたのかもしれません。
「あわのうた(阿波歌)」
日本の古代文献『ホツマツタヱ』に記された、48の音で構成された神秘の歌です。
記紀(古事記・日本書紀)にはほとんど語られていない、もう一つの日本神話の世界が、そこには広がっています。
ホツマツタヱとは、ヲシテ文字と呼ばれる神代文字で書かれた全40章からなる叙事詩です。
江戸時代に写本として発見されましたが、その内容の精緻さから、古代口伝の記録であるという説も根強く残っています。
物語はこんなふうに始まります。
はるか太古の日本列島——人々の言葉が乱れ、音が濁り、コミュニケーションそのものが崩れかけていた時代のこと。
そこに現れたのが、あのイザナギ・イザナミの二神でした。
二神は舟に乗り、「アワ」の地(現在の淡路島とも言われます)を旅しながら、ある歌を歌い続けたといいます。
それが、あわのうたです。
あかはなま いきひにみうく
ふぬむえけ へねめおこほの
もとろそよ をてれせゑつる
すゆんちり しゐたらさやわ
48の音を、一定の法則に従って詠み上げるこの歌。
単なる音の羅列に見えるかもしれませんが、そうではありません。
この歌には、頭から足先まで、身体の各部位と音が対応しているというのです。
歌い上げることで、全身が上から下へと音によって振動し、整えられていく——そんな構造が、精緻に組み込まれているとされています。
そして、この歌を聞いた人々の言葉は清らかになり、音は澄み渡り、乱れていた世界に再び秩序が生まれた。
ホツマツタヱはそう伝えています。
ロマンがあると思いませんか。
言葉が乱れた時代に、歌によって世界を立て直した二神の物語。
それは単なる神話ではなく、「正しい音が、人も社会も整える」という、深い洞察の詩的表現なのかもしれません。
「ア」は宇宙の始まりを、「ワ」は調和と循環を表すとされます。
この二つの音が合わさった「アワ」という名が、天地・陰陽の統合を意味するというのも、偶然とは思えない深さがあります。
後編では、この歌に込められた言霊の思想と、世界の古代文明に息づく「音の哲学」との驚くべき共通点をご紹介します。
どうぞお楽しみに。
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