『 ◇「効果 予想以上」--交通機関、買い物割引
「運転免許返納支援制度がはじまりました」。高知県土佐清水市中心部の住宅地に
住む横山好子さん(88)が、自宅でたまたま市の広報誌を開くと、こんな一文を見
つけた。運転免許を自主的に返納するとバスやタクシー、買い物の料金が割引される
という。「こんなにいいことがあるのなら」。横山さんは思い切って自動二輪車の運
転免許を返した。2年前の夏のことだ。
横山さんが自動二輪車の運転免許を取ったのは1963年。ミシンのセールスに必
要だった。5年前に死別した夫は免許がなかった。退職後も毎日のようにバイクに乗
って買い物や知人宅、数キロ離れた畑に出かけた。
だが、86歳になったころ、事故を心配した長男にバイクの運転をやめるよう再三
言われた。自宅から商店街までバイクなら3分ほどだが、徒歩なら約20分。運転に
もまだまだ自信があった。一方で「もしものことがあったら息子たちに申し訳ない」
との思いもよぎった。そんな迷いに踏ん切りをつけてくれたのが運転免許返納支援制
度だった。
横山さんは、返納後、行きつけの洋服店で1割引きで買い物をしている。バスやタ
クシーの割引も利用している。「歩くようになったので足腰も強くなった」と話す。
土佐清水市は人口約1万7000人。高齢化率は約35%で、県平均を10ポイン
ト近く上回る。免許を持つ高齢者の割合は全免許保有者の約22%で、県平均より4
ポイント近く高い。典型的な高齢化地域だ。
この制度が始まったのは05年7月。04年11月~05年1月に高齢者がかかわ
る交通事故6件が続発した。うち1件は84歳の男性が軽トラックを運転中、ガード
レールに衝突して死亡した事故だった。市や清水署などは「高齢者交通安全対策推進
協議会」を開催。席上、「免許を返納した人への支援ができないか」との声が出たの
がきっかけだった。
支援制度は、(1)中央商店街の18店の商品1割引き(2)市内5社のタクシー
料金の1割引き(3)市内周辺の路線が乗り放題となる高知西南バスの定期券(1カ
月で5000円)(4)運転経歴証明書の発行手数料(1000円)を無料化(5)
スーパー2店の商品券(2000円分)の交付--の五つ。
返納した人は04年にわずか1人だったが、制度開始後は05年33人▽06年3
4人▽07年32人(9月11日現在)で計99人に上っている。男女はほぼ半数で、
最高齢は90歳。高齢者の交通事故の件数も04年は28件だったが、05年24件、
06年22件と減少。清水署の山中誠交通課長は「事故の減少と支援制度との関係は
はっきりしないが、返納する人は予想以上」と話す。
だが、交通の不便な郊外では、支援制度の恩恵を受けられない人もいる。市街地か
ら10キロほど離れた集落に住む田中正治さん(75)もその一人だ。妻は1年半前
に亡くなり、今は1人暮らし。03年に脳梗塞(こうそく)で倒れて1カ月入院し、
今も右の手足に軽いしびれが残る。極力運転を控えているが、月2、3回、通院や買
い物のため軽乗用車のハンドルを握る。
田中さんは「バスは便数が少なく使いにくい。あと5年は運転したい。車がなけれ
ば生活はできない」とつぶやく。
こうした声は土佐清水市にも届いている。市はバスの増便や割引対象店・割引率の
拡大ができないか検討中だ。現在の制度に市の助成はないが、市総務課は「財政事情
は厳しいが、市の補助が必要かもしれない」と話す。
増え続ける高齢ドライバー事故。しかし、「マイカー以外の移動手段がない」とい
うお年寄りは多い。「クルマ高齢社会」第3部は、免許返納を進める各地の取り組み
や運転をやめた人たちの地域の「足」をどう確保していくか、模索する動きを紹介す
る。』
『◇02年に秋田、静岡で先陣
高齢ドライバーの事故防止を目指す警察や自治体の要請で、免許を返納した高齢者
を対象に交通機関料金の割引などを行う動きが各地で広がっている。
先陣を切ったのは、02年からスタートした静岡県と秋田県のバス業界。静岡県で
は、県バス協会加盟17社のうち7社が02年から、免許を返納した60歳以上の人
に4~7割引きの定期券を販売。静岡鉄道も04年から全線フリー券を発行している。
富山市は06年から公共交通機関の2万円分の乗車券を交付。身分証明書代わりにな
る住民基本台帳カードや運転経歴証明書の交付手数料を無料化。福井県越前市は10
月から、免許の有効期限分の市民バス無料乗車券を交付する。
タクシー業界では、埼玉県羽生市の2社が06年から運賃の1割引きを導入。長野
県タクシー協会も県内全域で今年5月から1割引きを始めた。鹿児島県出水市では3
社が5月から運賃1割引きと、温泉施設の100~200円割引を実施。8月末まで
の約3カ月間ですでに23人が免許を返納した。
■主な運転免許返納者への割引制度(カッコ内は開始年)
静岡県 県バス協会加盟7社の定期券(02年)
静岡鉄道が全線フリー乗車券(04年)
秋田県 県バス協会加盟3社の定期券(02年)
秋田内陸縦貫鉄道の優遇乗車制度(02年)
富山市 公共交通乗車券の配布(06年)
埼玉県羽生市 タクシー2社が1割引き(06年)
鹿児島県出水市 タクシー3社が1割引き、温泉施設割引(07年)
香川県さぬき市 大川バスが運賃を半額に(07年)
新潟県妙高市など タクシー3社が1割引き(07年)
長野県 県タクシー協会が1割引き(07年)
福井県鯖江市 コミュニティーバス1年間無料乗車券(07年)』
う~ん、公共交通機関に頼れない地域はきびしいですね・・。幸い今は都会に住ん
でいるので、良いですが・・、カミさんは将来田舎に引っ越したいようですし・・。
案外自分たちが高齢になるときに切実に感じることになるかもしれません。まぁあと
20年後・・もっと楽で安全な乗り物ができているかもしれませんし・・楽観楽観!
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