ダトニケ熱い小説

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ダトミケ

ダトミケ

2005.01.30
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 彼らに支払う報酬は莫大なものだったが、マネー以上の働きに学者は感服していた。木々の間をぬって見える島の真ん中にはポッカリとした空間がただあるだけなのだろうと予測できた。

 あれほどまでに消耗した体力を回復したのはまさに超人だとしか言いようがない。学者も、親子も食料を持っていなかった。では、どうやって体力の回復に成功したかというと、簡単だ。金とメモを持たせれば空を飛んでおつかいに行くハヤブサが仲間にいるからだ。船で港を離れる前にその辺のショップに声をかけておく。ついでに買った肉をハヤブサに与えれば、それでオーケーだ。


 長いロープをほどよい長さに切って、木から木へと渡る。学者は昨日の恐怖で慣れてしまっているため、下さえ見なければターザンの真似ごとは、さほど怖くはなかった。ただ、寝る前にも少し思ったことだったが、鳥の鳴き声は聞こえない。もちろん姿さえも見えない。ハヤブサに臆して離れたのだろうか。学者は鳥がいた雰囲気も感じられない。

 この丸い島の中央は円を書くように木が群生していて、その中央が空間であることは学者の予想通りであった。ただ、一つ予想できなかったことがあった。

 木に囲まれた空間に根が這い出していて、それはテーブルみたいに平らに編んであるようだった。そして、その上に角の生えた巨大で不恰好な芋虫が座っていた。近くで見たかったが、ゴツイ手で止められた。親父のほうが首を振って、近づいてはダメだと言ってきた。学者に向かって言うその顔から普通ではない汗がタラタラと流れていた。その顔を見た少年は、ひどく取り乱していた。それでも好奇心がはち切れそうな学者はカバンから双眼鏡を取り出してのぞく。アップで見ると、なんともおぞましい形の体があった。そして腹から噴水のように茶色い液体を放出していた。この島の全体が湿地だが、その源が何であるか、分かった。あの化け物の排泄物だ。学者はあることを思い出してゴツイ男を向いた。そして、ちょっと失礼と言って湿地帯に潜ったときついた物を頭から摂取した。大きな虫眼鏡をだして、乾燥したその土のような物体をみてみる。一粒が蟻の頭ほどの大きさで、細長かった。そして、その一粒一粒はあの根のテーブルの分身であることが分かった。大発見だと学者は思った。

 学者のわきで親子二人が帰りの手立てについて話している。とにかく早く救助にくるように伝えろというふうなことを少年は親父に言われて紙に書いた。そして、ピューィと口笛を吹いてハヤブサを呼んだ。上のほうで葉っぱが音を出した。見上げて、三人が三人、絶句した。真上から青い血管がドクドク流れる肉の塊が振ってきたのだ。少年はすぐ脇の枝に捕まって逃れ、学者はゴツイ男と共に枝から飛び降りたのだった。湿地ぎりぎりのところでロープを枝に巻きつけて一時難を逃れた。根のテーブルには怪物がいない。今振ってきた肉がアンバランスに小さい顔で三人を見る。プッシャー!と口を開いたかと思うとよだれだけをその場に浮かせたまま信じられない瞬発力で少年に飛びかかった。ロープ一本にぶらさがったゴツイ男と学者は動くことができなかった。



 見上げると学者とゴツイ男の顔に血が振ってきた。バタバタと羽ばたくハヤブサは無意識で羽を動かしている。何も考えないで筋肉を動かしている。少年が号泣する。首がなくなったハヤブサの動きががゆっくりになる。こと切れて地上に落下する。空中に何本かの羽が舞う中、本体は湿地の深くに姿を消す。おそらくハヤブサは怪物の眼球に攻撃したのだろう。大きいものに攻撃するときには、そうするように訓練させていた。だが、変わりに首をもっていかれたのだ。

 ゴツイ男はロープを揺らして枝に飛び乗る。あの化け物は湿地に落ちたのだ。いつ襲い掛かってくるかわからない。そう学者と息子に向かって言い、ロープで輪を作り周囲に神経をとがらせる。少年も涙をこすり、父のそばに降りてくる。学者は、この二人が揃うと百人力という心強さがあったが、今の化け物を見た後ではそう思わなかった。

 いつくるかわからないという緊張感が時間を長く感じさせる。

 どこで睨みをきかせているのだ。三人の集中力が徐々にとぎれてくる。あっというまに月がでてきた。昼ごろに怪物の姿を見てから、もう朝をむかえる。だれも、一睡もしていない。

 三日目、とうとう出てこない。ハヤブサがいないため木の皮と夜露、朝露だけを口にしてすごした。いい意味で待ち合わせのドタキャンをくらった。

 太陽が高くなったころ、望遠鏡をのぞいていた少年が、見てみろとゴツイ男にそれを渡してきた。少年が指し示すのは根で出来たテーブルの場所であった。ゴツイ男は一瞬だけ絶句してみせ、息子にむかって「あれならやれるな」といった。学者ものぞくとテーブルの上には子犬程度の怪物が同じように腹から噴水をだしていた。いや、子を産んでいる。ということは、やつは女王であって、シロアリのように働き怪物を産んでいるのだと理解した。木をつたってテーブルに近づく。子犬サイズの女王がこちらに振り返る。三人でロープをつかんでターザンジャンプしてテーブルに着地を狙う。小さいからと言ってあなどってはならなかった。小さい分、スピードがハンパではなかった。学者は殺される瞬間に思った。おのでかいやつも、顔のサイズはこれと同じだった。肥えていた分だけ、あれでもスピードは遅かったのだ。


 細かい怪物でできた島。あのでかい怪物でも、さすがにこの湿地帯からは逃げられなかったとみえる。親をも殺す兵隊。どこかの国の兵隊も望んでいるかもしれない。ただ、次も同じ血を引く同じ顔では、やはりすることに変わりはない。





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Last updated  2005.01.30 16:32:08
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