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38体の骨格から抽出されたゲノムが示したのは、誰も予想していなかった答えでした。
「信じられないことに、3分の1がこの地域では異質な人々でした」
2019年、学術誌「Nature Communications」に発表されたゲノム解析の結果は、世界の研究者に衝撃を与えました。レリカンサス・ダフネアエハーバード大学の遺伝学者デビッド・ライヒ氏がコメントしたその言葉が、すべてを物語っています。
38体から抽出されたDNAを解析した結果、遺骨は少なくとも3つの異なるルーツに分類されましたしかも死亡時期は約1000年もの幅があることが判明。
ひとつの事件でも、ひとつの民族でもなかったのです。
グループ
A
南アジア系
23人。
7〜10世紀頃に死亡。
地元ヒンドゥー教の巡礼者と推定されるが、複数回の出来事で亡くなった可能性も。
グループ B
地中海系
14人。
ギリシャ・クレタ島に祖先を持つ。
Aより約1000年後(19世紀頃)に死亡。
誰も血縁関係なし。
グループ C
東アジア系
1人のみ。
グループBと同時期に死亡。
所属集団も来訪目的も不明。
ギリシャ・クレタ島の人々は、なぜヒマラヤの奥地に?
研究チームを最も困惑させたのが、14人の「地中海グループ」の存在です。
インドから遠く離れたギリシャやクレタ島をルーツとする人々が、なぜ標高5,000メートルを超えるヒマラヤの湖で命を落としていたのでしょうか。
「ループクンドの人骨が遺伝的にどこから来たのかは明らかにしました。しかしなぜ地中海の人々が、はるばるここまでやってきて、ここで何をしていたのかはわかりません」——研究者・ニラジ・ライ氏
さらに驚くべきは、14人の中に血縁関係者がひとりもいないこと。
家族や親族での旅ではなく、何らかの目的で集まった「赤の他人」の集団だったと考えられます。
食生活の同位体分析でも、南アジアグループとは明らかに異なる食文化が確認されました。
「余計に謎が深まってしまったかもしれません」——ハーバード大学・デビッド・ライヒ氏のこの言葉こそ、ループクンド湖の本質を表しています。科学が進むほど、問いが増えていく。まるで宇宙の観測のように。

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